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2008年10月 2日 (木)

国境を越える政策実験・EU

9784130342629 明治学院大学の網谷龍介先生から、『政治空間の変容と政策革新 第2巻 国境を越える政策実験・EU』(東大出版会)を贈呈いただきました。ありがとうございます。

http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-034262-9.html

>本シリーズは,政治学の各分野を学融合し,新しい方向・アプローチを創成することによって,政治の世界の深部で一体何が起きているのかを探索することを目的とする.2003-2007年度にかけて実施してきた21世紀COEプログラム,「先進国における《政策システム》の創出」(東京大学大学院法学政治学研究科)の研究成果をまとめるもの

で、この第2巻は

>地域統合の先駆的事例として注目されるEUでは,ヨーロッパ,国家,地方の各レベルにわたり,政治が重層的に展開されている.加盟国とEUとの間で,また多様性と統一との間で,どのように調整が図られているのか.国境を越える政策実験の諸相を描き出す.

という趣旨でまとめられています。

網谷先生はこのうち、第2章の「「社会モデル」言説の定着とその制度的基盤――EUレベル専門家ネットワークの機能」を書かれています。

ここでは、90年代以来のEUの社会政策において「ヨーロッパ社会モデル」という言説が、どのように形成され、展開されていったかが、政治家レベル、EU官僚レベル、専門家・研究者レベルについて細かく分け入って分析されています。

わたくしにとっては、まさに政策の内容をずっとフォローしてきた分野について、政治学的な鋭利な分析のメスが入れられたという感じで、読みながら興奮を感じ続けること頻りでした。

基本的な問題意識は、ヨーロッパの政治情勢が左派優位になったり右派優位になったりしているにもかかわらず、社会政策については政策の継続性が強く見られるのはなぜかというもので、社会総局官僚の一定の連続性とともに、第三の道路線の中道左派系政策専門家たちが常設や特別の諮問機関や議長国主催の学術会議などにおいて、議論を一定の方向に誘導しているというのが網野先生の答えということになります。

私の感覚からすると、それは確かに強く存在しますが、そもそも社会政策分野でそういう一種の自律性が進展してきた背景には、とりわけ労働政策に関する労使自治が90年代に強調されたことがあるように思われます。

また、そもそもヨーロッパの右派が、イギリス保守党を別にすると、社会政策に対してシンパシーの強い温情主義保守派であることも重要でしょう。コミュニタリアン的な傾向の強い第3の道路線は、そういう保守派にとって受け入れやすいものであることは確かです。

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コメント

過分なご紹介をいただいて恐縮です.
現場を知らない一研究者が「外から」見た素朴な疑問として,権限も政治力もそう強くはない雇用社会総局が,なぜある種の政策トレンドセッターの役割を果たせるのか,ということがありました.その理由を,シンクタンク+広告代理店のような総局の役回りに求めてみたのが今回の論文です.
もちろんご指摘のように,労使や市民社会組織など,コミッション外の動向を絡めていないので,上記の要因は一つの理由ではあっても最大の要因ではないかもしれない,というのはその通りです.その点を含めた,より動的な分析は,次の課題とさせていただければ幸いです.

是非、そのあたりをつっこんでください。
個人的にも、社会的NGOといわれる集団のEU政治過程における役割の展開はとても興味を持っています。
政治学者にEU社会政策を取り上げていただけるのはとてもうれしいことです。

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