経済同友会代表幹事の正論と財務省の陰謀
経済同友会の桜井代表幹事が、20日の記者会見でこう語っています。
http://www.doyukai.or.jp/chairmansmsg/pressconf/2008/090120a.html
>Q: 本日午前中に、雇用保険法の改正案が閣議決定された。(改正の)主たる中身は、給付の拡充と料率の引き下げである。昨年末、麻生総理は財界代表を官邸に呼び、(雇用保険の)料率引き下げについては原資を賃上げに回すよう要請された。これについて、見解を伺いたい。
桜井:いま企業は、いろいろなことを工面して賃上げを行うよりは、やはり雇用の確保が非常に大事であると思う。これを基本に考えれば、雇用保険(料率)の引き下げで(賃上げを行う)ということは、必要ないのではないか。むしろ、政府が一番やらなければいけないことは、雇用保険の対象者の拡充と(加入)条件の緩和、そしてそれに見合う制度設計であろう。以前の会見でも申し上げた、企業の役割、働く側の役割、政府の役割というなかでの、政府の役割であるセーフティネットの充実ということである。
まったく正論であります。これからしっかり失業給付を出さなければいけないまさにそのときに、わざわざ雇用保険料を引き下げるなどというばかげた政策をとり、あまつさえそれを原資に賃上げしろなどと、なんで政府はそんなばかげたことをやるのか?
産経新聞 【経済深層】大失業時代 雇用保険料引き下げの“陰謀”
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/081227/wlf0812272101000-n2.htm
> 失業者の増大に加え、非正規社員への適用拡大で保険金の支給が急増するのは確実なのにもかかわらず、保険料を引き下げた背景には、巨額の積立金の存在がある。
「貯金があるので、企業や雇用者に還元する」というわけだが、そんな単純な話ではない。
「保険料引き下げの裏には、国庫負担をやめたい財務省の陰謀がある」
雇用保険部会の多くの委員と厚労省が引き下げに猛反発した理由がこれだ。
国は毎年度1600億円のお金を拠出しており、財政事情が悪化の一途をたどり続ける中、財務省としては少しでも支出を減らしたい。ただ、積立金が余っているなら、まず保険料引き下げるのが筋で、国庫負担だけをやめるわけにはいかない。
そこで財務省は「景気対策の目玉の一つとして、麻生首相に引き下げを進言した」(政府関係者)。引き下げに乗じて国庫負担もやめようという戦略だ。
さらに平成21年度予算編成の過程で、シーリング(概算要求基準)で定められた社会保障費の自然増を2200億円抑制するという取り決めをほごにする議論が浮上。財務省は「雇用保険の国庫負担廃止とたばこ1本当たり3円の増税で、2200億円の財源を捻出(ねんしゆつ)するシナリオを描いた」(同)。
結局、たばこ増税は与党税制調査会の反対で、国庫負担廃止も「雇用情勢の悪化」を理由に、実現しなかった。
そして、この財務省によるぺんぺん草の跡地に、雇用保険料率の引き下げという奇怪なお荷物だけが残されたわけであります。
これと、経産省が旗を振る賃上げによる内需拡大論とが不気味な融合を遂げたのが、雇用保険料率引き下げ分による賃上げ要請という世にも不思議な「政策」というわけで。
財務、経産という霞ヶ関の御優秀な官僚が、厚労省の三流役人を無視して制度をいじくり回すと、こういうスバラ式政策が産み出されるという標本のような事例でありました。
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