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物流業界の人が日雇い派遣を体験すると

物流業界のニュースなどを伝える「ロジラボ通信」で、副編集長の延嘉隆さんが日雇い派遣の問題についていろいろと書かれています。関根秀一郎氏とのかなり長めの対談もおもしろいのですが、

http://logi-labo.jp/sun2/vs.html

延さん自身が、物流現場に日雇い派遣労働者として潜入した体験記録が実におもしろいのです。

http://logi-labo.jp/sun2/post-161.html

>先日、東京ベイエリアにある某大手路線会社のターミナル拠点に、日雇い派遣労働者として潜入してきた。以下、数回に分けて、当日の様子をレポートしたい。

最後の7回目で、延さんはこういう感想を明らかにします。

>日雇い派遣現場への潜入は、多くのことを考える貴重な機会となった。そして、改めて、メディアや官僚、学識経験者が行っている「日雇い派遣禁止議論」に疑問を感じている。法制度議論である以上、致し方ない側面はあるものの、日雇い派遣労働の現場を経験することなく語られる「~べき論」に空虚ささえ感じる。

 日雇い派遣潜入の主旨に鑑みれば、率直に、派遣事業法自体の矛盾を感じる。その矛盾の最たる点は、派遣元事業主(派遣会社)だけに労働者の安全・衛生管理責任を負わせることである。こと物流業界に限って言えば、たとえ、派遣事業者が労働者の地位向上等に努めたとしても、労働者を受け入れる企業の意識が変わらなければ、法改正が行われたとしても、仏作って魂いれず、そんな気がしてならない。真に、労働者の地位向上を考えたとき、派遣事業法により、派遣先・派遣元という概念から脱することができず、元請責任を問われない企業が現存することに、苛立ちさえ覚える。

 一方で、休憩時間や作業時間に交わす日雇い派遣労働者との会話から、企業への常態雇用を求める声はなく、寧ろ、複数の現場に入ることを希望する現実があった。それが、様々な企業の現場を体験することで、自身のキャリアを模索しているのか、それとも、現実から逃げているのか、うかがい知るよしもない。ただ、一点だけ、言及するならば、「日雇い派遣」に限らず、「日雇い」の仕事(含む、直用のパート・アルバイト)を求める労働者の声は確実にあるという事実が存在することである。

 また、物流企業における一般論として、派遣労働者よりも直用のパート・アルバイトの作業効率が高いと言った声があるが、専用センターなどのルーティーン且つ専門性の高い現場ならまだしも、作業の汎用性が高い現場においては、必ずしも、そうではない一面があることは発見だった。端的に言えば、"現場慣れ"ゆえの"手抜きの効率化"である。そのことは、雇用形態を問わず、労働者の教育・訓練の重要性を赤裸々に示しているとも言える。

 ゆえに、物流現場で働く全ての労働者(日雇い派遣社員・パート・アルバイト)に対して、教育・訓練を行うことこそ、唯一、真に、現場で働く労働者の地位向上に寄与するものではないかと痛感する。

 そんななか、悪の権化のごとく評される日雇い派遣事業者のなかに、労働者の教育訓練に力を入れ、派遣先である物流企業にコンプライアンスの重要性を説く姿が見られ始めたのは、大手メディアが語らない、光明であると言える。お世辞にも、労働現場の意識が高いとは言えない物流業界において、派遣事業者に改革の一歩先を行かれていることを、多くの物流企業は猛省すべきである。

 しかしながら、極めて残念なことに、多くの物流企業には、労働者を集めるノウハウはない。何故ならば、物流現場への派遣が解禁されて以降、そのことをおざなりにしてきたからである。だとするならば、未だ、物流業界に多段階構造(多重構造)という致命的な構造的要因が残されてはいるものの、人を集めること、労働者を教育訓練すること、コンプライアンス遵守に努めることに尽力してきた派遣事業者の叡智を活かす形で、新しい、物流現場の労働の在り方を、派遣事業者ともに模索していくべきであろう。

 最後に、嘗て、業務改善のコンサルティング会社に所属した身として、労働者の心情を推し量ることもなく、「ABC分析」、あるいは、「行動分析」などを語っていた自身を恥ずかしく思う。そして、真に、物流企業の業務改善(現場改善)を行うとするならば、物流現場で働く社員の教育・訓練、人格形成は不可欠な要因であり、そのことを考慮せずに、机上の空論だけで"改善"を語っていたことを省みる機会となったことは、自身の視野を広げる意味でも、大いに意義深い経験となった。

 今後、秋の臨時国会において、日雇い派遣の原則禁止を柱とする派遣事業法の改正が行われるが、政治家、官僚、学識経験者、大手メディア...。関係する一人でも多くの人に、自ら日雇い派遣労働の現場に足を運び経験してもらいたい。事実を直視することからしか、本当の解決策は見いだせない。

たいへん真摯な姿勢だと思います。

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コメント

日雇い派遣、というか、自分で働く日を選べるような働き方についての要望はあると思うのですが、ただ、日だけ選べても、どこに派遣されるかわからず、派遣された先では、正社員よりも悪い条件で有無を言わせず、というような働き方でもいいと言う訳ではないと思います。あと、日雇いではなくて、ある程度の期間働けても、長時間、延々と単一の作業、そして、宿舎に寝泊りして、その費用も取られると、手取りはわずか、というような働き方も、他に選択肢があればそんな働き方はしたくないと思う人は多いのでは。
行政のするべきことは、そういう「非人間的」な働き方を禁止する、ということよりも、特定の日、特定の期間、働きたいという人でも、そこそこ納得できる働き方をできる条件を整備することではないかと思います。
ひどい日雇い、ひどい請負、の事業者の募集には、他の選択肢があるので(たとえば、自治体の福祉の現場などで、そこそこの収入とまともな労働時間の仕事がある、など)、そういう働かせ方では人が集まらない、というような、働くものにとっての逃げ道がなければ、法的な禁止だけでは、事業主が逃げ道を探すだけではないでしょうか。

投稿: ぶらり庵 | 2008年10月14日 (火) 21時50分

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