2009年版経営労働政策委員会報告
2009年版経営労働政策委員会報告が大きな記事になっていますが、残念ながら、日本経団連のHPでは、目次が載っているだけです。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/093.html
2009年版経営労働政策委員会報告
~労使一丸で難局を乗り越え、さらなる飛躍に挑戦を~
序文
概要
第1章 日本経済を取り巻く環境の変化と今後の見通し
1.国内外の経済動向
(1) 世界経済の動向
(2) 日本経済の動向
2.国内の雇用動向
第2章 今次労使交渉・協議における経営側のスタンスと労使関係の深化
1.企業を取り巻く危機的状況への対応にみる労使関係の深化
2.今次労使交渉・協議に向けた経営側の基本姿勢
(1) 雇用の安定を重視した交渉・協議
(2) 生産性を基軸とした人件費管理
(3) 課題解決型の労使交渉の重要性
第3章 公正で開かれた人事・賃金システムの実現
1.仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度の構築・運用
(1) 人材育成の視点を踏まえた制度設計・運用
(2) 評価制度の設計・運用の充実
2.広く開かれた雇用機会の提供
3.いきいきと働ける環境の整備
(1) 人材の育成
(2) 一体感の醸成、モチベーションの維持・向上
(3) メンタルヘルス対策の推進
第4章 わが国企業の活力・競争力を高める環境の整備
1.全員参加型社会構築に向けた基盤整備
(1) 若年者雇用問題への対応強化の重要性
(2) 就労マッチング機能の強化
(3) 外国人材の積極的な受入れ
2.自律的・多様な働き方を可能とする法制・インフラの整備
3.中小企業のさらなる生産性の向上
(1) 厳しさが増す中小企業の経営環境
(2) 生産性向上への取組みと政府に求められる政策支援
(3) 最低賃金制度の見直し
4.地域の活性化と道州制の導入による広域経済圏の形成
5.国民の将来不安解消の必要性
あとがき
これだけでは、何ともコメントのしようがありません。「冊子版の購入については、日本経団連事業サービスまでお願いいたします。」ということです。
ところが、労働組合のHPの方には、手回しよく、細かいところまでの反論が掲載されています。これで論評するのはフェアじゃないですが、とりあえず総論を見ますと、
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/kenkai/2008/20081216_1229417679.html
日本経団連「2009年版経営労働政策委員会報告」に対する連合見解と反論
1.総括
日本経団連は、2008年12 月16日に「経営労働政策委員会報告」(以下「報告」)を発表した。
今回の「報告」は、経営者団体としていかに日本経済を立て直し、産業社会を強化していくのかという課題に全く応えておらず、何のために社会に対して「経労委報告」を提起するのかと言わざるを得ない。
現下のマクロ経済の状況からすれば経営者団体として会員企業に対し、非正規を含むすべての労働者の雇用の安定を徹底させ、マクロの観点から積極的賃上げによる内需喚起を促すこと、そして、日本の将来設計、新しい産業構造のあり方について政府に対し、また、世の中に向けて発信していくことが重要であり、日本経団連は財界代表として主導力を発揮すべきである。
今次労使交渉でどこまで踏み込み、そしてどういった結果を引き出すのかが、今後の日本経済のカギを握る。にもかかわらず、「報告」は、雇用維持については「安定に努める」とだけ、賃上げについても「ベースアップは困難と判断する企業も多い」、定期昇給を含めた「賃金改定の重みを再認識する時期にある」と賃金抑制の姿勢を打ち出すなど「賃上げにも雇用安定にも応えようとしない」会社中心のミクロの論理に拘泥する経営姿勢がみてとれる。
今こそ日本の労使関係の真価が問われている。これまで日本経済の成長を支え、石油ショックや円高不況、貿易摩擦など、幾度かの危機を乗り越えることができたのは、従業員とその家族の生活を守り、人材の育成を処遇につなげ、信頼に裏打ちされた労使関係を築きあげてきた日本型雇用システムがあったからである。しかし、この間のなりふり構わぬ企業経営は、その良好な労使関係と労使の信頼関係を毀損させた。
経営者が真剣に「労使一丸となって難局を打開していく」というのであれば、これまでの「雇用のポートフォリオ」にもとづく行きすぎたコスト主義の経営姿勢について反省し、長期勤続雇用を旨とする日本型雇用システムに回帰させるとともに、労使の信頼関係を修復しなければならない。また、同時に、国民経済的見地を踏まえ、企業の短期的利益のみにこだわらず、物価上昇に見合うベアによって、労働者生活の維持・確保に努めなければならない。そして、歪んだ配分を是正し、内需主導型の持続的な経済成長の実現をめざし、責任を果たすべきである。
いまの日本の企業体質は、残念ながら「報告」のいう「社会の公器」とは程遠い現状にある。「希望の国」どころか、ミクロに埋没し、経営モラルを失った国に陥っている。企業を「社会の公器」として「社会の持続的な発展に尽力する」というのであれば、「わが社さえ生き残れば」ではなく、日本がいま直面している経済的・社会的な閉塞状況と正面から向き合い、社会的責任を含めた新しい意味での日本型コーポラティズムを再構築していく必要がある。
まさにマクロの総論としてはその通りで、「日本型コーポラティズムを再構築していく必要」など共感するところが大きいのですが、ミクロの各論として「雇用も賃上げも」というのがどの程度「現実に足のついたもの」か、「現実にどっぷりつかった」単組がどこまでついてこれるものかは、議論した方がいいと思われます。
新聞報道によると、
http://www.asahi.com/business/update/1216/TKY200812160421.html
>雇用について「極めて重要な課題」として「安定に努力する」と述べたものの、「安定が最優先」とした当初案からは後退した。
のだそうで、ここが経営側にとっても居心地の悪い弱みであることは間違いないわけで、喧嘩は相手の弱みを狙うべきであることを考えると、経済産業省の振り付けで「マクロの観点から積極的賃上げによる内需喚起」という相手のガードの堅いところを攻める戦略が適切であるかどうかは、再考慮の余地があるでしょう。一般的には賃上げによる内需喚起論は間違っていないと思いますが、ことここに及べば、内需拡大の責任はまずは政府に求めるべきものでしょうし。
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