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テレビ東京・ワールドビジネスサテライト

今夜11時に放送される予定のテレビ東京・ワールドビジネスサテライトのトップニュース「世界に広がる若者の雇用危機」にちょびっと顔を出す予定です。

http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/

だいたい下にあるようなことを1時間以上喋ったのですが、どうしてもテレビ局側は現在目前の危機に対してどう対応するかを聴きたがるし、こっちはそもそも日本と欧州の雇用システムの違いから説き起こして、中長期的観点からの若者雇用対策、社会政策の在り方を語りたいわけで、相当にすれ違った感じではあります。

正直言えば、短期的な雇用創出策は、まさにマクロ経済的な財政政策の話なので、それは当然必要でしょうとはいえても、私が語らなければならない話ではない。

取材対応メモ:

・まず、日本と欧州の基本的な違いを認識する必要。欧州は1970年代の石油危機以来、一貫して若者が雇用失業問題の中心。日本は長らく中高年が雇用失業問題の中心で、若者の雇用・失業が問題になったのは90年代後半以降。

・その理由:日本には新卒定期採用システムがあり(あった)、「学校から仕事へ」の移行がスムーズであった。欧州にはそのようなシステムはなく、学校卒業後自力で就職しなければならず、技能の劣る若者は失業しがちであった。

・例外はデュアルシステム(学校=徒弟制)のあるドイツとオーストリアで、両国は若者の失業率が低い。

・もう一つの大きな違い:日本の福祉国家は医療と年金に集中しているが、欧州は一般の所得保障が手厚く、就職できない若者もセーフティネットとして失業手当や福祉給付を受けられる。これは一面メリットではあるが、逆に一旦それに安住すると、なかなかそこから抜け出せなくなるというデメリットもある(「失業の罠」「福祉の罠」)。

・そのため、欧州は1990年代以来、「福祉から雇用へ」とか「アクティベーション」と称して、失業手当や福祉で生活している者に職業訓練等を行って、働かせるようにしようという政策をとってきている。

・日本では、1990年代半ば以降の不況で、学校を卒業しても正社員として就職できない若者が大量に生じた(就職氷河期)。しかし、就職できなかった若者が頼れる公的給付はない(雇用保険は制度上出ない。生活保護は事実上出ない)。そのため、彼らは「フリーター」という名の非正規労働者として就労した。

・日本の非正規労働者はかつては主婦パートとアルバイト学生が主で、低賃金でも問題がなかったし、社会保険に加入する必要もなかった。その枠組みに、本来正社員として就職すべきであった若者が入り込んだため、いくつもの矛盾が生じた。

・先日、OECDのアクティベーション調査団が来たが、欧州にとっては働かない若者をいかに働かせるかが問題であるのに対し、日本は働いているけれどもその働き方が問題である、と説明した。この違いを理解せずに、単純に日欧比較するのは危ない。

・例えば、欧州でも若者の非正規労働が問題になっているが、これは、低技能の若者をいきなり常用雇用できないので、パートや派遣による就労を促進したからである。しかし、低賃金で先の見通しがない仕事なので、じきに辞めて失業や福祉の世界に舞い戻ってしまうことも多い。これを「低賃金の罠」という。

・日本の非正規就労の若者には、舞い戻るべき福祉の世界がない。低賃金で先の見通しのない仕事を転々とするしかない。そして、今回の不況のように本当に職が失われたときに、セーフティネットになるものがない。

・しかし、欧州の経験を踏まえれば、セーフティネットを完備すればいいわけではないということがわかるだろう。それだけでは「失業の罠」「福祉の罠」をもたらすだけである。現在非正規として働いているということを活かして、より高技能、高賃金の世界に移行させていくことが必要。

・欧州では、かつては派遣労働は厳格に制限されていたが、近年はむしろ「失業の罠」「福祉の罠」から脱却して適切な就労に移行するための「踏み石」として、労働政策上推進されている。企業はリスクを負わない一種の「試用期間」として利用し、よければ正規採用に至る。こうして、学校卒業時には失業ないし無業状態にあっても、数年のうちに就職する者も多い。

・日本では派遣労働が本来果たすべきこの役割をあまり果たしていない。そのことに対する問題意識もない。正規雇用の世界と非正規雇用の世界が隔絶されている。

・そのため、政府が日本版デュアルシステムやジョブカード制を導入して、既に非正規として就労している若者が、それとは別に企業で移行期間的な訓練的就労を行い、正規就労につなげようとしている。

・なお、欧州では日本と異なり移民問題が大きな社会問題であり、「怒れる若者」の相当部分は差別される移民の若者の問題である。こちらは本質的な難しさがある。こういう「前車の轍」は、あえて踏む必要はない。

(追記)

ちなみに、漏れ聞くところによりますと、この件、ある方にお願いしたところ、断られてしまい、しかも「濱口さんがいいわよ」という紹介状(?)まで付けられたということで、ふうむ、若者と仕事というテーマであればその方の方がふさわしいのではなどとも思いつつ、やっぱり現下の状況に鑑み「たらい回し」は好ましくないであろうと考えた次第でありました。

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