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2008年10月24日 (金)

職務給の研究

八代尚宏氏のグループと『世界』10月号の提言のグループが、外部労働市場中心の職務給システムを志向する点においてよく似ているのだ、ということは、本ブログで何回も繰り返してきているところですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_7b90.html(『世界』10月号)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-3645.html(労働市場改革専門調査会最後の議事録)

その職務給システムというのが戦後日本において高度成長期終了時まで労働世界でもっとも熱心に議論されたトピックであったということをご存じの方は、世代の交代とともにだんだんと少なくなっていきつつあるように思われます。

1955年に出された日経連の『職務給の研究』は、500頁にも及ぶ大冊で、歴史的考察、労使関係、諸外国の状況など学問的な分析から、具体的な職務給実施の手順に至るまでさまざまな領域にわたって検討を加えており、50年以上経った今現在読んでも、改めて考えさせられるところが実にたくさんあります。

そして、今日再びその職務給システムを唱道しようとするのであれば、なぜその日経連が14年後には『能力主義管理』に転換したのか、いかなる現実が職務給の実現を阻んだのか、というところをきちんと見据える必要があるでしょう。

歴史研究というのは一見現実の政策課題とは切り離された好事家の仕事のように見えるかもしれませんが、実は成果主義だ役割給だと表層的な目先の動きばかりを追っていたので判らない本質論が、過去の堆積物の中から浮かび上がってくることもあるのです。

政策研究に専念するのだから歴史研究はやらないなどというのは、社会科学の本質をわきまえない単細胞な発想だと、私は思っています。

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コメント

たいへん興味深い指摘で、素人ながら以前から気になっていました。
「まず自分で調べろ」と言われてしまいそうですが、あまりに誰も言わないことだったので、hamachan先生のお考えをもう少し聞かせて欲しいです。

能力と仕事の位置づけが流動的にならざるをえない
なかで、能力給もしくは職務給に偏ることは現実的では
ないことはみなが感じていることでしょう。

問題なのは、ある仕事をする上で誰がどういった機能を
担うことが効率的なのかということは業種や規模によって
まったく違ってきてしまい、一般論への集約が困難に
なってしまい、明確な指針を示すことができないことではないでしょうか。

産業別、規模別で労務政策は異ならざるを得ないし、
細分化した議論が求められているのではないでしょうか。

ただし、インパクトには欠けることになりますし、
分析に時間がかかってしまうため、記憶に残らない結果に
終わってしまいそうですが。

> 上の世代の経験も、結局愚者にとっては「他人の経験」でしかない、こうやって「自分の経験」になるまでそれを理解することはない

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