再就職斡旋はしろというのかするなというのか
いうまでもなく、常識のある人であれば誰でも判っているはずのことではありますが、非公務員型独立行政法人の職員の労働法適用関係は、まったく民間の労働者です。労働組合法も労働基準法も、男女均等法も育児休業法もパート労働法も、とにかく民間労働者であって公務員扱いではありません。え?そんな分かり切ったことを何を今更書くのか、って?
どうも政府部内には必ずしもこの常識を弁えていらっしゃらない方もいるような気がするものですから。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080325-OYT1T00803.htm
>政府は25日、独立行政法人による職員の関連企業への再就職あっせんを全面禁止することなどを定めた独立行政法人通則法改正案の概要をまとめた。
国家公務員が独法に再就職し、さらに関係企業に移る流れを断ち切ることで、不透明な天下りを封じる狙いがある。政府は4月中旬にも閣議決定し、今国会に提出する考えだ。
改正案では、国家公務員に義務付けられた再就職規制に準じ、〈1〉独法から関連企業への再就職あっせん〈2〉独法職員から関連企業に対する違法な求職活動〈3〉関連企業に再就職した独法職員から独法への違法な働きかけ――の3点を禁止する。
2005年度(一部は06年度を含む)の集計によると、101の独法が出資する関連企業は236社あり、こうした企業に役員として再就職した独法職員は230人に上る。独法と関連企業との契約の約9割は随意契約で、「再就職の見返りに契約を結んでいる」という批判もあるため、規制することにした。
改正案にはこのほか、理事長職と監事職への公募制導入を盛り込んだ。また、独法の業務の評価体制について、各府省に置いている評価委員会を廃止し、首相が任命する新たな評価委員会に一元化することにした。監視機能を強化するのが目的で、評価委には、独法の理事長や監事の解任を所管する閣僚に勧告する権限を与える方針だ。
政府は昨年12月に独立行政法人整理合理化計画を閣議決定し、独法を16削減して85法人とすることや独法と関連企業との関係を見直すことなどを決めている。
国家権力を背景にした公務員の再就職斡旋については、そもそもその地位の独自性からして特別の取扱いが論じられるのはおかしなことではありません。しかし、非公務員型独立行政法人とは、そういう直接国民の権利義務を左右するような権力行使に携わる機関ではないはずでしょう。だから、労働法適用上、完全な民間労働者として扱っているのでしょう。
彼らには労働法制の一つとして、高年齢者雇用安定法も適用されます。公務員ではないのですから当然ですね。ですから、各独立行政法人には65歳までの継続雇用義務が課せられています。公務員のように60歳を超えたら再任用するかしないかは当局次第というわけにはいきません。
そして、同法第4条第1項には、
第四条 事業主は、その雇用する高年齢者について職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備を行い、並びにその雇用する高年齢者等について再就職の援助等を行うことにより、その意欲及び能力に応じてその者のための雇用の機会の確保等が図られるよう努めるものとする。
第15条第1項には、
第十五条 事業主は、その雇用する高年齢者等(厚生労働省令で定める者に限る。以下この節において同じ。)が解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他これに類するものとして厚生労働省令で定める理由(以下「解雇等」という。)により離職する場合において、当該高年齢者等が再就職を希望するときは、求人の開拓その他当該高年齢者等の再就職の援助に関し必要な措置(以下「再就職援助措置」という。)を講ずるように努めなければならない。
ちなみに、高年齢者等職業安定対策基本方針には、この再就職援助措置の内容について「関連企業等への再就職のあっせん」を明記しています。トヨタの労働者が退職する際にはどこか子会社に斡旋しろよ、と。そのことの当否はいろいろ議論があるかも知れません。民間企業でも取引先との間で「再就職の見返りに契約を結んでいる」というような実態が見られるのかも知れません。しかし、日本国政府は(非公務員型独立行政法人を含む)民間企業に対して、関連企業に再就職の斡旋をしろと言っているわけです。
ところが、一方でそれは禁止するというわけです。この間の調整をどのようにされるおつもりなのか、まさかそんな下らん法律のことなんか気がついていなかった、とは言わないでしょうね。私が2回も改正に関わった法律なんですぜ。
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>非公務員型独立行政法人
なんと言うか、トカゲの尻尾切り。あるいは、そもそもが再就職先として存在しているので「そこんとこ、ちゃんと空けといてね」ということ?
しかも、国民からは公務員の仲間に見える人達だし。災難ですな。
投稿: 赤木さん、頑張って! | 2008年4月 2日 (水) 17時32分
むしろ、これは全く逆なのかな?結果的に「解雇等が禁止される」という風に読むべきなのか?
> 解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他これに類するものとして厚生労働省令で定める理由(以下「解雇等」という。)により離職する場合において
投稿: 赤木さん | 2008年4月 2日 (水) 17時43分