70歳定年など月内に素案
読売から、
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08052110.cfm
>政府・与党は、雇用や税制の優遇措置などを含む総合的な高齢者施策の取りまとめに着手した。後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に対する国民の批判が強まる一方の中で、福田政権として高齢者に配慮した政策を打ち出す必要があると判断した。
自民党は今週中に厚生労働部会などの合同部会を設置し、検討を急ぐ。与謝野馨・前官房長官が中心となり、〈1〉定年を70歳に引き上げる〈2〉高齢者マル優を復活させる〈3〉後期高齢者の扶養控除を認める――ことなどを検討対象とし、月内に結論を出す考えだ。
高齢者施策の策定をめぐっては、与謝野氏が16日、「後期高齢者医療制度の話ばかりやらず、自民党としてもう少し大きく出た方がいい」と首相に進言したことで動き出した。
首相は20日の閣僚懇談会で、月内に施策を取りまとめるよう自民党の谷垣政調会長に指示したことを明らかにした。
うーむ、70歳定年ですか。これは実はなかなか簡単ではありません。肝心の高齢者の側がどこまでそれを望むのか、という問題があります。
厚労省HPにアップされたばかりの労政審職業安定分科会の議事録にこんなのがありました。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/txt/s0328-1.txt
これは雇用保険法施行規則の一部改正で、70歳定年引上げ等モデル企業奨励金というのができるということで、労働側委員が、
>○長谷川委員 徳茂委員もおっしゃったのですが、この間、70歳まで働く企業の普及促進に関しては、何回か議論があったわけですが、いつどこで70歳と決めたのかというのが、私の記憶がおかしいのかわからないのですが、どこで決めたかがわからないのですね。誰がいつどこで70歳まで働き続けようと決めたのかというのがはっきりしない。
>・・・そうすると国民の中にも、労働者の中にも60以降の働き方については、いろいろ議論があるわけですから、その働き方の議論は労働者の人生設計にかかわることだから、もう少しきっちりと議論をしてほしいのです。現在70歳ですごく元気な方がいらっしゃって、そういう意味では70歳というか結構、働きたいという人はたくさんいると思うのですが、でも、働きたいということと、職場の中でどういうふうに働くかということと、処遇をどうするかということは、非常に重要な関係にあることで、こういうことをしっかりと議論しないまま、何か70まで働きましょう、働きましょうというのは、私は少し問題があるし、労働者もなかなか自分の人生設計が作れないのではないかと思うのです。
もう1つは石井委員からもありましたが、みんなやはり68歳とか70歳の年金開始年齢を気にしているわけです。またこんなことをやれば、70歳年金開始年齢って延ばされるのではないか。これみんな思っているわけですよね。そういうことに対して、この70歳が出れば出るほど、みんなが年金を延ばされるのではないかと、この不安と疑問が現時点では払拭されていないと私は思うのです。
○長谷川委員 もう1つ、しつこいようですけど、55→60、60→65というのは、全部年金とリンクしている話なのですね。だから70と言われたときも、ほとんどの人たちは、私のところで会議を開いたときに年金開始年齢70を、厚生労働省は今回は旧労働省が雇用の機関で70という、年金開始年齢を射程距離に置いて出してきたのではないかと、この疑問に対して全然私たちには反論できないのですよ。いままでの例がやはり60、65となったときに、また5年で70といったときに、どうもこれは年金を70にやるための布石ではないかというふうに、ほとんどの構成組織から言われています。それに対して、それは違うって私たちは言ったとしても、誰も本当だと思っている人はいないということも事実なのですよ。最後まで違うと言えますか。70という年金開始年齢は絶対ないと言えますか。
実は、熊本の労働法学会の懇親会で、長谷川さんとちょっとこの話をしたんですけど、やっぱり職種によるよねえ、という結論。もういいかげん疲れたから年金もらって引退したいって人もいるし、後記高齢者になっても元気満々儂が居なくてどうするてな人もいるわけで、人によるんだけど、マクロに見るとやはり職種が効いている。
政治家なんてのは、一番そういう方向性の強い職種でしょうね。50,60は洟垂れ小僧というくらいですから。
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>政治家なんてのは、一番そういう方向性の強い職種でしょうね。50,60は洟垂れ小僧というくらいですから
Hamachan、「EU労働法政策」を標榜される方がそのようなことをおっしゃっては・・・。日本の「政治家」の職業レリバンスと欧米のそれとは、もしかして全然違うんじゃないか、と思うくらい、あちらでは若いですよね。アメリカのように、何ヶ月も叩きあいの演説ツアーをやる体力と神経が必要、というのもいかがなものかという気もしますが、ヨーロッパの政治家やトップが若い理由について、どうお考えですか。
で、日本の職種で、楽勝で70までやれるもの、やりたいもの、ってそれはもう断然「カンリショク」でしょう。こちらこそ、本当の「名ばかり管理職」、年功で給料だけもらって、やっているのは会議に命令。作文も実務も部下にやらせる、という人たちって多くありません?
