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2009年1月16日 (金)

ケータイ持たせても事業場外みなしが可能か?

あらかじめお断りしておきますが、このエントリは思いっきり労働法研究者しか興味のなさそうなテーマですので、つまんなそうだなと思われたら読むのをやめて結構です。

『労働法学研究会報』の1月1日号に、北岡大介氏の「事業場外みなし労働Q&A」が載っています。全体としてとても役立つ記事なのですが、

そのポイントとして、「携帯電話所持はみなし制の適用を否定するのか」という問いに対して、「在宅勤務に関する通達から推測すると、携帯電話の「所持」が事業場外見なし労働の適用外に直結するのではなく、「携帯に出てすぐに対応せよ」などの「具体的指示」がなければ、事業場外見なし労働が適用されるケースもあり得る」と述べています。

正直言って、これは危ないと感じました。これを読んだ事業主が、そうか、携帯を持たせても、そう言う「具体的指示」をしていなければいいんだな、と理解してしまうと、まずいことになりそうだからです。

この在宅勤務の通達というのは、北岡氏が述べているように、以前は通信機器が常時接続であれば事業場外見なし労働は適用できないと解釈されていたのを、小嶌典明先生の主張により、回線が接続してあっても、電子メール等で即応できるよう待機しつつ作業しているのでない限り、事業場外見なし労働とするというものです。

これは、近年の通信状況を考えれば常時接続が当たり前ですから、常にメーラーを立ち上げて、メールが来たら即応できるようにしている場合と、通常はメーラーは立ち上げずに自分の作業に専念していて、定時にのみメーラーを立ち上げてメールが来たかどうかを確認するようにしている場合とで扱いを変えることには合理性があります。

しかし、携帯電話は違うのではないでしょうか。携帯電話を所持しているということは、電車の思いやりシート近くにいるとき以外は、原則として常に電源を入れているはずで、つまりいつでも電話がかかってくれば即応しなければならないと、無言のうちに言っているのと同じではないかと思われます。

携帯電話を渡しておいて、いや「すぐに携帯に出て対応しろ」などと「具体的な指示」はしておりませんでした、というのは、携帯電話の通常の使用法からして、いささか疑問があります。

こういう問題で、

>労働基準監督官の考えにぶれが生じる可能性があります。

というのは、現代における携帯電話の普及状況を考えるとかなりやばい状況です。

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コメント

 濱口先生 北岡でございます。拙稿紹介とご指導、ともに誠にありがとうございました。インターネット上でご指導を頂くことは初めてで、少々緊張しております(笑)。

 私の本意としては、まず事業場外みなし適用の可否は、「携帯電話の所持(本人所有、会社貸与問わず)」で決まるものではなく、通達(昭和63年1月1日基発1号)のとおり、「随時使用者の指示を受けながら労働しているか否か」で決まることを指摘することにありました。その上で「随意指示」が如何なる場合かが問題となりますが、これについて私は安西説の立場を支持し、「絶えず上司等が外勤社員の動静を携帯電話で報告させる等により行動を把握し、コントロールしている」場合を指すと考えております(安西愈「労働時間・休日・休暇の法律実務」(第6版)438頁参考)。
 したがって、行動管理を目的としたものではなく、連絡等のみで携帯が利用されている場合は、事業場外みなしの適用は排斥されないと考える次第です。問題は事業場外における具体的な業務内容や遂行方法を対象労働者に委ねているか否かにこそあるのではないでしょうか。拙稿においても、業務内容・遂行方法を委ねられない新任外勤社員等には、同裁量労働制適用は不適切である旨、論じております(拙稿会報2444号37頁)。
 しかしながら在宅勤務に関する新通達(平成20年7月28日 基発0728001号)における通信機器の「常時接続」解釈変更に、上記見解を読みこんで紹介した点は、勇み足の面はあったと反省しております。

 まずもって何故、このテーマに問題関心を持ったかといえば、これだけ携帯電話の所有率が高まる中、携帯電話の所持をもって、即「事業場外みなし」適用を否定する見解は実務上、取りえないのではないか。それよりも、上司と外勤社員(携帯所持前提)の関係性に対する適切なルールを検討することによって、適法かつ現実妥当な解決を導き得ないかという問題関心が出発点にあった次第です。まだまだうまく法律論として展開できておりませんが、この点は更に精進を重ねるとともに、先生方のご指導・研究成果を待つものです。長々と失礼いたしました。今後ともご指導の方、よろしくお願いいたします。

北岡さま、ご指導などといわず、自由闊達にやりましょうよ、

私は、安西説は抽象的な言葉の上では不適切だとは思わないのですが、携帯電話の性質上、連絡等のみの目的で行動管理を目的としていないというのは難しいのではないか、そういえるためには、通常は携帯の電源を切っていて、定期的に確認のために電源を入れるというふうにでもしないと、いささか無理があるように感じたわけです。

在宅勤務というのは、家庭で家事や育児をしながらできるという面があり、コンピュータが常時接続だから常に行動を管理されているというのはいささか無理があったわけですが、セールスマン型の外勤社員の場合、昔は喫茶店やパチンコ店にしけ込んでいても成績さえ上げていれば管理されなかったのが、今はそう甘くはないということでしょうから、ちょっと違うでしょうね。

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