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2008年6月21日 (土)

経済財政相理事会の結論文書

去る14日に開かれたEUの経済財政相理事会の結論文書が、EUの福祉システムについて的確なことを述べていますので、日本の経済財政諮問会議の皆様にも是非読んでいただければと思いながら引用してみます。

雇用社会政策健康消費者相理事会ではなく、経済財政の方です、念のため。

http://www.consilium.europa.eu/uedocs/cms_Data/docs/pressdata/en/ecofin/100325.pdf

>The Council discussed the strategies to deliver more efficient, effective and sustainable welfare systems in the European Union.

>EU Member States spend between 13% and 33% of their GDP on social expenditures. The Council emphasizes that increasing the efficiency and effectiveness of social expenditures will have a crucial impact on improving and securing the quality, evolution and long term fiscal sustainability of the European social models and public finances in general. Modern social, education and labour market policies should match flexibility with security and ensure that citizens are equipped with the skills, support and incentives they need to succeed in a changing world. Over the last decade, Member States have undertaken significant efforts to reform and ensure the sustainability of their social welfare systems, in particular to cope with the challenges of ageing populations, socio-economic changes and globalisation.

能率的で効果的で持続可能な福祉システムとは、柔軟性と安定性を組み合わせ、人々に技能と支援とインセンティブを与えるもの。

>social benefit schemes and tax-benefit systems should support the active inclusion and the lifelong learning of those receiving transfer incomes with incentives to make work pay;

福祉給付や税制は働くことが引き合うようにアクティブ・インクルージョンと生涯学習を支えるべき、

>social inclusion and the capacity to respond to change should be supported by policies that improve human capital formation throughout the life cycle;

ソーシャル・インクルージョンという言葉は、いうまでもなくこういう文脈で使うべきものです。どこぞの俗流社会学者さんみたいに、引きこもりにいとの俗流心理学の文脈で使われるものではありません。

>the complementarity between social and human capital spending is critical to ensure high labour participation, social inclusion, enhance the competitiveness of the EU, and control social spending;

そのための人的資本への投資こそが労働市場参加、社会的包摂を通じて結局は競争力の向上に役立つのです。

>education in all stages has a crucial role to play within the strategy to enhance investment in human capital and tertiary education (both private and public) is a key determinant of the ability to innovate.

これこそ本当の意味での「米百俵の哲学」と云いたいですねえ。

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コメント

Hamachanが強調しておられるように、社会政策相ではなく、経済財政相、というところがミソというか、スープストックというか。結局は、すべて財政問題となってゆきますしね。国民の(タックスペイヤーの)金を、何のためにどれほど使うか、という。
で、「あらゆるステージにおける教育の重要性」。ブレア元首相は「教育、教育、教育」と、とにかく教育に予算を注ぎ込んだのでしたね。で、イギリスの統計でみる限り、数年間については、貧困削減効果がたしかに出ていたと思います。統計は、イギリスの雇用年金省の年報で見たように記憶しています。ただ、それでもこのところ頭打ちになっているようでした。教育だけへの直接の予算投下だけでなく、おそらくは、良質な雇用の創出とか、イギリスではまだまだ不足な保育からの底上げとか、より広い政策が必要なのではないかな、と、ぶらり庵は思っていますが。日本で「教育」というとき、「保育」や、それから教育の外延をなす文化の維持があまり視野に入っていないようなのは、とても気になります。アメリカでは、国が直接予算を出さなくても、民間団体による支援・活動が日本とは比較にならない位大きいように思えますが(ちょうど朝日のビル・ゲイツの記事を見たので)、日本は、民間部分て、ないに等しいですから。

ちょうど週末に、素晴らしいアメリカ映画を見たので、上記のような印象を受けました。ウィーンを舞台に、ヨーロッパ人なら誰でも知っている「サラエボ事件」の皇太子をモデルに使った映画「幻影師アイゼンハイム」でした。映画自体、マジシャンによるどんでん返しのストーリーなのですが、当時の歴史を知る者として(ぶらり庵は西洋史だったので)「なあるほど」と感心したのは、当時の史実をちりばめながら、フィクションを投げ込むことで、手品のように史実をみごとに組み替えてきっちりしたストーリーを組み立てていることでした。ミルハウザーの原作がそうなのでしょうが、そのような重層的なマジック、のとても知的な映画でした。これが、アメリカの無名監督の低予算映画だということにもとても感心。限られたセット、質素な衣裳ですが、とても格調高いものでした。この映画は、アメリカでは口コミで上映拡大、ときいています。日本でも、映画やアニメ、音楽など、好きでやりたい若者はいっぱいいますし、それに、このミルハウザーのみごとなストーリーテリングに、わが国のすばらしい話芸、落語を連想したりもしたのですが、雇用の創出にもなるはずの、そういう文化産業、文化のコンテンツに日本は官民共に投資しなさ過ぎですね。最後は、映画好きのぶらり庵が無理やり落とした結論ですが、でも、福祉・教育などの人的サービス産業はもとより、文化産業、観光産業、農業など、海外移転せず、地域の雇用創出効果のある産業にもっとオカネをまわしてほしいものです。

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