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2008年4月

2008年4月30日 (水)

第1回介護労働者の確保・定着等に関する研究会

先日紹介した「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」の第1回目の資料が公開されました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_f3af.html

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/04/s0418-3.html

座長は労働経済学の大橋先生、委員は厚生出身の河さん、労働出身の北浦さん、駒村先生、佐藤先生、堀田先生、皆川先生という面子です。

「研究会で議論していただく論点」というのがあって、

>1 今後、介護労働が目指す姿 労働者がやりがいを持って働き続けられるような、介護労働のあるべき姿は何か

2 介護労働市場を踏まえた、人材確保・定着のための取組 少子高齢化が進展し、2014年には140万~160万人の介護労働者が必要とされるなかで、将来にわたって安定的に人材を確保していく仕組をどのように構築していくか

(1) 潜在的な有資格者の参入

(2) 多様な人材の参入・参画

(3) ハローワーク等のマッチング機能や募集・採用ルートの検証

3 介護分野にふさわしい雇用管理・処遇の在り方 雇用管理・処遇の改善を通じて、魅力ある仕事として評価され選択されるためには、どのような雇用管理・処遇が介護分野にふさわしいか

4 介護分野における生産性の向上について 労働集約型産業であり、介護報酬の枠組にある介護労働分野において、介護労働者の生産性向上について、どのように考えていくか

5 その他 ・必要に応じ、適宜論点を追加

もちろん、3の雇用管理・処遇の改善が中心なわけですが、そのためには生産性向上というのが現下の経済政策の基本線なので、4を出さざるを得ない。

ただ、これはほかのサービス業にも多かれ少なかれいえることですが、介護のような誠に感情労働的色彩の強い対人サービス業務の場合、そもそも「生産性向上ってなあに?」という疑問に答えるのが相当難しいような。

まさか、マクドナルド方式で、セルフサービス化を進めるのが生産性向上っていうわけにはいかないでしょうし。先日の経済産業研究所の森川論文に従って、要介護老人が人の少ない田舎にいたんじゃ介護の生産性が上がらないから、都会に集めてまとめて介護できるようにするのが生産性向上というのも、かなり批判を浴びそうだし。

生産性とはつまるところ付加価値生産性なんだからと考えれば、要はたくさんの金が介護事業に回るようになれば生産性が高まったことになるわけで、結局介護報酬の問題に集約されてしまうような気もしますし。

(このサービスにおける生産性の話題は、以前本ブログでちょっと展開してみたことがあります)

ああ、そういえば、上のリンク先のエントリーで話題にした「介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律案」、自民党と民主党が合意した奴というのは、これです。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16901016.htm

>介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律案

 政府は、高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護従事者等が重要な役割を担っていることにかんがみ、介護を担う優れた人材の確保を図るため、平成二十一年四月一日までに、介護従事者等の賃金水準その他の事情を勘案し、介護従事者等の賃金をはじめとする処遇の改善に資するための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
   附 則
 この法律は、公布の日から施行する。

     理 由
 高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護従事者等が重要な役割を担っていることにかんがみ、介護を担う優れた人材の確保を図るため、平成二十一年四月一日までに、介護従事者等の賃金水準その他の事情を勘案し、介護従事者等の賃金をはじめとする処遇の改善に資するための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

これだけです。1条だけだから、「第一条」という見出しもない。

とにかく、来年の4月1日までに「介護従事者等の賃金をはじめとする処遇の改善に資するための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」というもっぱら宣言するだけの、国民の権利にも義務にも何にも関係のない、つまり法律事項の全くない法律ということですね。

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欧州労連の経済政策要求

4月28日、欧州労連は「Time to Act」(行動の時)という20頁にわたる経済政策に関する要求書を公表しました。

http://www.etuc.org/IMG/pdf_25-04-08TIME_TO_ACT__Ronarld_.pdf

欧州労連が労働者の雇用のためにマクロ経済拡大を志向していることはこのブログでも何回も取り上げてきているところですが、この文書はそれを詳細に示しています。

II. The danger of a long slump(長期不況の危険)

III. Monetary policy: The first line of defense is missing in action(金融政策:第1防衛線は動こうとしない)

IV. Fiscal policy: The second line of defense is in chaos(財政政策:第2防衛線ははちゃめちゃだ)

V. The super strong euro: Harmful neglect of the euro exchange rate(超強いユーロ:有害な為替相場の無視)

VI. Conclusions: Monetary union’s policy makers urgently need to put their house in order.(結論:通貨同盟の政策担当者は直ちに家を整えろ)

つまり、欧州中央銀行は頑固で何もせんから、各国の財務当局は一斉に財政拡大政策をとれ、と。

中の方で、こういう言い方をしています。

>Inflation is not a monetary phenomenon right now.(インフレはいまや貨幣現象ではない)

>The euro will continue to deliver further disinflation.(ユーロは更なるディスインフレを引き起こし続けるだろう)

>Wages are not inflationary but disinflationary.(賃金はインフレ的どころかディスインフレ的だ)

>Automatic wage indexation and inflationary spirals: Not the ECB’s nightmare but a fairy tale(自動的な賃金インデクセーションがインフレスパイラルを惹き起こすなんて、欧州中銀の悪夢どころか御伽噺だ)

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偽装請負と日雇い派遣の再検討

『時の法令』に4月15日号から隔旬(毎月)連載で「21世紀の労働法政策」を載せておりますが、今回から本論に入りました。「第1章 労働者派遣システムを再考する(1) -偽装請負と日雇い派遣の再検討」 です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/21seiki02haken01.html

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2008年4月28日 (月)

日本電産永守社長発言をめぐって

話がややこしくなってきました。

はじめはこの朝日の記事です。

http://www.asahi.com/business/update/0423/OSK200804230044.html

>「休みたいならやめればいい」急成長の日本電産社長

> 「休みたいならやめればいい」――。日本電産の永守重信社長は23日、記者会見で「社員全員が休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる。たっぷり休んで、結果的に会社が傾いて人員整理するのでは意味がない」と持論を展開。10年間で売上高が6倍超という成長の原動力が社員の「ハードワーク」にあることを強調した。

これが批判を浴びました。

4月26日のMayDayじゃないメーデーで、連合の高木会長は、

http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/rengonews/2008/20080426_1209016677.html

>3日前の4月23日、日本電産の社長が、記者会見で「休みたいならやめれば良い」という趣旨の発言をしたと伝えられています。この会社の時間外・休日労働の実態等を調べてみたいと思いますが、「社員全員が休日返上で働く会社だから成長できる」と発言するなど、まさに言語道断、労働基準法という法律が雇用主に何を求めていると思っているのか、問い糾してみなければなりません。

と発言。

これに対して日本電産のHPに、永守社長はそんなこと云っていない、という文章が載りました。

http://www.nidec.co.jp/news/indexdata/2008/0428/CMFStandard1_content_view

>4月23日の決算発表記者会見において、弊社社長永守が「休みたいならやめればいい」と発言したかのような記事が掲載されましたが、そのような事実はなく、誠に遺憾に思っております。

 永守がお伝えしたかった主旨は以下の通りでございます。
 当社は雇用の創出こそが企業の最大の社会貢献であるとの経営理念のもと、安定的な雇用の維持が、社員にとっても最重要であると考えております。
 このような考え方に基づき、これまで経営危機に瀕し、社員の雇用確保の問題に直面していた多くの企業の再建を、一切人員整理することなく成功させて参りました。

 「ワークライフバランス」につきましては、当社では、上記の安定的な雇用の維持を大前提に、「社員満足度」の改善という概念の中の重要テーマとして位置づけております。
 このような考え方に基づき、社員の満足度向上を目的として、2005年度から「社員満足度向上5ヵ年計画」をスタートさせ、2010年には業界トップクラスの社員満足度達成を目指し、推進中であります。

 現に、社員の経済的処遇面に関しては、年々業界水準を上回る率で賃金水準を改善してきており、本年度も、平均賃上げ率は業界水準を大きく上回る6%にて実施することと併せ、年間休日も前年比2日増加させております。尚、休日については、来年度以降も段階的に増加させていく予定であります。
 加えて、男女ともに働きやすい会社を目指し、昨年4月にはポジティブ・アクション活動の一環として、家庭と仕事の両立を支援する目的で新たな制度の導入もし、更なる社員満足度向上に向けて努力を続けております。
     
 以上が、永守が記者会見で申し上げた考え方の要旨でありますので、皆様のご理解を賜りたくお願い申し上げます。

まあ、要旨はそういうことなんでしょうが、いささか舌が滑ったところもあったのではないか、と。

ただ、実はこの問題は突っ込むとすごくディープな話になります。単純素朴にとんでもない発言や、では済まない。

ポイントは、永守社長はほかのいろんな会社の社長さんたちよりも、遥かに深く「安定的な雇用の維持が、社員にとっても最重要」と信じ、「企業の再建を、一切人員整理することなく成功」させてきたことを誇りに思っている方であろうということです。

他の何よりもただひたすら雇用の安定が大事であり、人員整理は一切しないという信念を追及しようとすると、労働時間短縮だのワークライフバランスだのといった寝言、おっと失礼、2番目3番目ぐらいに大事なことは、まあ2の次3の次ということになるのは、これはやむを得ないことと云うべきではないでしょうか。

実際、日本でなぜ時間外労働の法的な上限規制がされてこなかったかというと、そんなことをするといざ不況の時に残業削って雇用を維持するというのが困難になり、ひいては解雇をせざるを得なくなるから、と、これは労働基準法研究会報告が何回も云ってることです。

ですから問題は、そんな長時間労働をしてまで、ワークとライフのバランスもとらないで、ただひたすら雇用の安定のみを追及するんですか、という話なのであって、その裏腹にあるのは、人間らしい働き方をする代わりに、不況の時にはやむを得ずクビになるかも知れないね、というのをどこまで認めるかという話でもあるわけです。両者はトレードオフなんであっていいとこ取りというわけにはいかない。そこんところを抜きにして表面的なバッシングで済ませてしまうのはもったいない話なんです。

参考:

http://homepage3.nifty.com/hamachan/espworklifebalance.html(労働時間短縮とワーク・ライフ・バランス『ESP』2007年6月号)

>また、雇用維持という目的を家庭生活との両立の上位に置かないということは、整理解雇法理の一定の緩和というインプリケーションも持つ。アメリカという異常例を除き、先進国で解雇を使用者の恣意に委ねている国はないが、日本の整理解雇法理は欧州諸国の解雇規制に比べても過度に抑制的であり、そのツケが長時間労働や遠距離配転にしわ寄せされているという面もある。これらも含めてさまざまな規制間のバランスについて、社会的な検討が行われることが望ましい。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roubenflexicurity.html(解雇規制とフレクシキュリティ『季刊労働者の権利』2007年夏号)

>最後に、現行の整理解雇法理については労働法制全体の観点から抜本的な見直しが求められているように思われる。それは福井・大竹編著が言うように「経営判断、解雇の必然性、解雇者選定などは、企業固有の経営的、技術的判断事項であって、裁判所がよりよく判断できる事柄とは言えない」からではない。むしろ逆であって、この法理が形成された1970年代という時代の刻印を強く受けているために、専業主婦を有する男性正社員の働き方を過度に優遇するものになってしまっているからである。

 解雇回避努力義務の中に時間外労働の削減が含まれていることが、恒常的な時間外労働の存在を正当化している面があるし*16、配転等による雇用維持を要求することが、家庭責任を負う男女労働者特に女性労働者への差別を正当化している面がある。そして、何よりも非正規労働者の雇止めを「解雇回避努力」として評価するような法理は、それ自体が雇用形態による差別を奨励しているといってもいいくらいである。

 もちろん1970年代の感覚であれば、妻が専業主婦であることを前提にすれば長時間残業や遠距離配転は十分対応可能な事態であったし、非正社員が家計補助的なパート主婦やアルバイト学生であることを前提とすれば、そんな者は切り捨てて家計を支える正社員の雇用確保に集中することはなんら問題ではなかったのかも知れない。

 しかし、今やそのようなモデルは通用しがたい。共働き夫婦にとっては、雇用の安定の代償として長時間残業や遠距離配転を受け入れることは難しい。特に幼い子供がいれば不可能に近いであろう。そこで生活と両立するために、妻はやむを得ずパートタイムで働かざるを得なくなる。正社員の雇用保護の裏側で切り捨てられるのが、パートで働くその妻たちであったり、フリーターとして働くその子供たちであったりするような在り方が本当にいいモデルなのかという疑問である。

 近年ワーク・ライフ・バランスという言葉が流行しているが、すべての労働者に生活と両立できる仕事を保障するということは、その反面として、非正社員をバッファーとした正社員の過度の雇用保護を緩和するという決断をも同時に意味するはずである。「正当な理由がなければ解雇されない」という保障は、雇用形態を超えて平等に適用されるべき法理であるべきなのではなかろうか。この点は、労働法に関わるすべての者が改めて真剣に検討し直す必要があるように思われる。

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2008年4月26日 (土)

遺伝子差別禁止法

それに対して、こちらはベタ記事ですが、中身の重要性は大きなものがあります。標題は「保険差別」といっていますが、雇用差別も含まれ、このブログの観点からはそれが重要です。

http://www.asahi.com/science/update/0425/TKY200804250047.html

>米上院は24日、保険会社が遺伝子診断の結果によって保険加入を断ったり保険料を変更したりすることや、雇用者による就職差別などを禁止する「遺伝情報差別禁止法案」を95対0の多数で可決した。同法案は、来週にも下院でも可決され、ブッシュ大統領が署名して成立する見通し。

 米国では、将来、がんなどの重い病気になる可能性を知るため、個人のDNAを採取して塩基配列を調べる遺伝子診断が急速に普及している。同法案は、診断結果が自分に不利な形で使われることを恐れ、受診をためらう人もいることを背景に提案された。

この問題は、これまでどちらかというと個人情報保護の問題として論じられてきたわけですが、しかし隠せばいいという話でもないわけだし、正面から差別問題としてアプローチする必要があるという議論も出てきていたところです。

より一般化していうと、遺伝子情報だけの話ではなく、人がそれを知って差別扱いする可能性がある情報を、個人情報だとして保護するという方向と、むしろそれが皆に知られることを前提に差別を禁止するという方向があるのでしょう。

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松下電器子会社の偽装請負、直接雇用成立を認定

世間の関心は長野の聖火リレーに集中している今日この頃ですが(まあ、ウヨもサヨも、固有名詞を入れ替えても同じロジックを喋らなきゃいけないんじゃないかとちらりとでも思う心の余裕はないようですな、それはさておき)、今朝の朝日の1面トップは例の松下プラズマディスプレイの偽装請負の高裁判決でした。

http://www.asahi.com/national/update/0425/OSK200804250070.html

ここはやはり、一昨年来偽装請負キャンペーンを張ってきた朝日新聞としては、1面トップでしょう、というところです。

>違法な偽装請負の状態で働かされていた男性について、大阪高裁が25日、当初から両者間に雇用契約が成立しているとして、解雇時点にさかのぼって賃金を支払うよう就労先の会社に命じる判決を言い渡した。就労先で直接、指揮命令を受け、実質的にそこから賃金支払いを受けていた実態を重視。「請負契約」が違法で無効なのに働き続けていた事実を法的に根拠づけるには、黙示の労働契約が成立したと考えるほかないと述べた。事実上、期間を区切ることなく雇い続けるよう命じる判断だ。

判決はまず、請負会社の社員だった吉岡さんらの労働実態について「松下側の従業員の指揮命令を受けていた」などと認定。吉岡さんを雇っていた請負会社と松下側が結んだ業務委託契約は「脱法的な労働者供給契約」であり、職業安定法や労働基準法に違反して無効だと判断した。

 そのうえで、労働契約は当事者間の「黙示の合意」でも成立すると指摘。吉岡さんの場合、04年1月以降、「期間2カ月」「更新あり」「時給1350円」などの条件で松下側に労働力を提供し、松下側と使用従属関係にあったとして、双方の間には「黙示の労働契約の成立が認められる」と認定した。この結果、吉岡さんはこの工場で働き始めた当初から直接雇用の関係にあったと結論づけた。

