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2008年9月28日 (日)

過剰就業(オーバー・エンプロイメント)―非自発的な働きすぎ

経済産業研究所のHPに、山口一男氏の「過剰就業(オーバー・エンプロイメント)―非自発的な働きすぎの構造、要因と対策」という論文が載っています。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/08j051.pdf

>本稿はオーバー・エンプロイメント(過剰就業)とアンダー・エンプロイメントの双方を含む就業時間のミスマッチについて、わが国に過剰就業が広範に存在していることをまず示した後、過剰就業の2要素である非自発的フルタイム就業と非自発的超過勤務についてその構造と要因を明らかにする。男性正規雇用者の過剰就業が単に就業時間の多さの問題ではなく「見返り的滅私奉公」とも言える働き方の問題でもあること。時間について柔軟な職場が非自発的超過勤務を大きく軽減させること。また、管理・研究技術職や大卒者に非自発的超過勤務が蔓延していることや、通勤時間の多さが非自発的フルタイム就業を増やす一方、自分の親との同居は反対にそれを減らすこと、などを示す。また男女の過剰就業のあり方の違いや、特に6歳未満の子を持つ場合に企業の性別による対応の違いにより男女の状況に大きな違いが生まれること、を示す。最後に今後のわが国における過剰就業の緩和への道筋について議論する。

大変興味深い論文です。

特に、

>臨時・パートには、常勤と比べ、残業をしたくないものには残業をさせず、したいものにはさせる傾向があるとすれば、その逆に企業は常勤に対しては、相対的にそういうことを許さず、企業の都合で就業時間を決める傾向が強いこと、が臨時・パートと比べた常勤の過剰就業傾向の残りの半分強を説明するのである。これは正規雇用の「裏の特性」が長時間勤務と見返り的滅私奉公であることを意味する。・・・これが「見返り」であるのは、同種の仕事をしている非正規雇用者に比べ、高賃金と雇用保障を与える見返りとして、「滅私奉公」的働き方が要求されていると考えられるからである。

長時間就業に加え、この「見返り的滅私奉公」の慣習こそが、我が国の男性および総合職女性のワーク・ライフ・バランスをきわめて困難にしている元凶といえよう。

>男性に比べ女性の希望に企業が応じやすいのは、高賃金と「見返り的滅私奉公」的働き方がここでもトレードオフになっており、女性は男性より柔軟に働ける分、賃金を抑えられているという事実である。

女性には「幼児がいるのだから早く家に帰りなさい」、男性には「子どもができたのだから、ますますがんばって働くべきだ」といっている上司の声が聞こえてくるようである。こうして、企業のジェンダー化した対応は、6歳未満の子どものいる家庭で、最も大きな過剰就業の男女差を生み出す。

のあたりは、まさに職場の実態感覚をとらえているように思われます。

最後の政策へのインプリケーションの部分は、いろいろな意見があるところでしょう。

>EUのような超過勤務を含めて週48時間を超えないという基準は、我が国では未だ合意を得るにはハードルが高すぎるであろう。しかし企業の自主努力で過労死を生むような過剰残業の慣習が払拭できないならば、最大週60時間をもって労働時間規制の基準とすることは十分考えられてよい。

ここでは特にコメントはしないでおきます。

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コメント

http://kanasoku.blog82.fc2.com/blog-entry-15672.html

エスノグラフィーの資料…
いや単なる2010年の点景ですが

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