小林慶一郎氏の労働市場規制強化論
昨日の日経新聞の経済教室で、経済産業研究所の小林慶一郎氏が「スタグフレーション懸念と経済政策 供給サイドの対応軸に」という論説を書いておられます。
標題だけみると、また例によってサプライサイドだ、市場重視だ、労働規制を緩和しろ、撤廃しろという話かな、と勘違いしてしまいがちですが、実は全く逆でした。
>過去の石油ショックでは、マクロ的にみて、物価上昇とともに賃金も上昇していたので、家計は物価上昇に対応することができた。しかし、今回のケースでは賃金は上昇していない。賃金上昇がないということは、現在の日本経済で、国内総生産(GDP)ギャップが再び拡大している、すなわち需要不足になっていることを示すものでもある。企業に対して賃金上昇を促す政策(行政指導やミクロな労働市場規制など)は、日本経済の内需を強化し、景気を下支えするための有効な政策であるといえる。
>しかし、賃金上昇が製品価格の上昇に添加され、それがまた賃金を上昇させるようになると、インフレ加速のスパイラルに陥る。70年代の欧州はこれで高いインフレと高失業に悩まされた。これは真性のスタグフレーションである。インフレスパイラルを起こさないためには、労働分配率を上げて、家計の取り分を増やす方向に経済構造を変える必要がある。それには、ミクロの労働政策の課題として、労働者(中でも非正規雇用労働者)の使用者に対する賃金交渉力を高める制度改革に取り組むことが喫緊の課題であろう。
これは、今月10日、経済産業大臣が経団連に対して賃上げを要請したという話の理論編ということになるのでしょうか。
少なくともここ10年以上にわたって、労働市場の規制緩和を政府内で唱道する立場にあった経済産業省が、ミクロな労働市場規制の強化を主張する側に明確に転じた一つの徴表のようにも思われます。
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