POSSE
『POSSE』という雑誌の創刊号をお送りいただきました。「新たなヴィジョンを拓く労働問題総合誌」ということです。
昔は労働問題の雑誌というのは結構たくさんあったものですが、今はずいぶん少なくなってしまいました。特に、JILPTの雑誌とか、労働法の専門誌とかでない、運動系の労働問題雑誌というのはとんと見ません。そういう意味では、こういう取組は大変いいことでしょうね。
http://www.npoposse.jp/magazine/new.html
内容は:
特集1 派遣労働問題の新段階
●座談会「秋葉原事件に見る若者労働とアイデンティティ」
竹信三恵子(朝日新聞)×後藤和智(『「若者論」を疑え!』著者)×池田一慶(ガテン系連帯)
●「派遣労働の変容と若者の過酷」
木下武男(昭和女子大学教授・ガテン系連帯)
●「派遣の広がり ―3つの業界から」
『POSSE』編集部
●「派遣会社の内側から見た派遣労働」
田中光輔(元派遣会社業務担当者)
●「派遣労働運動のこれから」
関根秀一郎(派遣ユニオン)
●「釜ヶ崎暴動と日雇い労働」
生田武志(野宿者ネットワーク)
●「派遣労働ブックガイド10」
『POSSE』編集部
特集2 マンガに見る若者の労働と貧困
●「『働きマン』と『闇金ウシジマくん』をつなぐもの」
渋谷望(千葉大学准教授)
●「消費者金融・闇金マンガの背景」
宇都宮健児(弁護士)
●「労働と貧困の若者マンガ事情」
『POSSE』編集部
●「権利主張はいかにして可能か」
道幸哲也(北海道大学教授・NPO職場の権利教育ネットワーク)
●「労働と思想 1 アントニオ・ネグリ」
入江公康(大学非常勤講師)
ということですが、やはり最初の座談会で、後藤和智さんがこう発言しているのが、個人的には一番共感しました、
>・・・ただ、蓋をあけてみますと、そういう「ポストモダン」の時代が来た、「大きな物語」が終わったというのは、一部の「社会学者」が日本で煽ってきたことで、実際には、近代的な概念、人権とか労働法であるとかの枠組みの意義は、最近の運動が示しているとおり、全く崩壊していないんです。
>・・・それにもかかわらず、近代的な枠組みや社会運動によって自己実現を試みるのは「ヘタレ」だ、という言説によって、労働運動などがリアリティを失ったように思われてきた。逆にそういう煽られた偽称「ポストモダン」によって、個人がまさにむき出しの状態で現実にさらけ出される・・・。
創刊号の特集の派遣労働問題については、本誌に出てきている人々の考え方とは、わたしは必ずしも一致しないところも多いのですが(下記関根秀一郎氏との朝日新聞対談(竹信三恵子司会)やNHK視点・論点など参照)、その中では、元派遣会社業務担当者の田中光輔さんの「派遣会社の内側から見た派遣労働」が興味深いものでした。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_93dc.html
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/7872.html
労働教育に力を入れておられる労働法の大御所の道幸先生も登場しています。自著を「かなりおもしろくてためになる」と宣伝しておられます。わたしも来週、某大学のキャリア教育講座で「働く権利と義務」をお話ししますが、道幸先生の『15歳のワークルール』を参考にさせていただきました。
(追記)
ここについでみたいに書くのもなんですが、来週金曜日(10月3日)に、今後の労働関係法制のあり方に関する研究会の第2回目が開かれ、道幸先生も呼ばれてお話しされる予定です。
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