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2009年1月19日 (月)

朝日の良識的な社説 on 派遣労働

今朝の朝日の社説が派遣労働を取り上げていますが、内容的にはまさに私が昨年末から本ブログやあちこちで喋ってきた方向に向かっています。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2

>欧州の派遣労働―均等待遇で競争力を培う

 給与や休日で派遣労働者と正規社員とを差別的に扱ってはならない。そうした均等待遇を義務づける法律を加盟各国が作らなければならない。

 欧州連合(EU)は6年越しの議論を経て昨秋、こんな内容の指令を正式に決めた。日本の現実からすると、まさに別世界のような話だ。

 さすがに、派遣先の企業の企業年金に加入したり、持ち株会に参加したりすることまでは求めていない。だが、派遣労働者が正社員と同じような仕事をしていれば、各国は同じ待遇を保障すべきであると明確にうたっている。

 育児休暇や社員食堂の利用、社内教育なども対象だ。原則として派遣労働者が働き始めた初日から均等待遇にするが、各国が労使間で協議し猶予期間を定めてもよいことになった。

 推進役はドイツやオランダなどの大陸諸国だった。企業は株主だけではなく、労働者にも支えられている。そんな考えから、これらの国々はすでに派遣労働に均等待遇を導入しているが、今回の指令で英国や新加盟の中東欧諸国も、向こう3年以内に法制化しなければならなくなった。

 欧州での派遣労働は、90年代に英国やドイツなどで急増し、いまや300万人を超える。だが、待遇や権利などその内実は日本とは大違いだ。

 日本では派遣労働者の多くが正社員との賃金格差にさらされている。欧州でも経済危機で失業者が増えているが、日本のように派遣労働者にしわ寄せが集中することもない。

 そもそもフランスなどでは、派遣労働を産休や育児休暇などによる一時的な労働力不足を補う目的に限っている。ところが日本では事実上、企業の人件費減らしのために常用雇用を置き換える例が少なくない。

 失業に備えた安全網の違いも大きい。多くの欧州諸国は失業手当を派遣にまで広げている。さらに、次の仕事につくための職業訓練も充実させている。一方、日本はそうした措置を十分取らないまま、規制緩和に突き進んできた。

 職種別賃金が普及する欧州と、企業内交渉で賃金が決まる日本では事情が違い、安易には同列に論じられない。

 だが、見過ごせないのは、EUが均等待遇を進めている背景に、国際競争力を高めようという戦略があることだ。少子高齢化による労働力人口の減少に備え、派遣やパートなど多様な働き方を定着させて働き手を少しでも増やすとともに、一人ひとりの能力も向上させようというのだ。

 今、日本では、製造業分野の派遣労働を禁止すべきかどうかが大きな議論になっている。だが、長期的には均等待遇の実現こそがめざすべき方向だ。欧州の事情を頭に置きつつ、議論を深めたい。

私のまとまった論説は2月に出ますので、しばらくお待ちください。

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コメント

正規と非正規の均等待遇や非正規に対するセーフティーネットの充実には大賛成ですが、それだけでは不十分な気もします。雇用調整のしやすさに関する格差は残されたままなので、結局は不況期における企業のコスト調整のしわ寄せは交渉力の弱い非正規に集中するという問題は残されたままです。「もう契約は更新しません。」と言われればおしまいなので。

もともと短期の仕事に短期の契約で雇われた人がその短期の仕事が終われば契約も終了するのは当然のことで、洋の東西を問いません。
問題は、恒常的な仕事であるにも関わらず契約だけ短期にして、その更新を繰り返して事実上長期に雇っているにもかかわらず、雇い止めという形をとることによって事実上の「解雇」を解雇でない形にしていることをどう考えるかなのであって、これは主として有期労働契約の法政策の問題です。
また、そのような雇い止めを期間の定めのない契約の労働者の整理解雇法理において解雇回避努力と見なすような法理をどう考えるのかという問題ともつながります。
つまり、有期労働問題と解雇問題として論ずべきものであって、派遣だけの問題ではないし、それを派遣法をいじくって解決しようというのはかえって全体系をおかしくします。

この社説は、先日の?記事の「訂正記事」ではないか、という観測をする向きもありましたが、これに続いて、20日日経でも「経済教室」樋口先生の論説(「雇用 非正規の論点 上 均等待遇強化こそ本筋 派遣禁止で解決せず」)が出ましたね。

この朝日の社説は、派遣をめぐって、EUでどのような制度が整備されてきているのか、という事実の紹介が大半なので、そのこと自体はよいのですが、一方でこの社説を読んでいると、朝日の論説委員たちの無神経さを感じずにいられません。
ご存知だとは思うのですが、朝日新聞は商社などと同様に、法定年限前に雇い止めすることを前提とした専ら派遣の子会社を設立しており、常用雇用者と非常用雇用者との格差を再生産・固定化してきた当事者です。専ら派遣に関して、脇田滋氏がこのようなものは日本にしか見られないと発言しているのを見たことがあります。
欧州事情に詳しい濱口さんにお聞きしたいのですが、専ら派遣のような、特定の事業をアウトソースするのではなく、ただ単に特定の事業の人件費を削減するために、同一的に経済活動を行うことを前提に従属的な派遣事業社を設立するといった行為は、欧州なら違法行為とみなされないでしょうか?欧州では専ら派遣のような形態そのものがみられないので議論そのものがなかったりするのでしょうか?
最近の派遣憎しの大声の中ではすっかり見落とされていますがが、本当に叩かれるべき派遣の形態は専ら派遣だろうにと感じる今日この頃です。

いや、だから均等待遇ですから、「単に特定の事業の人件費を削減するために」は派遣は無意味です。もっぱら派遣を禁止した法制は見た記憶はなく、たぶんそんなのはないと思いますが、それは規制する必要もないからでは。

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