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2008年5月20日 (火)

補完性の原理についてごく簡単に

一部で地方分権問題の関連でEUの補完性原理が取り沙汰されているようですが、

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-92.html

ヨーロッパの文脈で言う限り、補完性原理をかざして地方分権を主張し、中央集権に否定的なのはキリスト教的保守勢力の側で、労働組合や社会民主党といった陣営はおおむね中央集権派です。地方なんかに任せたら地方のボスが勝手なことをするから、ちゃんと国がコントロールしなくちゃという発想。ドイツのハルツ改革で、地方自治体の公的扶助と国の失業給付を統合するという話になったときに、最大の政治的対立点は、それをどっちがやるかで、社会民主党は国がやらなくちゃ、キリスト教民主同盟は地方がやらなくちゃ、まあ結局よく判らない妥協をしたわけですが、つまりそういうものです。

同じことが国とEUの権限分配でもあって、EUで「補完性原理」が問題になるのは、むしろこちらが主です。つまり、加盟国に任せると、サッチャーみたいなとんでもないのが出てきて勝手に法律を変えて労働者の権利を踏みにじるから、EUレベルでしっかりとコントロールして国が勝手なことをできないようにしようという、社会民主主義者の中央集権的な発想に対して、いやいや国でできることは国でやればよい、という保守派の国家分権主義が持ち出したのが、「補完性原理」。

毎度毎度ではありますが、日本の政治の世界の文脈の狂いようはなかなか絶望的なところがありますね。

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コメント

ご教示ありがとうございます。
ヨーロッパでは保守が補完性原理に基づく地方分権を主張しているとなると、日本で自民党が地方分権を憲法改正に盛り込もうとするのはむしろ自然な流れで、逆に連合を支持母体とする民主党がよりラジカルな地方分権を主張しているのは、やっぱり「ねじれ」ているわけですね。

>同じことが国とEUの権限分配でもあって、EUで「補完性原理」が問題になるのは、むしろこちらが主です。
マーストリヒト条約を素直に読めばこういう理解になると思うんですが、日本国内ではシャウプ勧告で掲げられた「市町村優先の原則」と「補完性の原則」がイコールで語られてしまうようです。今日の日経新聞の経済教室の斉藤・中井論文もそうでした。経済学がそのねじれに荷担する形になっているのは、なんとも頭が痛いところです。

「自由vs平等」という由緒正しい古典的問題です。


>> なぜ私が霞ヶ関にいて決めないといけないのですか、厚生労働省が。まさに地方自治でしょう
>> EUレベルでしっかりとコントロールして国が勝手なことをできないようにしよう

日本に政治的捩れがあるのは、そもそも「現実の方に捩れ」があるからで

現実の捩れを無視して、政治的な捩れを云々するのは片手落ちに思います

平等のためと称する行いにより、却って不平等を拡大しているという現実がね。

会社間の格差を容認しつつ、国が「会社内の平等」を押し付けるようなことをすれば、当然ながらそういうことになりますよ

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