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2008年10月10日 (金)

山口二郎氏と竹中平蔵氏の対談

今日発売の『中央公論』で、山口二郎氏と竹中平蔵氏が「新自由主義か社会民主主義か」というタイトルで対談しています。

もし、ここ10年あまりの対立軸が、本当にそういう軸であったなら、なんとよかったことでしょうか。

そうでなかったことを今になって嘆いてみせる山口二郎氏が、そうではなかった最大の原因がなんであったかを、自らこう語っています。

>山口 90年代には竹中さんと同じ課題に仲間として取り組んだという意識が私にはある。すなわち、官僚支配と自民党の族議員政治こそが日本をおかしくしている悪の元凶であると。そこに竹中さんは経済学の立場から、私は政治学の立場から批判の矢を放ち、一定の世論形成に成功した。

竹中 そうですね。

そこまで分かっているのであれば、「医療費の削減だとか、国民生活に直接影響する施策がたくさん内包されていたのにそれらがまともに吟味されることなく通ってしまった」というような小泉政権下の事態をもたらした責任の一端は、そういう「政治学の立場からの批判の矢」にもあったのではないかとという自省があってもいいように思われます。

五十嵐さん、和田先生の本のエントリーでも述べたことですが、もしカイカクがもっぱら竹中氏らの(新古典派)「経済学の立場から」の議論だけであったとしたなら、ああいう国民全体を巻き込むような熱狂的な「カイカク正義」万歳の大渦にはならなかったでしょう。

まさに山口二郎氏のような「政治学の立場からの批判の矢」が、朝日新聞をはじめとするリベラルなマスコミをも巻き込んで多くの国民を、とにかく極悪非道の官僚を叩いて政治主導のカイカクをやっているんだから正しいに違いないという気分にもっていったのではないかと私は思うわけです。

ちなみに、この対談にはこういう注目すべき発言もあります。

>竹中 法律の問題もあるのですが、労働監督が現場で機能していないというのも大きいんですよね。ここがしっかりしていれば、サービス残業なんて許されないはずなのに。

山口 監督署が人手不足に陥っているという実態もあります。レフェリーが絶対的に足りない。

竹中 おっしゃるとおり。他方、地方農政局なんかには何もやらないでぶらぶらしているような人がごまんといるんです。例えばそこを削って仕事のあるところに回す。それが我々の言う改革ですよ。改革が不十分だからこんな状態になっている。山口先生がご指摘のファクトはすごく正しい。一緒に「改革を推進せよ」よいっていただけませんか(笑)。

あのう、笑ってる場合ではないんですけど。竹中大臣が在任しておられた5年間、経済財政諮問会議で、そういうご発言をいただいたという記憶は残念ながらないのですが、本当にそうお考えであったのであれば、是非小泉首相をはじめとする皆様の前でご発言いただきたかったところです。

とりわけ、労働基準法なんかいらない、労働基準監督署なんかいらない、労働行政なんかいらないと、政府の中枢ではっきり断言されたあの奥谷礼子氏の面前で、はっきりと「馬鹿なことを言うではない」と叱りつけていただきたかったところですね。

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