詳説労働契約法
荒木尚志、菅野和夫、山川隆一の3先生の共著『詳説労働契約法』(弘文堂)を贈呈いただきました。いつも心にとめていただき、有り難うございます。
http://www.koubundou.co.jp/books/pages/35431.html
>2008年3月から施行されている労働契約法の制定の意義と経緯、条文の意味内容、今後の課題について、制定に関与した研究者が詳細に解説。
労働者個人と会社の雇用契約ルールを明確にすることを目指した新法を、労働法研究者を代表する3人の著者が充分に討議を重ね、理論的・実務的に詳論した、まさに「労働契約法」を知るために最適の書です。
この「制定に関与した」という一句には深い意味があります。次の目次をみただけでも、労働契約法研究会報告のあの豊富な内容が、審議会の議論の果てに、ああもやせ細ったものになりはててしまったことに対する著者たちの思いが伝わってくるような感じです。
第1章 労働契約法制定の意義と評価
I 労働契約法制定の背景
II 労働契約法の性格
III 裁判規範としての労働契約法――紛争解決機関にとっての意義
IV 行為規範としての労働契約法――企業労使にとっての実際的意義
第2章 労働契約法制定の構想と過程
I「労働契約法」制定の構想
II 労働契約法案の審議過程
第3章 労働契約法の内容
I 目的と基本概念
II 基本原則
III 労働契約の成立
IV 労働条件の変更
V 就業規則の最低基準効、法令/労働協約との関係
VI 労働契約の継続
VII 労働契約の終了
VIII 特例と適用除外
第4章 労働契約法の今後の課題
I 民法改正の動きと労働契約法
II 従業員代表法制と労働契約法
III 労働条件の変更と労働契約
IV 人事管理と労働契約
V 労働契約の終了
VI 有期労働契約
第2章の審議会における経緯の記述にも、
>労働条件の集団的設定における主役であるはずの労働組合側が、労働組合の対応を合理的判断の中核におくことに反対するというやや奇妙な構図となった。
といういささか苦い皮肉の効いた一文もありますが、おおむね淡々とした記述です。
やはり本書の特徴は、第4章の「今後の課題」が充実していることでしょう。特に、従業員代表法制と労働契約法の節は、審議会の議論の過程で全く後をとどめないまでに雲散霧消してしまったテーマであるだけに、
>就業規則の労働契約内容規律効については、従業員の多数を組織する労働組合との合意の法的意義付け、及びそのような労働組合のない企業における従業員の集団的意思の反映の仕方が、労働契約法における今後の大きな宿題として残されていると言えよう。
という研究会報告の立案に関わった著者らの思いがにじみ出る記述になっています。
その他の項目についても、さらりとした記述の裏に、審議会の議論のあれこれが想起されるところも多く、関係者にとっては単なるテキストブックを超えて読んで面白い本です。
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