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« 福祉政治 | トップページ | 社会保障重視派こそが一番の成長重視派に決まってるだろう »

2008年9月 4日 (木)

経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会議事録

7月31日の標記調査会の議事録が公開されました。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/23/work-s.pdf

正規と非正規の壁についてのとりまとめの議論ですが、結構大胆な議論がされていて、注目に値します。

とりわけ、八代会長の

>(八代会長)有期雇用の契約については、契約期間に応じて、雇止めの場合には保障するというもの、正社員の金銭賠償に近づけていくというようなものが考えられる。有期労働者の採用にも応分のコストがかかるということである。

という発言は、まさに私が主張してきたことですし、

その他の委員の方々の発言もおっと思うようなのがたくさんあります。まずはこのリンク先をざっと読んでみてください。

(追記)

といいましたが、おそらく多くの方はリンク先をじっくりとはご覧にならないでしょうから、いくつかピックアップしておきます。

まずは八代会長の冒頭の問題意識:

>非正社員の規制緩和について、何が足らなかったのかということを考えたい。これはOECDの、例えばエンプロイメント・アウトルックなどでも、日本の場合は非正社員の規制緩和が先行する一方、それと補完的な仕組みが十分形成されていなかったことが1つの大きな問題ではないかという指摘もある。また、非正社員の規制緩和をしたときに、何かを併せて一緒にやれば、今のような批判は起こらなかったのではないかと思う。それは何なのかというようなことも是非考えていただきたい。

>最後のまとめとして、やはり高質の労働市場の形成に向けてどのように取り組むかということ。そのような労働市場の形成に向けて非正社員の問題をどのように考えていくのかということである。例えば、同一労働、同一賃金について、これについては正社員の働き方を非正社員に合わせるのか、という批判をよくされるが、そうではなくて、両方とも質の高い働き方にしていくにはどうしたら良いだろうかということで議論していきたく思う。

たいへんまっとうな問題意識だと思います。

大沢委員の発言:

>正社員というと年功賃金プラス雇用保障というふうに考えられるが、賃金形態については各企業で何か公正な賃金なのかを工夫して進めるべきであり、この部分について年功賃金がいいのだということはもう言えなくなっていると思う。そうであるならば、もう賃金は別にして、常用雇用化という中で、勿論、終身雇用と別の雇用保障の在り方がどういうものであるのかをもう少し詰める必要があるとは思うが、そのことによって雇用が安定する労働者がとても広がると考えた。

そのようになった場合、その中で次に雇用保険の在り方、社会保険の在り方というものについて、かなり広範な労働者を対象にセーフティーネットを敷くことが必要であると考える。また、有期雇用については禁止するなり、あるいはその中で安定的な雇用に移行するための技能訓練とか、やはりスキル形成ができないと有期から安定的な雇用にはいけないので、国がもう少しそこに関与して、若者の技能形成に真剣に取り組む、あるいは政労使の中で経営者もそこに参加して取り組むということが考えられる。

佐藤委員の発言:

>足りなかった点としては、正社員の働き方が変わっているにもかかわらず、正社員の雇用保障の考え方を多元化できなかったということが一番大きいのではないか。企業における人材活用や労働者の働き方の変化に、既存の枠組みの整備が追いつかなかったため、いわゆる非正規が想定していた以上に増えてきたということがあると思うので、正社員の方の雇用保障の在り方をもう少し多元化するということが一番大きいと思う。

樋口委員の発言:

>理論で言えば、例えば有期雇用の場合に雇用保障が薄いのであるならば、これは保証賃金仮説に基づけば、賃金が高くてしかるべきだということになるわけだが、そうなっていない。全部の側面から見て使い勝手が良いというようなことがあって、そこに均等の問題とか均衡の問題とか、例えば派遣であれば、その派遣先の責任を強化することにより、この視点から見ると使い勝手は良いけれども、この場合にはむしろ常用の方が良いですねとか、組み合わせみたいなものが出てくるべきかと思う。

山川委員の発言:

>もう一つは有期雇用。そもそも雇止めのルールは判例で割と明確だが、それをきちんと書くなど有期雇用の位置づけを明確化するということも論点としてあるのかなと思う。この場合、利用制限というか、有期雇用原則禁止については、私はそこまではできないと思っている。
もう一つは、トレーニングの話である。基金をつくるとか雇用保険の2事業を利用するというアイデアは良いのではないかと思っている。つまり人材ビジネス会社について、長期雇用の予想されない場合でもトレーニングを行うようなインセンティブを与える。それは経済学的にも多分説明が付くのではないかと思う。それによってセーフティーネットのためのコストを下げられる。人材ビジネスに対して、それが積極的に一般に通用するようなトレーニングを行うためのインセンティブを国として与えていくということは、非常に有効な取組ではないかと思う。

井口委員の発言:

>自立支援プログラムは、雇用保険と現行の生活保護の間に設ける新しい制度として明確に位置づけていくことが必要があると思う。自立支援に関しては、ついては、実は木村先生とも議論したのだが、まだ、住宅扶助を活用すべきかどうか問題について意見の一致をみていない。私が地元のハローワークの関係者に聞いてみたところ、いわゆるフリーターなどの人たちの就職支援に際し、自立を支援する観点からは必ず住宅問題が引っかかってくる。そこで、どういうふうに対応しているかというと、社宅など住宅を持っている企業にできるだけ雇ってもらうというやり方をしている例が多い。生活保護を申請することは勿論できず、また自分で家を借りるほどの高給でもないので、なかなか難しい対応を強いられている。
実はこの生活保護の改革については、自立支援プログラムの新設を前面に出した上で、先ほど八代先生も仰っていたが、当面、例えば半年契約とか1年契約の人たちについても必要な範囲で福利厚生を適用し、企業のもっているファシリティを使いながら、できるだけ自立を促進すべきであろう。

これに対する八代会長:

>住宅もおっしゃるとおり大事で、いわゆるネットカフェ難民については、あれも1つの住宅問題である。何かグループホームみたいなものをうまく使えないかなという感じもしている。

要するに、世間には八代氏を福井秀夫氏と同列の「ありとあらゆる労働規制ことごとく撤廃派」だと考えている向きもあるのですが(国会で、福井氏の書いた規制改革会議の意見書を八代氏にぶつけた議員もいました)、それは必ずしも正しいわけではないということです。少なくとも、この調査会のメンバーの大部分は、適切な規制強化と緩和の組み合わせ(リ・レギュレーション)を志向していることがわかります。

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コメント

当方も、八代は福井秀夫と同列の「ありとあらゆる労働規制ことごとく撤廃派」だと考えていたひとりなのですが……この記事ではある程度地球人の言葉をしゃべっているようですが、本心はいずこにありや。

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