 松下側が06年2月以降の契約更新を拒否したことについても「解雇権の乱用」で無効と判断した。

 さらに、吉岡さんが期間工として直接雇用された05年8月以降、配置転換で単独の作業部屋に隔離されたことについて、「松下側が内部告発などへの報復という不当な動機や目的から命じた」と認定した。

 昨年4月の大阪地裁判決は「偽装請負の疑いが極めて強い」として、就労先には労働者を直接雇用する義務が生じるとの判断を示す一方、雇用契約の成立は否定していた

うーーん、「黙示の雇用契約」論ですか。かつて派遣法が出来る以前には、請負と称する実質労働者供給事業について、そういうロジックが用いられたことはあるんですが、派遣法が出来てそれが合法化されたあとではほとんど用いられなくなった議論ですが、久しぶりに出てきました。

ただですね、かつても、黙示の契約論にはかなり批判も強くて、最高裁に上がって維持されるかどうかはかなり疑問な面もあります。

わたしは、そもそも派遣であれ、労供であれ、請負であれ、労働法制は契約で判断するのではなく、実態で判断するのが原則と思っているので、無理に契約論にはめ込む黙示の契約論にはいささか疑問があり、契約はともあれ実質に応じて使用者責任を負うというのが一番すっきりすると思っているのですが、それは法律家の発想とはずれているんでしょう。

まあ、いずれにしても注目すべき判決が出されたことには違いありません。そのうち判決文もアップされるでしょうから、その段階でまた詳しいコメントを。

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2008年4月25日 (金)

就職氷河期世代のきわどさ

総合研究開発機構から、『就職氷河期世代のきわどさ―高まる雇用リスクにどう対応すべきか』と題する報告書が昨日出されました。

http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n080424_209.html

これは何を措いても読まなければなりません。なぜなら、目次をご覧ください。

I.総論
新たな雇用制度設計を迫る非正規雇用の増加-非正規雇用増加の背景と評価-

II.各論
非正規社員の構造変化とその政策対応 阿部正浩
人事管理からみた若年非正規雇用問題 荻野勝彦
非正規雇用を考える-企業に視点を置いた雇用政策を- 佐野 哲
若年就労問題に対してより強力な取組みを 本田由紀

III.資料編
英国労働党政権における「福祉から雇用へプログラム」
  -若年失業者ニューディールを中心に(ヒアリング配布資料) 藤森克彦
スウェーデンの若年者失業問題 小川晃弘
就職氷河期世代の老後に関するシミュレーション 辻 明子

新聞報道等では、

>70 万人を上回る大規模な将来高齢生活困窮者に対する生活保護費用は累計で約20 兆円-すでにみてきたように現在問題視されている非正規雇用のなかでは、就職氷河期に大量に発生した非正規雇用者の規模の大きさが目立っている。バブルが崩壊する前の非正規雇用者比率、無業者比率とバブル崩壊後に経済状況が悪化した時期に大幅に上昇した比率との差を景気悪化による需要要因と考えて、就職氷河期を通じて需要要因により増加した分の非正規雇用者、無業者の規模を試算すると120 万人程度となる。
新卒段階で正規採用されなかった若年層の正規雇用への転換は難しく、彼らの大部分が低水準の賃金のまま年金対応もできずに高齢化に突入するという前提で生活保護に必要となる追加支出を試算すると約20 兆円程度の規模となり、社会的にも深刻な影響を与える規模となる。

という脅しのところが注目されているようですが、

>非正規雇用から正規雇用への転換のためには、研修や教育などを通じた雇用者の能力向上が必要とされることはいうまでもない。しかし、そのための対応を一方的に雇用者に追わせることは現実的な解決策とはいい難い。日本では未だに外部労働市場は十分発達しておらず、雇用者に対する企業の能力評価の仕組みも整備されていない。
効率的な外部労働市場の整備が急がれるが、そのためには個別の労働の内容とそれに対する報酬の関係を明確化し、公正に評価できるような基準作りが必要となる。さらに、法的な強制力を持つ雇用契約に関する基準設定も必要となると考えられる。現行の制度の下では、ジョブカードのような仕組みを導入しても企業の自主的な判断で非正規雇用から正規雇用への転換を受け入れる可能性は限られている。非正規雇用から正規雇用への転換を実現するためには、ジョブカードなどで一定の資格要件を満たすものについては一定比率での採用を義務づけるなどの措置を伴わない限り実効性は期待できない。

と、かなり強硬な議論も提起しています。これは本田さんの主張のようですね。

>学校教育が就職のみを目標とすることは必ずしも望ましい姿とはいえないが、経済社会環境の変化に対応しながら就職に結びつくような方向へ教育内容を変革していくことは必要である。そのためには受け入れ先である企業側の積極的な関与も必要であり、学校、企業、行政がそれぞれの役割を果たしながら制度変革を行うことが求められる。

この辺もレリバンスですなあ。ここまでは総論ですが、後ろの方の本田さんの労働法制について触れたところはちょっといささかというところがありまして、

>このような事態を改善するためは、個別の労働の中身とそれに対する報酬の対応を可能な限り正当かつ公正なものとするためのルールや基準を明確化することが必要である。具体的には、正社員・非正社員のいずれについても、採用や配属・処遇の決定に際して、個々の仕事の内容や範囲、労働者の能力・貢献に対する評価の方法や賃金の基準について文書等により明示し、労働者側からの個別的・集団的な交渉・協議のプロセスを経て合意を形成した上で実施することを雇用者側に義務付けるべきである。

これは、一歩踏み間違えると、将来起こりうるありとあらゆることをあらかじめ雇用契約に書くことができるはずだから、不完備契約なんかあり得ない、というどこかの大学院大学の方と似た議論になりかねません。実のところ、労働のルールはある程度大まかな集団的なものでしかあり得なくて、むしろ何か揉めたときの解決のルールこそが大事なんです。

労務屋さんこと荻野さんのパートでは、

>世間の一部には「解雇規制の緩和・撤廃」を若年非正規雇用対策として主張する意見があるので、これから検討してみたい。

と、その根拠の薄さを指摘しているところが熟読玩味に値しますが、わたくしには最後のこの一節がなかなか効きました。

>企業の長期存続とそのための人材育成に強い信念を持っているオーナー経営者であれば、あるいは一時的な業績悪化、ひいては赤字に陥っても、技能伝承と人材育成の観点から継続的・安定的に新規採用を行うかもしれない。オーナー経営者であればこそ、リターンを求める投資家は存在せず、業績悪化に対して外部から責任を問われることもないからだ(もっとも、メインバンクの深い理解は必要だろうが)。
しかし、現実の多くの企業にとっては、ことはそう簡単ではない。短期のリターンのみに強い関心を持つ投資家が強い発言力を持つ企業では、目先の利益のために人材育成を犠牲にせざるを得ない場面もあるかもしれない。もちろん、経営の規律を失って放漫に陥ることもあってはならないわけで、経営者としても難しい舵取りを迫られるところだろう。
逆にいえば、経営者が業績と人材育成のバランスを取りやすいような会社制度のあり方というのも、考えられてもいい課題なのかもしれない。

このブログでも何回か触れたコーポレートガバナンスと労働の関係ですね。

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ユースポリシー2008

昨日新聞記事で紹介した公明党のユースポリシー2008ですが、公明党HPのここにありました。

http://www.komei.or.jp/youth_site/temp/youthpolicy2008.pdf

ここでの話に関係ありそうな項目は、

>4.未来の人材づくり

(教育環境の充実)

・ 教育関連予算をより一層拡充します!
→大学の入学金準備をはじめ、教育費の負担が家計に重くのしかかっています。意欲と能力のある学生に家庭の経済状況による教育格差を生まないため、入学一時金等の奨学金制度などの教育関連予算を一層拡充していきます。

・ 大学院生の学費、生活費を支援充実させます!
→ロースクールや今年度からスタートした教職大学院をはじめ、大学院の重要性が高まっています。意欲や能力さえあれば、誰でも学べるように、学費や生活費支援を拡充します。

>(職業教育・プロフェッショナルの育成)
・ 学校教育における職業能力開発教育を強化します!
→学校教育が雇用保障に結びつきにくい状況を改善します。大学・専門学校等で職業能力形成に役立つ「実践型教育プログラム」を充実・普及させます。

例の「職業レリバンス」はこれですな。

ただ、これが逆にいうと大学でブンガクやテツガクやってるようなセンセにとってはますます肩身が狭くなるという副次的効果をもたらすことも念頭においておく必要があります。経済財政諮問会議の専門調査会でもちらりと申し上げたことですが、

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/15/work-s.pdf

>いずれにしても、日本のような大衆高等教育社会において、高等教育レベルの職業的な意義をいかに高めていくかということは、実はそう簡単な話ではないだろう。言うは易しだが、資料1の3頁で括弧書きにしたが、大学教員の労働市場に大きな影響を与えることになる。文部行政が今まで学術中心型の教育の拡大を行ってきて、そのための人材を多数養成し、大学院までどんどん新設してしまった。しかし、今それが大きな問題になっている中で、それすら要らない、むしろもっと実学的な、実務者を連れてきて教える仕組みにしていくべきということにはシンパシーを感じるものの、それを行うと社会的に大騒ぎになる可能性があり、そこまで議論する必要がある。50、60 年代の大学進学率がそれほど高くなかった時代の方が、むしろそういう改革をやり得たはずなのに、そのときにはうまくいかなかった。今の状況でそれをどうするのかを考えると、私は根が実務家なので、想定される多くの大学の先生方の抵抗に耐えてでも実行すべきだというだけの力はあるのかな、という感じを持つ。

まあ、逆にいうと、だからこそ公明党のような庶民感覚の政党にこそそういう蛮勇を振るうような改革ができるのかも知れませんがね。

あとは労働市場関係です。

6.未来の仕事づくり

(若年層の雇用促進)
・ 仕事に就きたい人の就労支援とセーフティネットを整備します!
→過去の職業訓練の内容がわかる「ジョブカード制度」の推進でフリーターを応援。「働くこと」への様々な悩みが相談でき、就労まで支えてくれる「地域若者サポートステーション」を拡充(100ヶ所へ)。ネットカフェ難民等の相談・支援をするセーフティネット対策を強化し
ます。

・ 派遣・パートなどの働き方を見直します!
→劣悪な条件の違法派遣を一掃。正社員と同じ仕事・責任を担うにも関わらず賃金や福利厚生が低いパート社員・派遣社員など非正規労働者の待遇を改善(交通費支給など)します。ライフスタイルに合わせて短時間就労とフルタイム就労を柔軟に移行できる短時間正社員制度など多様な働き方を応援します。

(職場復帰やチャレンジ支援)
・ 育児休業制度の使いやすさを向上させます!
→育児休業制度取得の向上を目指し、育児休業給付金の一括支給や短時間勤務による部分休業にも給付されるよう制度を改正します。

・ 職場復帰のための短時間勤務制度を普及促進します!
→育児休業からの復帰後の柔軟な働き方を可能とするため、一日あたりの労働時間や週当たりの労働日を減らす短時間勤務制度の普及・定着を促進します。

・ スキルアップの機会を拡大します!
→教育訓練給付にかかる自己負担分の後払い制度導入や、公共職業訓練の土日・夜間の開設をめざします。

・ 公務員再チャレンジ試験の対象を拡大します!
→公務員再チャレンジ試験の対象を拡大し、より多くの若者にチャレンジの機会を提供します。

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大阪の社会・労働関係専門図書館の存続を求める会

大阪府の橋本知事が発表した財政再建プロジェクト案で大阪府労働情報総合プラザを7月末で廃止することとされていることに対して、存続を求める運動が始められたようです。

http://rodoshomei.web.fc2.com/

>大阪府知事 橋下 徹様

要望書  

 先般、大阪府財政再建プロジェクト試案が発表されました。同試案によりますと、大阪府が設置し財団法人大阪社会運動協会が運営を受託している大阪府労働情報総合プラザについては廃止、同協会への補助金はゼロになるということでありますが、これは社会・労働分野を専門とする研究者である私たちにとって重大な損失と考えます。

 大阪社会運動協会は1978年の設立以来、『大阪社会労働運動史』(既刊8巻、現在9巻編纂中)の編纂とそのための資料収集に取り組み、集めた資料の専門性の高さについてはいうまでもなく、成果物としての同運動史のレベルの高さは言をまちません。大阪だけではなく、全国は言うに及ばず、遠くイギリスはケンブリッジ大学及びロンドン大学の図書館にも所蔵されている図書であります。

  同協会が2000年より大阪府労働情報総合プラザの運営を受託して以来、人件費の大幅削減を実現し、さらに8年間で利用実績を4倍に上げたという成果も聞き及んでおります(国立国会図書館「びぶろす」平成20年4月号参照)。すなわち、同協会の事業は貴職の政策課題である「財政再建、民間活力の導入」の好個の例として誇るべきものでこそあれ、その成果を全否定するような今回の試案にはまったく納得できません。これでは財政再建に向けたあらゆる努力を無に帰するに等しい暴挙と考えます。

 大阪府労働情報総合プラザと大阪社会運動資料センターは一体のものとして運用されてこそ、その資料の専門性の高さとレファレンス能力の高さを発揮することができます。図書館は文化遺産を次代に残す重要な責務を負い、かつ、専門図書館の価値は「建物と本」をモノとして見るような視点では語れない重要な財産、すなわち専門性の高い「人」を有していることにあります。専門図書館の宝である専門性の高い資料群と、それを使いこなせる人材を活かさずして大阪の再生がありえるでしょうか。しかも、先にも述べたとおり、貴職が掲げられている財政再建と民間活用という好個の例である大阪府労働情報総合プラザと大阪社会運動資料センターが、まさにその財政再建という旗印の下に運営の危機に陥るとすれば、なんとも皮肉な結果と言わざるをえません。

 大阪府労働情報総合プラザは中小企業の労務担当者及び社会保険労務士の利用が非常に多いことから鑑みても、中小企業の町大阪の福利に役立つ施設であることもまた明らかです。

 関西において社会労働関係専門図書館としての両図書館の所蔵資料の量と質は群を抜いており、大阪府労働情報総合プラザが廃止されると、研究・教育活動に大きな支障をきたします。大阪府の危機的財政状況については存じておりますが、私たち社会・労働関係の研究者にとって資料の宝庫である大阪社会運動資料センター及び大阪府労働情報総合プラザの存続を願い、しかるべき予算措置をとられることを貴職に切に要望するものであります。

これがどれくらいの意味のあるものなのか、東京にいるとよく判らないところもありますが、

>大阪社会運動協会の資料を含む大阪府労働情報総合プラザは、関西における随一の人事労務管理、労使関係の専門図書室です。関東には、労働政策研究・研修機構や法政大学大原社会問題研究所、東京都労働資料センターなどに専門図書室がありますが、関西でそれに比肩できるのは、唯一この専門図書室しかありません。(京都大学大学院経済学研究科 教授 久本憲夫)

というくらいの値打ちのある機関のようです。

日本の産業化の最前線を担って来た大阪から労働・社会問題の専門図書館をなくしてしまうのはもったいないといわざるを得ませんね。

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「労働は神聖である」岩波茂雄

Acd0804250303000p1 別に、皮肉でも何でもなく、産経新聞で岩波茂雄の書いた「労働は神聖である」という言葉を紹介しています。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080425/acd0804250303000-n1.htm

>長野県の農家の長男に生まれた茂雄は1913(大正2)年、東京・神保町で岩波書店を創業した。社のマークは働く姿を描いたミレーの「種をまく人」をイメージしたもの。この言葉をモットーに晴耕雨読を好んだ。昭和21年4月25日没。

まあ、しかし、正論欄を見ていても判るように、ネオリベ、リバタリアンとともに、むしろ右派コミュニタリアンも産経文化人の重要な一翼ですから、この言葉に共感を感じる土壌はあるのだと思われます。

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教員の超勤100時間超 京都市に55万円の支払い命令

産経から興味深い記事、

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080423/trl0804232310011-n1.htm

