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2008年11月 6日 (木)

竹内裕『日本の賃金』

ちくま新書から竹内裕さんの『日本の賃金-年功序列賃金と成果主義賃金のゆくえ』という本が出ています。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4480064575.html

2004年に成果主義に対する反撃が突発してから4年、高橋伸夫氏はおそらくいささか偽悪的に「日本型年功制」といっていたのだと思いますが、それを日本の賃金制度を歴史的に振り返りつつ、実は職能給が一番いいんだよという本が出てくるのは、まあそろそろそういう時期なんだろうな、というところでしょうか。

職能給といっても、年功的運用になってしまったものではなく、本来の職務遂行能力に基づくものに立ち返るべきだ、というあたりも、そもそも職能給のもとになったといわれる日経連の『能力主義管理』が今日思われているのよりも結構「職務」遂行能力に重きを置いたものであったということを考えると、原点回帰的な思想ですね。

90年代後半以降広まった「役割給」なるものの位置づけについても、111頁で、左側の「人基準」の中で「年功基準」から「職能基準」にシフトし、右側の「仕事基準」の中で「職務基準」から「役割基準」にシフトする絵は、わかりやすいですね。

ただ、実はこういう企業の人事面からまことに穏当に見える賃金論の盲点も一方にはあります。それは、よく似たタイトルの新書本、もう9年前に出た木下武男氏の『日本人の賃金』(平凡社新書)の論点でもあるのですが、そういう企業内部的にはまことに望ましい賃金制度のマクロ社会的帰結をどう考えるのかという問題です。木下氏の本は成果主義華やかなりし頃にむしろアンチ成果主義的職務給を唱道したものですが、その考え方は『世界』10月号の共同提言の中に流れています。

竹内氏の本でも、職務給のデメリットとしてチームプレーにマイナスとか人事異動が制約されるとかありますが、逆に言うと、職能給だから長時間労働になり転勤を余儀なくされるという言い方もできるわけで、ワークライフバランスというなら効率は落ちても職務給にせよという議論もあり得るわけです。さらに、膨大な非正規労働者の賃金制度をどうしていくのか、という問題意識を踏まえると、問題は二元連立方程式になってくるのですね。私は、就職後ある時期までは職能給的な枠組みが保障されることが望ましいと思っていますが、その先についてはなかなか難しかろうという気がします。というか、本当に「職務遂行能力」ってみんな上がっていってるの?それって、単にそういうポストに就いているからじゃなくって?というあたりも、突っ込むとなかなか悩ましい。

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