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2008年4月 1日 (火)

大竹文雄氏のバランス感覚

日本労働研究雑誌の4月号が「通説を検証する」という特集をしていて、大変面白い。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/04/index.htm

>世間に広く通用している説(通説)には、専門家からみて根拠がないというものが意外に多い。不可思議なオカルト現象のカラクリをあばく「ガリレオ」准教授のように、科学的な根拠のない議論に対しては、専門家がきちんと一般の人にもできるだけわかるように真実を伝えておく必要がある。「労働」の分野でも同じである。「労働」に関する通説には、専門家からみて明らかにおかしいと思えるものが少なくない。また専門家の間では決着していない論争的なテーマについて、あたかも既に解決されているかのごとく、特定の意見だけが通説となっていることもある。本特集では、専門家には、こうした「通説」はどのように映っているのか、論争状況にあって決着のついていないテーマは、どうしてそうなっているのか、ということを一般の人の目線に立って解説しようとするものである。読者には、専門家の議論の奥深さを味わってもらうと同時に、日頃から通説を批判的に見る視点の重要性も感じてもらいたい。

どういうテーマが取り上げられているかというと、

●「制度」の検証対談最低賃金を考える
大竹 文雄(大阪大学社会経済研究所教授)

橘木 俊詔(同志社大学経済学部教授)

エッセイ割増率の上昇は残業時間を減らすか?
佐々木 勝(大阪大学大学院経済学研究科准教授)

社会保険料の事業主負担部分は労働者に転嫁されているのか
太田 聰一(慶應義塾大学経済学部教授)

「定年制」を考える
戎野 淑子(嘉悦大学経営経済学部准教授)

ポジティブ・アクションは有効に機能しているのか
川口 章(同志社大学政策学部教授)

少数組合の団体交渉権について
奥野 寿(立教大学法学部准教授)

●人事管理対談ホワイトカラーの労働時間管理
藤村 博之(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)

山口浩一郎(上智大学名誉教授)

エッセイ成果主義は日本の賃金制度を変えたか
中嶋 哲夫(人事教育コンサルタント)

非正社員から正社員への転換制度について
武石恵美子(法政大学キャリアデザイン学部教授)

わが国におけるキャリア教育の課題──若干の通説的理解を見直す
寺田 盛紀(名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授)

適性検査を活用する有効性について
室山 晴美(JILPT主任研究員)

●労働市場座談会派遣労働をめぐって
南部 靖之((株)パソナグループ代表取締役グループ代表)

浜村 彰  (法政大学法学部教授)

守島 基博(一橋大学大学院商学研究科教授)

エッセイ人材ビジネスか、それともハローワークか──職業紹介サービスにおける国と民間の関与
佐野 哲(法政大学経営学部教授)

フリーターの中高年齢化
太田 清((株)日本総合研究所主席研究員)

外国人労働力の導入
渡邊 博顕(JILPT主任研究員)

ワークシェアリングは雇用促進に有効だったか
小倉 一哉(JILPT主任研究員)

いずれも知的刺激満載のおもしろエッセイですが、ここでは冒頭の大竹・橘木ビッグ対談がお値打ちです。

テーマは最低賃金で、いうまでもなく、「最低賃金を引き上げると貧困解消に役立つ」という世間一般や法学者の「通説」を経済学で斬るなどという初等教科書嫁的な低レベルのものではなく、「最低賃金を上げると失業者が増える」という経済学者の「通説」を検証しようという中級クラスのものですが、カード・クルーガー対ニューマークの実証に基づく論争やワークフェア、ケインズ政策、低生産性企業の退場など最低賃金をめぐる様々な論点が的確に紹介されていて、わずか10頁ですが大変ためになります

しかし、ここでわざわざ取り上げたいのは、最低賃金の話ではなく、大竹文雄氏がそれにからめて取り上げているサラ金の金利制限の話です。こちらも、最低賃金と同様に、一知半解の徒輩が初等教科書嫁的知ったかぶったかを繰り広げたがる分野ですが、さすが我が国労働経済学の中堅の雄の大竹文雄先生、視野を広くとっていいバランス感覚を示しておられます。

>そうですね。私も最低賃金を引き上げる必要がないと考えているわけではありません。元々はそんなに引き上げる必要はないと思っていたのですが、消費者金融の研究をするようになって、経済学者が想定しているような合理的な行動をとらない、余裕がなくてそれができない人というのが実はかなりいるということがわかったわけです。だから、その人たちの行動を変えたり、企業がそうした人たちの弱みにつけ込めないようにする規制というのは必要かなと。

経済学者の発想でいくと、消費者金融の話なら、高金利でも喜んで借りているのだからいいじゃないか、低賃金労働についても本人がそれでいいというならいいではないかというのが普通の考えなんです。でも、例えばパチンコがしたくてつい消費者金融に駆け込む、今遊ぶ金が欲しいから、あるいは今日生活していくために日雇い労働を受け入れるということが現実には往々にしてあるわけです。規制を設ける際には、人は必ずしも合理的に行動しないということを前提にして、そうした事態を防ぐようなものにしていくことが必要かと思います。

アリとキリギリスではないですが、その時はいいと思っても長い間そういうことをしていたら、結局そこから抜け出せなくなって、後々悔やむことになるのではないか。・・・

どこぞのリバタリアン氏は、大竹文雄氏に対しても

>パターナリズムってわかる? これ、ほめてるんじゃないよ。日本語では「家父長主義」と訳し、君のように「かわいそうな貧乏人を助けてあげよう」という善意で規制を強化して、結果的には日本経済をだめにすることをいうんだよ

てな調子で「馬を射る」つもりでしょうかね。

ちなみに、サラ金問題については本ブログでも「朝三暮四ザル」で語ったことがあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_1616.html(パターナリズムは悪か?)

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コメント

これも派遣とあれで、単に高金利を規制するのがいいのかという視点ですね

すごく「意識」されて書かれていますが、このトピックについて私のような一般人に専門家が解説をしていただけるならとても有益なことです。放任派の意見も規制派の意見も、そのどちらとも断言できない連続した部分に属する(バランス感覚のある?)人たちの意見も私は聞きたい。

パターナルか否か、という前に「最賃引き上げと雇用」と「上限金利規制」を対比されると恐ろしい考えが頭によぎります。
一番助けが必要な人々(朝三暮四サル)がイリーガルな金融に流れて破滅することと同じことが、労働の分野で起こるのではないかと。最賃の問題ではありませんが、マクドナルドの裁判などはその兆候であるのではないかと不安に思っています。

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