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2008年9月12日 (金)

鼎談・労働政策決定過程の変容と労働法の将来

Tm_i0eysjiymo2glvyohg_1 『季刊労働法』の222号が発行されました。

http://www.roudou-kk.co.jp/quarterly/archives/003335.html

特集「近時の労働立法をめぐって」では、花見忠先生、山口浩一郎先生とわたくしの三人による「労働政策決定過程の変容と労働法の将来」という鼎談が載っています。

これは、何を措いても読む値打ちがあります。元中央労働基準審議会会長として数々の労働立法に関わってこられた花見先生が、

>ここで審議会の中、あるいは広い意味での労働政策形成プロセスの中での労使のなれ合いが生じて、三者構成からのよそ者の介入を排除して政策を決めていこうと。・・・そういうよそ者を排除した中でムラの利益を守る機関になっていったということです。

と、三者構成原則を真っ向から否定する議論を全面的に展開されているからです。何の因果か、私が三者構成原則の理念を断固擁護する役回りとなって、火花を散らしております。

例によって、わたくしがヨーロッパではどうたらこうたら言いますと、

>だけれどもこれは、わたしに言わせれば世界的に見て非常に特殊な民主主義のタイプなのです。たまたまILOもほぼそれによって支配されていて、そういう意味でそれが何か普遍的だというのは、客観的に言って普遍性を主張する根拠はあまりないのではないかと。

>その場合に労だけが非常に特殊だと言うことで、原理レベルの問題だといって考えるのは間違いです。政策決定というのは政党がイニシアチブを取って政策を決めていくのが本来の筋です。

と、一言のもとに却下。

さらに、法政策の内容になるとますます過激になって、

>解雇権濫用の法理、就業規則変更の法理などは、要するに大企業と大企業に雇われた正規雇用の人たちが雇用安定と高い労働条件を維持する、これは非正規の雇用の人たちの犠牲の上に成り立っているのですが、こういった体制を維持するのが解雇権濫用の法理です。

>労働契約法の制定は結果的に格差解消には全然役立たない。ますます格差を拡大する結果になったと思います。既存の判例法理は格差拡大に役立ってきたんで、これをそのまま条文化したという意味において非常に有害です。

と、ほとんど『脱格差と活力』あふれる議論となっています。そしてこれが三者構成否定論とこうつながります。

>今、最大の問題である格差解消と規制改革という二つの問題は、基本的に取引の問題ではないわけです。

>私が言いたいのは、格差と規制を打破する政策を立てるためには、格差と規制に強い利害関係を持っている人たちがやってもだめだということなのです。

わたくしがどのように反論を試みているかなど、ご関心のある向きは是非ともお買い求めください。

(追記)

hidamari2679さんの「風のかたちⅡ」で、この鼎談を取り上げていただきました。

http://ameblo.jp/hidamari2679/entry-10141260106.html

>hamachan先生孤軍奮闘の巻だなぁ・・・

だそうであります。

その他の記事は次の通りです。

■巻頭言■
労働法と日本のアイデンティティ
京都大学名誉教授 片岡 曻

特集
近時の労働立法をめぐって

●鼎談・労働政策決定過程の変容と労働法の将来
上智大学名誉教授 花見 忠 上智大学名誉教授 山口浩一郎
政策研究大学院大学教授 濱口桂一郎

●座談会・労働者性の再検討ー判例の新展開と立法課題ー
東洋大学教授 鎌田耕一 労働政策研究・研修機構研究員 池添弘邦
早稲田大学教授 島田陽一 弁護士 水口洋介

●最低賃金法制の新しい出発
一橋大学教授 中窪裕也

第2特集 比較法研究・企業法制の変容と労働法

●企業譲渡におけるイギリスの労働者保護制度
中央学院大学専任講師 長谷川 聡

●アメリカ企業の経営上の決定と被用者の保護
法政大学講師 沼田雅之

●ドイツ法における事業承継と企業再編法
立正大学専任講師 高橋賢司

●フランスにおける倒産法制の変容と労働法
早稲田大学大学院 細川 良

●EUにおける企業組織変動
ー欧州司法裁判所判決にみる経済的一体の発展ー
法政大学講師 水野圭子

【研究論文】

●労働者代表制度
東北大学名誉教授 外尾健一

●解体か見直しか
―労働組合法の行方―(二)
北海道大学教授 道幸哲也

●倒産労働法の意義と課題
同志社大学教授 土田道夫
株式会社エクサ・同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了 真嶋高博

●ホワイトカラー管理職等の労働時間規制の基本的構造と日本の制度の再構築(下)
放送大学非常勤講師・博士(法学)筑波大学 幡野利通

【連載】

●個別労働関係紛争「あっせんファイル」(連載第5回)
メンタルヘルス関係紛争の「解決」
九州大学教授 野田 進

●アジアの労働法と労働問題(2)
中国「労働契約法」に関する一考察
中国山東大学法学院講師(山口大学東アジア研究科博士後期課程) 李 長勇

【神戸労働法研究会】
●協約自治の限界
―「集団的私的自治としての労働協約」と「基本権保護義務」に
 関するドイツの議論から何が得られるのか―
駿河台大学専任講師 石田信平

【イギリス労働法研究会】
●職場での市民的自由
―コリンズ理論を中心に
駒澤大学教授 藤本 茂

【北海道大学労働判例研究会】
●足場設置業者(身元保証)訴訟
業務上横領を理由とする既発生不法行為債務についての連帯保証の性質・公序良俗違反の有無と身元保証に関する法律適用の可否
福岡地小倉支判平18.3.29判時1981号35頁
福岡高判平18.11.9判時1981号32頁
北海道大学大学院 戸谷義治

【筑波大学労働判例研究会】
●ファーストフード店店長の管理監督者性
ー日本マクドナルド事件ー
東京地判平成20年1月28日(労判953号10頁,労経速1997号3頁ほか)
労働開発研究会 北岡大介

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