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2008年11月 5日 (水)

今、公正性をどう考えるか:組織内公正性論の視点から

経済産業研究所のHPに、守島基博先生のディスカッションペーパーが掲載されています。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/08j060.pdf

>現在多くの企業や組織で、資源分配の格差を低く保つことで、公正性を確保しようとする平等原則(準平等原則)から、組織や企業への貢献度に応じて資源を分配する(つまり、報酬を払う)衡平原則の考え方に大きく移行している。だが、実際は衡平原則による公正性の確保には多くの困難が伴う。そのため、衡平原則がもたらす不公平に対して、事後的にどう対応していくかに関する議論が盛んになってきた。
なかでも、企業場面においては、補完的に「過程の公正性」の考え方を活用し、資源分配を不衡平だと従業員や組織成員が認識する場合の救済を行う場合が多くなってきた。衡平原則によって分配結果の公正性を確立することが難しいことを前提として、分配を受ける人(労働者)が、分配決定過程に部分的に参加したり、事後的な紛争処理を行ったりすることで確立される公正性である。
本稿ではまず、準平等原則から衡平原則への移行の困難さを解説し、衡平原則の問題点を部分的に補完する、「過程の公正性」の考え方を解説する。さらに04 年と05 年に行われたアンケート調査を、企業業績データと組み合わせて分析し、過程の公正性施策が、労働者の納得感だけではなく、企業業績にも貢献する可能性があることを示す。特に労使協議のための常設機関や、働く人が苦情を申し立てる仕組みなど、企業レベルでの過程の公正性確保のための仕組みを導入することが、企業業績との関連ではで重要なことが示唆される

「衡平性原則による公正性の確保には多くの困難な意思決定が伴う」のはなぜかというと、

>1)誰を比較対象に選ぶのか、2)何を基準として個人の貢献を評価するのか、3)何を報酬と考えるのか、そして4)どこまでの不衡平を許容するのかである。特に最初の3点について合意がえられないと、衡平原則によって公正性を確保することはできない。また第4点目は、不平等が不衡平に変わる境界が雇用システム外の要素も含めて多くの要素に依存するために一義的に決定するのが難しい。だが、衡平原則はこれらの点について合意がえられないと、分配が公正であるかの判断ができないし、またこれらの点に関する合意の難しさにより、何が公正かについての混乱を招きかねない。

からです。

このうち、労働法政策との関係が深いのは、とりわけ「正規労働者―非正規労働者間での分配原則」でしょう。

>ところが、ここで注意しなくてはならないのは、現状では正規従業員と非正規従業員の間では、仕事自体の格差(雇用機会、単位あたり賃金の格差など)だけではなく、さらに学習機会の格差が目立っていることである。例えば、・・・・・・

正規従業員と非正規従業員間で、学習機会についての平等化は進んでいない。
もちろん、実際問題として、育成機会については、衡平原則の適用も合理性を欠くため、難しいと考えられる。衡平原則の前提は、なんらかの基準で同じ価値を提供しているのであれば、資源分配が同じでなくてはならないという基準である。その意味で、教育機会という長期的な人材価値に影響を与える資源の配分は、もともと短期的で臨時的な雇用を前提とする非正規従業員の場合は難しいだろう。長期雇用が前提となっている正規従業員の場合は、企業にとっての人材のもつ価値を長期的に評価できるが、短期雇用を前提とした非正規従業員の場合は、長期的な価値が同等であることを主張するのが難しいからである。
したがって、教育機会の衡平原則に基づいた分配は難しいと考えられる。
将来的に雇用機会に関して進展する平等と、学習や育成の機会に関するアクセスに関する不平等が公正性という観点からは問題になるかもしれない。正規になるキャリアを用意しておきながら、また正規になったら処遇は均衡しているとしても、そのための学習機会を制限しているからである。

このあたり、改正パート法第10条の教育訓練の努力義務をどう考えるかとつながってきます。

パート法とも関わって、2)の評価基準についても、

>さらに、今もうひとつの基準が導入されはじめている。職務価値である。これまでわが国では、一般的に賃金などの処遇に関する評価は人にかかわる基準によって決定され、仕事自体の価値を考えることは少なかった。多くの場合、勤続年数、年功、能力、学歴など、ヒト基準であった。だが、近年、ひとつには男女や正規労働者―非正規労働者間における公正性判断の目的で、またもうひとつには人件費管理の目的で、職務や役割などの基準を、賃金決定のために使用するケースが増えている。
このことが最も端的に表されているのが、前述の改正パート労働法における均衡処遇を目的とした職務内容の同等性であり、これは職務内容が同等であるという限定がついているが、同一労働同一価値賃金へのむけての第一歩である。純粋な同一価値労働同一賃金の原則は、職務内容が異なる場合でも、価値が同一または同等ならば、賃金に均衡を求めることになるのでより射程は広くなるが、改正パート労働法は、少なくとも職務のもつ価値を公正性判断の基準とした意味で新たな発展であった。

これがまさに、40年前の『能力主義管理』の巻末匿名座談会で侃々諤々やっていた問題点でもあるわけですね。

守島先生は、「企業レベルでの過程の公正性確保のための仕組み」を「労働側のボイスに関する新たな考え方だと捉えることもできる」、「ボイスを中核とした公正性確立の考えかた」と述べています。

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