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2008年12月23日 (火)

規制改革会議第3次答申の正論

昨日、とりあえず「労働分野」だけ紹介した標記答申ですが、「労働分野」以外にも本ブログの関心事項に関わる論点についての指摘がなされていて、しかもおおむね的確な正しい方向で論じられています。

規制改革会議というとけしからんことばかり言うところと脊髄反射しないで、じっくりお読みください。以下、引用するのは具体的施策のところです。

まず、外国人労働者問題、

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/1222/item081222_12.pdf

>ア 在留資格「研修」の見直し【平成21 年通常国会に関係法案提出】
研修生に対し、非実務研修(いわゆる座学研修)に加え、実務研修を実施する場合、原則として、実務研修には労働基準法や最低賃金法等の労働関係法令を適用することとし、労働法上の保護が受けられるようにするため、
出入国管理及び難民認定法上の在留資格「研修」を見直し、実務研修への労働関係法令の適用が円滑に為されるようにすべきである

イ 研修生・技能実習生に対する保護措置の整備・拡充
(ア) 母国語による無料ホットラインの拡充
研修生・技能実習生が母国語で実情を率直に相談し、かつ必要な支援を受けることができるよう設置されたホットラインは、現在、中・尼・越の各言語とも平日に週1回、11 時~13 時、14 時~19 時の時間帯と、平成20 年度より、土曜日も13 時~19 時の時間帯で開設されている。しかしながら、研修や実習で時間的に制約されている研修生・技能実習生にとっては、実際に利用できる時間帯は限られていることからホットライン開設時間について、平成20 年度の利用状況を把握、分析した上で、研修生・技能実習生が相談しやすいと思われる時間帯まで拡充していくことを検討し、結論を得るべきである。【平成21年検討・結論】
加えて、上記
相談で得られた情報を関係機関に取り次ぎ、受入れ機関の不正行為の発見及び研修生・技能実習生に対する保護の実効性を高めるべきである。【平成21 年度以降継続実施】

(イ) 研修の開始時点における初期講習の整備
研修生全員に対し、入国後早期に、外国人研修・技能実習制度や
労働関係法令の説明や受入れ機関の不正行為に遭遇した場合の対処方法等、研修生の法的保護に必要な情報の理解を目的とした初期講習を実施する体制の整備を進めるべきである。【平成21 年以降関係法令の施行まで逐次実施】
その上で、当該講習の実施を徹底するため、第1 次受入れ機関が実施する集合研修において、研修生の母語に配慮しつつ、専門的知識を有する外部講師等による講義を実施することを義務付けるべきである。【関係法令の施行までに措置】

雇用・就労分野は、前半は理美容士、保育士といったさむらい業の資格制度の問題ですが、その後で生活保護制度に触れています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/1222/item081222_06.pdf

>ア 稼働可能世帯の就労促進や保護脱却に資する仕組みづくり
勤労に対するインセンティブ不足や、生活保護からの脱却以降の諸費用負担に伴う所得の一時的減少などが、生活保護からの脱却に向けて就労する意欲を阻害しているとの指摘もあり、より積極的に自立を促進する仕組みとなるよう制度を見直すことが必要である。
また、保護の世代間連鎖を断つために、就労するモデルが身近にあることに加えて、教育の充実が重要であるため、
自助努力により大学等への進学を促進する施策の充実が望まれる。
以上を踏まえ、勤労意欲を高め保護脱却を促進する具体的仕組み及び保護の世代間連鎖を断つ仕組みについて、実証的な検証を行い、勤労控除等について効果的な仕組みを設計すべきである。【平成21 年度検討】

アクティベーションについては、OECDの方々に説明したように、ヨーロッパと状況がかなり異なる面があるのですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/oecd-dd50.html(OECDアクティベーション政策レビュー)

2006年以来自立支援事業が開始され、まさにヨーロッパ型の「メイク・ワーク・ペイ」(働くことが引き合うようにすること)という問題意識が重要になってきています。

官業カイカク分野では、例によって雇用・能力開発機構が取り上げられていますが、この状況下「ぶっ壊せ」ではなくて、もっとがんばれというものです。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/1222/item081222_22.pdf

