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2008年7月10日 (木)

ポストケインズ派経済学入門

41eprwrt0vl ナカニシヤ出版から発行されたマルク・ラヴォワ著、宇仁宏幸・大野隆訳の『ポストケインズ派経済学入門』を謹呈いただきました。

ナカニシヤさんのHPの紹介ページはここです。

http://211.9.219.130/modules/myalbum/photo.php?lid=466&cid=59

私の下手な言葉で紹介するよりも、こちらの方がいいと思うので、

新自由主義に対抗するポストケインズ派の理論と政策。
市場への介入と完全雇用政策を主張し、自由市場政策と新古典派経済学への体系的な代替案を提示するポストケインズ派。従来難解で知られたその理論を初学者向けに平易に解説し、その政策的インプリケーションを明らかにする画期的入門書。

「Ⅵ おわりに」より
 ケインズに触発されたポストケインズ派は、資本主義を自発性と技術革新を促進するシステムであるとみる。とくに、所得分配や、すべての社会階層への公的サービスとインフラの提供に関して、資本主義は、その欠点とその過剰を処理できる国家や民主的な制度によって支えられるならば、効率的な経済システムとなりうる。
 本書の一貫した基本的テーマの1つは、自由放任状態にある資本主義は、破壊的な競争と浪費を招くということである。すなわち、国家介入がなければ、資本主義は不安定性と景気循環を生成する。そして資本主義それ自体は、完全雇用も十分な水準の総需要のいずれも保障できない。
 新古典派経済学とは対照的に、ポストケインズ派は、この資本主義の不安定性を、競争力や競争メカニズム、もしくは価格柔軟性の欠如の結果であるとは考えない。それどころか、価格管理、慣習、(資本の自由な移動の制限といった)規制が、経済システムの安定性を強化するとポストケインズ派は信じている。

目次は:

日本語版への序文
はじめに

Ⅰ ポストケインズ派という異端
 1 誰がポストケインズ派なのか
 2 異端派経済学の特徴
 3 ポストケインズ派経済学の本質的特徴
 4 ポストケインズ派理論のさまざまな潮流

Ⅱ 異端派ミクロ経済学
 1 消費選択理論
 2 寡占的な市場と企業の諸目的
 3 費用曲線の形状
 4 価格設定
 5 費用マージンの決定要因
 6 マクロ経済理論にとっての含意

Ⅲ マクロ経済的貨幣サーキット
 1 ポストケインズ派の貨幣分析のおもな特徴
 2 民間銀行と中央銀行の関係
 3 銀行と企業の関係
 4 貨幣的経済の体系的見方

Ⅳ 短期:有効需要と労働市場
 1 有効需要とその構成
 2 カレツキ・モデル
 3 カレツキ・モデルのさらなる展開

Ⅴ 長期:古い成長モデルと新しい成長モデル
 1 古いポストケインズ派成長モデル
 2 新しいカレツキ・モデル
 3 カレツキ・モデルの拡張と批判

Ⅵ おわりに

参考文献

訳者あとがき
索引

「はじめに」の次の文章が興味をそそります。

本書は、新古典派理論とは逆の、以下の命題を論じることに全力を挙げる。

・有効需要が増加しても、必ずしも価格は上昇しない。

・最低賃金や実質賃金が増加しても、失業は拡大しない。

・実質賃金が増加しても、利潤は減少しない。

・貯蓄率が低下しても投資は減少しないし、経済成長も低下しない。

・価格の伸縮性は、産出水準の均衡(もしくは最適値)に経済を導かない。

・財政赤字は、インフレーションも利子率の増加ももたらさない。

(追記)

そのあとにはこういう言葉が続きます。

>経済的な至福を得るためには、社会が緊縮政策に耐え忍ばなければならず、しかも、自由競争で勝たねばならないという、主流派経済学が作った想定のために、多くの人が、経済学に「憂鬱な科学」というレッテルを張る。しかし、対照的に、ポストケインズ派経済学は、根本的に異なったメッセージを送る。私の観点から見ると、より積極的で心躍るメッセージである。それは、競争や対立よりもむしろ、協力がよりよい結果をもたらすというメッセージである。実際、(新古典派経済学が重視する)希少性という概念は、脇に置いておくことができる単なる知的構成物であるに過ぎない。

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コメント

新自由主義者で、ケインズ派を罵倒している池田信夫氏が、またやらかしたそうです。

問題のエントリー
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/0cde2902ae2bdf2afb4dfdeae7d465d2

モンスタープロフェッサーの捏造
http://www.rondan.co.jp/html/mail/0807/080728-17.html

この人は、何でもしますね。

つまらない点ですが、最後の赤字の文章

>自由競争で勝たねばならないという、主流は経済学が作った想定のために、

これは「主流派経済学」ではないですか?

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