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2009年1月18日 (日)

大前研一氏の診断は正しいが処方箋は間違い

むかし経営評論家として有名で、確か選挙に出たこともある大前研一氏が、Voice誌に、「景気浮揚・三つの大改革」という文章を書いています。

http://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=93&pageStart=0

その中で、こういう主張をしています。

>その第1は、個人の金融資産を高齢者から若者に移すことである。日本の最大の問題は1500兆円の個人金融資産がありながら、それがマーケットに出てこないことだ。そのために需要が生まれず、GDPも増えない。1500兆円の1%でも15兆円だから、これだけで麻生内閣が配ろうとしている2兆円の7倍以上の経済効果をもつ。

 マーケットに1500兆円が出ないのは、お金をもっている人が高齢者ばかりだからだ。彼らは国を信用していないから、「いざというとき」に備えて、その金額は貯金に回される。年金をもらっても、そこから3割を貯蓄に向けるという世界一変わった国民なのだ。日本の高齢者は、墓場に行くとき1人平均3500万円もの大金を持って行く。

ではどうしたらいいのかというと、

>そんな老人に少しインセンティブを与えて、「消費税を払わなくていいから、お金を使ってください」といったところで、消費に向かうことはないだろう。従来の延長線上にはない、まったく新しい方策が必要とされているのだ。それは相続税の廃止である。

>日本もこのような案を導入する以外、眠れる個人金融資産を市場に誘い出す方法はない。数年後の1年間、または2年間だけ相続にかかる税をゼロにする。そうして1500兆円の大半を占める高齢者の資産が若い世代に移るようにする。これに“朝日新聞的”な人たちは、「金持ち優遇」と反対するだろう。

私は、「朝日新聞的」かどうかは知りませんが、「金持ち優遇」だからというだけの理由で反対する気はありません。問題は、「金持ち優遇」がその眠れるお金を有効に使うことになるかどうかでしょう。私にはその処方箋は全く間違っているように思われます。逆に、一定額を超える資産に対してはきわめて高率の相続税をかけて、消費性向の高い若くて低所得の人々に配った方がいいと思われます。

なぜなら、以前に本ブログで取り上げたように、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-9759.html(不労不育世代間資産還流の社会的帰結)

>昨日の朝日新聞日曜版「be on Saturday」に、大変興味深い記事が載っていました。「60歳超で循環するマネー 都市部の団塊世代に相続が集中」というタイトルで、要するに高齢化のために親が死んで相続する年齢が30年前より15歳以上も上昇し、60代後半で相続するに至っているというのです。

この記事自体はマネー記事なので、資産運用的観点からしか書いていませんが、実はこれはマクロ社会的に見ると、労働もしなければ育児もしない消費性向の低い引退世代の間でのみ、膨大な資産がやりとりされてしまい、実際に労働し、子どもを育てている世代はそのマネーの流れに入れなくなっているという深刻な事態を意味します。言うまでもなく高齢層ほど格差は大きくなりますから、そういうマネーの還流をしている階層と、そんなものに縁のない階層との格差は大きいわけです。

>なんにせよ、カネが不労不育世代間でのみ行ったり来たりしているというのは、マクロ経済的に見てもいかにも不均衡な事態でしょう。お金のかかる世代はお金がない、お金のかからない世代にお金がある。これを血のつながりを超えたマクロなメカニズムで還流しないと、お金をかけなければならない世代はお金がないからお金を使わない。お金が余っている世代はお金を使う必要がないからお金を使わない。という悲しい事態に陥ってしまうわけです。

お金を使わない高齢者の膨大な相続財産が向かうのは、同じようにお金を使わない一世代下のやはり高齢者であって(まさしく「ノンワーキング・リッチ」そのもの)、実際に働いて子育てをしている若年や中年の人々ではないわけですから。

この点でいえば、私は飼弾氏の考えに半ば賛成なのですが、

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51166246.html(相続税 - ゼロかイチか)

>カネを必要とする人間にカネが行き渡らない、カネがストック化してしまう弊害についてお話ししました。これに対する解決策こそ、ベーシック・インカムと社会相続のセットです。死んだ人間の持っていたカネがベーシック・インカムとして全員にばらまかれる、すなわちストックがフローとなって必要な人間に行き渡るようになるわけです

「半ば」という理由は、いうまでもなく、無差別のベーシックインカムでは就労に対するモラルハザードになるからで、原則は就労者や就労のために教育訓練を受けている者に対する社会手当として支給されるべきだと思います。この辺は哲学的な対立点ですけどね。

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コメント

「子飼弾氏」→「小飼弾氏」ではないでしょうか?
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>日本の高齢者は、墓場に行くとき1人平均3500万円もの大金を持って行く。

大前氏はこう言われていますが、この3500万円には、亡くなった方が住んでいた住宅などの不動産価格も含まれるのでしょうか? もしそうだとすれば、高齢者が「大金を無駄に抱えている」とは言えないように思うのですが。

それは大前氏に聴くべき事項であろうと思われますが、通常「金融資産」という言葉に含まれるのは、現金・預金、債券、投資信託、株式・出資金、保険・年金準備金等であって、住宅の不動産価格は含まれません。

ちょっと前のものですが、日銀の方が個人金融資産の国際比較を書いていますので、紹介しておきます。

http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/exphikaku.htm">http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/exphikaku.htm

素人ですみません。相続という現象の中で、夫の死亡→妻への財産移転というのはどれくらいしめるものなのでしょうか。
そしてそれは税率は親→子と違うのでしょうか??
夫→妻への相続税をがっつりあげるのはどういった現象をもたらすのでしょうか??

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