介護士は「高度人材」?
一昨日のエントリーで紹介したように、養成大学から学生が逃げ出すほど処遇の低さが知れ渡っている介護福祉士が、外国から人材を導入するべき「高度人材」であるかどうかが、昨日の経済財政諮問会議で話題となったようです。
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0509/interview.html
例によって大田大臣の記者説明から、
>まず、高度人材についてですが、民間議員から、ペーパーに沿って説明がありました。高度人材の受入れについて、これを倍増するようにという提案がありました。説明の中で、外国人の人材を受入れるというときに、労働力不足だから受入れるというのではなくて、成長のカギが人材だからこそ受け入れていかなければいけない。つまり、成長するカギというのは、常に人なわけですね。世界から頭脳を持ってくる、技術、情報を持ってくるということが重要なわけで、そういう観点からこの高度人材を議論する。今、世界で人材の争奪戦が行われているということが言われました。
これに対して、舛添厚生労働大臣が次のように正論をぶち挙げたようです。
>これに対して、まず舛添大臣から、受入れ企業がどの程度の処遇をするのかということが大事である、安い労働力を手に入れるというようなことになっているといけない。民間議員の提案で、30万人ということが出ておりますけれども、数字が先になったときに、高度でない人が数値目標を達成するために入るというようなことがあってはいけないと。
高度人材は単に通過するだけの人材を想定するのか、それとも日本人になっていくようなことを想定しているのか。やはり長期的な国家戦略として、永住、定着というようなことまで考えているのならば、抜本的に色々な仕組みを変えていかなければいけない。家族を受け入れるという視点で体制も整えなければいけないので、細かく詰める必要があるという発言がありました。
まさしく正論、外国人は単なる労働力というモノではなく、ヒトを日本社会の中に包摂するということを前提にしなければいけないわけで、その辺は、舛添さんはさすがにフランス通ですから、ヨーロッパの経験から何をしてはいけないかがよく分かっているというべきです。
で、その先が「高度人材」の話で、出来れば早く議事録を見たいところですけど、大田大臣によれば、
>民間議員から、この「高度人材」の「高度」というものがどういう定義であるのか、その分野別に定義を明確にしていくことが必要であるという発言がありました。
>介護士や看護師は、EPA交渉の中で受け入れるということが今まであるわけですけれども、EPAを締結しないとなぜ来てもらってはいけないのか。国家資格がある分野は、やはりこれは高度人材と言えるのではないか。日本語で試験を受けて通れば、それは在留資格を与えるべきではないか。もう少し就労ができる在留資格という方向で書き直してほしいと。
そこが最大の問題でしょう。国家資格があれば「高度人材」なんでしょうか。介護士を養成する大学の課程があるくらいなんだから立派な「高度人材」と言える?
いや、社会の将来のあるべき姿として、福祉がもっとも尊敬される職業の一つとなり、介護福祉士は医者並みの社会的地位と処遇を得られるような社会にするべきだ!と主張することは可能ですし、私も一定のシンパシーを感じますが、いかんせん、現実の姿はそれとは正反対であるわけで、多くの若者が逃げ出すような職域に「高度人材」という名目で実際は「低度人材」を大量に導入することがホンネであるならば、それはやはりちょっと待った、と言うべきところのように思います。外国人の導入に反対ではありませんが、使い捨ての「低度人材」として入れるのは考え物でしょう。
>増田大臣から、日本の各地域には、高度人材というよりワーカーとして入っている地域もたくさんある。集中的に入っている地域があるわけで、生活環境づくりに非常に苦労していると。教育の問題、成人への日本語教育の問題、色々苦労しているので、丁寧に解決していく必要があると。
いや、「ワーカー」でいいんですけどね、アンダークラスになってしまっては困るということであって。ちょっと労働に偏見もっていませんか?ただ、いいたいことは全くその通りだと思います。
> ここから教育の方の、留学生30万人計画の議論に入りました。
ということで、鳩山法務大臣が、
>鳩山大臣から、総理の留学生30万人計画というのは、ぜひ実現したいと。ただ、民間議員ペーパーの2ページ目の下に、就学と留学の区別を引き続き維持する必要性が薄いようであれば一体化すべきではないかということが書かれているんですけれども、これについて、就学というのは日本語学校に入るということなんですね。これが3万6,000人いるということなんですけれども、この1割以上が不法残留になっていると。それから、犯罪率も高いというので、やはりここは慎重に考えていく必要があるのではないかというコメントがありました。
日本語学校だけの話ではないような気もします。これも、いろいろ各方面に差し障りのある話なのかも知れませんが、ある種の大学などは、もっぱらアルバイトに精を出す建前上は「就学生」ではない「留学生」をたくさん抱えて経営を成り立たせているような所もないわけではないわけで、そういうのをどう考えるのか、というのもあまり問題にする人はいないけれども、実は結構問題なんじゃないかと思ったりもするわけで。
結局、
>この高度人材の受入れですけれども、政府部内でしっかりと議論をしなくてはならない課題であると。官房長官のもとに、有識者、産業界、労働界、政府からなる会議を設置して議論を開始してほしいという指示がありました。
これまで、こういう外国人からの人材の受入れというのは、なかなか政府全体で議論する場がなかったわけですけれども、総理の指示を受けて、官房長官のもとに会議が設置されるということになります。
ということになったようです。
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