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« 労働者派遣法の経緯と動向について | トップページ | WEDGE大竹論文の問題点 »

2009年1月22日 (木)

人事院総裁が拒否するのは当然

日経が、またぞろ公務員叩き的雰囲気で記事を書いていますが、

http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090122AT3S2101121012009.html

>人事院の谷公士総裁は21日、中央省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」への組織移管について「内閣人事局の機能が分からないのに、人事院の何を移管せよと言うのか。この問題がある限り、交渉に応ずるすべがない」と拒否した。近く予定される甘利明行政改革担当相との折衝に関しては「求められればいつでも出向くが、解決の出口が見えない」と指摘した。都内で記者団に語った。

 これに先立ち谷氏は行革相に文書で「(組織移管なら)中央人事行政機関としての人事院は存続の余地がない。このような改革を国家公務員制度改革基本法は全く予定していない」と伝えた。

 行革相は内閣人事局の中核組織として人事院の企画立案部門の移管を求めているが、事務折衝では人事院の反発が強く、調整が難航している。

これは、現状でいう限り人事院が100%正しい。

なぜなら、人事院という政府から中立の第三者機関が存在している根拠は、公務員に労働基本権が認められず、団体交渉して、労働協約によって給与その他の勤務条件を決定する余地がまったく認められていないからです。

その代償として、使用者たる政府から独立した第三者機関として人事院が設置され、政府から独立して人事院勧告を出して、それを尊重して政府が給与等を決めるという仕組みになっているのです。

逆に言えば、公務員に労働協約締結権が認められれば、人事院などという組織が独立の機関として存在する根拠は消滅します。

多分公務員にスト権などということにはなり得ませんから、交渉が不調だと中央労働委員会に係属して、そこがむかしの3公社5現業みたいに仲裁裁定を出して、それで給与等が決まるということになるでしょう。

人事院勧告以外の残りの人事院の機能は、独立機関である必要はありませんから、内閣人事局という使用者たる政府の機関に移管して全然問題はありません。

そうなれば人事院の反発は100%根拠レスということになります。

労働基本権問題に未だ指一本触れてもいない状態で、「調整が難航」もくそもないのです。

そういう実に簡単明瞭な理路が、新聞記者にのみなさんにはよくおわかりになっていないのでしょうか。

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コメント

人事院は内閣の下に置かれていることをお忘れでは?

そういう超総論の知識だけ振り回しても意味がありません。公務員労働法制に関する簡単な解説書をお読みになった上で改めて書き込まれることを推奨します。

http://www.jinji.go.jp/jinjika/main.htm

>人事院は、内閣の所轄の下に置かれていますが、人事院に課せられた労働基本権の代償機能としての役割を的確に果たし、人事行政の中立性・公正性を確保するために、その権限の行使については、国家公務員の使用者たる政府から強い独立性が認められており、我が国の中央人事行政機関として公正な人事行政の運営に努めています。

ちなみに、経済財政諮問会議の民間議員は2006年に、労働基本権を付与するのに伴い人事院の廃止を提起しましたが、少なくとも八代尚宏氏は物事の筋道をわきまえられているということは確かです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1207/item4.pdf

>国際比較も勘案しつつ、警察、自衛隊等を除く国家公務員、地方公務員に対して労働基本権を付与する方向で真剣に検討すべきである。
それに伴い、人事院、人事委員会もその存廃を含めて検討し、民間と同様の労使協議制を導入することを検討してはどうか。併せて、公務員の身分保障をなくすとともに、公務員を雇用保険の対象とすべきである。

奴隷制主義者で基本的人権否定論者で、自分は「不当解雇された」などとでっち上げしまくるくせに、自分以外には解雇自由を主張する池田信夫という一知半解の御仁が、最高裁の労働基本権制約に対する代償措置論をわきまえないまま、おかしなことを書いているようで、そこから本エントリに飛んでくる人が急増しています。

来られた方は、せっかくですから、上のコメント先の八代尚宏氏のようなまともな人事院廃止論を身につけられた上でお帰りになることをお勧めします。実は、この点については私は八代氏と同意見で、労働協約締結権を付与して人事院を廃止するのが一番すっきりすると考えていますので。

なお、ついでながら、右の人気エントリでずっと一位をキープし続けている「池田信夫氏の3法則」も、飛んでこられた元のブログ主について何かの参考になるかもしれません。

公務員の労働基本権が制約され、争議権が全くなく、労働協約締結権もないことはそのとおりですが、まがりなりにも
国家公務員法上、警察官や自衛官などを除けば、団結権と団体交渉権は認められているのですから、本文中にあるような、

「公務員に労働基本権が認められず」、「団体交渉して、労働協約によって給与その他の勤務条件を決定する余地がまったく認められていない」

との記述は、一見すると団結権や団交権自体も存在しないかのようにも受け取れ、少々ミスリードのように思います。

【国家公務員法】
(交渉)
第108条の5 当局は、登録された職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉の申入れがあつた場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。
2 職員団体と当局との交渉は、団体協約を締結する権利を含まないものとする。

現実にも、当局と職員団体の団交は日常茶飯に行われていますし、労働協約の締結こそないものの、職員団体の団体交渉力は現状でも民間企業の労組の決してひけを取っているわけではないと思います。それは民間企業と比べた場合の、現在の公務員の給与水準や労働条件を見れば明らかかと思います。

このような現状をふまえれば、現在の人事院制度がもはや「代償措置」を超え、「過剰な保護」、「お手盛り」だという批判が生じるのは、必ずしも理由のないことではないと思います。

「団結権」が警察、消防、刑務所及び自衛隊を除き認められていることはその通りです。そこは正確ではありません。
ただ、「団体交渉権」があるという言い方は、法的には正しくありません。労働協約締結権のない「交渉」は、要するにお話し、お願いする権利であって、「団体交渉」とは言いません。それを「交渉」という紛らわしい用語を使った経緯などについては、公務員労働法制に関する諸書籍に詳しいところですが、なんにせよ、「現在の公務員の給与水準や労働条件」(法令で定めるもの)がその「交渉」の結果だというのは事実に反するでしょう。人事院勧告制度の趣旨を再読ください。
なお、いわゆる「ヤミ手当」などは、まさにこの「交渉」の結果なのでしょうが、それが法的正当性を有する団体交渉でないがゆえに、「ヤミ」なのです。
法的な労働協約締結権の付与は、こうした「ヤミ」を表の交渉に引き出し、その正当性を労働委員会の判断に委ねる効果を持ちます。

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