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2008年8月19日 (火)

今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会

8月8日に開催された第1回の今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会の資料が、厚生労働省のHPにアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/s0808-11.html

>非正規労働者の趨勢的な増加や労働契約の個別化、就業形態の多様化等が進む中、労働関係法制度をめぐる知識、特に労働者の権利に関する知識が、十分に行き渡っていない状況が問題として指摘されている。
本研究会は、こうした状況について実態把握を行った上で、学校教育や、労使団体、地域のNPO、都道府県労働局、地方公共団体等が今後果たしていくべき役割等について総合的に検討し、労働関係法制度をめぐる実効的な教育の在り方を提示していくことを目的として開催するものである。

というのが趣旨ですが、具体的にどういう指摘がされているかというと、ここにあります。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/dl/s0808-11b.pdf

>労働関係法制など社会に出た際に必要となる法制度の基礎知識を付与する教育や情報提供についても、社会人の基礎づくりといった観点から一層の取組が期待される。(人生85年ビジョン懇談会「『人生85年時代」に向けたリ・デザイン』(平成20年5月))

>。例えば,「働く」という観点からは,我が国における労働関係法令遵守水準の低さの大きな原因の一つとして,学校教育段階で働くことの意味を始め働くことに関する的確な教育が行われていないことが指摘されるところであり,働くことの権利と義務など働くことに関する教育の充実を通じて若年者の職業意識の形成が重要であると考えられる。

内閣府,厚生労働省,経済産業省,文部科学省等関係府省庁の連携の下に,学校教育段階から社会に出てからの教育を含め,働くことの意味や労働関係法令,働くことの権利と義務など働くことに関する教育の充実等のための取組を進めることが必要である。具体的には,学校教育については,文部科学省を中心に内閣府,厚生労働省等関係府省庁が協力して,働き続ける上で最低限必要な知識が実際にどの程度教えられているのかについて実態の検証を行い,不十分な部分について対応する必要がある。また,中小・零細企業経営者を中心に,最低限必要な労働関係法令の知識について,厚生労働省,経済産業省始め関係府省庁が中小企業団体や業界団体との連携を図りつつ,創業支援時等あらゆる機会を活用して周知・徹底を図る必要がある。 さらに,関係府省庁においては,都道府県の段階についても,これら各行政に係る官民の関係機関の緊密な連携の下に継続的な取組が進むような方策を検討し実施する必要がある。(国民生活審議会総合企画部会「『生活安心プロジェクト』行政のあり方の総点検-消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて-」(平成20年3月27日)

>就業形態の多様化や労働契約の個別化が進む中で、労働関係法制度をめぐる知識、特に労働者の権利に関する知識に不十分な状況がみられることから、労働関係法制に関する知識を付与する教育や情報提供の在り方について検討する(雇用政策研究会「すべての人々が能力を発揮し、安心し働き、安定した生活ができる社会の実現-本格的な人口減少への対応-」(2007年(平成19年)12月))

>労働を巡る権利・義務に関する正しい知識を教える学校教育の充実が図られ、そうしたなかで、就職・転職時における職業選択もよりスムーズに行われるようになる。(経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会第1次報告「働き方を変える、日本を変える」-<ワークライフバランス憲章>の策定-(平成19年4月6日)

このように、内閣府の機関である国民生活審議会や経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会(いわゆる八代研)も、労働法制教育の重要性を強調していることは、この問題の重要性を示しているといえるでしょう。

本研究会の座長である佐藤博樹先生が、この八代研の第1回会合で、こういう発言をされていることも重要です。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/01/work-s.pdf

>3つ目に、セーフティーネットを考える際に、今回の議論の中で落ちているのは、働いている人側の労働者保護など労働法制に関する知識が少ないことである。今まで、労働分野では法律をつくって、それを企業に浸透させて、企業に法律を守ってもらうことを通じて、労働者の保護などが達成できるという政策手法が採用されてきた。もちろん労働組合もその担い手であった。ところが、最近のように雇用形態が多様化すると、働いている一人ひとりが、こういう働き方を選ぶと自分にはどういう権利があるのかについての知識がないと、その権利を実現できないことになる。
例えば育児休業について、育児休業の規定を持っていない事業所が、中小企業ではまだ多い。ただ、勤務先の事業所に育児休業の規定がなくても、労働者が法律を知っていれば権利を請求できる。つまり、働いている人たちがきちっと法的な知識を持つということがすごく大事ではないかと考える。
ところが、残念ながら、最低賃金でも高校生では6割程度しか知らない。団結権では、1割強しか知らない。最近、小学校、中学校で株式投資について教育するなどの議論もあるが、投資家にはならなくても、多くは従業員になるので、働くことに伴う権利をきちっと教えることが実は大事なセーフティーネットになるのではないかと思っている。

なぜ近年こういう指摘がなされるようになってきたのかをまとめた資料もアップされているので、是非見てください。うーむとうなるようなデータがいっぱい載っています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/dl/s0808-11c.pdf(労働者の権利の理解に関する状況)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/dl/s0808-11d.pdf(労働者の権利理解に関する先行研究のサーベイ(原委員提出資料))

ちなみに、本研究会の委員でもある原ひろみさんのエッセイでこの問題が取り上げられています。

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum022.html(労働者の権利を知ることの必要性)

また、日本労働研究雑誌の巻頭エッセイでも、何回か取り上げられています。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2006/11/pdf/001-001.pdf(働く市民の常識としての労働法)(道幸哲也)

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/02-03/pdf/001.pdf(労働法を知らせる)(仁田道夫)

この道幸先生が、北海道の労働審議会でまとめられたこういう報告もあります。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/80D574D5-2D83-4E5C-85A0-AC69BA8150C6/0/jakyohoukoku.pdf(若年者の労働教育について)

この問題に取り組む機運が、全国的に高まってきているといえるでしょう。

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コメント

労働関係法令の知識不足は、それなりに職業経験を重ねたマネジメント層にも見られることであり、それは企業経営そのものに悪影響を及ぼしかねません。人事部等の担当部門にとっては、喫緊の課題となっていると思います。
今回のような動きが、実効性を持ってくれることを願います(教育なので時間がかかるでしょうが)。
また個人的な嗜好もありますが、私自身も積極的に関わってゆきたい動きであります。

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