残業代は既にエグゼンプトになっている教師ですが、だからといって過度な長時間労働をさせると、こういう判決が出てくることもありますので、気をつけましょう。

>違法な残業を行わせたうえ健康保持のための安全配慮義務を怠ったとして、京都市立小、中学校の教員ら9人が市に総額約3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。中村哲裁判長(異動のため辻本利雄裁判長が代読)は、残業そのものの違法性は認めなかったものの、残業が月100時間を超えた教員について「勤務が過重にならないよう管理する安全配慮義務を怠った」として、市に55万円の支払いを命じた。

残業は違法じゃないけれども、やらせすぎると安全配慮義務が出てくるというわけです。これは民間企業の人事の人だったら常識ですが、教育界の方々にとっては(医療界の方々と同じように)あまり想像したこともなかったことかも知れませんね。

> 判決によると、原告側は授業の準備や部活動の指導などで月に約67~108時間の超勤があったと指摘。「教職員の残業を原則禁止する給特法に違反する」と主張し、慰謝料や未払いの賃金の支払いを求めた。

 判決で中村裁判長は残業について「自発的、自主的な側面がみられる」として違法性は認めなかったが、「市は教員が心身の健康を損なうことがないよう、勤務時間を管理する義務がある」と指摘。残業が月100時間超と、原告で最長だった中学校教員(47)について「校長は時間外勤務が極めて長時間に及んでいたと認識、予見できたのに改善措置を取らなかった」として安全配慮義務違反を認定した。

興味深いのは、少なくともこの記事だけからは、残業月100時間超の人も、特段倒れたりとかしていないようなのに、改善措置をとらなかったということで安全配慮義務違反を認めているらしいところです。

安全配慮義務は事実上結果責任じゃないかという批判も一部にありますが、そうじゃない傾向が現れてきたのかも知れません。ま、判決文を見ていないので、これ以上立ち入ったコメントはやめときますが。

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2008年4月24日 (木)

公明党のユースポリシー2008

一方、与党の公明党は、「ユースポリシー2008」と題して、若者政策を発表したようです。

http://www.asahi.com/politics/update/0423/TKY200804230267.html

>公明党は23日、20~30代をターゲットにした政策「ユースポリシー2008」を公表した。内閣官房に青年担当庁を新設し、青年担当相を置いて若年層が抱える問題に取り組むことが柱。次期衆院選のマニフェスト(政権公約)にも反映させ、この世代への浸透を図る。

 パート労働者の正社員なみの処遇、学校教育への職業訓練導入の普及促進なども盛り込んだ。積極的な社会参加を促すため、選挙権年齢の引き下げやインターネット選挙の解禁も掲げた。

興味深いのは「学校教育への職業訓練導入」ですね。職業レリバンス推進政策ということですか。

現時点ではまだ公明党のHPに載っていないようなので、詳細は判りませんが、興味深いところです。

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民主党の労働者派遣法改正案

昨日、民主党の「次の内閣」で、労働者派遣法の改正案とそれを含む非正規雇用対策が了承されたということです。

http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=13148

法案要綱はこれで、

http://www.dpj.or.jp/news/files/080423yoko.pdf

その骨子は、

>(1) 短期派遣→規制強化

(2) 日雇い派遣→禁止

(3) 派遣先と派遣元→共同雇用責任。派遣先の責任を強化

(4) 情報公開→契約料金、派遣労働者の賃金、マージン比率、派遣期間、教育訓練、社会・労働保険の加入状況とその保険料等

(5) 専(もっぱ)ら派遣→禁止規定の拡大

(6) 均等待遇原則の徹底

ということです。

均等待遇のところの条文は、

>労働者派遣をし、又は労働者派遣の役務の提供を受ける場合においては、労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、均等な待遇の確保が図られるべきものとすること。

と、なんだか変な日本語になっています。「労働者派遣をし」、「役務の提供を受ける」のはそれぞれ派遣元会社、派遣先会社のはずですから、それらが主語であれば、「均等な待遇を図る」と能動態でなくてはおかしいでしょう。「均等な待遇が図られる」と受動態で書くのであれば、その主語は派遣労働者でなければならないでしょう。まあ、労働契約法の国会修正みたいなもので、その辺が曖昧なところがいいのかも知れませんが。

日雇い派遣禁止のところは、

>派遣労働者に係る雇用契約は、期間の定めのないもの又は二月を超える期間の定めのあるものでなければならないものとすること。

やっぱり、どうして、派遣労働者に係らない雇用契約は、2ヶ月未満の期間や1日でもいいのか、どういう弊害の違いがあるのか、よく判りません。日雇いで働きたい人は山谷や釜が崎に行きなさい、そうすれば日雇い派遣みたいなひどい目に遭うことはないですよ、とでもいうんですかね。そっちの方がよっぽどアブナイように思いますが。

非正規労働対策は

http://www.dpj.or.jp/news/files/080423koyo.pdf

(参考)本ブログの過去エントリー

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_18a8.html(民主党が日雇い派遣禁止法案を提出?)

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新雇用戦略

昨日の経済財政諮問会議で、厚生労働省が提出した新雇用戦略が了承されました。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0423/interview.html

厚労省の資料はこれですが、

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0423/item4.pdf

数値目標が入って、若者は3年間で100万人の正規雇用化、女性は3年間で最大20万人の就業増、高齢者は3年間で100万人の就業増ということになっています。

有識者資料の方にはこの数値目標とともに、保育サービスの規制緩和などが要求されています。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0423/item5.pdf

大田大臣の説明:

>それから、次の「新雇用戦略」について、まず舛添大臣から、この「新雇用戦略」の御紹介がありました。舛添プランですね。フリーターを3年間で100万人正社員化すると。それから、女性の25から44歳、ちょうどM字型の底になるところですけれども、ここで20万人雇用を増やし、60代前半の高齢者で100万人雇用を増やすという発表がありました。それから、民間議員から、ぜひこれを進めるべきだという提案がありました。
 次のような発言がありました。
 この新雇用戦略の趣旨は、やはりこれから日本の潜在成長率の低下を食いとめるということが大事であって、その観点から言うと、この新雇用戦略ももちろん必要だけれども、海外からの労働力を積極的に受け入れるのかどうか、長期的な視野で考えていくタイミングに来ているのではないかという発言がありました。
 それから、別の民間議員から、この税と社会保障の議論は制度の問題をきっちりやっていきませんと、例えば103万円の壁とか130万円の壁というのがあるわけですね。ここを100万円前後を超えないようにという、結構大変な動きをしているわけで、有能な女性を社会として使いこなすことができないと。日本だけがM字カーブになっているわけで、この税の問題は早急に取り組んでいく必要があると。
 それから、上川大臣から、子供の視点という意味で、働くお母さんを持つ子供という視点があるし、もう一つ、社会人になるまでの子供の育つ過程ということを重視しなきゃいけないと。これが労働の質にもつながってくるわけで、福祉、教育、労働の縦割りの中で漏れていくところがないように、横断的、包括的に子供の成長を見ていくということが、人間力の形成に大事であると。
 それから、舛添大臣から、ヨーロッパでドイツ、フランス、イタリア、そういうところで外国人労働者の問題も研究してこられたようで、労働力の核という視点だけでとらえてはいけないと。やはりヨーロッパでは外国人労働者の子供たちが苦しんでいると。このソーシャルコストというものを考えなくてはいけない。専門的、技術的な人はいいけれども、単純労働力というのは問題だと。そういう意味で、介護労働者の問題も、このソーシャルコストをどうするかということを考えていかなくてはいけないと。
 それから、額賀大臣からは、アンケート調査の御紹介がありました。今、研修生のような形で雇われていても、技能研修とか、そういう形で雇われていても、雇っている側は必ずしもそういう形ではない、趣旨と違う雇い方をしている場合もあって、そういうことも含めて、きちんとルール、制度を整備していかなくてはいけないと。
 それから、民間議員から、この外国人労働力の問題ですが、訓練や教育をしっかりして、どういう政策をとっていくかを考えるべきだと。
 別の民間議員から、高度な技能者というのも、やはり人材が不足していると。それから、留学生が国内に来て、そこで長く日本で勤められるようにしていくということを考えなくてはいけないという御発言がありました。
 それから、これは甘利大臣ですが、日本は賃金を上げながら、国際競争力をつけていくということが大事で、高付加価値化に資する人材かどうかというのを重視しながら考えるべきだという発言がありました。
 以上のような議論の後で、総理から次のような御発言がありました。
 「新雇用戦略」では、今日示された案に沿って、この3年間に若者、女性、高齢者、障害者などすべての人が働きやすい、全員参加の経済を実現すべく、政府を挙げて取り組んでいくと。その際、今日示された2010年の目標が確実に達成できるように、政府を挙げて取り組むとともに、地方、経済界、労働界など関係するすべての方々に、この戦略の実現に向けて参画していただくことが必要だと。今後、舛添大臣、上川大臣には、今日の議論を踏まえて、実現への具体的取り組みを詰めてほしいと。

なぜか外国人の話が話題になっているようですが、これは財務省の資料で「外国人の活用」という項目が入っていたからでしょう。厚労省の資料では若者、女性、高齢者の次の4つめは「障害者等ー福祉から雇用へ」なので、関心のありかの違いがよく判ります。

外国人問題については舛添大臣の「労働力の核という視点だけでとらえてはいけないと。やはりヨーロッパでは外国人労働者の子供たちが苦しんでいると。このソーシャルコストというものを考えなくてはいけない。専門的、技術的な人はいいけれども、単純労働力というのは問題」というのが、きちんと問題を踏まえた発言ですね。

この点については、私は見ていないのですが、最近のサンデープロジェクトで、中川秀直氏と坂中英徳氏が1000万人の外国人移民を導入せよとぶち挙げたとかいう話も之有り、をいをい、その1000万人をちゃんと日本人とまったく差別なく扱うだけの用意は万端調えるお積もりなんでせうね、と思わずいいたくなります。

http://www.tv-asahi.co.jp/sunpro/

>大胆提言!移民受け入れが少子化日本を救う!
1000万人移民で「上げ潮」ニッポン


日本は人口減少社会に突入した。

日本の人口は2004年の1億2800万人をピークに減少が始まり、
このままだと100年後には現在の3分の1にまで減ると予想されている。
この問題が深刻なのは、出生率の低下はすでに30年以上前から始まっており、
もし少子化対策が進んで今後出生率が劇的に回復したとしても、
しばらくは働き盛りの世代の人口が減り続けるということだ。
つまり、日本社会にとって、労働力人口の減少は、待ったなしの問題なのである。
では、どうするのか?

今回のサンプロでは、
人口が減り続ける今後の日本は、国をオープンにして、
外国から移民を多数受け入れて、多民族国家として経済成長を目指すべきだと大胆な提言をしている中川秀直氏と、
人口危機を乗り越えるためには今後50年間で1000万人の移民を
受け入れるべきだと主張する坂中英徳氏を招いて、日本の将来像を探る。

人口の1割を外国人が占める「多民族国家」ニッポンが果たして実現するのか?
大胆提言だ!



≪出演≫
中川 秀直(自民党元幹事長) 
坂中 英徳(外国人政策研究所)

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2008年4月23日 (水)

荻野進介氏の城繁幸著書評

日経ビジネスオンラインで、リクルートワークスの荻野進介氏が、城繁幸氏の『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』を書評しています。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080422/153926/

荻野氏は、「Works」誌での私のインタビュー記事を書かれた方なので、興味深く読みました。はじめの方は、定例通り、内容の紹介なのですが、最後の一節がいささか辛口です。

>こうしたルポの合間で、著者は、昭和的価値観の源泉、日本企業に色濃く残る年功序列制度を激しく批判する。仕事内容によって賃金が決まり、実力によって昇進が決まるべきなのに、年齢や勤続年数が基準になるから、若者が雑巾がけをさせられる期間が長くなる。キャリア意識に目覚めた優秀な若者ほど見切りをつけてしまう、というわけである。

 年功序列を止めるために、職務給の導入を著者は主張するのだが、あまり現実的とは思えない。職務給とは仕事の中身によって決まる賃金である。例えばファーストフードやコンビニの店員といった非正規社員がそうだ。接客という仕事に時給単位で値段がついている。マニュアルがあるような、こういう定型的な仕事には職務給がうまく機能する。

 ところがこれを一般のホワイトカラーにあてはめて考えると、ことはそう簡単に行かない。部長や課長といっても、こなしている仕事は千差万別である。仕事の中身を細かく見て行き、それに応じた値段をつけるには膨大な作業が必要だ。異動の多い企業では、頻繁に改定しなければならず、そのための手間も計り知れない。

 また歴史的に見ても、1950年代に、当時の先進的な大手企業数社が競って職務給の導入を試みたが、どれも失敗している。著者は「官僚にこそ導入すべき」と説くが、実は戦争直後、アメリカの影響下で、実質上の職務給に近い職階制度を入れている。が、運用は形骸化。まず仕事ありきで、そこに人がつく欧米と違って、人がいて、その人次第で、仕事の中身が柔軟に変わるのが日本なのだ。

 働く人といえば男性の正社員を指し、新卒で入った会社に定年まで勤め上げることが正しい生き方だ、という価値観を捨て去り、雇用形態や性別・年齢を問わず、多様な働き方の実現を、という著者の主張には賛成する。しかし、それを目指すための職務給化は劇薬過ぎるのではないだろうか。

このあたりは、私が力説したこととほぼ同じです。

> 著者がいうほど昭和的価値観と平成的価値観は截然と分けられるものでもなく、いいところ、まだら模様。その結果、本書で取り上げられたようなアウトサイダーたちは、いつまでもアウトサイダーのままかもしれない。そんな気もしている。

ちなみに、「Works」誌の私のインタビュー記事はこれです。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/recruitworksjingi.html

http://www.works-i.com/flow/works/contents87.html

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EUの新差別禁止指令は障害者だけに?

>Commission to scale down anti-discrimination proposal

EurActiv.comによると、雇用以外の差別禁止指令案を提出しようと考えていた欧州委員会は、保守派の国の圧力により、対象者を障害者だけにする方向のようです。

http://www.euractiv.com/en/socialeurope/commission-scale-anti-discrimination-proposal/article-171843

>Due to resistance from conservative member states, the Commission is likely to backtrack on its plans for an anti-discrimination directive, proposing only to offer protection against discrimination on disability grounds.

Other forms of discrimination on the grounds of sexual orientation, age, religion or belief will be covered only by recommendations to member states.

Those familiar with the process say that the Commission's retreat is due to pressure from Conservative member states - and namely Poland - which seem to have difficulty accepting legislation against discrimination on the grounds of homosexuality or non-Christian religious beliefs.

In order to become law throughout the EU, a directive on anti-discrimination would require unanimity in the Council.

