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« 貧困撲滅 | トップページ | 派遣労働者への雇用保険の適用について »

2009年1月 9日 (金)

では、何を基準に解雇するのか?

平家さんが文章を若干修正されましたので、先の議論に進みます。

http://takamasa.at.webry.info/200901/article_4.html

>いわゆる正社員の既得権益を否定したとすると、誰を解雇するのかという問題に直面することになります。

>「その人選の基準はなんなのか?」これに応えない限り実際に整理解雇はできませんし、その基準に従った整理解雇の効果も分かりません。正社員の雇用保障を弱めるというのは、ある答えを否定することであって、何らかの答えを出しているわけではないのです。

誰が「直面」するのでしょうか。誰が「答え」を出すのでしょうか。

実は、ここには、現在の労働問題を論ずる構えの問題点が凝縮しているように思われます。

「誰を解雇するのか」にまず誰よりも先に直面するのは、その会社の経営者と労働者です。そして、そうである以上、そこには先験的に一義的な答えなどあろうはずがなく、労使の協議交渉で決まるべきという手続き的な正義があるだけです。

今までも、主として正社員を組織する労働組合との協議交渉で決まるべきという労使関係システムの大原則があったはずです。それが空洞化する中で「誰を解雇するのか」という本来労使が決めるべきことを裁判官に委ねておかしいとも思わない発想が瀰漫していったのです。

今問題なのは、そういう手続き的正統性が、非正規労働者を排除する形で担保されるのかということでしょう。かつてのパート主婦やアルバイト学生が主体であった時代であれば、彼ら自身自分たちが先に解雇されることに疑いを持たなかったからそれで済んでいたわけですが、今やそうではない、とすれば、非正規労働者も含めた労働者全員の意見を組み込んだものでなければ、それはそもそも正統性を維持し得ないのではないか。

>例えば、勤続年数の短い者から解雇、雇い止めをするということであれば、正社員の既得権益はなくなったとしても、勤続年数の長いものに新たな既得権益を与えることになります。私には、「女房子どもの生活に責任を負って」いないものから解雇、雇い止めをするということに一定の合理性を感じてしまうのですが、この場合も新たな既得権益を創り出すことに変わりはありません。年金など生活の糧を得る別な手段のある者といった基準でも同じことです。「くじ引き」といった手法ではなく、何らかの基準を建てるのであれば、そこには必ず解雇されにくい労働者が出てきます。雇用保障には必ず差が出るのです。

その基準が何なのか、それにより、より強い雇用保障(という既得権)を得るのが誰なのかを明らかにしないと、議論は終わりません。

当たり前です。誰かを解雇しなければならないという状況になる前に、あらかじめ誰を解雇すべきかがすべて決まっていなければならないのでしょうか。決まっていないからこそ、労働者全員の声を出して議論しなければならないのです。正規も非正規も含めて。

労使関係とは動態的なものです。正規も非正規も含めて、誰に先に辞めてもらい、誰を残すのか、あらかじめ答えのない討議のプロセスを経ることが手続き的正統性なのであって、静態的に常にあらかじめ法制的に正しい答えを用意しておけばいいという話ではありません。それは、悪い意味における法律屋的発想です。

そういう悪しき法律屋的発想が瀰漫しすぎたことが、労働法をかえってひからびたものにしてしまっているように思われます。

これから誰を解雇するかというときに既に「議論が終わ」っていたのでは、そもそも議論になりません。

労使関係とは既に(誰かの教科書に書いてある)正解を個別事例に当てはめる司法行為ではなく、答えのない問いに集団的に答えを出そうとする政治的行為なのです。

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コメント

ここでの議論とはちょっとはずれるのですが、ぶらり庵の周辺の方々とお話しするときに、なんか、ヨーロッパに幻想をお持ちの方がけっこういるので(という気がするので)、ちょっとhamachanにおたずねを。
具体的には、ヨーロッパでは雇用が保護されているから、日本のような派遣切りや、正社員リストラはない、と思われている方がいるようなんですね。「内定切り」なんてないだろう、という方までいたので、さすがに、「欧米では新卒一括採用じゃないですから、「内定切り」ってないですよ。単に就職できないだけです。だからこれまでも欧米の若者は失業率が高かったんです」とご説明。
で、「解雇」については、「ヨーロッパで、労働者が解雇から守られているというのは、個人の事情にかかわる不当な解雇、つまり、日本で横行する不当配転(退職に追い込むための)とか妊娠解雇とか、違法解雇から労働者が守られている、という意味でして、逆に、ちょっとくらい勤務態度が悪かろうが、病休じゃんじゃん取ってようが、いったん正社員として雇うと、おいそれと解雇できない、という意味です。ですけど、経営状態が悪くなった、とかいうのは、合理的理由ですから、日本よりも大規模な雇用調整をしますよ、労使協議を経てだけど。で、景気の変動でしばしばそういうことがあるので、そういう雇用調整について国の支援策も発動されることがある。だから、今回も延長されたドイツの操短手当なんて昔からありますよ。で、「派遣切り」について言えば、ヨーロッパでも有期雇用の労働者はいますけど、雇用期間は契約ですから、日本のように途中で切ることはおそらくないでしょう。でも、期間終了時には当然ですが、契約終了ですからやめてもらうことになります。有期雇用の労働者を、日本のように、途中で切ったり、あるいは、何度も更新する、ってあちらでは「違法」ですから。」というような知ったような説明をするんですけど、こういう理解でよろしいんでしょうか。

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» では、何を基準に解雇者を人選するのを正当と認めるのか? [労働、社会問題]
古い話ですがですが、この前の記事を書いていて、「では、何を基準に解雇するのか?」にhamachanさんから、「こんなコメント」をいただいてていたことを思い出しました。 [続きを読む]

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