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2009年1月19日 (月)

第4回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会議事録

12月1日に開かれた標記会合の議事録がアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/12/txt/s1201-3.txt

前に本ブログで述べたように、この回は神奈川県立田奈高等学校教諭の吉田美穂先生が説明されたのですが、正直言って、それまでのNPOの方々の説明とか、労働相談員の方の説明はだいたい想定内だったのですが、この吉田先生のお話はいささかそれを超えるところがありました。

以下、興味深いところを引用しておきます。

>特に、28、29頁の「アルバイター、フリーターの権利を考えよう!」という部分が非常に大切だと思っております。どのようなことかと言いますと、やはり、本校では一定割合の生徒がどうしてもフリーターになっていかざるを得ないという状況があるわけですから、「フリーターになっちゃ駄目だよ。」で終わっては現実には意味がない。生徒たち自身もフリーターを肯定的に受け止めているかと言うと、「どうせフリーターだし。」というセリフをよく聞きますが、それはある程度自嘲的な部分が入っていて、なりたくてフリーターになっているとは思えないのです。そのようなことも考えて、28、29頁の「アルバイター、フリーターの権利を考えよう!」という教材にしてきました。

 ここではアルバイターを取り上げているというのが1つポイントで、1年生という年次での教材ということもあるのですが、生徒たちにとって、卒業してからの話や就職してからの話というのはまだまだ先のことで、ピンとはこないし、自分の問題としてはなかなか捉えづらいということがあります。そこで、彼ら自身が既にアルバイトをして働いていることに注目し、作ったということです。実は、本校生徒の大半は既に労働者です。どのぐらいがアルバイトをしているかですが、1年生の終わりごろに調査をして、実に3/4、4人に3人がアルバイトをしております。この数は第1回の研究会で提示されていた、下位校のアルバイト経験率を遥かに上回っていると思います。

 アルバイト先として多いのはファーストフード、ファミレスなどの飲食店関係、そしてコンビニやスーパー、ガソリンスタンドなどです。本校ではアルバイトは許可制ではなく、届出制です。これはアルバイト代の使い途が自分の小遣いだけでなく、定期代や学用品、中には一部学費という生徒もいて、学校に通うための費用に充てている生徒がアルバイトをしている生徒の30%ぐらいはいて、飲食代と書いてくる生徒たちの中にも弁当を持ってくることができないため、自分で買ってくる、その費用などもアルバイト代から出しているといった生徒が少なくないといった状況があります。禁止や許可制にしてしまうと、却って実態も把握しにくくなるということがあって、届出制としております。

 もちろん、アルバイトに多くの時間や精力をとられ過ぎてしまうと学業の妨げにもなり得るわけですが、本校ではアルバイトの中で彼らが経験的に学んでいくことも、また大切に見ていきたいという思いもあるのです。アルバイトをするようになって挨拶ができるようになった、目上の人との話し方を学んだ、時間を守ることを学んだなどと答える生徒がかなり多くなっている面もあります。学校に遅刻してくる生徒に「何で遅刻してくるの。」と聞くと、「バイトには遅刻していないから。」と答えることもあります。そういう話ではないと思うのですが、アルバイトに対しては本当に真面目で、遅れたり休んだりすると人に迷惑がかかるという意識はかなり持っているように思います。ただ、アルバイトをどんなに真面目に取り組んでも就職のときには役に立たない、学校を休めばむしろそれが調査書に載って不利になってしまうので本当に皮肉だなと思いますが、生徒のほうはなかなかそのような実感がないようです。

「家庭の婦女子や学生アルバイト」という十把一絡げは、パートタイマーや派遣労働者だけではなく、高校生アルバイトですらもはや現実に合わなくなってきているんですね。

>17番は労災ですが、授業のときにはもう少し具体的に、例えば「宅配中にバイクでバランスを崩して転倒して怪我をしてしまいました。治療費や休んだ分のバイト代は払ってもらえるでしょうか」といったより具体的なものにして聞いてみるのですが、生徒からは「それは無理でしょう。だって自分が悪いんじゃん、自分がコケたんじゃん。」と。ぶつけられたら別かもしれないが、絶対無理だという感じの回答がほとんどでした。原付免許を取った生徒にとって宅配は身近なアルバイトですから、実際をイメージして彼らにとってリアルな回答を言っているのだと思います。

生徒の大半は労災という認識はなくて、過剰な自己責任、先ほども人に迷惑をかけてはいけないとか、意外にも彼らはそのような倫理観を強く持っていて、このような事故でも自己責任と思ってしまいがちだなと思いました。

>具体的な例を出しますと、本校は年3回の三者面談、年度当初には二者面談など、担任が比較的きめ細かく生徒と面談をする機会を持っているのですが、ある担任が2年生の生徒との面談で、最近遅刻が多いと、それも授業に食い込むほど大きく遅刻してきたりすることが増えているがどうしたのだ、という話をしたら、アルバイトを1つ増やしたら、疲れてしまってどうしても起きられないということだったのです。生徒はそれで2つ目のアルバイトは無理だ、辞めようと思って、店長に辞めたいと申し出たが辞めさせてもらえないと。契約書を持ってきて、「君はここにサインしたのだから絶対に辞められない、きちんとやってもらわなくては困る。」と随分言われたというのです。大人に高圧的に、特に契約書などを見せられて上から話されると、絶対言い返せないという感じで困っていると言うのです。

この十数年間声高に叫ばれ続けた自己責任論は、各界の要職にある中高年の方々には(少なくとも自らの行動規範としては)あまり影響を及ぼしていないようですが、自己責任論のあふれる中で人格形成をしてきた素直な若者たちには明確な影響を与えているようです。

それも、人の自己責任を過剰に追及するという中高年によく見られる形ではなく、追求すべきでもない自分の自己責任を過剰に追及するという形で・・・。

>今日はこの機会にもう少しお話させていただきたい点があるのですが、今回このようなヒアリングの場をいただき、改めて考えてみると、労働法教育について学校だけが担うのは本当に難しい面があると思いました。とりわけ、実際には多くの職場で労働者の権利が守られない状況にあることが、大変マイナスな教育的効果を持ってしまっていることを感じます。高校生の労働観はアルバイト先で見聞きする現実にも大きく左右されていると思います。最近は「名ばかり管理職」などが問題となっていますが、例えばファーストフードやガソリンスタンドなど高校生がアルバイトしやすい所の店長などは、正社員でも実は名ばかり管理職という例もかなり多いのではないかと見受けられますし、そのようなことを生徒は横で見ているわけです。

 人件費削減でアルバイトに頼る店では正社員の店長が必死にアルバイトを確保して、場合によっては埋まらない穴を自分で埋めて働いているが、どうも給料はそんなにもらっていないらしいし、休みも取ってないと。アルバイトにも年休があると言う前に、正社員だって年休を取っていないと。そのようなところで、いくら「権利があるよ。」と学校で教えても、働くというのはそういうものだ、権利があっても行使するのは難しいと考えてしまいがちかなと思います。教科書の勉強と現実のどちらから多くを学ぶかと言うと、本校の生徒は現実からより多くを学んでしまうだろうと思います。学校としても体験的な学習としていろいろなキャリア教育をやっていますし、重視もしているのですが、やはり高校生が働くアルバイト先の現実の持つ教育的な効果というのも見逃さないでいただきたいと思っております。

最大の労働教育は、彼らがアルバイトで働く職場できちんと労働法が守られるようにすることなのかも知れません。

読めば読むほど考えさせるでしょう?

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