人種・民族については既に2000年の指令で、雇用以外の分野についても差別が禁止されていますが、それを性的志向、年齢、、障害、宗教及び信条にも拡大しようというのが欧州委員会の意図でした。

私の観点からすると、雇用以外の年齢差別って何を禁止するの?何歳から何歳までは義務教育というのも年齢差別じゃないの?何歳から年金貰えるってのも年齢差別じゃないの?あんまり形式的に進めない方がいいんじゃない?と思ってましたが、問題が起こったのはそっち方面じゃなかったようです。

記事で具体的に名前が挙がっているのはポーランドですが、ホモセクシュアルや非キリスト教徒を差別してどこが悪い!ということのようですな。これは、結構機微に触れる話なので、通すのは無理と判断したわけです。

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介護職員賃金アップ法案 自民・民主が修正協議

1月に民主党が介護労働者人材確保法案を国会に提出したということはこのブログでもお伝えしましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_bdea.html

産経によると、自民党がこの法案の修正協議に応じていたようです。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080419/stt0804191801002-n1.htm

>介護職員の賃金を引き上げるため、民主党が議員立法で提出した「介護労働者人材確保特別措置法案」をめぐり、これに反対していた自民党が修正協議に応じていたことが分かった。

 法案は地域、サービス内容別に平均的な賃金水準を定め、基準を上回る「認定事業所」の介護報酬を3%加算し、事業主には介護職員の労働条件を改善する努力規定を課す内容。認定された事業所は、職員賃金を月額2万円程度引き上げる。財源は事業所の自己負担や保険料の引き上げとならないよう税金でまかなう考えで、実施には約900億円を要するという。

 修正案は賃上げ案について具体的に明記しないこととし、職員の待遇改善措置を来年4月までにとることを政府に義務付ける方向だが、自民、民主両党とも異論が残っており、なお調整が必要とされる。

 今月9日から衆院厚生労働委員会で始まった法案審議で、与党側は「財源の裏付けがない」「他の低賃金労働者との間で不平等になる」などと民主党提案を批判し、正面から議論する考えはなかった。

 しかし、舛添要一厚生労働相が「来年度は介護報酬を上げたい」と明言するなど政府・与党内に介護職員の賃上げに賛同する声が広がったほか、後期高齢者医療制度の導入に対し高齢者を中心に政府への批判が集まった。こうした情勢から、介護職員の待遇改善に前向きに取り組む必要があると判断し、自民党も修正協議に応じることにした。

ということは、正面から介護報酬の引き上げで対処するという決意を固めたということなんでしょうか。「職員の待遇改善措置を来年4月までにとることを政府に義務付ける」というのが具体的にどういうことを意図しているのかよく判らないところもありますが、。

いずれにしても、介護労働者の待遇改善というのは大きな政策テーマになってきたようで、

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/04/s0418-2.html

職業安定局でも、「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」というのを設置して議論を始めたようです。既に18日に1回目が開かれ、今週金曜日の2回目には業界団体ヒアリング等が予定されているようです。

これによると担当は雇用政策課で、これまで担当していた需給調整事業課から替わったようです。もともと、介護労働問題を需給調整事業課で担当していたのは、昔の看護婦家政婦紹介所の関係で一種の業界担当みたいな感じだったからですが(1992年の介護雇用管理改善法の時には、介護業務を派遣のポジティブリストに入れようという思惑もあり、当時の厚生省との間でドンパチやったという経緯もあったりするんですが)、やはりこういう問題になってくると業界レベルの話というわけにはいかないのでしょう。ミクロな労働条件改善とマクロな労働力確保を政策的に進めるという話になると、雇用政策課の出番ということになるんですかね。

そういえば、派遣のマージン率みたいに、介護サービス業界でも介護報酬のうちどれだけを介護労働者の賃金に回しているのかを明らかにさせろ、みたいな話もあるようですね。引き続き要注目です。

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3回目の石水白書

石水喜夫氏が労働経済調査官に就任してから3回目の労働経済白書は、「労働者の「やりがい」低下を問題視」だそうです。

http://www.asahi.com/life/update/0423/TKY200804220351.html

>もっと働きがいのある社会を――。厚生労働省の08年版「労働経済の分析」(労働経済白書)が、非正規雇用の増加や賃金の低迷により労働者の「やりがい」が低下している問題を指摘していることが22日、わかった。雇用の安定化が働きがいを高め、生産性も伸ばすと提言している。

 この日、自民党の雇用・生活調査会と厚生労働部会の合同会議で骨子案が示された。

 骨子案は、内閣府の調査で「仕事のやりがい」に満足している人の割合が81年の31.9%から05年は16.6%に低下したと指摘。「失業の不安なく働ける」と感じる人も34.4%から14.8%へ低下したとして、背景には、派遣やパートなどの非正規労働者が同じ期間に約3倍に増えたことがあると分析する。

 非正規労働者の増加は「企業にとってコスト削減が主目的で、労働者の希望に応じた柔軟な就業形態を用意するという認識は低い」と批判し、新卒者の計画的採用と育成を怠った面もあると指摘。安定的な雇用を増やすことの重要性を強調している。

ただ仕事があればいいというわけではない、「いい仕事」でなければならない、というわけです。

ただし、1981年頃の「いい仕事」がいま現在の男女労働者たちにとってそのままいい仕事であるというわけでもない、というところも重要でしょう。

このあたり、どういう風に記述されているか注目していきたいと思います。

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2008年4月22日 (火)

ご自分の診療報酬は大事だが・・・

「医師に労基法はそぐわない」と断言された久坂部羊氏、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_6cc3.html

> 医師に労基法を適用して、臨床研修制度が大きな矛盾を抱えたことは記憶に新しい。研修医に30万円程度の給料を保障したため、指導医のほうが安月給になったり、週末や当直明けを休みにしたため、研修医の一部が、医師のありようを学ぶ前に、休暇の権利を覚えたりするようになった。

 医師の勤務が労基法に違反している云々(うんぬん)などは、現場の医師にとっては寝言に等しい。医師の激務や待遇の改善は必要だが、今さら労基法を当てにする者など、まずいないだろう。万一、医師が労基法の適用を求めだしたら、現場はたいへんな混乱になる。

今度はご自分の勤める在宅医療専門のクリニックの関連の診療報酬が引き下げられたと大変お怒りのご様子です。産経のコラム「断」

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080420/acd0804200244001-n1.htm

>平成20年度の診療報酬改定が発表された。私は在宅医療専門のクリニックに勤めているので、その関連の項目に着目したが、改定の内容を見て驚いた。

 在宅医療には、24時間対応を含む総合的な診療の費用として、「総合管理料」という項目がある。いわば1カ月分の基本料である。それが有料老人ホームなどの施設に入っている高齢者の場合、これまでの4200点(4万2000円)から3000点(3万円)に下がっているのだ。

 同様に、特定施設に入所している患者への訪問診療も、1回830点(8300円)から一挙に200点(2000円)に下がっている。こんなバカな値下げ幅があるだろうか。これまでと同じように往診しても、4分の1以下の診療報酬になるのだ。

 政府は社会的入院による医療費削減のため、施設入所者を含む在宅医療の導入を進めてきた。そのため在宅医療が優遇されてきたのは事実だ。しかし、今回のような極端な切り下げをすれば、せっかく根づきかけた在宅医療が、立ち消えになりはしないか。

 今回の切り下げは、施設の入所者が対象で、自宅で在宅医療を受ける患者は除外される。施設の高齢者を多く診ている医師の撤退が危ぶまれる。理由の説明もなく、いきなり診療費を大幅にカットされて、それでも患者を見捨てない立派な医師は、どれだけいるだろうか。

なるほど、一睡もせず36時間連続操業で働く救急医療の現場の医師が労働基準法なぞを持ち出すのは笑止千万で、患者を見捨てるなどとんでもない、過労死するまで働くのが当然だが、在宅医療専門クリニックの医師は診療報酬をカットされたら患者を見捨てるのが自然だ、と。

いやいや、よく判りました。

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公務員の有期雇用

民間部門であれば有期雇用を何回も更新していくと「期間の定めのないのと実質的に異ならない」とか「継続が期待されていた」とかいって、一定の保護が加えられるということがあるわけですが公務員だと「これは雇用じゃなくて任用だ」とかいって、何回更新しても全然期待権を認めてくれない、というのが日本の判例状況であるというのは皆様労働法で勉強することですが、似たようなことはヨーロッパにもあって、民間部門では有期雇用の更新規制がされていても公務員は別よというのが結構あるようです。

ご承知のように、EUの有期労働指令は有期雇用契約の更新について一定の制限を課していますが、これを公務員には適用していなかったアイルランドの法制はEU法違反であると、欧州司法裁判所が判決を下しました。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/gettext.pl?where=&lang=en&num=79919584C19060268&doc=T&ouvert=T&seance=ARRET

加盟国レベルからすると民間部門と公務員とでは適用法が違うはずということになるのでしょうが、一格上のEUから見れば国レベルの公務員も民間労働者も似たようなものということで、公務員だから適用除外するとEU指令に書いていない以上、当然の判決ではあります。

欧州労連が歓迎のコメント

http://www.etuc.org/a/4879

最近、労使関係分野の裁判では負け気味だっただけに、

Following the very negative rulings in Laval, Viking and Rüffert, the IMPACT judgement is a bit of good news from the ECJ at last!

と、かなり嬉しそうです。

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2008年4月21日 (月)

雇用促進住宅の社会経済的文脈

産経で雇用促進住宅に未だに公務員が入居していると叩かれています。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080421/plc0804210021009-n1.htm

>>厚生労働省所管の独立行政法人「雇用・能力開発機構」が所有する雇用促進住宅に、入居資格のない国家・地方公務員が3月末現在で計124人も入居を続けていることが分かった。住宅には、昨年3月末時点で計302人の公務員が無資格で入居し、その後、会計検査院から「不適切な入居」と指摘されていた。機構側は退去を促しているが、地方では雇用促進住宅並みの安価な賃貸物件が少ないとの事情から、完全退去の見通しは不透明だ。

 厚労省によると、雇用促進住宅は全国各地に約1500団地あり、3月末現在で約14万世帯が入居している。このうち、雇用促進住宅に入居している公務員は計124人に上る。内訳は、国家公務員3人、市町村職員や教員など地方公務員121人。

 入居対象は雇用保険の被保険者で、入居条件は公共職業安定所の紹介により失業者が就職する際、再就職先が遠隔地のために転居に迫られ、一時的な仮住まいが必要となる場合-などに限られている。家賃は1万1500円から10万2300円(平均約3万円)で、「民間の賃貸住宅より比較的安い」(厚労省職業安定局)という。

 雇用保険料を負担していない公務員は入居の対象外だが、雇用・能力開発機構は「空き室対策」として一部で例外を認めてきた。だが、平成17年に公務員の無資格入居の問題が表面化していた。

ところが一方で、こういう話もあります。社民党の保坂議員のブログより。

http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/3e93d549ac7b06c389548c2df371fde4

>今日は格差是正に取り組む議員有志の会で厚生労働省職業安定局を呼んでヒアリングをした。今年の2月に、自ら「派遣労働者」である労働組合の青年が、「はたして雇用促進住宅に入れるかどうか」を調べるために、何ヶ所かのハローワークを訪ねて、入居資格を問い質した。結果は、たらい回しの末に「NO」だった。現在1500ヶ所14万戸(35万人)もが暮らす雇用促進住宅になぜ入れないのか。社民・民主・国民新党の3党の議員で厚生労働省の話を聞いた。

雇用促進住宅の窓口は職業安定所(ハローワーク)である。ところが、ハローワークに行くと、「うちはパンフを置いているだけで実際に決めているのはここだよ」と財団法人雇用振興協会の窓口を紹介されたという。「日雇い? ああ、難しいね。1年以上常用で働いていないと入れないんですよ。入居の時に『事業主の証明』が必要なんだよね」と言われたという。派遣労働は数カ月単位の細切れなので、「常用」と言われるとそこで排除される。

ただ、特例があって「失業しておおむね半年以内の人で求職中の人」は職業安定所長の判断で入居することも出来るのだが、「離職証を下さい」と言われて戸惑ったという。日雇い派遣の実態は日毎契約であり、毎日働いていても仕事が終われば離職する。だが「失業中」という概念にも当てはまらない。要するに、制度が想定していない雇用形態なのだ。

厚生労働省職業安定局に見解を求めたところチンプンカンプンな答えが返ってきた。「雇用促進住宅は低所得者向けというわけではないんです。そういう人たちには公営住宅があります。雇用保険の企業側の財源で出来ているわけで、共同寮のようなもので、そもそも雇用保険に入っていない人は入れないんです」

ただし、雇用促進住宅にかつて厚生労働省の職業安定所長などの国家公務員、これを維持・管理する独立行政法人・雇用・能力開発機構の職員などが入居していた事実が問題となったことがあった。かれらは雇用保険を支払っているのか。

「もう出ました。しかし、一部の公務員で居残っている人が今もいます」と厚生労働省も正直だ。ならばなぜ、生活の再建のために住宅を必要としている人が排除されなければならないのか。小泉内閣・安倍内閣の構造改革路線は、この雇用促進住宅を全部売り払うことを決めた。だが、本来は炭鉱離職者の住宅支援のためにつくられた雇用促進住宅が、現在の雇用の危機に改めて有効に使うことを考えてもいいのではないか。

もともと、雇用促進住宅は、移転就職を余儀なくされた炭鉱離職者向けの宿舎として始まり、その後高度成長期に労働力の広域移動政策が進められるとともに、それを住宅面から下支えするために建設されていったものです。その頃は、労働力流動化政策と一体となって、有意義な施策であったことは間違いないと思います。

ところが、70年代以降、地域政策の主軸はもっぱら就職口を地方に持ってくることとなり、地方で働き口がないから公的に広域移動を推進するという政策は消えてしまいました。これは、もちろん子供の数が減少し、なかなか親のいる地方を離れられなくなったといった社会事情も影響していますが、やはり政策思想として「国土の均衡ある発展」が中心となったことが大きいと思われます。大量の予算を、地方の働き口確保に持ってくることができたという政治状況もあったでしょう。こういう状況下では、雇用促進住宅というのは社会的に必要性が乏しいものとなり、そこに上記のような公務員が入居するというような事態も起こってきたのでしょう。

それが90年代に大きく激変し、地方に働き口がないにもかかわらず、公的な広域移動政策は為されないという状況が出現し、いわばその狭間を埋める形で、請負や派遣のビジネスが事実上の広域移動を民間主導でやるという事態が進みました。こういう請負派遣会社は、自分で民間アパートなどを確保し、宿舎としているのですが、その実態は必ずしも労働者住宅として適切とは言い難いものもあるようです。

このあたりについては、私はだいぶ前から政府として正々堂々と(もう地方での働き口はあんまり望みがないので)広域移動推進策にシフトしたらどうなのかと思い、そういうことを云ったりもしているんですが、未だに地域政策は生まれ育った地元で就職するという「地域雇用開発」でなければならないという思想が強くありすぎて、かえって適切なセーフティネットのないまま広域移動を黙認しているような状況になってしまっている気がします。

一連の特殊法人・独立行政法人叩きの一環として、雇用促進住宅も全部売却するということになり、それはもっとうまく活用できるんじゃないのかというようなことを口走ることすら唇が寒いような状況のようですが、実は経済社会の状況は、雇用促進住宅なんてものが要らなくなった70年代から90年代を経て大きく一回転し、再びこういう広域移動のセーフティネットが必要な時代になって来つつあるようにも思われます。

雇用促進住宅ネタは、例によって例の如き公務員叩きネタとして使うのがマスコミや政治家にとっては便利であることは確かでしょうが、もう少し深く突っ込むと、こういう地域政策の問題点を浮かび上がらせる面もあるのではないでしょうか。もちろん、その前に公務員に退去して貰う必要があるのは確かですが、

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2008年4月20日 (日)

人材サービスゼネラルユニオン

3月31日の第3回労働者派遣制度研究会の資料が厚労省HPにアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/s0331-9.html

この日は労使、というか、人材派遣協会と、派遣ユニオンと、も一つ人材サービスゼネラルユニオンからのヒアリングで、前2者については、まあだいたいその主張はご推察の通りでありますが、三つ目のこの労働組合の意見はなかなか興味深いだけでなく、余りマスコミ等にも取り上げられる機会が少ないものであるだけに、リンクを張っておきます。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0331-9e.pdf

この組合はUIゼンセン同盟に加盟する組織で、派遣会社の従業員(3割強)と派遣労働者(7割弱)が加入しています。まあ、だから、簡単に派遣なんてけしからんから禁止しろ、潰せ潰せ、というような議論には反対なんですね。