>(ア)「ポリテクセンター等」の見直しについて
機構は、「ポリテクセンター」、「職業能力開発大学校」、「職業能力開発短期大学校」(以下「ポリテクセンター等」という)において職業訓練業務を担っており、
我が国の産業を活性化させるための人材を数多く輩出させることが期待されている。
しかし、「ポリテクセンター等」で実施している職業訓練は、必ずしも企業ニーズにマッチしたものになっていない、といった指摘や、グローバル化の進展や技術の急激な進歩等に伴い、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化し、企業が必要とする人材に求められる能力も多様化・高度化している現状にある中、「ポリテクセンター等」で実施している職業訓練は、そうした環境変化に対応できていない、といった指摘もある。「ポリテクセンター等」で職業訓練を受けた者が企業等の就職先で有用な人材として認められてはじめて職業訓練の意義があるのであり、そのためには
「ポリテクセンター等」では企業等のニーズを踏まえた職業訓練を行うことが求められる。また、機構の運営原資は企業等の支払う雇用保険料で賄われていることからも、機構は企業等のニーズを踏まえた運営を行うことが求められる。
したがって、当会議としては、「ポリテクセンター等」について、
企業等の声をストレートに反映できるガバナンスの仕組みを導入することにより、「ポリテクセンター等」で実施している職業訓練を企業ニーズにマッチさせ、我が国の産業活性化に資するものとすべきと考える。

これはもっともな指摘だと思います。労働分野でも「公共職業訓練の充実」を慫慂しており、しかも一部の豊かな地方自治体を除けば、地方自治体の職業訓練行政がきわめて弱体化してきている中で、国が責任を持って行う職業訓練はますます重要です。

もうひとつ、最近話題の雇用促進住宅については、

>(イ)「雇用促進住宅」の見直しについて
雇用促進住宅については、当初の設置趣旨から大幅に歪曲されるとともに制度の趣旨から疑問のある運用も多々あり、「規制改革推進のための3か年計画(改定)」において、「雇用促進住宅については、早期の廃止が決定されていることから、これを着実かつ円滑に推進するため、機構は、民間事業者の知見・ノウハウを活用し住宅の売却方法について常に工夫を行いつつ、住宅の売却を着実に推進し、これを可能な限り前倒しできるよう取り組み、遅くとも平成33年度までにすべての処理を完了する。」とされたことも踏まえ、可能な限り前倒しで売却を行うべきである。

と、廃止という規定方針通りですが、私はこれも考え直していいのではないかと思っています。ただし、住宅だけの話ではなく、労働者の広域移動政策とともにその円滑化策としての雇用促進住宅の活用というのは、今後の政策としてあるのではないかと。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_97bd.html(雇用促進住宅の社会経済的文脈)

>もともと、雇用促進住宅は、移転就職を余儀なくされた炭鉱離職者向けの宿舎として始まり、その後高度成長期に労働力の広域移動政策が進められるとともに、それを住宅面から下支えするために建設されていったものです。その頃は、労働力流動化政策と一体となって、有意義な施策であったことは間違いないと思います。

ところが、70年代以降、地域政策の主軸はもっぱら就職口を地方に持ってくることとなり、地方で働き口がないから公的に広域移動を推進するという政策は消えてしまいました。これは、もちろん子供の数が減少し、なかなか親のいる地方を離れられなくなったといった社会事情も影響していますが、やはり政策思想として「国土の均衡ある発展」が中心となったことが大きいと思われます。大量の予算を、地方の働き口確保に持ってくることができたという政治状況もあったでしょう。こういう状況下では、雇用促進住宅というのは社会的に必要性が乏しいものとなり、そこに上記のような公務員が入居するというような事態も起こってきたのでしょう。

それが90年代に大きく激変し、地方に働き口がないにもかかわらず、公的な広域移動政策は為されないという状況が出現し、いわばその狭間を埋める形で、請負や派遣のビジネスが事実上の広域移動を民間主導でやるという事態が進みました。こういう請負派遣会社は、自分で民間アパートなどを確保し、宿舎としているのですが、その実態は必ずしも労働者住宅として適切とは言い難いものもあるようです。

このあたりについては、私はだいぶ前から政府として正々堂々と(もう地方での働き口はあんまり望みがないので)広域移動推進策にシフトしたらどうなのかと思い、そういうことを云ったりもしているんですが、未だに地域政策は生まれ育った地元で就職するという「地域雇用開発」でなければならないという思想が強くありすぎて、かえって適切なセーフティネットのないまま広域移動を黙認しているような状況になってしまっている気がします。

一連の特殊法人・独立行政法人叩きの一環として、雇用促進住宅も全部売却するということになり、それはもっとうまく活用できるんじゃないのかというようなことを口走ることすら唇が寒いような状況のようですが、実は経済社会の状況は、雇用促進住宅なんてものが要らなくなった70年代から90年代を経て大きく一回転し、再びこういう広域移動のセーフティネットが必要な時代になって来つつあるようにも思われます。

雇用促進住宅ネタは、例によって例の如き公務員叩きネタとして使うのがマスコミや政治家にとっては便利であることは確かでしょうが、もう少し深く突っ込むと、こういう地域政策の問題点を浮かび上がらせる面もあるのではないでしょうか。もちろん、その前に公務員に退去して貰う必要があるのは確かですが

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