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2009年1月 8日 (木)

貧困撲滅

ダイヤモンドオンラインの辻広雅文氏が、久しぶりに貧困問題を取り上げています。おおむね首肯できる内容ですので、紹介しておきます。

http://diamond.jp/series/tsujihiro/10058/

ただ、最初にいささか苦言。労働問題の専門家ではないので仕方がないとはいえ、冒頭近く「政府与党、野党ともに動かざるを得なくなった。舛添・厚生労働相は「製造業への派遣を規制すべきだ」との考えを表明した。野党も民主党が中心となって、製造業派遣規制に共闘して踏み込もうとしている」と、あたかも製造業派遣の禁止が派遣労働者のための政策であるかのように誤認しているのは、やはり認識不足を指摘しておきます。

しかし、そのあとは貧困問題、非正規労働問題について、ほぼ的確な認識が続きます。

>もはや貧困は、見たくなくてもだれもの視野に入らざるを得ない。現に今、私たちは東京・日比谷でそのごく一部の人々を目の当たりにした。とすれば、自民党も民主党も、貧困撲滅を政権選挙のマニュフェストに重要項目として掲げるべきであろう。むろん、それは数値と具体策に裏打ちされたものでなければならない。

  ないものとしてきたものを撲滅するには、まず、その対象を“発見“しなければならない。それには、「貧困ライン」の設定が必要となる。所得で貧困層を定義するのである。参考になるのは、2006年にOECDが発表した、各国の貧困率である。OECDの貧困層の定義は、「全国民を可処分所得の高い順に並べたときに、中央に位置した人の可処分所得額の半分に満たない人の数」であり、日本のそれは15.31%であった。

具体的にどういう政策が必要になるのか、

>「貧困ラインを設定し、そこに貧困者たちを引き上げようとすれば、生活保護、健康保険、雇用保険、年金などの社会保障制度と税制を組み合わせ、整合性の取れた一体改革が必要となる」(西沢和彦・日本総合研究所主任研究員)のである。社会保障制度を担当するのは厚生労働省であり、税制を握っているのは財務省だから、この二大省庁の壁を乗り越えなければならない。

  一方で、上記の改革を成功させるには、低所得者層の正確な所得捕捉が大前提になる。それは極めて面倒かつコストのかかるシステム構築になる。そもそも、制度設計を変えて実質所得を引き上げるのだから、国の財政負担は重くなる。政府の扶助拡大によりかかる人が増えて、モラルハザードが起きるという心配も社会問題として小さくない。社会保障と税制に関わる実務は全国の市町村が行うのだから、国と地方の関係も調整しなければならない。

  つまり、貧困の撲滅は多くの組織、制度、さらには人々の内面にまで関わる極めて難しい総合改革なのである。だからこそ、政権を死守あるいは奪取を目論む自民、民主はともにマニフェストに組み込み、コミットメントする責任がある。

  景気刺激策によって経済を成長させ、貧困者の所得を向上させる――そうした抽象的かつ曖昧な施策ではなく、OECDの数値を使えば、貧困率15.3%を何年かかって何%まで減らすのか、そのためにいかなる税制、社会保障制度改革を行うのか、その財源はどれほど必要で、いかに確保するのか、マニフェストに記された具体策と数値を読み込むことで、有権者は、自民党と民主党の政党力の優劣を判断できるのである。

そして、もう一つ付け加えれば、そういう所得を向上させるというだけの単なる「貧困」対策ではまだまだ一週遅れなのであって、経済的資源だけではない社会のメインストリームへの「社会的統合」こそが、社会全体の政策課題として求められるのです。

この辻広氏の議論では、いまだアクティベーション以前の旧来の欧州モデルでしかありません。その先に、セーフティネットからトランポリンへという議論がなければ、「モラルハザードの心配」で話が終わってしまいます。

ヨーロッパで積み重ねられてきたそういう議論が、研究者の紹介としてはかなりの量に上りながら、政治家やマスコミの認識にはほとんど反映されていかないという悲劇的事態が我々を絶望に誘うわけですが。

実を言えば、昨年末に示された政府の雇用対策、生活対策の中には、まさにそういう観点から見て、びっくりするくらいよく考えられた(ように見える)政策がいくつかあります。しかし、本質をはずれたフレームアップのみに神経を集中する政治家やマスコミの関心は全く惹かなかったようです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-4f99.html(転換社債みたいな失業扶助?)

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