>このところ格差社会を論じる際に、間接雇用である派遣がその元凶であるという意見がたびたび出てきます。
私たちは、マスコミや一部の労働界、政党から出されている、派遣イコール「ワーキング・プア」、派遣イコール「不本意な働き方」という見方には強く違和感を覚えます。
組合員の話を聞き、さらに厚生労働省の調査結果をみると、こうした見方が一方的であることが浮かび上がってきます。
間接雇用であるがために「不安定である」、「かわいそう」、「ひどい働き方だ」などといわれ、信念・プライドをもって派遣労働者として働く仲間は傷ついています。職業選択の自由の下、間接雇用も直接雇用も同等に「労働」であることの評価がされるべきです。
たしかに、労働者派遣制度にはいくつかの問題があるものの、①雇用契約2 ヶ月以下の登録型派遣の禁止、②日雇派遣の禁止については、JSGU は反対します。
法令違反はあってはならないことです。安全衛生を含めた労働環境整備など、労働者保護の観点から改善・解決し、業界の健全な発展に注力することが、人材サービス業界全体を網羅している最大の労働組合である、私たちJSGU の使命であると強く感じています。
そのために、何ら根拠を持たずに「派遣=悪」とされている誤解を解き、真の派遣の実態を世の中に知ってもらいたいと考えます。

という基調で、現状の労働者派遣制度の問題改善のために取り組むべき課題として、

>派遣を選ぶ労働者は、特定の派遣先にこだわらず、希望する特定の仕事での能力発揮やキャリア形成を重視している。こうした派遣労働者の要望に応えていくためには次の3 点を重視した政策が必要である。

①派遣労働者のキャリア形成の安定
キャリアアップができるように、特定の派遣先を超えた継続的な就業機会の確保派遣労働者の希望する業務の派遣先の開拓

②派遣労働者の能力向上機会の確保
派遣先の社員と同等の教育訓練機会を派遣先が確保すること
派遣元が行う教育訓練に、派遣労働者が参加できるように派遣先が配慮すること

③派遣労働者の働きにあった処遇・賃金
正社員との均衡
業務別最低賃金の設定
派遣労働者の職業能力の適切な評価
職業能力や仕事に見合った公正な賃金(派遣料金)の確保

といったことを掲げています。また、派遣先責任の強化もいくつか提起しています。

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2008年4月19日 (土)

研究会2連発

昨日、都内某所で某研究会2連発。

午後は連合総研の労働法制の研究会で毛塚先生のお話し。焦点は、団結原理と代表民主主義を峻別すべきか。毛塚先生はドイツ派だからどうしても峻別派になるけれども、私は日本の現実から出発するので、組合即労働者代表と考えたいのですね。

夜は岩波書店で若者政策の研究会。私が日本の雇用システムの歴史を踏まえて、「学校から仕事へ」と人材養成の在り方について報告。こちらは、木下さんや本田さんなどジョブ型志向の方が多いのですが、私はやはり現実主義者なので、少なくとも入口の所をジョブ型にするのは若者がこぼれ落ちるだけだと思うんですね。ヨーロッパは若者政策において決して成功していないんです。そういう「官能」的採用が教育システムに悪い影響を与えているという事実を踏まえても、トータルのメリデメは日本的システムに軍配が上がるのでは。ただ、入って何年もたった連中は、メンバーシップを薄めて行っていいと思う。いつまでも年功制にしがみつくなよ、という感じはあります。

(追記)

ちなみに、若者政策研究会の報告メモはこちら。ベースは私の「日本の労務管理」講義メモですが。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/wakamono.html

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2008年4月18日 (金)

白山ひめ神社御鎮座二千百年式年大祭

これはまったく労働法政策とは関係ありませんが、ある政治的主張を通すために、一見使いやすい「正義」を持ち出した結果、それが暴走してとんでもない方向に走ってしまう一つの事例として。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080417102937.pdf

平成20年04月07日名古屋高等裁判所 金沢支部

白山ひめ神社御鎮座二千百年式年大祭奉賛会損害賠償請求控訴事件(平成19(行コ)11)

>白山市長であるAが同市の職員を同行して白山ひめ神社御鎮座二千百年式年大祭の奉賛会発会式に出席し白山市長として祝辞を述べたところ,白山市の住民である控訴人が,上記行為は,特定の宗教を助長,援助,促進する効果があり,政教分離原則に違反し違憲であり,これに伴う公金支出は違憲・違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,白山市の執行機関である被控訴人に対し,Aに対して,上記支出額相当の損害賠償金1万5800円及び遅延損害金を白山市に対して支払うよう請求することの義務付けを求めた住民訴訟の控訴審。

>白山市長が来賓として白山ひめ神社御鎮座二千百年式年大祭の奉賛会発会式に出席し白山市長として祝辞を述べた行為が憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり,これに関する費用等につき公金を支出することは違法であるとされた事例

政教分離というのはもちろん一つの正義ではありますが、世界遺産登録をめざす白山の伝統文化の中心である白山ひめ神社の2100年式年大祭で式辞を述べるのまで違憲だなどという馬鹿げた結論が出るなどと云う事態はやはり異常でしょう。

もともと、この手の訴訟は、靖国神社とか護国神社といった明治に作られた国家神道のナショナリズム機能に対する政治の関与を追及することが主たる目的だったのではないかと思われます。それについてはいろんな考え方があるでしょうが、少なくとも、国家のために命を投げ出した戦死者を追悼することを通じて近代的ナショナリズムを推進しようという立場をめぐる論争なのであって、こういう固有信仰に一切公的部門がかかわるななどという話ではなかったと思うのですが。

まあ、しかし、憲法20条の政教分離という便利なものを使えば追及しやすいものだから、もっぱらそればかり使っていくと、その本来の目的から乖離して勝手に暴走をはじめ、なにやらおよそ宗教的な行事にちょっとでもかかわれば違憲だみたいな信じがたい方向に突き進んでしまうわけです。

この手の訴訟は最初からねじれているんですが、最初はねじれながらもその意図はある意味明確であったものが、ねじれた議論をねじれたまま無理やりに突き進めていくと、こういうまったく訳の分からないところにいってしまう。

他の分野でも気をつけるべき点でしょう。使いやすい正義に過度に頼ると必ずそのツケが回ります。

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2008年4月17日 (木)

社会主義者が剰余価値所得範疇を擁護するなよ!

今年度から立命館に移られた松尾匡さんの、一発目がこれ、

http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay_80412.html

>ところで、民主党もひどいけど、共産党! 働く者の味方を常々公言してきた共産党。大資産家の利益を代弁することなど、よもやないはずの共産党。当然、多少のインフレでちょっとぐらい資産が目減りしたり、資産家の不労所得が減ったりしたとしても、失業を減らし雇用を拡大することを目指すはずだよな。

 ちょっとみなさんこの動画見て下さいよ。共産党の公式ホームページに載っている市田書記局長の談話ですけどね。日銀の総裁人事の話。

http://203.179.91.149/stream/20080319_ichida.wmv

 民主党みたいに財務省の天下りという理由で反対したわけではないとわざわざことわったうえで、「超低金利政策に反対しなかった」という理由で、総裁案にも副総裁案にも不同意と言っています。おいおい・・・

社会主義者が剰余価値所得範疇を擁護するなよ!

まあ、社会主義などとうに捨て去っているのかもしれませんけど。まったく、こんなこと言うやつは、世が世なら共産主義革命が起こったら銃殺されてたぞ。

思わず吹き出してしまいましたがな。うーーん、今の学習指定文献には、そういう傾向的な用語は載っていないんでしょうかね。

> 政治的判断としては、多少不況になって失業者が増えても、その方が競争が激しくなって、生産性の低いところがつぶれて、生産性の高いところが伸びるので良い、がんばって成功してお金持ちになった人の資産価値を守るためにインフレは断固防ぐ、という判断があるかもしれません。「小泉チルドレン」の人達などはそういう価値観でしょう。そういう判断の人達が、「低金利けしからん」「金融引き締めてインフレ防げ」というならば、筋が通っているのでわかります。しかし、民主党や共産党は、常日頃それとは反対の政治的立場にあったはずです。「格差けしからん」とか「首切りけしからん」とか言ってきたはずです。だとしたら、世の中を不況にして失業を増やす手段をとってはならないはずなのに、全く矛盾したことをやって、今まさに日本を不況にしようとしているのです。

まあ、民主党の若い連中、霞ヶ関から飛び出したとか、松下政経塾出身だとかいう連中は、頭の中がほとんどチルドレンですから、むしろ筋が通っているのかも知れません。

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役所の残業3割減!?

15日の経済財政諮問会議で、「国民本位の「ムダ・ゼロ」政府を目指して」という議論がされたようです。大田大臣の記者会見:

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0415/interview.html

>それから、民間議員から、超勤、残業を減らせという提案が出ています。今でも、私も知りませんでしたが、水曜日がノー残業デーということになっているようです。明日が実施されるのかどうかということです。このサービス残業が多いこともあって、今実際の残業の実態も把握できていない状況だと。これは国会との関係もあります。質問が遅く出てきて、国会対応が遅くまでかからざるを得ないということもあります。この国会との関係の見直しも必要だが、どこかをきっかけに取り組んでいかなければならないと。業務プロセスを見直すということをまず実態把握から始めて取り組んでいきたいと。そして、必要な残業にはサービス残業ではなくて、しっかりお金を払っていくというふうにしていきたいと。

「私も知りませんでしたが」って、参事官(=課長)、審議官(=部長)、統括官(=局長)をそれぞれ経験されているんじゃなかったでしたっけ。

民間議員のペーパーはこちら。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0415/item4.pdf

>②すべての職場で、部下の残業時間 3割減を目指す。(責任者:全局長。20年度から試行)

官庁では、長時間残業・サービス残業が恒常化している。超勤はコストであり、ワーク・ライフ・バランスにも反する。これを削減するためには、仕事のやり方を変える必要がある。その際、国会質問のための待機についても、見直す必要がある。

ちなみに最後のところに、

>例えれば、公務員は従業員であり、内閣が経営者である。公務員をうまく使って最大限の効果を出すのは、経営者である内閣と上級幹部の責任である。

例えれば→譬えれば

別に譬えなくたってそうなんですけど。ていうか、譬えるってことは、公務員は本当は従業員じゃなく、内閣は経営者じゃないと思っているってこと?パブリック・エンプロイーはエンプロイーに非ず?んな莫迦な。ちなみに、上級幹部は経営者自体ではなく管理監督者たる従業員でしょうね。

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2008年4月16日 (水)

バランスのとれた働き方

Balance_work 連合総研設立21周年記念出版と銘打った『バランスのとれた働き方-不均衡からの脱却』がエイデル研究所から刊行されました。御贈呈ありがとうございます。

http://www.jtuc-rengo.or.jp/info/tosho/balance_work.html

>2007年12月、連合総研は設立20周年を迎えました。その記念事業の1つとして、都市勤労者の仕事と暮らしの定点観測アンケート「勤労者短観」6年分のデータ、延べ1万人のビジネス・パーソンの声を再分析する研究プロジェクトを発足させました。

 本書はその研究成果のエッセンスとして、アンケート調査データからビジネス・パーソンの仕事や暮らしの“不均衡”の実態を明らかにし、今後バランスのとれた仕事と暮らしを実現するために何が必要かを考察しています。

内容は次の通りです。

はじめに 都会で働くビジネス・パーソンの特徴―正社員・非正社員の比較
連合総研事務局

第1章 必要な人にセーフティネットを―消えない雇用不安
千葉登志雄 連合総研主任研究員

第2章 「過労死予備軍」と「賃金不払い残業」―解消に向けて
川島千裕 連合総研主任研究員

第3章 働く女性の二極化―ビジネス・ウーマンの実像
佐藤 香 東京大学准教授

第4章 男性の家事参加を進めるために―家事が意味するもの
永井暁子 日本女子大学准教授

第5章 ビジネス・パーソンは景気に敏感―格差拡大
岡田恵子 連合総研主任研究員

第6章 権利理解と労働組合―組合効果のアピールを
佐藤博樹 東京大学教授

第7章 劇場政治と勤労者―問われるこれからの選択
前田幸男 東京大学准教授

おわりに ワーク・ライフ・インバランスの解消を
佐藤博樹 東京大学教授

このうち、第6章までは、毎度おなじみのテーマですが、第7章が政治学的分析になっていて、結構面白かったです。

>働き方との関連で見ると、大企業に勤める人や管理職では自民党支持率と民主党支持率は拮抗しているのに、事務職や労務職では自民党支持率の方が民主党支持率よりも高い。また就業形態では、パートや契約・派遣でやはり自民党が民主党に差をつけている。自民党が裾野の広い支持を持っているのに対して、民主党の支持は大企業高学歴ホワイトカラー層に集中しており、経済的に弱い立場にある人たちには魅力的に見えていないことが判る

そりゃそうでしょうね、小泉改革ではまだ足りない、もっと構造改革!、もっと規制緩和!もっと地方分権!といいつのってきた政党が、経済的に弱い立場の人に魅力的なはずはないのであって。そういう政党を組織的に支持してきた連合のシンクタンクでこういう分析がされるというところが何とも皮肉ではあるわけですが。

>今回、勤労者短観のデータを分析して痛感したのは、民主党の支持が大企業に勤める男性の大卒ホワイトカラーに偏っており、その裾野が狭いことです。女性の支持率は低く、特にパートや派遣で働く女性の間での民主党の不人気ぶりは、かなり問題に思えます。

前田氏は「女性の就業や家庭と仕事の両立を目的とするわかりやすい政策を推進することで支持を増やすことができるかも知れない」というのですが、いやもちろんそれも大事ですが、問題はそれが「大企業に務める女性大卒ホワイトカラー」のためのものとしか見られない危険性です。それでは何ら裾野が広がったことにはなりません。

中高一貫男子校から一流大学に行った男性の感覚に、中高一貫女子校から一流大学に行った女性の感覚を加えただけで、事態が解決するわけではないので。

エリート臭が強すぎ、教科書嫁的な偉ぶった態度で、生活のひだを無視した図式的な結論を振り回したがる傾向がやたらに鼻につく民主党議員たちが、もっと下々の感覚に近いどぶ板の生活臭を身につけるにはどうしたらいいのか、これは結構深刻な問題でしょう(まあ、自民党に近頃増えた何とかチルドレンも似たようなものですが)。

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家族手当の文脈

『賃金事情』2008年4月号の巻頭エッセイ日本の労働システムの第3回目、「家族手当の文脈」 をアップします。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/kazokuteate.html

このテーマは、突っ込んでいくと実にディープな話につながっていくんですね。戦前、内務省社会局の監督課長から東大経済学部に転じた北岡寿逸が、1940年に『経済学論集』に「家族手当制度論」というのを書いているんですが、その問題意識がまさに、

>抑も賃金(俸給を含む)なるものは雇主より之を見れば労務の報酬なるが故に、為されたる労務に応じて支払はれるのが原則である。・・・然し賃金は之を受くる労働者(俸給生活者を含む)より之を見れば、生計の手段であつて其の必要額は家族の数に応じて著しく異なる。然るに現代に於ける経済現象の支配者は事業主なるが故に、事業主より見たる必要資源が実際賃金の額を決する。・・・即ち生計の必要は家族に依つて異なるに拘わらず賃金は労働成果に依つて支払われる。斯くの如くにして家族の数に応じて異なる生計費用を、如何にして労働成果に応ずる賃金に適合せしめるやは、個々の労働者に取つては誠に重要なる問題である。

まさにこの問題意識-市場原理と生活原理の矛盾をどう調和させるか-というところから、戦時期の、そして戦後の家族賃金が20世紀の新発明として生み出されてきたのであり、それはまさに一つの社会主義的企てだったのであって、それを「封建的」といった類の悪口で片付けたつもりになっている人は社会とか歴史とかに鈍感な人たちでしょう。

問題はそういうミクロレベルの社会主義による解決が、マクロレベルの矛盾を生み出してしまう危険性なのであって、その意味では、児童手当を社会保障制度として確立しようとしたかつての日本政府(厚生省)の企図が、企業レベルの家族手当の存在自体によって足を引っ張られて、何とか制度は作ってもまともに発達することができず、神話のヒルコのような存在になってしまったという歴史にアイロニーを感じずにはいられません。

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2008年4月15日 (火)

道路特定財源で勤務医の待遇改善?

