日本経団連2009年優先政策事項
日本経団連の2009年の政党の政策評価の尺度となる優先政策事項というのが公表されています。これにのっとればのっとるほどいい政党だと判断されるわけです。
その尺度が適切であれば、判断も適切になるでしょうが、尺度が歪んでいたら、判断も歪んでしまうでしょう。
どういう尺度になっているのか、「雇用のセーフティネットの強化と雇用・就労の多様化の促進」という項目についてみていきましょう。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/001kaisetsu.html
>雇用情勢が厳しさを増していることに照らし、雇用のセーフティネットを早急に強化するとともに、労働市場の需給調整機能強化を通じて、雇用の維持や新たな雇用機会の創出、円滑な労働移動を実現する。また、雇用・就労の多様化を促進し、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を図りつつ、若年者や女性、高齢者、障害者などの労働市場への参加を促進する。
この総論は全くその通りですが、まあ総論というのはそういうものでしょう。問題は各論。
>(1) 雇用のセーフティネットを早急に強化し、雇用保険制度の給付の拡充ならびに対象者の拡大、公共職業訓練の拡充等を実現する。
これは全くその通り、100点。ただし、今になって言うんじゃなくて、こういう事態になる前に言っておいてほしかったなあ、という気はしますね。ついでに一言、「公共職業訓練の拡充等を実現する」というのであれば、某政治家が雇用・能力開発機構を目の敵にして吠えまくっていたときに、一言「馬鹿者!」と一喝していただきたかったところですが。
>(2) 意欲のある求職者に対して適切かつ迅速に就労機会を提供すべく、労働市場の需給調整機能を強化する。このため、ハローワークの職業紹介事業に対する市場化テストの実施等を通じて官民の職業紹介事業の効率化を図る。
前半はその通り。ところが、なんで「市場化テストの実施」が「職業紹介事業の効率化」になるのかまったく意味不明。クリームだけ舐めたがって、求人開拓の実績劣悪な皆様にハローワークを明け渡すと、どういう理由で何が効率化するのか、是非伺いたいものです(それこそ、今集中砲火を浴びている派遣事業こそ、ハローワークには手が出せない分野で「労働市場の需給調整機能」をしっかり果たしているわけですが、そっちはスルーですか)。
>(3) 企業・職場の実態に即した柔軟な働き方の促進、雇用・就労形態の多様化、ワーク・ライフ・バランスの推進に向けて、仕事と生活の両立に向けた環境整備を図る。また、事務系労働者の働き方に対応する労働時間制度のあり方について検討を進める。労災保険については、最近の災害発生率の低下を反映し、その料率等を適正に見直すとともに、社会復帰促進等事業を制度の趣旨に沿うよう整理する。
だからあ、なんで未だに「事務系労働者の働き方に対応する労働時間制度のあり方について検討」とか寝言を言い続けるんですかあ?もうこの話は言い飽きたんですけど。カネを問題にすべきところで時間を持ち出し、時間を問題にすべきところでゼニカネを持ち出すという倒錯現象に未だ変化は見られないようです。
>(4) 全員参加型の労働市場を構築すべく、ジョブ・カード制度の普及促進など職業能力開発の基盤整備、高齢者雇用確保措置の着実な推進に向けた支援、トライアル雇用による企業の実態に即した障害者雇用促進などを推進する。
まあ、ということで、
最後に大きなのが控えていました。
>(5) 人口減少下においても中長期的に経済社会の活力を維持するため、外国人材の円滑な受け入れ・定住を図るための法制面・体制面(担当大臣の設置など)の整備を進める。
これから膨大な失業者が溢れるかもしれないとみんなおびえているさなかに「外国人材の円滑な受け入れ・定住」をあえて出しますかねえ。
一方で、数少ない雇用機会を日本人みんなで分かち合おうよ、ワークシェアリングをやろうよとか言ってるんですけど・・・。
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