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大学だけじゃない もうひとつのキャリア形成

2008mouhitotu この10月に出た本ですが、今こそ読まれるべき内容でありながら、版元が職業訓練教材研究会というマイナーなところなので、普通の本屋さんにはあんまりおいていないと思われるので、紹介しておきます。

http://www.uitec.ehdo.go.jp/~araigoro/2008/mouhitotu/mouhitotu.html

>日本にはさまざまな教育があります。でも、「私は、職業教育を受けた」という人はどれくらいいるでしょうか。職業教育とは「職業に必要な能力を習得するため」の教育です。職業がどのようなものであるか、職業に就くことが大切であるという職業意識を醸成する教育は、それはそれで重要ではありますが、職業能力を習得するための職業教育とは異質な教育です。
職業高校や高専でさえ、進学を目指した教育に内容が変質しています。子供が大人になるとき、必ず職業に就くことになります。職業に就いてこそ大人になったと言えるでしょう。でも現在、日本人のほとんどは、学校教育の中で職業能力を修得することなく、職業に就いているのです。

それはあたり前のことなのでしょうか。現在の日本の学校教育は、企業が採用した労働者に必要な能力を教育することを前提としたシステムです。すでにその仕組みは、一部のエリートに残されているだけで、一般の労働者に対しては崩壊しつつあります。では、どうすればいいのか。
本書で、世界標準の職業教育をかいまみてください。いままであたりまえと思っていた、大学への進学率を良い教育の指標としてきた学校教育が、ずいぶんいびつなものであることに気づくことになるでしょう。

本当は、職業教育と名乗っていない学校教育だって、やがて大人になって職業人になったときに、その仕事に(直接間接に)役立つからこそ行われているはずなんだけど。

その意味では、職業教育でない教育なんてごく一部でしかないはずなんだけど。

だけど、子どもたちも親たちも、先生たちも、そして文部科学省の官僚たちも(ゆとり脱藩官僚であるか反ゆとりビシバシ官僚であるかに関わらず)、そういう風には全然考えていない、というところが最大の問題なんだが。

はじめに
第1章 日本の若者の職業教育
 第1節 企業内教育訓練で学ぶ若者たち
  (1)企業の中の「学校」 (2) 企業の中の技能者養成の仕組み
  (3)企業内教育訓練の特色 (4) 養成生とのキャリア・処遇 (5)企業内教育訓練の課題・可能性

 第2節 公共職業訓練で学ぶ若者たち
  (1)公共職業訓練の状況 (2)東京都の職業訓練受講者の構成と職業訓練への好感度
  (3)職業能力開発短期大学校修了者の意識 (4)山形県立職業能力開発専門校の受講者
  (5)日本版デュアルシステムの受講者 (6)職業訓練修了者の活躍
  (7)職業訓練の意味と教育への誤解

 第3節 専門学校で学ぶ若者たち
  (1)専門学校への進学 -すきな道を選択するということ
  (2)専門学校の生活   -プロになるための教育とは
  (3)自分を解放する喜び -ものづくりの教育の魅力
  (4)モノづくりの現場へ

 第4節 安田工業の熟練工養成
  (1)経営理念と事業戦略 (2)能力主義志向の弊害排除
  (3)組作業組織における陶冶と訓育 (4)おわりに

第2章 先進諸国の若者の職業教育
 第1節 アメリカの若者と現代の徒弟制度
  (1)アメリカの大学生の学業と就職 (2)四年制大学へ進まない、もうひとつの道
  (3)徒弟制度に関わる法律 (4)建設業の徒弟制度-その1
  (5)建設業の徒弟制度-その2 (6)建設業の徒弟制度-その3
  (7)建設業の徒弟制度-その4 (8)アメリカ徒弟制度の問題点
  (9)おわりに

 第2節 イギリスの若者と新たなかたちの「徒弟制度」
  (1)新たなかたちでの「徒弟制度」とその背景 (2)「徒弟制度」での学習内容
  (3)「徒弟制度」の実際-ブリティッシュ・ガスの事例
  (4)徒弟制度型教育訓練機会の政策的な推進と拡がり
  (5)「徒弟制度」の課題

 第3節 フランスの若者と職業教育・訓練
  (1)職業資格と密接な技術・職業教育 (2)多様なコースや専攻を提供する職業高校と技術高校
  (3)カリキュラム編成と技術・職業教育の特色 (4)交互制訓練の展開

 第4節 ドイツの若者の職業的自立
 Ⅰ.デュアルシステム
  (1)義務教育年限終了後の若者たちの進路 (2)デュアルシステムでの訓練
  (3)デュアルシステムと就職 (4)デュアルシステムの課題
 Ⅱ.デュアルシステムに乗ることのできなかった若者
  (1)不利益青年のこと (2)まず、相談と助言が行われる
  (3)職業訓練が始まる (4)生産学校と作業所

第3章 若者のキャリア形成に求められる社会的基盤
 第1節 社会経済システムと若者像
  (1)労務管理と非正規雇用の拡大 (2)若者の雇用状況
  (3)経済社会の現実と若者の求職活動 (4)職業能力を形成することの意味
  (5)雇用流動性と職業資格 (6)職業能力のミスマッチ論

