生活保護の問題とワーキングプア、雇用保険
さて、経済財政諮問会議の本体の方は、土曜日のエントリーに書いたように、外国人労働者(「高度人材」ね、あくまでも、但しその範囲は It depends. )の受入れ問題が中心となってきましたが、労働市場改革専門調査会の方も動き出していたようです。木曜日の調査会の資料がアップされています。
http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/20/agenda.html
http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/20/item1.pdf
報告者は、地方財政審議会の木村陽子氏ですが、中身はまえに本ブログでも紹介した
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_4d05.html
全国知事会・全国市長会がまとめた生活保護制度の見直し案がベースになっています。
こちらでもいよいよワーキングプアと生活保護の問題に取り組みますか。大変時宜を得た問題意識だと思います。
>1.ワーキングプアの広がり
(1)豊かさを実現した 1960年代のアメリカにおける「貧困の女性化」ワーキングプアは母子世帯に集中-1970年代、1980年代先進国で共通
(2)近年のワーキングプアの質的変化家族の変化、就業形態、産業構造の変化等によって家族の経済基盤は脆弱となり、世帯類型、性別にかかわらずワーキングプアになりうる。共働き夫婦、専業主婦世帯、単身世帯、単親世帯、高齢親と単身子世帯、日本でもこれまで最も安定していた中年男性の非正規雇用、失業率が高まった。
(3)ボーダーライン層(ワーキングプアにきわめて近い層)が厚みを増す
2.現行の生活保護の特徴と問題点
(1)包括的一般制度―「金銭給付」が中心となるべき高齢者世帯と「就労自立支援」が重要な稼動期にある者が混在。ライフステージにあっていない。
(2)貧困原因を問わない
(3)他方優先、「入りにくくてでにくい」制度
(4)捕捉率が低い
(5)生活保護受給世帯の変化-高齢者世帯が 5割、うち 9割は単身者。3の1は傷病・障害者、母子世帯は9%、その他が 10% である。
(6)複合的な貧困原因を除去する対策が十分でない。
3.生活保護とワーキングプア
(1)ワーキングプアの広がりは、被保護世帯の生活保護基準額と最低賃金、非正規雇用者の収入等との均衡を図る必要がある。-税金、利用料、料金、医療等も含む。
(2)家族の変化や非正規雇用者の増加は、ボーダーライン層の厚みを増す。
(3)ボーダーライン層の生活保護への移行防止のための対策。ボーダーライン層が一時的貧困から慢性的貧困に陥らないために集中的な職業訓練や紹介等が必要である。生活保護受給者に対する集中的な自立支援プログラムの一部を共同で利用。(基本的に収入が極めて低く生活保護基準の境界近辺にある者。生活保護を申請しないワーキングプアのこの制度の対象となる)
4.生活保護と雇用保険等
(1)雇用保険と生活保護は独立して設計されている。雇用保険でカバーされるのは被用者である。
(2)生活保護と雇用保険との整合性の問題失業保険の基本手当と保護基準との不均衡。失業・休職中の最低生活をどの制度により保障するか?(例)低賃金の母子世帯等が失業し、雇用保険の基本手当日額(賃金のおよそ 6割程度)を受給する。しかし、それだけでは不足するので生活保護を受給する(最低生活水準との差額)。→雇用保険基本手当受給期間が切れた後は生活保護受給世帯
(3)年金保険については非正規雇用者の加入を促進することが、高齢期の貧困をなくすことに貢献。高齢期の貧困は年金と密接な関係。一方で、厚生年金等年金の抜本的改革が必須。
5.生活保護の改革
(1)稼動世代に対する適用期間を最大 5年間とする有期保護制度=集中的な自立支援プログラムを実施=の創設。セーフテイネットをしっかり守ることは前提。
(2)高齢者対象制度の分離
(3)ボーダーライン層が生活保護へ移行することを防止する就労支援制度
(4)福祉・医療部門、労働部門、教育部門の一体的連携を確立。
(5)共通のデータベースを持つ。
(6)フォローアップ。
6.就労自立について
(1)完全に街中で独立しては暮らすことができないけれども、世話人がいる共同住宅の中で暮らすことはできるなど就労自立にもさまざまな局面があることを尊重する。
(2)ソーシャルインクルージョンとの関係
ということです。問題意識は私とほとんど共通していると思います。ただ、処方箋は少し違います。私がこの領域で考えていることは、この文章にまとめています。ご参考までに。
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