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2008年10月 1日 (水)

可哀想なはこの子でござい、親の因果が子に報い

労務屋さんが、日経新聞の耳塚さんのコラムについて書いておられます。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20080929

タイトル自体が「対話が難しい」なんですが、読んでますますその感を強めました。

耳塚氏はこういいます。

>人々の社会的成功と失敗の個人責任化が進む中で、高学歴高所得層は、ただでその地位を子供に世襲させようとしているのではない。将来を見据えて選択し、代価を払い、親子とも努力という代償をいとわない。合理的かつ正当な手段で学力・学歴獲得競争に勝負を挑む。

 彼らが主張するだろう主観的正当性にあらがい、その選択権を奪って、実質的な機会均等社会に転換させることは可能だろうか。この隘路から逃れ出る道はあるのか。我が身、我が子の行く末のみならず、私たちと子供たちが住むこの社会の行く末を見据えること。その想像力に期待するほかない。

これを、労務屋さんはこう理解します。

>耳塚氏は、「高学歴高所得層」が「代価を払い、親子とも努力という代償を」払って(他人より多く)「学力・学歴」を「獲得」しようとする「選択権を奪って、実質的な機会均等社会に転換させる」ことを主張します。

上の文章は、そういう単純な主張と読むべきなんでしょうか。「合理的かつ正当な手段」とはっきり書いていることからも分かるように、そして「この隘路から逃れ出る道はあるのか」と問うていることからも分かるように、そういう粗野な結果平等主義には正当性がないと認識しているが故に、しかしながらその正当性をそのまま是認してしまったら、実質的な機会均等が失われてしまうと、的確に認識しているが故に、この書き方になっているように、わたしには思われました。

少なくとも、耳塚氏は「思うに、耳塚氏は、いかなる子どもも、同じようにお金をかけて同じように教育すれば同じように伸びるはずだ(というか、そうあるべきである)、という根拠のない信念をお持ちなのではないでしょうか」というような粗野な発想はないのではないでしょうか。ただ、労務屋さんが言うような「経済的背景が厳しい子どもには、奨学金などの支援を充実させて、おカネもちの子どもに劣らぬ教育を受けられるようにすること」(それも近年縮小の動きもみられますが)によって、貧しい家庭の優秀な子どもがその才能を十全に発揮できるだけの教育を受けられるようになると言えるかに対して、必ずしも然りとは言えないと考えているのではないかと思われるのです。その点については、わたしもやはり同様に感じます。

労務屋さんが省略された耳塚氏の一節を、引用しておきます。

>教育意識は社会的分裂を映し出す鏡である。子供にどんな学歴を期待し、どういう学校で教育を受けさせるのか。親の教育戦略の分化が鋭さを増すほどに、社会的地位は次世代へと相続される度合いを強め、社会の分断化が進む。

親の意思決定により能力があるにもかかわらず勉強できなかった子供がその故に社会的に低い地位に甘んじざるを得ないことを、自己決定に基づく自己責任と呼べるか?という問題に、日本人はもう少しまじめに向かい合った方がいいように思われます。業績主義原理は、「可哀想なはこの子でござい、親の因果が子に報い」を肯定するのか、否定するのか、という哲学的問題でもあります。

子供の貧困がOECDやEUで社会政策の中心課題になっていることとも密接に関連する問題です。

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コメント

ご指摘ありがとうございました。行間を読み取れていなかったようです。実は、この読み方でいいのかまだ少し自信がないのではありますが。しかし、あの書き方だと、普通の人は私と同じように誤解する人が多いのではないかと思うのですが、そういう意味でもなかなか「対話が難しい」ようですね。

まあ、わたしの読み方も、自分の考え方に勝手に引きつけて読んでいる面があるのかもしれません。最近、EUの社会政策の関係で「子どもの貧困」関係のものを読んでたもので。
ただ、日経新聞に、そんな絶対結果平等主義の人が登場するというのも考えにくいですし・・・。
元々ごく短いコラムですから、なかなか意を尽くせないのもやむを得ない面もあるでしょうね。

お久しぶりです。子どもの貧困と親の貧困の連鎖について、最近、こんな資料を見ました。

EUの雇用OO総局、Social protection committeeが出した、"Child poverty and Well-being in the EU"です。

http://ec.europa.eu/employment_social/publications/2008/ke3008251_en.pdf

EUの文書ではこれが一番詳細ですね。

最近の本ブログでの議論との関係で言えば、「School performance of children」の項がおもしろいでしょう。親の因果が子に報いているのは洋の東西を問いません。

>The Commission progress report on Member States' "progress towards the Lisbon objectives in Education and training" explores some of the socio-economic factors that are likely to influence the performance of pupils at school. The performance of pupils is assessed on the basis of the OECD PISA survey indicators of literacy and achievement in mathematics. The reports draws the attention to a number of key factors that influence
the pupils performance.
The PISA 2003 data shows a strong and positive correlation between the parents' own educational attainment and the performance of the 15 year old pupils in mathematics,
reading and science. In particular, pupils whose mothers completed only primary or lower secondary education score 20 points44 lower in average than those whose mothers
completed upper secondary education. The educational background of fathers is also a significant factor in many countries. The impact of the parents' educational level varies to some degree across countries, depending on the equity of the educational system.
PISA results can also illustrate the impact that specific family structures can have on the performance of pupils. For instance, the 2000 and 2003 results show that children
growing in lone parents households perform relatively lower than children from other families. This is mostly true in BE, DK, IE, the NL and SE while in a number of countries their performance is not significantly different from pupils growing in other families.
The report also points at the impact of parent's occupational status. The average score difference between pupils whose parents are at the bottom and top of the occupational scale is around 100 points in the EU (which is approximately 20% of the average score).
Across the EU, average differences in scores in mathematics, reading and science range from 60 or less in FI and LV to 114 or more in PL, HU, BE and DE.
Finally, the report shows that pupils from a migrant background perform relatively lower than their peers who were born in the country. In countries where data is available, the disadvantage is greater for migrant children in BE and DE (respectively 90 and 99 points), and relatively lower for those in FR (58 pt), DK, NL, SE (around 65 pt) and AT (71 pt).

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