読売の記事です

http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08041501.cfm

>福田首相は14日、産科・小児科の医師不足に伴う救急医療の問題点を解消するための具体策を、来月にも策定する考えを表明した。厚生労働省が今年1月から取り組む医師不足対策の検討を加速するもので、勤務医の待遇改善策や女性医師の継続就業の支援などが柱となりそうだ。財源には、首相が2009年度から一般財源化するとした道路特定財源が想定されている。

 首相は14日、最先端の産科・小児科医療で知られる国立成育医療センター(東京都世田谷区)を視察後、産科医や小児科医不足の対策について、「急がなければいけない。来月ぐらいにはビジョンをまとめ、実現に向け努力したい」と記者団に強調した。

 体制強化を図るのは、昨年以来、医師不足や受け入れ態勢不備による患者の「たらい回し」の実態が表面化したためだ。「日銀総裁人事などの懸案が一区切りつき、自分のやりたい政策に取り組もうという首相の意欲の表れだ」(周辺)との見方もある。

 厚労省は今年1月から、舛添厚生労働相の私的懇談会で医師不足解消に向けた「安心と希望の医療確保ビジョン」策定の検討に着手しているが、首相の指示を踏まえ、作業を急ぐ。

わたしはこうして、道路特定財源を一般財源化して勤務医の待遇改善を図ろうとしているのに、安ガソリンに火をつけることしか考えてない民主党・・・ウフフ、と、反転攻勢をかけよう、と。まあ、環境よりこっちの方が切実ですから、説得力もあるかも知れません。

さて、民主党は何を出しますか。例の介護労働者人材確保法案みたいに、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_bdea.html

産科と小児科の勤務医の賃金に認定基準額を設けて、認定を受けたら加算診療報酬を払うという法案でも出すのでしょうかね。

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2008年4月14日 (月)

欧州労連はEWC交渉を拒否

4日のエントリーで、EUの使用者側が欧州労使協議会(EWC)指令の見直しの交渉をしてもいいよ、と応諾したと伝えましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_e214.html

労働側が、今更やんなくてもいいよ、と拒否。

http://www.etuc.org/a/4867

>The General Secretary of the European Trade Union Confederation (ETUC) today concluded, after intensive contacts with both BusinessEurope and the European Commission on the question of the revision of the European Works Council Directive, that it is not practical for negotiations to commence within the framework of the social dialogue.

This is because there would be insufficient time for both negotiations and for the issue to be dealt with in the lifetime of this Commission and Parliament. Furthermore, it has not been possible to identify a realistic basis for agreement on certain key issues on which there have been, and are, fundamental differences with BusinessEurope. For these reasons, social dialogue talks in the current circumstances are impracticable.

Said General Secretary John Monks: “The ETUC prefers to try to resolve problems through the social dialogue, but given the time constraints and the depth of differences with the employers over European Works Councils, it is not practical to expect talks to succeed in a short period. We are therefore calling on the Commission to follow up its consultation document and act decisively both to strengthen European Works Councils and worker and union participation. We are also calling on the European Parliament and the Council of Ministers to support our position.”

ったく、使用者側ときたら、さんざん嫌がっておいて、もうどうしようもなく時間がなくなって、政府(欧州委員会)がやるぞと脅しかけたら、自分たちでやるからと言い出すんだから、という感じですかね。

ただ、一つ問題は、EUレベルの労使が協約で決めたことであれば、加盟国政府は事実上文句は言えず、そのまま認めるしかないですが、EUレベルの労使では決められずに欧州委員会が法案を出した場合には、未だに採択に至らない派遣指令案がいい例ですが、理事会レベルで動かなくなってしまう危険性はあります。それを考えたら、労働側にとっても労使交渉で決めてしまうというメリットはあるはずだとは思うのですが、まああとは政治判断でしょう。

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共産党と社民党の派遣法改正案

共産党と社民党の労働者派遣法改正の考え方が示されています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-04-11/2008041105_02_0.html

http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/labor/labor0804.htm

私の派遣システムに対する考え方はこのブログ上やHP上に詳しく書いておりますので、いちいち申しませんが、一言でいうと、両者とも労働者派遣事業という事業の規制には極めて熱心で、やたらに禁止禁止といいたがっているのに対して、その目的だと称するところの派遣労働者自身の保護については派遣元規制中心の現行法の枠組みになおも囚われていて、抜本的にものを考えようという姿勢が薄いようです。

共産党案では、まず何よりも、

>2 労働者派遣は、常用型派遣を基本とし、登録型派遣を例外としてきびしく規制します。日雇い派遣を禁止します

 (1)労働者派遣事業をおこなってはならない業務に、物の製造の業務を追加します。

 (2)登録型派遣をおこなうことができる業務は、専門的業務(ソフトウェア開発、機械設計、通訳・翻訳など)に限定します。一九九九年以前の状態にもどします。

 (3)上記(1)(2)の措置によって、登録型による日雇い・スポット派遣を事実上禁止し、常用型派遣に限定します。

と、派遣会社の事業自体を禁止してやらせない部分を大きくすることに熱心であり、次に、

>3 常用代替を目的とした労働者派遣を禁止します

 (1)過去一年間に、常用労働者を解雇・削減した事業所が同一業務に派遣労働者を受け入れることを禁止します。違反に対して、罰則を設けます。

 (2)派遣労働者を新たに導入したり、増やすときは、派遣先事業場の過半数労働組合、それが存在しない場合は過半数労働者の代表との事前協議を義務づけるとともに、各都道府県にある厚生労働省の労働局に届け出ることを派遣先に義務づけます。

 (3)派遣先に対して、派遣労働者の比率と受け入れ期間、さらには臨時的・一時的業務かどうかについて、各都道府県にある厚生労働省の労働局に届け出ることを義務づけ、公表するものとします。

と、労働者保護についてはまず真っ先に派遣先の常用労働者の利益を取り上げ、派遣労働者自身の雇用条件についても、

>4 派遣受け入れ期間の上限を1年とします

 労働者派遣を受け入れることができる期間の上限を一年とします。

と、派遣労働者自身にとっての利益に反する可能性のあるものを真っ先に持ってきて、

>5 派遣期間をこえた場合や違法行為があった場合、派遣先が直接雇用したものとみなします

 (1)以下の場合において、派遣先は、派遣労働者とのあいだで、当該派遣労働者が希望するときは、期間の定めのない雇用契約を締結したものとみなします。

  • (1)派遣先が一年をこえる期間継続して派遣労働者を受け入れた場合
  • (2)派遣先が事前面接や履歴書の閲覧などをおこない、労働者を特定した場合(採用行為に相当する)
  • (3)派遣先が系列子会社の派遣会社に常用労働者を移籍させ、そこから派遣労働者を受け入れた場合(系列派遣)
  • (4)派遣元が雇用する派遣労働者のうち、二分の一以上の者を同一の派遣先に派遣した場合(「もっぱら派遣」)

 (2)偽装請負や多重派遣、無許可・無届け派遣、社会・労働保険未加入派遣などの場合、派遣先は、派遣労働者に直接雇用を申し込まなければならないものとします。違法状態が一年をこえて継続している場合、(1)の規定を適用します。

と、ようやく派遣労働者自身の保護に関わるような事項についても、基本的には事業禁止や規制を中心に置き、それに反した場合の制裁という形で考えようとしていて、そもそも事業自体の禁止や規制を緩和するという方向(私はそういう方向に向かうべきだと思いますが)では意味の薄い措置ですし、なによりも派遣労働者にとって重要な通常の派遣状態における保護という視点はここまで来てもなかなか出てきません。

次の項目もなお

>6 紹介予定派遣を廃止します

 紹介予定派遣(派遣した労働者を派遣先に職業紹介できる制度。紹介予定派遣という名目をつければ、派遣法で禁止されている事前面接などの特定行為が可能になるので、脱法行為が横行する危険性のある制度)は、廃止します。

と、事業禁止症候群の延長で、事前面接がそもそも(労働者保護という本質論において)どこが悪いのかという基本に立ち返って考えた跡がまるで見受けられません。

ようやく7番目以降に来て、

>7 均等待遇を実現し、派遣労働者の権利をまもります

 (1)派遣労働者の賃金は、派遣先労働者の賃金水準を勘案しなければならないものとします。派遣先は、その賃金水準をあらかじめ派遣元に通知しなければならないものとします。

 (2)派遣先は、食堂や診療所などの施設の利用について、差別のない便宜の供与など必要な措置を講じなければならないものとします。

 (3)派遣元は、派遣労働者が有給休暇を取得することができるようにしなければならないものとします。

 (4)派遣先は、派遣労働者がセクシュアルハラスメントとパワーハラスメントなどを告発し、是正を求めたことを理由に不利益にとりあつかうことのないように、必要な措置を講じなければならないものとします。違反に対して、罰則を設けます。

 (5)派遣元・派遣先での組合活動を保障する措置を講じます。派遣先は、派遣労働者を組織する労働組合との団体交渉に応じなければならないものとします。

8 労働契約の中途解除を制限します

 (1)派遣労働者の責めに帰すべき理由以外の理由で労働者派遣契約が中途解除された場合、派遣元は、派遣労働者との労働契約を解除してはならないものとします。

 (2)派遣労働者の責めに帰すべき理由以外の理由で労働者派遣契約が中途解除され、派遣労働者を休業させる場合、派遣元は、派遣労働者に六割以上の賃金を支払わなければならないものとします。派遣先に責任があって労働者派遣契約が中途解除された場合、派遣元は、派遣労働者に十割の賃金を支払わなければならないものとします。

9 個人情報を保護します

 派遣元・派遣先が個人情報を他に漏らすことを禁止し、違反に対して罰則を設けます。

10 ピンはねを規制し、賃金を確保します

 マージン率(派遣料金から派遣労働者の賃金を差し引いた額)の上限を政令で定め、労働者の賃金を確保しなければならないものとし、違反に対して、罰則を設けます。派遣元は、派遣労働者に派遣料金を通知しなければならないものとします。

といった事項が出てきますが、特に8のところを見ると判るように、派遣先の責任で起こったことであっても派遣元に責任を負わせようという、現行法の歪んだ仕組みを、ますます増幅させるような制度設計になっており、つまり共産党は労働者派遣事業という事業自体が憎たらしくて潰したいだけなのか、と思わせるようなものとなっています。

社民党案はそれに比べると派遣労働者自身の保護にも目が向いていますが、やっぱり真っ先に

>1.派遣対象業務の見直し

登録型派遣を行うことができる業務を現行の第40条の2第1項第1号、第3号及び第4号の業務に相当する業務に限定すること。

が来ています。いやあ、共産党にも社民党にも是非伺いたいのは、派遣法制定当初から「ファイリング」という名目でやっていた実質的なOL型一般事務ってのは、どこが専門的業務なんでしょうか、ってことなんですが。政治的妥協の産物であるインチキな業務限定に今更こだわって何の意味があると思っているんですかねえ。

以下は、

>2.派遣労働者に対する賃金の支払に係る規制等

(1) 派遣元(偽装請負における請負事業主を含む。以下同じ。)は、その雇用する派遣労働者に対し、当該派遣労働者について算定した労働者派遣に関する料金の額に政令で定める割合を乗じて得た額以上の額の賃金を支払わなければならないものとすること。

(2) 派遣元は、派遣労働者に対し、(1)の労働者派遣に関する料金の額を通知しなければならないものとすること。

(3) 労働者派遣契約の当事者は、当該労働者派遣契約の締結に際し、厚生労働省令で定めるところにより、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとに、派遣労働者が従事する業務ごとの労働者派遣に関する料金の額を定めなければならないものとすること。

(4) 賃金の額を定めるに当たっては、派遣元は、その雇用する派遣労働者について、その就業の実態、派遣先の労働者との均等・均衡等を考慮しなければならないものとすること。

(5) 労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、派遣元に対し、その事業所における賃金水準に関する事項を通知しなければならないものとすること。

>3.情報の公開

(1) 派遣元は、厚生労働省令で定めるところにより、毎年、労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣の役務の提供を受けた者の数、労働者派遣に関する料金の額及び派遣労働者の賃金の額等を公開するものとすること。

(2) (1)の労働者派遣に関する料金の額及び派遣労働者の賃金の額は、1年間に就業した派遣労働者一人当たりの平均額として厚生労働省令で定めるところにより算定した額とすること。

こういうやり方(派遣料金の一定割合保障)がいいかどうかには議論があるでしょうが(私はかなり疑問ですが)、派遣料金と賃金の関係を透明にして派遣先労働者との均衡を図るという方向は妥当であろうと思います。

>4.派遣先及び派遣元の共同責任

(1) 派遣労働者に時間外労働又は休日労働を行わせるためには、派遣元の事業場に加え、派遣先の事業場においても、派遣労働者が従事する業務について36協定が締結されていなければならないものとすること(派遣先の事業場に係る36協定と派遣元の事業場に係る36協定の内容が異なる場合には、そのいずれにも抵触しない範囲内において時間外労働又は休日労働を行わせることができるものとすること。)。

(2) 派遣労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合において、派遣元がその負傷又は疾病に係る損害賠償の責任を負うときは、派遣先は、当該損害賠償に係る債務を連帯して保証したものとみなすものとすること。

(3) 派遣先は、派遣元の派遣労働者に対する未払賃金に係る債務を保証したものとみなすものとすること。

このあたりは派遣元責任にこだわる共産党案にはないものですが、もう少し踏み込んでもいいのではないかという気がします。

>5.派遣先による直接雇用みなし制度の創設

同一の派遣労働者について1年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けた場合においては、派遣先と当該派遣労働者とは、当該派遣労働者が希望する場合に限り、厚生労働省令で定めるところにより、期間の定めのない労働契約を締結したものとみなすものとすること。

>6.労働者派遣の役務の提供を受ける期間

派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(現行の第40条の2第1項各号に掲げる業務を除く。)について、派遣元から1年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないものとすること。

これらについては、登録型派遣については一定の合理性があるとは思われますが、常用型派遣にまで強制するのは(現行法規制もそうですが)かえっておかしな結果をもたらすでしょう。常用型派遣とは、派遣元にパーマネント・メンバーシップがあるのですから、それを無理に断ち切ることは、かえって労働者保護に反する可能性が高いでしょう。

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暫定税率失効の雇用的帰結

読売から

http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08041105.cfm

>道路特定財源の暫定税率の失効で、国の道路建設に伴う発掘調査の見通しが立たなくなったとして、高知県埋蔵文化財センター(南国市)が、いったん雇った発掘作業員21人を、労働基準法に基づく予告などをせずに解雇していたことがわかった。高知労働基準監督署は違法解雇とみて調査している。

 県教委などによると、発掘調査を予定していたのは、国直轄事業として道路特定財源を充てる高知南国道路など3路線の8か所。同センターが1日、発掘に携わる作業員21人に雇用を通知したが、直後に国土交通省土佐国道事務所から「暫定税率が失効し、道路事業が進められなくなった。発掘調査は見合わせたい」と連絡があり、2日付で全員を解雇した。

 労働基準法では、解雇の場合、30日前に予告するか、解雇予告手当の支払いが必要と定めている。また、天災など、やむを得ない理由で事業継続が不可能な場合は解雇予告が除外されるが、同センターは手続きをしていなかった。小笠原孝夫所長は「違法とは気づかなかった」としている。

暫定税率の失効が「天災事変その他やむを得ない事由」にあたるというのは難しいような。

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2008年4月11日 (金)

自由民主党中小企業労働者問題に関する提言

4月9日、自由民主党の自由民主党雇用・生活調査会中小企業労働者問題プロジェクトチームが、標記のような提言をまとめました。

http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2008/pdf/seisaku-005b.pdf

>近年、国際競争の激化や市場競争中心主義の考え方の進展の下、大企業は短期的な利潤追求を余儀なくされ、下請企業に対する優越的地位を濫用した買いたたき等により利潤の確保を図っていると指摘されている。その結果、下請として大企業を支える中小企業の付加価値は伸び悩み、賃金の引下げやパート・派遣の増加が進み、地域経済における消費の冷え込みが深刻化している。