 第2節 職業を忘れた日本の学校教育
  (1)学校給食の方法が意味すること (2)「学習」と「教育」 (3)「学校」の役割とはなにか
  (4)欧米の学習の目標 (5)職業教育の忌避 (6)おわりに

 第3節 雇用形態の多様化とキャリア形成
  (1)非正規雇用の増加状況 -派遣労働と請負労働
  (2)進路指導と自己実現論 (3)キャリア教育

 第4節 大学でのキャリア教育と揺れる大学生
  (1)大学キャリア教育の隆盛 (2)大学でのキャリア教育
  (3)就職に揺れる学生 (4)大学のキャリア教育の問題点
  (5)大学でのキャリア教育の課題

 第5節 熟練形成の社会的基盤
  (1)ゆとり教育が失敗したと誰がきめるのか
  (2)世界史未履修問題が示すもの (3)JABEEが示すもの
  (4)医師の臨床研修が義務化されたとはどういうことか
  (5)日本の教育制度・資格制度の問題点のまとめ
  (6)イギリスの資格制度 (7)アメリカの徒弟制度 (8)フランスの資格制度
  (9)資格制度の基本機能 (10)熟練形成の社会的基盤

(参考)

教育基本法その他

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_833b.html(教育基本法改正案における「職業」)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_d5cf.html(教育基本法案)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/7_6a5a.html(教育基本法第7条の経緯)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_345e.html(教育学者の反省)

職業レリバンス

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_c7cd.html(哲学・文学の職業レリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_bf04.html(職業レリバンス再論)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_722a.html(なおも職業レリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_c586.html(専門高校のレリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_8cb0.html(大学教育の職業レリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_5804.html(労働法の職業レリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/vs_3880.html(爆問学問 本田由紀 vs 太田光)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-2bf9.html(学費 払えない)

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コメント

すみません、hamachan先生にお教えいただきたいのですが、我が社では「キャリアデザイン」なるものについて、各社員が取り組むように求められています。これがネットとかを調べてもいまいちピンとこないんです。
なんとなく終身雇用を否定したところにキャリアデザインの行き着く先があるだけのような感覚がするのですが、キャリアデザインなるものについて、このエントリでのキャリアつながりでhamachan先生から何か勉強になるヒントみたいなものを頂けましたら幸いです。

投稿: NSR初心者 | 2008年12月31日 (水) 10時12分

参考になるかどうかわかりませんが、川喜多喬先生がキャリアデザイン学会の第2回研究会でこういうことをお話になるようです。例によって斜め後ろから3ひねりくらいしていますが・・・

http://www.career-design.org/content/view/110/1/

私がキャリアデザインという言葉を使い始めたのは、スーパーもシャインもクランボルツも・・・その他、キャリア研究をほとんど読まないで、であった(今でもあまり読まない)。政府のキャリア支援政策もほとんど興味を持たないころであった(今でもあまり興味はない)。自分の中小企業・中堅企業の人材育成研究の中でひっかかっていた疑問と、(事実上、私の失望に終わった)法政大学の新学部設立、就職指導改革を手伝う中での思いつきの中であった。職務経歴と言うよりキャリア、キャリアプラニングと言うよりデザインという言葉を使うと、見えてくる(ように思えた)ものは多々あった。就職指導、キャリア教育という言葉を使うより、キャリア学習という考え方の方がよく見えると考えるようになってから、あらためて人的資源管理論の研究・実務の流れと親しい「学習組織」の発想・議論が重要なことのように思えてきた・・・そういう雑談をいたします。初老になってからの私個人の数々の失敗の反省を会員の皆様にお聞かせするのは、恥ずかしいのですが・・・
(参考文献)拙著(共著)『人材育成キーワード99』(泉文堂)、同『キャリア支援と人材開発』(経営書院)上西充子編著『大学のキャリア支援』(経営書院)、編著『優れた人材のキャリア形成とその支援』(ナカニシヤ出版)など、愚著のどれかを事前にお読みくださると幸いです。

投稿: hamachan | 2008年12月31日 (水) 10時49分

さっそくのお返事ありがとうございます。

地方人ゆえ参加困難なので、どれか本を読んでみます、が。。。

キャリアデザインって、ひょっとして「職業教育」、うーん、職業「学習」?をかっこよく言い換えただけ?
教育と学習は表裏一体ですが、「学習」面だけを強調されると、なんだか「お前ら頑張れよ!」と放任されているような気が。
そういえば「生涯学習」ってあったなぁ、、、

投稿: NSR初心者 | 2008年12月31日 (水) 11時18分

あほかと笑ってくださいね、「キャリアデザイン」=「職業経歴の形成」でいいかな?

どんどん転職しろって言われているみたい(笑)人員削減にはもってこい(痴呆甲無員ですんで・・・)

投稿: NSR初心者 | 2008年12月31日 (水) 11時29分

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