転職したい中高年男性が、何ができるかをハローワークできかれて「管理職」と答える、という笑い話もよく聞きます。
で、ヨーロッパの高齢者雇用促進の際に、これが若年の職場を奪うのではないか、という議論があり、そうではない、という調査が出ていたように思いますが、日本の場合、どうでしょう。定年延長の対象となる高齢者って、もろに「男性正社員」ですが、男性高齢者が、若年・女性の仕事を奪う、という可能性はヨーロッパと違って高いのではないでしょうか。
年金の問題よりも、ぶらり庵はこちらの方が気になります。年金受給年齢が上がる、どころか、年金財政を支える世代がなくなる、のでは?
投稿: ぶらり庵 | 2008年5月22日 (木) 06時04分
ついでに、高齢女性について。
今後、一番、貧困のおそれがあり、かつ、何と言っても「大量」で、もっともっと増えてゆくのが「高齢女性」ですが、その人たちの働く場を作って、できるだけ元気に長く働いてもらう政策、ってあるのでしょうか。作文としては、介護や保育などのケアワーク、かもしれませんが、介護・保育の仕事って実際には若い人でさえ、けっこうきつい仕事ですよね。ずっと続けている人が継続して定年延長なら話は別ですが、中高年になってからケアワーカーというのは、そうそう簡単にはいかないように思いますが。
ところで、高齢女性の老後について、けっこう読まれているという「おひとりさまの老後」を読んでみました。大変びっくりしました。社会学者の、社会についての認識に、と、フェミニズムの旗手であった人の、ジェンダー認識に。
老後をいかに暮らすかについては、ハードとソフトの問題があるが、「ハードについては、おカネや家などさまざまな参考書が出ている。それも大事だが、ハードばかりが整備されてもじゅうぶんではない。」という著者、上野千鶴子氏はソフトについてもっぱら論じているのですが、高齢女性、ってそもそもお金も家も確実にあるとは言えないのが一番の問題だろうというのが、ぶらり庵の認識なので、この「はじめに」で、もうびっくり。本文に入ると、女の持ち家率は高い、なぜなら、夫のカネはわたしのもので、老後には子どもはとっくに自立しているから、夫が先立てば、財産は妻のもの、であるから、とのことですが、団塊の世代についてみれば、団塊ジュニアこそが、超氷河期でフリーター世代で、親の資産にぶらさがっている世代だとすると、そううまく行くとは思えないのですが。「現代の貧困」の著者、岩田正美氏の講演をきいたときに、岩田氏が「今でも日本の女性は、"女、三界に家なし"なんですよ。」と言っておられましたが、そちらの方が実感に近いですね。
あと、ジェンダーの話は、政策とは直接に関係ないし、批判になるので、長々とは述べませんが、「女同士の食卓に男は呼ばない」、女は男の意を迎えるホステス役を演じがちで、「自分でもやってしまいかねないので、なおさら怖い。」いやはや、これが私的な発言ならば、こんなところで「びっくり」とか書きませんが、日本の女性学の指導的研究者が不特定多数に向けての著作にこういうことを書くものか、とあまりに驚いたのでつい一言。
あとは、暮らし方のソフトについては、「私の場合、教養のパートナーはジャンル別に揃っているし、医師も各科揃い踏み」、と言われても、一般庶民は「さすが、アカデミ界のセレブは違いますね」と負け犬の遠吠えをするのみで、とりあえず、ぶらり庵の老後の参考にはなりませんでした。雨の休日の読書、もう少し役に立つものを読めば良かった・・・。
投稿: ぶらり庵 | 2008年5月25日 (日) 22時49分