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2008年12月25日 (木)

これからの雇用・労働政策の基軸?

本日、都内某所でお話ししたことの最後の部分。

この直前までは、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/kijiku.html(これまでの雇用・労働政策の基軸の変遷)

で述べたような、歴史を語ったのですが、さて、今後は?というところです。

>6 これからの雇用・労働政策の基軸?

 こういった個人志向・市場志向の時代は、2005年のいわゆる小泉郵政選挙で頂点に達した後、急速に転換しつつある。社会の雰囲気は構造改革や規制緩和への熱狂から格差社会の恐れによる規制強化に逆転した。例えば、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」は2007年に激しい批判のために失敗した。地域最低賃金は2007年に内閣の介入により大幅に引き上げられた。さらに、三者構成審議会における派遣労働の審議は更なる規制緩和から制限と規制の方向に転換し、2008年には短期派遣の原則禁止、常用派遣労働の促進、派遣労働者の適正処遇などと規定する派遣労働法の改正案が国会に提出されるに至った。

 この突然の「逆流」に直面して、規制改革会議の労働タスクフォースは「脱格差と活力ある労働市場へ」と題する喧嘩腰の文書を発表し、労働市場におけるほとんどすべての規制を激しく非難したが、ほとんど支持を得られず、政府部内で孤立化するに至った。一方、「労働ビッグバン」を掲げて経済財政諮問会議に設置された労働市場改革専門調査会は、ワーク・ライフ・バランスや非正規労働問題を取り上げるなど、時流に棹さす政策を提言しつつ、職務給や職種別労働市場の形成という目標を掲げている。

 ここに現れているように、今日の雇用・労働問題の中心に位置するのが、雇用を保障された正規労働者は拘束が多く、過重労働に悩む一方で、非正規労働者は雇用が不安定で賃金が極めて低いという点、いわゆる労働力の二極化である。これに対して、労働ビッグバンを掲げる経済学者と反主流的立場にある労働運動家が揃って同一労働同一賃金原則に基づく職務給への移行を処方箋として提示していることは興味深い。内部労働市場志向の制度を解体し、もっぱら外部労働市場志向の仕組みに作り替えることが、正規労働者と非正規労働者の格差を究極的になくすことになるという議論である。

 ここには、市場原理主義からの転換の先にいかなるシステムを構想するかという、哲学的な問題が顔を覗かせている。時代区分で言えば、70年代から90年代までの内部労働市場志向の時代に回帰すべきと考えるのか、その前の外部労働市場志向の時代の理想を追求すべきと考えるのか、という問題である。

 企業中心社会への反発が過度な市場志向をもたらす原因でもあったことを考えれば、また労働者の利害の個別化や、差別問題への感覚の鋭敏化といった社会の流れは逆転するどころかますます進行するであろうと考えられることからすれば、単純な内部労働市場志向政策が適切であるとは思われない。一方、職務給や職種別労働市場の形成といった半世紀前の理想がなぜ現実化しなかったのかという問題に正面から取り組むことなく、漫然と外部労働市場中心の社会を掲げてみても、実現への道筋が見えてくるわけではない。

 この問題と密接に関わるのが、集団的労使関係システムの在り方をどのような方向に展望するのか、という問題である。単なる組織率の低下にとどまらず、非正規労働者や管理職といったある意味で集団的利益代表システムをもっとも切実に必要としている労働者層が労働組合から事実上排除されている現状に対して、企業内における包括的な利益代表システムと企業を超えた利益代表システムの両面から真剣に検討していくことが求められよう。

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