教師の時間外労働
4月25日のエントリーで紹介した京都の教師の時間外勤務の判決が最高裁HPに掲載されたのでリンクしておきます。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_a3ad.html
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080519105248.pdf
>前提事実記載のとおり給特法(10条)は教育職員に対して労働基準法32条の適用を除外しておらず,本件条例も教育職員に対して職員の勤務時間を定める条項の適用を除外していない。
ところで,前提事実記載のとおり本件通達により定められた使用者において労働者の労働時間の適正な把握のために講ずべき基準は管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者を除くすべての労働者に適用される(なお,同通達は同除外される労働者についても,健康確保を図る必要があることから,使用者において適正な時間管理を行う責務がある旨記載している〔甲6〕。)ところ,本件通達は教育職員にも適用がある旨の文部科学省の国会答弁のとおり公立の教育職員にも適用があるものと解される。しかし,給特法及び本件条例は,教育職員が自主的,自発的に正規の勤務時間を超えて勤務した場合にはこれに対して時間外勤務手当を支給しないものとしていることは前記2で説示したとおりであるうえ,教育職員の職務遂行のうち,その職務の特質に照らしてどこからどこまでが指揮監督の下での労働と評価されるのかについても一義的に明確な基準を見いだすことが困難なことを考慮すると,教育職員について時間外・休日・深夜労働の割増賃金を支払うという点から正確な時間管理が求められているとまで解することはできない。そうすると,公立学校の設置者にタイムカード等を用いて教育職員の登校及び退校の詳細な時刻を記録することまで求められていると解することは相当でない。
しかし,上記基準の適用を除外された管理監督者やみなし労働時間制を採用された労働者と同様,少なくとも教育職員についても生命及び健康の保持や確保(業務遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないように配慮すること)の観点から勤務時間管理をすべきことが求められていると解すべきであるため,原告らが勤務する公立学校の設置管理者である被告は,教育委員会や校長を通じて教育職員の健康の保持,確保の観点から労働時間を管理し,同管理の中でその勤務内容,態様が生命や健康を害するような状態であることを認識,予見した場合,またはそれを認識,予見でき得たような場合にはその事務の分配等を適正にする等して当該教育職員の勤務により健康を害しないように配慮(管理)すべき義務(以下「本件勤務管理義務」という。)を負っていると解するのが相当というべきである。そのような場合で,教育職員が従事した職務の内容,勤務の実情等に照らして,週休日の振替等の配慮がなされず,時間外勤務が常態化していたとみられる場合は,本件勤務管理義務を尽くしていないものとして,国家賠償法上の責任が生じる余地がある。
教師は残業代はエグゼンプトだから、残業代を正確に払うために労働時間を管理するという必要はないけれども、生命や健康を害しないために労働時間を管理する義務はあるということです。私が本ブログで繰り返し述べていることが、こうして少しづつ裁判官の中で常識化していっていることが判ります。
« 補完性の原理についてごく簡単に | トップページ | 時短・残業免除を義務化へ 子育て支援で厚労省 »
コメント