コンメンタール パートタイム労働法
法改正後に出される役人の名著というには、あまりにも熱っぽい一冊。
そもそも、最近では役人が名著を出すことも少なくなっていますが、これは本日施行された改正パートタイム労働法の改正作業を担当した高崎真一氏(短時間・在宅労働課長)が自ら書き下ろしたもので、役人本とは思えない熱っぽい記述が見られます。
http://www.chosakai.co.jp/purchase/books/syousai/1001.html
どれくらい「熱っぽい」かというと、オビに曰く「改正パートタイム労働法の施行を契機に「同一労働同一賃金の原則」が実際に労働の現場で適用される時代に!」。
なぜそこまでいうかというと、巻頭言(「敢闘言」というべきか)に曰く、
>「同一労働同一賃金の原則」というものがあります。・・・
一見当たり前のことをいっているようで、現に、経営側もある意味では同意しています。・・・
ところが、問題はそれほど簡単ではありません。どのようにして「同一価値労働」かを判定するかが具体的に決められていなかったからです。その結果、お互い「抽象的」に、労働者は「同じ仕事をしているのだから、同じ賃金が支払われるべきだ」と主張するのに対して、経営者は「同じ仕事に見えても将来にわたる期待が違うので、同一価値労働ではない」と反論するわけです。このような議論が繰り返されてきました。
今回、改正パート労働法は、「同じ職務(業務+責任)、同じ人材活用の仕組み・運用、実質的契約形態が同じ」=「同一(価値)労働」であり、その場合は、すべての待遇について差別してはならない(当然同一賃金)ことを法定しました。いわば現時点における日本版「同一労働同一賃金の原則」を、我が国の法制上は初めて「具体的」に実定化したものです。この規定そのものは正社員とパート労働者間のルールですが、男性正社員と女性パート労働者にさえ適用されるルールが、例えば男女の正社員間に準用されないわけはなく、一般法理としての意味も併せ持つと考えます。
ううむ、そこまで言えますか、という感じですが、高崎氏がこの法律にかけた情熱の強さは十分伝わってきます。
課長名著といえば、終戦直後には結構多かったんですね。復刻された寺本広作『労働基準法解説』を始め、労政関係では松崎芳伸氏の軽妙な名著が有名です。
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コメント
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> 同じ仕事をしているのだから、同じ賃金が支払われるべきだ
> 同じ仕事に見えても将来にわたる期待が違うので、同一価値労働ではない
何だかどっちもどっち
良い悪いはともかくとしても、契約の形態が違うので同じではない、というのが現実
投稿: 比ヤング | 2008年4月 1日 (火) 19時34分
厚生方面の課長名著では、小山進次郎氏の「生活保護法 解釈と運用」が代表格かと。立案に従事した著者によって書かれ、二度復刻され、かつ、その後、これを越えるコンメンタールがないためにまだ生きている本だと思います。日本における公的扶助制度の歴史から説き起こして(と言ってもそこら辺は長くはないですが)やはり、著者の情熱の伝わる重厚な図書です。
終戦後には、使命感を持ったすぐれた官僚が多かったのですね。それに、その頃、国政の根幹となる法律が次々制定されましたけれど、国会では、それこそ、日程が詰まっているもので、ほとんど実のある論議もないままで、こうした図書がなければ、どういう目的や経緯を経て法制化されたのかもわからなかったでしょうね。
投稿: ぶらり庵 | 2008年4月 2日 (水) 05時43分