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2008年12月23日 (火)

大竹先生も参戦

同じ日のほぼ同じ時刻に、同じネタで、同じタイトルで、しかしかなり異なる内容のエントリーを、労務屋さんと私がアップした「お前が言うか、お前が」事件に、大竹先生も参戦です。

http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2008/12/post-a191.html

>12月22日の日経の「領空侵犯」の矢野朝水氏の発言について、濱口先生と労務屋さんが異なる趣旨で批判している。

濱口先生は、趣旨はいいが、株主主権を提唱していた人がいうのはおかしいということだ。労務屋さんは、正社員と非正社員は違うのだ、と矢野氏の発言趣旨そのものに反対で、株主主権を言っていたのに、株価最大化と矛盾しているのでは、という趣旨だと思う。どっちにしても矢野氏の主張には、株主主権との間に大きなギャップがあるということだと思う。

ちょっと違うのです。

3月のエントリーで述べたように、

>これがどこぞのヘッジファンドの人の発言ならば、それで済ませていいのですが、そういうわけにはいかないのです。なぜなら、こういう株主至上主義を得々と説いているこの矢野朝水氏は、厚生省年金局長から厚生年金基金連合会(現在の企業年金連合会)に転じ、その専務理事を務めている人だからです。

そもそも企業年金のエージェントである矢野氏が株主主権を提唱すること自体が、企業年金のプリンシパルである企業従業員総体の利益と相反するのではないか、という認識がまず第一にあります。

もし、矢野氏がヘッジファンドの立場から株主主権を提唱していたのであれば、正規労働者であれ、非正規労働者であれ、労働者などというのは報酬と交換に労務を提供するだけの外部の取引相手に過ぎませんから、その一方のみを優遇することは不当なこととして非難に値するでしょう。

だとすると、

>非正規労働者の待遇を上げるには、正社員の取り分を減らして分配率を変えるしかないでしょう。

という発言はなんら矛盾するものではありません。ここは大竹先生の仰るとおりです。

しかし、企業年金のエージェントとして企業従業員総体の利益を代表すべき矢野氏は、そういう立場から、つまり正規の利益も非正規の利益も、株主の利益に対して同じように優遇すべきではないという立場からものを言っていいの?という疑問があります。

一つの考え方は、企業年金のプリンシパルは主として正規労働者であって、非正規労働者ではないのだから、あくまでも正規労働者の利益を高めるように発言すべきであって、非正規の待遇改善など言うべきではない、という考え方です。

正規労働者と非正規労働者をそもそも相交わることのない別個の社会的有り様だと考えれば、それが正当でしょう。

実際には、主婦パートや学生アルバイトが非正規の中心であった時代には、両者の利益が相交わることがない、というよりも、前者を優遇することがその妻や子どもである後者の利益にもなるという幸福な情況であったために、正規労働者の利益を高めるように発言しておけば良かったのでしょう。

ところが、就職氷河期以降、本来正規で就職するはずであった人々が非正規就労せざるを得なくなったため、これは中高年労働者と若年労働者の間の一種の世代間対立の側面も持つようになりました。そこをいささか単純化して、

>年功賃金制を一種の報酬後払い方式と見た場合の、その後払いとしての高い賃金を受け取っている中高年層の先輩が、その原資を一生懸命稼いでいる若い後輩の利益なんか無視しちゃいけないよ、なぞと偉そうなお説教を垂れるというのは、

と書いてしまったのは、問題をごっちゃにしている嫌いはあります。というか、まさに大竹先生の、

http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2008/12/post-03b1.html(非正規雇用の雇い止め問題)

に対して、年齢差別問題と非正規問題をごっちゃにしていると指摘した舌の根も乾かぬうちに、全く同じようなごっちゃまぜの議論を展開するというのは、お前が一番一貫していないではないかと批判されても仕方がないわけですが。

まあ、私の頭の中では、企業年金連合会というマクロな立場からは、企業年金制度総体の持続可能性という視点からも、本来正規労働者としてその対象になるべき若い人がそこからはずれていくのは望ましくないという判断があるであろうというのがあって、やや短絡的にああいう風に書いた面があります。つまり、本来企業年金のプリンシパルであるべき若年非正規労働者の利益を代表するような発言をすることは、おかしくはないだろうと言うことです。ここはいろんな考え方があるところだろうと思います。

ただ、いずれにしても、そもそもとして矢野氏の立場で株主主権を唱えること自体に私は違和感を感じているので、それが全体の書き方に影響しているのは確かです。

で、実は、ここで改めて、矢野氏がすでに企業年金連合会を去って、日本コープ共済生活協同組合連合会理事長に就任しているという事実に気がつきます。さて、生活協同組合のプリンシパルは誰なんでしょう。少なくとも、正規であれ、非正規であれ、労働者に限られる訳ではないことは確かです。しかしまた、いうまでもなく、株主主権の立場からものを言うことが許される立場ではないことも明らかなように思われます。

