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2009年1月27日 (火)

働く人たち-母と子のための労働法

JILPTの労働図書館の奥から、標題の本が出てきました。B5版でハードカバーの堂々たる作り。

昭和36年10月10日第1刷発行。定価700円。発行所は勁草書房。そして、著者は石井照久(東大教授)、大場綾子(労働省婦人労働課長)、亀村五郎(成蹊学園小学校教諭)、萩沢清彦(弁護士)という面子です。

労働教育が社会的課題となりつつある現在、今から50年近く前に出されたこの本を復刻してみたら、あるいは現代版を今の若手学者たちでつくってみたら?と思いました。

まず「はじめに」でいわく、

>労働問題は、私たちの生活に深いつながりをもっています。けれども、労働問題とか労働法とかいうと、何となく一部の人たちだけの問題のようにとられやすく、それについての関心や理解はまだ十分ではありません。すべての人が労働問題を正しく理解すれば世の中はもっともっとよくなるでしょう。

夕食後のひとときに、あるいはまた、日曜日の午後に、家庭でお茶を飲みながら労働問題について話し合えるようになってくれたらと思って、私たちはこの本を書きました。今まで労働問題や労働法について何も知らない人でも、やさしく、たのしくはいっていけるようにと考えながら、また、やさしいだけでなく正しくわかってもらえるように努力したつもりです。

内容や文章は、だいたい小学校高学年から中学生程度を標準にしました。

この本の中に出てくる正雄君の家庭は、よく労働問題について議論をしています。普通の家庭でこんなに議論をすることはありませんが、説明をわかりやすくするために、このような形式をとったのですから、理屈っぽい家庭だなどと考えないでください。

お母さん方が、子供たちと、この本をめくりながら労働問題についていろいろ話し合っている様子を思い浮かべ、この本が労働問題や労働法についての理解を深め、日本の社会を明るくすることに役立つことを心から希望しています。

何だか、50年前より、今の方が胸に突き刺すような言葉だったりしますが・・・。

個別の項目を見ると、もっと胸に突き刺さる文章が・・・。

>残業の日-時間外労働ー

正雄君のお父さんはきょうも残業で、会社からの帰りが遅くなりました。

「毎日大変ですね。お疲れでしょう。」とお母さんも心配そうです。正雄君は不思議に思ってお父さんにいろいろと聞いてみました。

「お父さん、どうして残業をしてくるの。」

「急ぎの仕事でね、残業しなくては間に合わないんだよ。」

「人を増やしてもだめなの。だって、この間聞いたときは、労働時間は1日8時間だといっていたでしょう。」

「そう。たしかに、労働基準法では1日8時間を超えて働かせてはいけないと決めてあるんだよ。でもね、たとえば、地震や火事などが起こって、そんなことはいっていられないときもあるし、また、急ぎの仕事で残業しなくてはならないときもある。それに、仕事によっては、ふだんでも8時間では仕上がらないときもあるんだ。だから、労働基準法でも、そのようなときは8時間を超えて働かせたり(時間外労働),休日に働かせてもよいという例外を認めているんだ。」

「地震とか火事とかいうのはわかるけど、忙しいときには残業できるというのでは、8時間労働なんて決めても決めなくても同じじゃないんですか。」

お父さんは洋服を脱ぎながらも、ていねいに話してくれました。

「たしかにそうだ。けれども、そうとばかりもいえない。それは、8時間労働の原則を決めているだけでも意味があるんだよ。忙しいからといって勝手に働かせていいというわけではなく、お父さんたちの意見を聞くことにもなっているし、8時間を超えて働いたときには割増賃金をもらえるんだ。けれどもそんな形式的なことよりも、8時間労働の原則があるんだから、会社の方でもよほどのことがないと残業などさせないようにすべきだし、また、働く方でも、残業手当をもらえるからといって、やたらに残業したがるということは考えものだよ。賃金が増えても結局は体をすり減らしているんだからね。」

正雄くんは残業がなくなるためにはどうしたらいいか自分で考えることにしました

なんだか涙が出てきますね。この50年間というのは、お父さんがこういうちゃんとした意見をもてなくなり、正雄くんも別に何の疑問も持たなくなるだけの50年間だったのかも知れません。

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コメント

そこまで言わなくてもよいのでは。50年前には30日以上前に予告すれば自由に解雇できたわけですし。
それはそれとして、復刻版は読んでみたい気はしますね。正雄くんのお父さんは、きっと工場で働いているんでしょうね…。

いやまあ、この「残業の日」を見て、わたくし的には思わずそう思ったわけで、まともな時代の流れを感じされるところもたくさんあります。

「安心して働けるために-解雇の制限ー」という項目は、まさに30日前の予告(手当)と業務上傷病及び産前産後の解雇制限しか書いてなく、

>これだけでは労働者のためには不十分かも知れませんが、せめてこれだけのことは完全に守るようにしたいものです。

とあります。

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