既存の労働組合は、大企業労働者の賃上げには熱心であるが、大企業の利潤を中小企業に振り向け、下請労働者の賃金や雇用に配慮した成果配分を目指す意欲は希薄である。

今こそ、自由民主党が先頭に立って、大企業と中小企業、そして中小企業労使が助け合い、支え合う国民運動を巻き起こし、中小企業労働者に適正な配分が行われる社会づくりに向けた政策を主導し、大企業労働者と中小企業労働者の格差の拡大や固定化を食い止めなければならない。

中小企業労働者の味方は、野党でもなければ大企業の正社員組合でもなく、この自由民主党ですよ、と。

なかなか役人レベルでは思いつかないような大胆な提言が含まれています、例えば、

>3 労働基準監督機関からの通報制度の新設等

(1) 労働基準監督機関において、賃金不払事案や最低賃金法違反事案等の背景に、大企業の下請たたきが存在することを把握した場合下請企業の意向を踏まえ、かつ秘密保持に万全を期した上で公正取引委員会・経済産業省に取り次ぎないし通報し、下請法に基づく処理状況について、下請企業が特定されないよう配慮しつつ報告される仕組を新設すること。

具体的にどういう仕組みになるんでしょうか。

なお、「今後、納入者いじめといわれる問題や、製造業における重層的な下請構造をめぐる労働問題について議論を深めていく」ということなので、引き続き深い関心を持って見ていく必要がありますね。

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OECD対日経済審査報告書2008年版

OECDの対日審査報告書2008年版が公表されました。

http://www.oecd.org/document/17/0,3343,en_2649_201185_40353553_1_1_1_1,00.html

本体はこちら:

http://puck.sourceoecd.org/upload/1008041e.pdf

日本語の要約はこちら:

http://www.oecd.org/dataoecd/26/39/40377219.pdf

第6章が「Reforming the labour market to cope with increasing dualism and population ageing」(増大する二極化と人口高齢化に対処するための労働市場改革)です。まず、日本語要約でざっと見ると、

>製品市場の改革は労働市場の改革と並行して実施し、効率性と公平性を高めるべきである。日本では労働市場の二極化が急速に進んでおり、非正規労働者の割合は1994 年の20%から2007年には34%に上昇した。企業が臨時契約で働く非正規労働者の雇用を増やして柔軟な雇用システムを構築し、結果として非正規労働者の比率は上昇している。非正規労働者の賃金は相対的に低く、非正規労働者の3/4 を占めるパートタイム労働者の時間当たり賃金はフルタイム労働者のわずか40%にとどまっている。さらに、一部の社会保険制度からも除外されている。二極化の進展により、労働経験が短く、日本で重要な役割を果たしている企業内訓練が受けられないために能力を高める機会に恵まれない人々が若年層を中心に増えている。正規労働者と非正規労働者の賃金格差は生産性の差をはるかに上回っているため、公平性の面でも深刻な問題を提示している。両者の間に移動がなく、非正規労働者の大半が低賃金労働から抜け出せない状況がさらに問題を難しくしている。こうした労働市場の二極化を反転させるには、柔軟性の高い正規雇用、臨時雇用者に対する社会保険の適用拡大、研修プログラムの改善による非正規労働者の雇用可能性の改善など、包括的なアプローチが必要とされる。

>非正規労働者の2/3 以上を女性が占める現状を考えると、上述した労働市場の二極化傾向の反転は魅力的な雇用機会の提供と労働契約の柔軟性向上によって女性の労働参加を後押しする可能性がある。女性の労働参加率が上昇すれば、生産年齢人口の減少(2007 年からの10 年間で9%の減少が見込まれている)による影響を緩和できるだろう。副次的稼ぎ手の就労意欲を削ぐ税制・社会保障制度上の保護は早急に撤廃すべきである。また、民間部門が広く取り入れている配偶者手当、年功序列型賃金制度、採用時の年齢制限なども女性の労働参加を阻む障害とみられる。政府は、女性にフルタイムで働く意欲を失わせている税制や社会保障制度の項目を廃止するべきである。女性のパートタイム労働者の比率は41%と、OECD 諸国の中では最も高い部類である。女性の労働参加率と出生率の両方を高める意味で、保育施設の拡充は効果的であろう。最後に、労働基準法の厳正な適用など、仕事と家庭生活のバランスを向上させる努力も女性の労働参加率を押し上げるとみられる。

まあ、今まで耳にたこができるくらい繰り返されてきていることですね。

本体で興味深かったのは、この4月に施行されたばかりの改正パートタイム労働法についてかなり詳しく解説と論評がされていることです。

>Policies to cope with increased labour market dualism

>The 1993 Part-time Workers Law was revised in 2007 in an effort to improve the working conditions of part-time workers. The revisions, which were fully implemented in April 2008, are aimed at achieving balanced treatment of all part-time workers relative to regular workers. The key points of the revision include:

で、中身が箇条書きされて、以下論評

>The direct impact of the provisions against discriminatory treatment may not be so large, as they protect only around 4-5% of part-time workers. However, over time, the provisions against discrimination could have a larger impact to the extent that it encourages employers to change management practice and improve the treatment of parttime workers. In practice, international experience suggests that it is often difficult to determine how much of the wage gap between regular and part-time employees is explained by workers’ characteristics (education, experience, etc.) and how much is due to discrimination. Given these uncertainties, enforcing a prohibition on discrimination against part-time employees could subject firms to costly and time-consuming litigation that would discourage the employment of such workers. For example, if non-discrimination were interpreted as wage parity, the total wage bill could increase substantially. The end result could be a reduction in employment of part-time workers and in overall employment. In any event, the anti-discrimination provision will only cover a small fraction of part-time workers, as noted above. In addition, the introduction of subsidies for firms improving their employment practices for part-time workers raises concerns, as these subsidies often result in high deadweight costs.

いささか皮肉な口調で、パート法のお陰で企業はコストと時間がかかる訴訟に見舞われるので、そういう労働者を雇うのを控えるようになるだろう、非差別が同一賃金という風に理解されたら、トータル賃金コストが上がって、パート労働者や労働者全体の雇用が減少するだろう、と。まあ、だから差別禁止なんて莫迦なことをするな!と福井秀夫氏流に主張しているわけでもないのですけど。

>As for labour costs, while the government cannot narrow the difference in wages, it should decrease the overall gap in labour costs by increasing the coverage of non-regular workers by the social insurance system. In addition, it should reduce employment protection for regular workers to weaken the incentives to hire non-regular workers. Countries with strict protection for regular workers tend to have a higher incidence of temporary employment (Grubb et al., 2007). While the incentive could be reduced by raising the effective protection for non-regular workers, such an approach would risk reducing overall employment. Finally, the government needs to ensure adequate training for non-regular workers.

政府は賃金格差を縮小することはできないのだから、パート労働者に社会保険制度を適用し、正規労働者の雇用保護を緩和せよ、というのがOECDの処方箋というわけです。

もう一つのトピックは公共職業訓練の拡充です。

>Ensuring adequate vocational training in Japan

>Traditionally, job training in Japan has been a company responsibility, especially in large enterprises, in a context of long-term employment relations. In contrast, public training programmes were relatively limited compared to other OECD countries. For example, public expenditure on training programmes for the unemployed amounted to only 0.04% of GDP in FY 2005, well below the OECD average of 0.17%.

企業内訓練が中心だったため、日本の公的訓練費用はOECD平均より遥かに低い、と。ところが、

>However, the rising proportion of non-regular workers who benefit little from firmbased training creates a need for a larger government role in this area. The problem is concentrated among the so-called “freeters”.

で、再チャレンジ政策の紹介があって、

>The success of training in Japan will depend on the design of the programmes and the extent to which they provide qualifications and expertise that are attractive to firms. It is essential to closely monitor the outcomes of these training initiatives in order to ensure a positive outcome.

最後のところに、ボックス形式で結論がまとめられています。

>Box 6.1. Summary of recommendations to reform the labour market

Reverse the trend toward increasing labour market dualism

● Reduce employment protection for regular workers to reduce the incentive for hiring non-regular workers to enhance employment flexibility.

● Expand the coverage of non-regular workers by social insurance systems based in workplaces, in part by improving compliance, in order to reduce the cost advantages of non-regular workers.

● Increase training to enhance human capital and the employability of non-regular workers, thereby improving Japan’s growth potential.

Raise the labour force participation rate of women, while encouraging higher fertility

● Reverse the rising proportion of non-regular workers to provide more attractive employment opportunities to women.

● Reform aspects of the tax and social security system that reduce work incentives for secondary earners.

● Encourage greater use of performance assessment in pay and promotion decisions.

● Expand the availability of childcare, while avoiding generous child-related transfers that may weaken work incentives.

● Encourage better work-life balance, in part by better enforcing the Labour Standards Act.

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最新アメリカの賃金・評価制度

02990302 日本経団連出版から笹島芳雄氏の『最新 アメリカの賃金・評価制度』が出ました。笹島先生、お送りいただきありがとうございます。

http://www.bk1.jp/product/02990302

>アメリカ企業の賃金制度および評価制度の最新の実情を明らかにするとともに、アメリカ企業の制度は日本企業のそれとどのような点で違いがあるのか、そしてアメリカ企業の制度で日本企業の参考となることは何かを考察する。

何ごともそうなんですが、「アメリカの賃金・評価システムの実情は、文献情報や昨今のインターネットを通じた情報検索によりかなり明らかになる」が、「かかる資料に基づく調査・研究だけではどうしても理解できないことが少なくない」ので、著者は「アメリカ企業や労働組合を直接訪問し、企業における賃金制度や評価制度の実情に関する聞き取り調査を繰り返してきた。実態調査のために訪米した回数は10回に及ぶ。・・・訪問企業は延べ80社以上に及ぶ」という蓄積の上にこの本を書かれています。

一番重要なことは、アメリカは職務給であるということ。そんなことは判っていると思っていても、実は本質的に判っていない人が多いんですね。アメリカに「ペイ・フォー・パフォーマンス」という言葉があって、日本語にすると「成果主義賃金」となるんですが、日本の「成果主義賃金」とは根っこが違う。まず何よりも、ペイ・フォー・パフォーマンスは職務記述書があり、職務内容が明示されているのに対し、日本の成果主義賃金は一般的に職務記述書がない。前者では担当職務を決めて採用するが、後者ではそんなものを決めないで採用する。アメリカでは社内公募に応募して選抜されて異動するが、日本では会社が指名して異動する。だから、前者では透明性が高いのに対して後者では透明性が低い。

これは、ペイ・フォー・パフォーマンスが職務給をベースにした成果主義であるのに対して、日本のそれはベースが職能給という名の属人給であるからで、これは昨日のリクルートワークスの記事でも述べたように、雇用システム自体の違いからくるものなので、表面づらだけみて真似したようなふりをしてみても、そもそも根っこが違うわけです。

この点、逆に外国からの留学生に日本の労務管理を講義していて、ジョブに基づかずに採用するんだなんていうと、ジョブディスクリプションはどうなっているんだと質問が飛び、いや日本の企業にそんなものはないんだと答えるとシンジラレナーイという顔をするわけです。

ここんとこが全然判ってないくせに、一知半解で知ったかぶりをするとどういうことになるかというと、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_73ad.html(そういう二項対立ではないのです)

に示したとおりです。

あと、こういうさりげない記述に注意すること(p85)。

>アメリカ企業でwageとは、時給労働者の賃金を意味する言葉である。したがって、a wage earner とか a wage worker といえば、時給労働者を意味する。wage rateは賃金率と訳されることが多いが、通常は時給のことである。通常、ノンイグゼンプト(残業手当支給対象)職務の労働者は賃金が時給で決まっていることが多い。また労働組合員の賃金もこれまで示してきた事例からも判るように時給で決まっているのが一般的である。

>他方、サラリー(salary)とは年俸とか月俸のようにあらかじめ固定された賃金のことであり、働いた労働時間の量には連動しない。企業はこの固定された賃金を、労働時間が変動しても原則として引き下げることはできない。a salary earner とかa salary worker といえば、あらかじめ固定した賃金が支払われる労働者のことを指す。

ここのところがよく判っていないまま、ホワイトカラーエグゼンプションなんて代物を一知半解で持ち出すと、ああいうわけわかめ状態が現出するわけです。

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2008年4月10日 (木)

サービス業の生産性と密度の経済性

経済産業研究所の森川正之氏が、標記のようなディスカッションペーパーを著しています。「サービス業の生産性向上」が謳われながらも、一体それは何をどうすることなのか、実のところ誰にもよく判らない状況じゃないかと思われる今日この頃、これは、なるほどと思わせるものがありました。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/08040005.html

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/08j008.pdf

>本稿は、サービス業における規模の経済性、範囲の経済性、密度の経済性といった基本的な観察事実を明らかにすることを目的として、サービス業の中でも「生産と消費の同時性」が顕著な対個人サービス業約十業種を対象に、生産関数の推計や生産性格差の要因分解を行ったものである。

分析結果によれば、(1)ほぼ全てのサービス業種において「事業所規模の経済性」、「企業規模の経済性」、「範囲の経済性」が存在する。(2)
全てのサービス業種で顕著な(需要)密度の経済性が観察され、市区町村の人口密度が2倍だと生産性は10%~ 20%高い。この係数は、販売先が地理的に制約されにくい製造業と比較してずっと大きく、サービス業の生産性に対する需要密度の重要性を示している。(3)付加価値額ではなく数量ベースのアウトプットを用いて推計しても以上の結果は追認される。(4)全国サービス事業所の生産性格差のうち、都道府県間格差で説明される部分はわずかだが、市区町村間格差の寄与は比較的大きい。

これらの結果は、事業所レベルでの集約化・大規模化、企業レベルでの多店舗展開やチェーン化が、対個人サービス業の生産性向上に寄与する可能性があることを示唆している。また、仮に人口稠密な地域を形成していくことができるならば、生産性に正の効果を持つことを示唆している。ただし、この点は生産性向上と他の社会的・経済的な政策目標との間での選択にも関わる。

要するに、田舎にパラパラ人がいたんじゃ密度の経済性が低いから、サービス業の生産性が上がらない、こいつらみんな都会に連れてきて、多角経営の大規模店舗でまとめて買わせるようにすれば、生産性が上がってハッピー、というロジックのようでありますな。

>全国あるいは都道府県内の全ての地域を均等に振興しようとすることは、集計レベルでの生産性を高めることとは矛盾する可能性がある。

物事の本質が見えてきた感じであります。

もちろん森川氏は、

>しかし、サービス産業の生産性をさらに高めようとするならば、地域の均衡ある発展、企業・事業所の存続といった他の社会的・経済的価値とのトレードオフを伴う可能性があることも認識する必要がある。

と、ちゃんと付け加えています。

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三種の神器を統べるもの

リクルートのワークス研究所から発行されている「Works」という雑誌がありますが(その昔の統合ソフトじゃありません)、その最新号(87号)が「三種の神器とは何だったのか」という特集をしておりまして、次のようなすごいラインナップです。

http://www.works-i.com/flow/works/contents87.html

特集 三種の神器とは何だったのか
はじめに 50年後の総括を
荻野進介(本誌)

第1章 鏡・曲玉・剣の本質と生成過程

終身雇用

日本は終身雇用の国ではない/野村正實氏(東北大学大学院経済学研究科教授)
諸説の交通整理/荻野進介(本誌)
終身雇用とは「組織との一体化」である/加護野忠男氏(神戸大学大学院経営学研究科教授)

年功序列

選抜の時期が遅いから年功に見える/小池和男氏(法政大学名誉教授)
諸説の交通整理/荻野進介(本誌)
実務家の眼(1) 日経連『能力主義管理』が目指したもの/山田雄一氏(明治大学名誉教授)
年功システムは敗戦とともに消滅した/楠田 丘氏(社会経済生産性本部 雇用システム研究センター所長)

企業別組合

GHQが企業別組合を促進した/竹前榮治氏(東京経済大学名誉教授)
実務家の眼(2) 企業別の強みを生かしつつ企業外へも目配りを/團野久茂氏(連合 副事務局長)
諸説の交通整理/荻野進介(本誌)
戦後の労働組合は企業内組織である/二村一夫氏(法政大学名誉教授)

