ジョブ型正社員
JILPTの『ビジネス・レーバー・トレンド』1月号が出ました。
http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2009/01.htm
特集は「金融危機がもたらす影響と対応―悪化する経済・雇用情勢」と、まさに時宜に適したもので、冒頭に、こういう座談会があります。
座談会「金融危機下の経済・雇用状況とその対応」
<出席者>
草野忠義・連合総研理事長
水野和夫・三菱UFJ証券チーフエコノミスト
宮本光晴・専修大学経済学部教授
<司会>
浅尾裕・JILPT主席統括研究員
水野氏は、例によって、16世紀末以来の利子率革命が起こり云々というお話、宮本先生はサブプライムのモラルハザードの指摘、草野さんは、例の、シカゴ学派がアジェンデ暗殺に祝杯を挙げたという話と、なんだか噛み合っているのかいないのか?という感じで始まりますが、話が雇用対策にいくと徐々に噛み合ってきたような。
読んでいって、目を惹いたのが、宮本先生の次の発言です。
>日本の正規雇用は雇用保障が非常に強いことは間違いない。だから正規か非正規かと言うとき、職能と年功をミックスさせ、段階的に賃金が上昇していくという今までの正規の形態で全部抱え込んでしまうのは確かに難しい。だからよく言われるように、これからは多様な正規雇用を作れるかどうかと言うことだと思う。多様な正規雇用というときに行き着くところは、、一言で言えば、職務(ジョブ)を単位としたものになるのではないか。同一職務である限り、その職務の評価に応じて処遇される。ただし、これまでの雇用システムを転換し、一気にジョブのランクに応じて人を付けていくことは無理であるし、実体経済としての日本の強さもなくなってしまうかもしれない。そうすると、既存の職能を単位とした雇用とは区別して、ジョブを単位とした雇用の制度を企業側が作ることができるかどうかに係っているし、それを従業員が認めた上で、実施していくことが求められる。もしこうなると、これはワークシェアリングと同じだと思う。ワークシェアリングをやれば、現在の正社員の所得は減るわけですが、これまで職能の世界で正社員であった人がジョブとしての雇用になると、これまで享受していた地位は下がる場合があると思います。企業がこうした人事政策をとると同時に、組合がそれに対応できるかが重要です。その移行過程でかかってくるコストを政府が補填できるかどうか。こうした方向が一つあると思います。
これは、実にいろいろな論点が詰まっていて、議論し出すと大変ですね。イメージ的には、かつて日経連が示した「新時代の日本的経営」の「高度専門能力活用型グループ」をふくらませるとともに修正し、そんなに高度でもない専門能力で働く人々をジョブ型正社員として位置づけるという感じでしょうか。で、一方に(今よりもかなり小さくなった)キャリア組としての職能型正社員がいて、他方に(今よりもかなり小さくなった)ボランタリーな雇用柔軟型非正社員がいるという天下三分の計でしょうか。
従来型のパートやアルバイトは雇用柔軟型のままだが、家計維持的な非正社員はジョブ型正社員に移行し、一方いままでの職能型からジョブ型に移行した正社員には公的な社会手当で補填する、と。
単に批判したり叫んだりしているのとは違う、一つの現実を見据えた改革論として興味深いものがあります。「新時代の日本的経営」を書かれた小柳勝二郎氏のご意見を伺いたい気もします。
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