もしかしたら、今回の「領空侵犯」の記事は、生協連理事長という新たな立場からの発言だったと解するべきなのかもしれません。だとすると、元のエントリーはかなりとんちんかんであった可能性がありますね。

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コメント

 アメリカ発の金融危機が日本経済にも波及し、連日の非正規労働者の相次ぐ解雇、雇い止めの報道に際し、この雇用不安はいったいいつまで続くのだろうかと暗澹たる気持ちになります。
 なぜこのような事態になったのかといえば、原因は様々あるかと思いますが、グローバル経済化のネガティブな側面の猛威が一挙に襲いかかり、如何せん一国の政策で対処することが困難な構造になっているということだと理解するにしろ、結局は90年代からの政府の失政によって、このような危機に対して極めて脆弱な対応力しか持たない状況を生み出したのではないかと思われます。
 この間の財界、規制緩和論者が主導した労働の規制緩和策である派遣労働の原則自由化、製造業への派遣の解禁、有期労働契約の緩和などは、労働者保護を担保する措置を織り込まない形でおし進められ、非正規労働者の拡大に対処できない社会的セーフティネットの弱体化も、問題の深刻化に拍車をかけました。

 財界、規制緩和論者、それを庇護した政治を「主犯」であると指弾したとしても、圧倒的な勢力を誇った規制緩和論の前にあまりに無策であった労働行政、労働法制の規制緩和を追認、ないしは黙認し続けるだけの機関に成り果てた労働法学者達の責任もまた重大であると言わざるを得ないでしょう。そして、大企業正社員労働組合。今回の非正規社員の解雇問題に対し、正社員組合が本気で取り組んだという話は伝わってきません。いくら非正規の問題に取り組むと口先で言ってみたところで、雇用調整の実施という差し迫った状況となれば、現行の整理解雇法理から、先に「犠牲」となってくれる非正規労働者を救うインセンティブを正社員側が持たないのは、無理からぬことではあります。しかし、このような正規と非正規の労働者間「分断」は、労働組合の「団結」、「連帯」を弱体化・無意味化させ、正社員中心の労働組合はその存在意義を問われかねなくなるともいえます。正社員の既得権益に拘泥した代償として、非正規労働の規制緩和を許してきたことの帰結です。

 製造業派遣の解禁が今回の非正規の雇用危機を深刻化させたとの指摘もありますが、一定程度の雇用創出・失業回避となった面も否定できないと思います。また、派遣や有期契約労働は、建前上ではありますが、臨時的一時的な労働との位置づけであり、企業は不況になれば契約打ち切り、解雇、雇い止めを行うことはある程度予想はされていました。しかし、製造業派遣や有期期間工が、そのような潜在的な雇用調整リスクを負っている働き方だということが労働者側にはほとんど認識されていない、あるいは多少の認識はあったとしてもその働き方を選ばざるを得ないというのが実態であり、非常に問題であろうと思います。
 そして、企業が派遣労働者を雇用のバッファーとして多数活用することで、契約解除が派遣労働者にとって解雇に等しいものと認識しつつも、派遣契約の解除は「解雇」ではないことから、本来、解雇という従業員の生活基盤を奪う重大問題であるはずの行為に対する認識・感覚を希薄、あるいは麻痺させています。「人を大切にする経営」などという経営理念を標榜する日本の代表的企業が率先して、まるで商品在庫を抱え込むことを極度に恐れ、処分をするかのように非正規切りに躍起になっている。この間の大企業の政府に対する規制緩和などの政策要求、そして非正規を拡大させてきた企業自身の行動によるツケをまさに今、企業自身も払わされる結果となり、みずからの首を絞めるがごとく持続可能な企業活動を危機に追いやっています。

 今起きている非正規の雇用不安を中心とする雇用問題が、今後の経済政策、雇用政策にどの程度のインパクトを与えるかわかりません。しかし、この事態がひとつの象徴的な出来事となり、これを教訓とし、政策の転換点となる可能性は大いにあり得るでしょう。政治、行政、学者、労使など関係者は今般の事態に対する緊急対策を一致団結して行うべきことは言うまでもなく、諸問題を綿密に観察した上で問題点を整理・検証・総括し、事態が一段落した後の政策論議に生かさなければならないものと思います。労働法制でいえば、OECDが指摘するように、正規と非正規の間の雇用保障の格差は早急に是正されるべきものと考えます。その点で、これまで事実上手つかずであり、無秩序に濫用されている有期労働契約に対する規制を本格的に議論せざるを得ないと思われます。とくに、有期労働契約の雇い止め時の金銭賠償制度について検討すべきでしょう。

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» あらためて、おまえがいうかおまえが [吐息の日々〜労働日誌〜]
12月22日のエントリについて、大竹文雄先生からトラックバックをいただきました。ありがとうございます。興味深い指摘を頂戴しましたので、ここでもあらためてご紹介したいと思います。  12月22日の日経の「領空侵犯」の矢野朝水氏の発言について、濱口先生と労務屋さ... [続きを読む]

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