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2008年9月 4日 (木)

福祉政治

32127207 北海道大学の宮本太郎先生より、新著『福祉政治-日本の生活保障とデモクラシー』を御贈呈いただきました。ありがとうございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/bookhtml/comesoon/00008.html

内容は、

>福祉国家のあり方が問い直される中で,社会保障や福祉が政治的争点の中心にせりあがってきている。福祉政治は生活保障やデモクラシーのあり方をどう変えるのか。福祉政治分析の理論を整理し,併せて1960年代以降の日本を中心に福祉政治の展開を考察する。

はじめに
序 章 日本の福祉政治──なぜ問題か,どう論じるか
第1章 福祉レジームと雇用レジーム
第2章 福祉政治をどうとらえるか
第3章 一九六〇・七〇年代の福祉政治──雇用レジームと福祉レジームの形成と連携
第4章 一九八〇年代の福祉政治──福祉レジームの削減と雇用レジームの擁護
第5章 一九九〇年代後半以降の福祉政治──雇用レジームの解体と福祉レジームの再編
終 章 ライフ・ポリティクスの可能性──分断の政治を超えて
 あとがき

といった構成ですが、近年の比較政治経済学を要約した第1・2章から、日本の戦後政治史を福祉という資源の配分をめぐる様々なアクター間の競争・協力の絡み合いの歴史として読み解く第3章以降になると、ぐっと面白さが高まります(少なくともわたし的には)。

全体を貫く大きな柱は、

「仕切られた生活保障」に基づく雇用レジームが福祉レジームを代替することによって、福祉国家としてはアングロサクソン型の「小さな国家」でありながら、ジニ係数は欧州並みに低く、かつ就業率も北欧や英米並みに高いという社会であった日本が、

そういう雇用レジームを維持強化しつつ福祉レジームを削減する80年代の中曽根行革路線が、大企業労使連合の支持のもとで行われ、

90年代にはこの雇用レジームの解体が行われて、福祉レジームの再編が不可避となった

というストーリーです。

この歴史解釈は、大筋で的確だと思われます。重要なのは80年代改革の歴史的位置づけで、ある種の研究者は、単純素朴にレーガン・サッチャー路線と同列に考え、中曽根改革→橋本改革→小泉改革と一直線的につなげようとしがちなのですが、それは適切ではないということです。

宮本先生はあまり明確に語っておられませんが、90年代改革を引っ張ったコミュニケーション的言説が、(英米追随型のネオリベ言説とともに)この80年代改革に具現した日本型雇用レジームに対するいわゆる進歩派の反発感覚(私のいう「リベサヨ言説」)に根ざすものであったという点も、逸することはできないように思われます。

その他、細かいところでも、妙な政治的バイアスのない的確な認識がさりげない形で各所にちりばめられ、入門書のような風情でありながら、プロ仕様になっているという大変お値打ちな本です。

(ちなみに、拙著『労働法政策』では、この推移を60年代から石油ショックまでの「近代主義」、70年代後半から80年代の「企業主義」、そして90年代後半以降の「市場主義」という形で時代区分しています)

(追記)

「妙な政治的バイアスのない的確な認識」というだけではよくわからないかもしれないので、一つ挙げておきます。

世の単純素朴な方々は、石橋湛山や池田勇人は小日本主義のハト派だから庶民の味方、岸信介はA級戦犯のタカ派だから庶民の敵とか思いがちですが、宮本先生は日本における福祉国家のレジーム形成期における二つの流れを、こういう風に的確に描き出しています。

>一つは、経済企画庁流の議論とも呼応しつつ、さらに国家主義的なトーンを強めた岸信介らの福祉国家ナショナリズムである。そしてもう一つは、石橋湛山による生産主義的福祉論の系譜であり、これは後に経済成長それ自体で福祉を代替しようとした池田勇人に引き継がれる。

>福祉国家について石橋は、「我々はまず大いに生産を伸ばして、それによって福祉国家の建設を図りたい」と主張する。

>これに対して翌1957年2月に誕生した岸政権では、広範な国民を包摂する社会保障制度の実現そのものに力点が置かれる。

>石橋の生産主義的福祉国家論に対して、岸や野田の議論に共通するのは、ナショナリズムの帰結として打ち出される格差是正論であった。

この辺の政治的配置構造がわかっているかどうかがリトマス試験紙になります。

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