労働経済白書と経済財政白書
五十嵐仁さんの「転成仁語」に、今年の労働経済白書について論評した文章(の前半)がアップされています。
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2008-09-23
>日本における非正規労働者はついに3分の1を越えた。働く貧困層が増えてきたことへの批判の高まりを受けて、政府は労働者に対する政策を転換しつつあることが『労働経済白書』から見えてきた。労働問題に詳しい五十嵐仁教授に読み解いてもらった。
>厚生労働省の労働政策を示す『労働経済白書』の08年版は、今までになく危機感に満ちた『白書』だと思います。これまでやってきた労働政策や雇用管理は間違いだったと認め、それを見直すべきだとする路線転換が明確に打ち出されているからです。
という評価なのですが、今年度版になって急に姿勢を改めたかのような認識だとすると、それはちょっと違うのではないでしょうか。
本ブログでも一昨年、昨年と労働経済白書について紹介してきましたが、いわゆる規制緩和・構造改革路線に対して、もちろん政治的な配慮は必要ですからむくつけな言い方ではありませんが、的確に問題点の指摘をしてきており、今年度版もその延長線上にあるだけで、なんら路線転換しているわけではありません。
実際、一昨年度版から今年度版に至るまで、執筆責任者は石水調査官であって、ものの考え方にぶれがあるわけでもありません。
まあ、政治状況が徐々に変化してくる中で、同じことを言うにもより率直に言えるようになると言うことはあるかもしれませんが、それは本質ではないでしょう。
むしろ、今年度版で大きく姿勢が転換したのは、内閣府の経済財政白書の方でしょう。
これは、奇しくも労働経済白書と全く同じ日に公表され、そのスタンスが対照的であったため、マスコミでも取り上げられたわけですが、注目すべきは、一昨年、昨年の経済財政白書が、それまでの竹中路線賛美白書から脱却して、きわめて的確な経済社会認識を示していたのに、今年の白書はなぜか以前の路線に逆戻りして、
日本人はもっとリスクをとれ!こらぁ!
と叱りつけるという、すばらしい白書になったわけです。そして、白書発表からわずか2ヶ月にして、経済財政白書の言うようにアメリカを見習ってリスクばっかり追求するとどうなるかというすばらしい実例を上演してくれることになったわけで、ここまで先を見通して執筆された内閣府の執筆者には頭が下がります。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_e4d4.html(労働経済白書)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_2cb9.html(経済財政白書)
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