登録型派遣禁止案をどう考えるべきか
本ブログでは、製造業派遣禁止論を「ギョーカイ主義」と厳しく批判してきたところですが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-4434.html(厚労相、製造業派遣の禁止も)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-34a3.html(病膏肓に入ったギョーカイ主義のなれの果て)
共産・社民・国民新の野党3党が、登録型派遣の原則禁止を要求しているという記事があります。
http://www.asahi.com/politics/update/0110/TKY200901100002.html
>労働者派遣法の改正をめぐる調整が、与野党双方で本格化してきた。野党は共産、社民、国民新の3党が、限られた業種以外は登録型派遣を原則として禁止する案で一致し、民主党に歩み寄りを求めた。一方、自民、公明両党も実務者による協議を始めた。
共産、社民、国民新の3党は8日の協議で、派遣労働が原則自由化された99年の改正より前の時点まで派遣法を戻すという基本的立場を確認した。社民党の福島党首は9日の記者会見で、民主党の菅直人代表代行に「もう一歩(規制強化に)進むべきだ」と求めたことを明らかにした。
99年改正前は派遣が通訳など専門の26業務に限定されていた。民主党は04年に解禁された製造業派遣に関する規制に絞る方針だが、小沢代表は野党共闘を優先する立場を鮮明にしており、一致点を探る考えだ。
労働法感覚の欠如した政治ジャーナリストの目からは、民主党の製造業派遣禁止論よりもこの3党の登録型派遣禁止論の方が過激という風にしか見えないでしょうが、労働法感覚が少しでもある人にとっては、前者が理屈も何もないめちゃくちゃな議論であるのに対して、後者は(現実には大きな問題点があるものの)議論の筋そのものは少なくともめちゃくちゃではないということはおわかりでしょう。
その問題にいく前に、理屈としてもおかしいところを指摘しておくと、原則禁止の例外を「限られた業種以外は」というのがおかしい。そもそもの業務限定に何の問題意識も持っていないことが露呈しています。それは記者の「99年改正前は派遣が通訳など専門の26業務に限定されていた」という奇妙な解説にも現れています。冗談ではない。派遣の最大勢力は、「ファイリング」という名の専門職だということになっていたオフィスレディの一般事務であったことは誰でも知っていることではないですか。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-da89.html(竹内義信氏の『派遣前夜』)
その上で、登録型派遣禁止論について言うと、これはかつてのドイツモデルであり、1980年に当時の労働省が派遣事業を解禁しようとしたときに最初に提案したやり方ですね。
その意味では、論理的にはありうる選択肢ではあります。でも、今やそういうやり方はドイツでも捨てられました。ハルツ改革で登録型派遣を解禁し、その代わりに均等待遇を義務づけたのです。
ドイツに限らず、ヨーロッパでは派遣は労働市場への統合のための手段として有効であるとして、積極的に評価されるようになっています。そういう流れを少しでも理解した上で、こういう労働法問題に関わっていただくことを、特に政治家やマスコミの方々には期待したいところです。
« ヨーロッパの「雇用保護」の正しい理解 | トップページ | 与党側は派遣のマージン規制へ »
コメント