第2章 雇用システムとしての三種の神器

三種の神器を統べるもの/濱口桂一郎氏(政策研究大学院大学教授)
雇用システムの日米独比較/宮本光晴氏(専修大学経済学部教授)
メンバーシップを基本に人事を考える/(本誌編集部)
日本企業 持続的成長の条件/川田弓子氏(リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 主任研究員)
コラム 企業とは内部共同体かつ社会の公器である/野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)

まあ、私を除けば、いずれもこの世界の大御所級の方々ですね。上記リンク先でこれらは全部読めますので現時点ではまだリクルートのHPに載っていませんが、じきにそちらに載るでしょうから、偉い方々のお話はそちらで読んでいただくとして、ここでは私の喋ったものをアップしておきます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/recruitworksjingi.html

これは、私がworks編集部の荻野進介さんに喋ったものを荻野さんがまとめたものですが、ほぼ過不足なく要約していただいています。

ここでさらりと流されていることについて詳しく知りたいとお考えの方がおられましたら、私のHPにアップしてある「日本の労務管理」という講義案をお読みください。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hrm.html

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2008年4月 9日 (水)

アルバイトは労働者に非ず

いうまでもなく、アルバイトというのはドイツ語のArbeitAlbeit(労働)に由来する言葉で、昔の学識ある学生さんたちが、自分たちの雑役的パートタイム就労をそういう風に気取って呼んでみたところから使われるようになったわけですが(ですから、日本以外では「パート」と区別された「アルバイト」などという概念は存在しません)、その「労働」という意味の言葉で呼ばれる人々を、労働者ではないと主張する会社があるようです。

もともとは、例の店長は管理監督者にあたるかという問題から派生したようなんですが、つまり時給制のアルバイトが店長として応援に駆り出されたのに管理職だからと残業代を払われなかったという、まあよくある話だったようなんですが、なぜかそこから白馬は馬に非ずよりももっとすごいアルバイトは労働者に非ずという議論が飛び出してきたようです。

http://www.asahi.com/national/update/0408/TKY200804080324.html

>告訴状などによると、3人は時給制のアルバイトとして雇われたが、残業代分の割増賃金などが支払われなかったという。さらに、女性の1人は、店長として他店の応援などを指示されたが、管理職であることを理由に、その分の賃金は支払われなかったという。これらは時間外賃金の支払いを定めている労働基準法に違反しているとしている。

 元店長の女性は05年春、本社が希望者を募って行う昇格試験に合格して、2万円の手当を毎月もらえる店長になった。アルバイトから契約社員になったが、時給950円での勤務だったという。

わたしは、管理監督者でなくてもそれなりの高給を得ているのであれば「残業代ゼロ」には一定の合理性があるとは思いますが、時給950円でエグゼンプトというのはなんぼなんでもひどいでしょう、月2万円ぽっちの手当では補えませんよ、というところですが、まあここまでは普通の議論。

ところが、

>同社は昨年11月、都労委に書面を提出。実質は個人を事業主として業務を委託する委託契約であり、割増賃金の支払い義務はないとした。

はあ?

業務委託契約を時給950円でやるわけ?

「時給」ってどういう意味?

で、

>同月、3人は仙台労働基準監督署に是正申告を行った。原告側によると、時間外賃金の支払いについて同署が2月、同社に対し是正勧告をしたが、同社は受け取りを拒否したという。

なるほど、そういういきさつがあって、

>牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショー(東京)が、残業代などを適切に支払わなかったとして、すき家仙台泉店(仙台市)のアルバイト3人が8日、同社を仙台労働基準監督署に刑事告訴した。

という次第になったわけですね。

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2008年4月 8日 (火)

リバタリアンな団塊の世代

「代替案」というブログに、雨宮処凜さんの書かれた記事が引用されていて、たいへん興味深いものがありました。

http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/3acf222a439537072916d8c0c85a3fe5

>さて、雨宮さんの記事は、京都の若者向け労働組合「ユニオンぼちぼち」のパネルディスカションの際に起こった「事件」を書いたものでした。パネルディスカッションは、反貧困そして生存のため、若者がどのように連帯していけばよいのか真剣に話し合うものだったそうです。その際、フロアーにいた団塊の世代の学生運動経験者らしいオジサンが、「甘えるな」「一人一人がしっかりしていない」「戦略意的に生きてこなかった結果」などと、すごいケンマクで「フリーター=自己責任論」をまくしたて、あげくの果てには会場にいた生活保護受給者に対し、「生活保護を受けられるだけでも有り難いと思え」などと暴言を吐いたというのです。

ブログ主の関さんは、これを赤木風の世代間対立として捉えて書かれているのですが、私には団塊の世代という一世代の特性がよく現れているのではないかと思われました。

以前からこのブログでも何回か書いていますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_a90b.html(リベじゃないサヨクの戦後思想観)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_dbb1.html(日本における新自由主義改革への合意調達)

日本の戦後革新派知識人というのは、「日本はもっと市民社会にならなくちゃいけない、もっと個人の自由を」と、国家からの自由と市民的自立をもっぱら追い求め、自由主義の持つ野蛮な市場至上主義や非民主的性格に関心を向けず、福祉国家なんて大変いかがわしいものであるかのように見てきたんですね。

さらに、戦中戦後の日本型20世紀システムの中で確立した日本型雇用による企業内労働市場への労働者の包摂(それ自体は西欧型20世紀システムたる福祉国家の機能的等価物)を、前近代的な集団主義と個の未確立だと見なし、ひたすら非難してきました。

そういう価値観を全身に浴びて、60年代末の学生運動を戦ったのが団塊の世代であってみれば、彼らの価値基準がもっぱら個人と自由におかれるのは見やすい道理でしょう。「68年組」が社会連帯よりも個人の自由を追求した点では欧米と同じですし、それを70年代以降のネオリベラリズムが巧妙に掬い取ってきたのも共通ですが、それに対して「ふざけんじゃねえ、俺たちの生活をどうしてくれる」と一喝すべき左翼陣営が保守派よりも百万倍リベラル志向であってみれば、止めどがなかったのも宜なるかなでありましょう。

>私は、いわゆる「全共闘運動」というものに対して決定的に嫌悪感を抱いています。全共闘が掲げた「大学解体」「自己否定」などという全く訳の分らないスローガンには怒りを覚えます。運動の目的も何も分らない。甘ったれもいいところだ。そんならアンタたちがトットと大学を退学すればよいだけじゃないですか。何で勉強したい人々の邪魔しながら大学をバリケード封鎖などしなければならないのですか?
 連帯などはじめから求めていないから、各個人がバラバラに孤立していくしかなかったのです。彼らは破壊しか知らず、創ることなど何もできなかった。信州大学全共闘で破壊活動ばかりしていた猪瀬直樹が、小泉政権による日本破壊政策の片棒を担いだのは、象徴的なことだったと思います。

あえて弁護的にいえば、猪瀬直樹的心情にとっては、田舎の人々の「連帯」精神で、その生活を支えるために道路が造られるなんてこと自体が、そういう自由民主党的社会民主主義が許しがたいんでしょうねえ。

そういうウルトラリバタリアンな全共闘のなれの果てが社会民主党という名の政党に入ってきているというのも、またいかにも日本的ではありますが。

こういう凄まじいばかりの年季の入ったねじれ現象を見れば、昨今の「ねじれ」なんぞほとんどねじれの気配すらないというものです。

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日本経団連の新人事

御手洗会長の記者会見要旨に、「事務局の常務処理役員人事について」というのが載っています。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/kaiken/2008/0407.html

>5月28日(水)の定時総会に諮る事務局常務処理役員の人事を以下の通り内定した。

事務総長 中村 芳夫
専務理事田中 清
常務理事久保田 政一
常務理事椋田 哲史
常務理事濱 厚
常務理事讃井 暢子
常務理事川本 裕康

これを見ると、紀陸専務理事がお辞めになり、旧日経連からは常務理事として讃井さんと川本さんが就任するということのようですね。

財界として労働問題をどれだけ重視しているかという観点からすると、事務総長、専務理事いずれも旧経団連というのはどうなのかな、という気がしないでもありませんが、そういう人を出身で考える発想がいけないんでしたっけ。

まあ、それでいえば旧労働省も二代続けうわなにをするやめqあwせdrftgyふじこlp

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俺たちは賃上げが欲しいだけさ、インフレなんか止められねえ

ヨーロッパからのニュースを見ていると、財務相や中銀総裁はちゃんとインフレ懸念から賃金抑制を主張し、労働組合はちゃんとこれに反対していて、安心できます。

http://www.guardian.co.uk/feedarticle?id=7439862

>European unions protest on pay as inflation bites

EU27カ国の財務相と中銀総裁たちが、スロベニアの首都リュブリヤナに集まって、賃上げはインフレを加速する危険があるから抑えろと主張し、

>They sounded the alarm over inflation which hit a record annual rate of 3.4 percent in the European Union in March, due mostly to the surging price of oil and food.

Ministers and central bankers concluded that rising prices were the biggest danger to the European economy and cautioned against excessive pay demands, wary that big settlements would trigger a wage-inflation spiral.

それを取り囲む3万5千人の労働者たちは、

>"We only want higher wages, the inflation we can't stop,"

と、本来あるべき主張をしていて、誠に心温まるものがあります。

首相自ら賃上げを呼びかけるソーシャルな与党に対し、労働組合が組織的に支持する政党が「財金分離」を金科玉条にする利上げ主義者というこの奇妙な国から見ると、ということではありますが。

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2008年4月 7日 (月)

日本のオトナの嘘

医師に労働基準法はそぐわない、と言ってくれました久坂部羊氏、制限速度オーバーでねずみ取りに捕まって腹を立てた勢いで、日本の大人の嘘を片っ端から糾弾していきます。例によって産経のオラム「断」。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080406/acd0804060227001-n1.htm

>先日、制限速度14キロオーバーで、ねずみ取りに捕まった。在宅医療で患者宅へ向かう途中だったので、白衣姿で降りていくと、警官が困惑気味に「10キロオーバーまでなら、OKなんですが」と言った。それならはじめから制限速度を10キロ上にしておいてよ。

 しかし、日本ではこういう現実と法律(建前)のずれが多い。

 まずは売春。売春防止法があるのに、ソープランドなどの風俗店では、実質的な売春が行われている。わたしがかつて外務省の医務官として勤務したウィーンでは、売春は地区と時間を指定して、合法的に行われていた。その代わり、保健省は娼婦(しょうふ)を登録制にし、定期的な健康診断と、性病の検査を義務づけている。日本よりよほど健全な気がした。

 二番手は人工妊娠中絶。母体保護法(以前の優生保護法)で認められる場合以外の中絶は、非合法である。しかし、この法律は極端に幅広く“運用”され、現在、年間33万件以上の人工妊娠中絶が行われている。

 日本の“オトナの嘘”の最たるものは、何といっても自衛隊だろう。憲法第九条には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記してある。戦車やイージス艦や戦闘機を配備していて、陸海空軍を保持しないってどうよ、と思わず若者言葉で突っ込みたくなる。

 戦争放棄は世界に誇れる条文なのに、こんな嘘がまかり通っていては、その信憑(しんぴょう)性も薄れる。惜しいことである。

いや、それよりもなによりも、夜通し救急医療でてんてこ舞いしているのに、労働基準法の監視断続的労働の規定に基づく宿日直と称してやらしていることほどすさまじい「現実と法律(建前)のずれ」も珍しいんじゃないんでしょうかね。

ようやく朝日新聞も問題の深刻さに気付いて、1面トップにこういうのを持ってきたようですが。

http://www.asahi.com/health/news/TKY200804060137.html

>過酷 救急医療 39時間勤務――ルポ にっぽん

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21世紀の労働法政策

『時の法令』誌には、昨年度1年間「そのみちのコラム」という短文を書かせていただきましたが、今年度からいささか分量を増やして、「21世紀の労働法政策」という通しタイトルで連載することとなりました。4月15日号ではその序論として「連載にあたって-近代日本の労働法政策を概観する」を書いております。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/21seiki01hajimeni.html

なお、この号は、教育改革関連3法の解説が載っています。

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後藤和智『「若者論」を疑え!』

51hj0ydfpvl_ss500_ 「ニートっていうな!」の、というより、ネット界では「新・後藤和智事務所」と「雑記帳」で有名な後藤和智氏(現在、東北大の工学系の博士課程)の新著です。わざわざお送りいただきありがとうございます。

巻頭に、本田由紀氏との対談が入り、章の間には佐口賢作氏(例の「派遣のリアル」のリアルなドキュメントを書かれた方)のドキュメントが挟まっていますが、後藤氏の単著といっていいでしょう。

http://www.amazon.co.jp/%E8%8B%A5%E8%80%85%E8%AB%96%E3%82%92%E7%96%91%E3%81%88-%E5%AE%9D%E5%B3%B6%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%BE%8C%E8%97%A4%E5%92%8C%E6%99%BA/dp/4796663533

>『ニートって言うな!』(光文社新書)の著者、後藤和智氏が一般に報道等がされている「若者論」に対しメスを入れる知的エンターテインメントです。フリーター・ニート社会悪論、キレる若者、携帯によるコミュニケーション不全化論、少年犯罪凶悪化論、オタクバッシング、他人を見下す若者論などに対し、「世間でもっともらしく語られている若者論には嘘がある!」をテーマに、詳細なデータと若者へのルポを交えて分析した1冊です。

対談では、本田氏が冒頭「今日は、私は後藤さんのお考えを引き出すような、聞き手の役割」といいながら、半ば以降は「Nobody is perfect!」と、本田節全開ですが・・・。

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2008年4月 4日 (金)

管理監督者の範囲の適正化について

4月1日付で、労働基準局監督課長名で標記の通達が出されました。

http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/siryo/pdf/20080404.pdf

「管理職」と「管理監督者」をまったくごっちゃにして何の反省もないNHK始めとするすべてのマスコミの皆さんは、この通達をよく読むこと。

>しかしながら、近年、以上のような点を十分理解しないまま、企業内におけるいわゆる「管理職」について、十分な権限、相応の待遇等を与えていないにもかかわらず、労働基準法上の管理監督者として取り扱っている例も見られ・・・

>このため、労働基準監督機関としては、・・・企業内におけるいわゆる「管理職」が直ちに労働基準法上の管理監督者に該当する者ではないことを明らかにした上で、・・・

ちなみに、3月27日に連合が行った厚生労働省に対する要請では、

http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/rengonews/data/20080327.pdf

>このような事例が多発している背景には、労働基準法上の管理監督者とはどのような者であるのかについて正しく理解されておらず、「管理職=管理監督者」であるとの誤解が広がっていることがあると認識しております。

と、的確に言葉を用いています。

先日のNHKの「名ばかり管理職」でも、遂に一度たりとも「管理監督者」という正確な表現はされなかったですね。こうして、マクドナルドの頑固な社長は、「店長は現に管理職じゃないか!」と、ますます自分の正当性を強く信じることと相成るわけであります。マスコミの責任恐るべし。

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使用者側 欧州労使協議会見直しの交渉応諾

旧UNICEのビジネス・ヨーロッパが、中小企業協会、公企体センターとともに、欧州労使協議会指令の見直しについて、欧州労連との間で交渉にはいることを決めたということです。

http://212.3.246.117/docs/1/OBJEGCKCIGGGJLDBLIOOJBDMPDBW9DBKCK9LTE4Q/UNICE/docs/DLS/2008-00484-E.pdf

これがプレスリリースで、

http://212.3.246.117/docs/2/OBJEGCKCIGGGJLDBLIOOJBDMPDBW9DBKCY9LTE4Q/UNICE/docs/DLS/2008-00481-E.pdf

これは欧州委員会への書簡、

おやおや、労使協議制という労使関係の中枢的部分にEUレベルの労働協約をやりますか。14年前は傘下の使用者団体に反対があってできなかったのですが、今回はやるという方向に踏み出したようです。

しばらく、テレワークだの、ストレスだの、いじめだのといったいささか周辺的なテーマにいっていたEUレベル労使交渉ですが、一気に本丸に向かうというのは、どういう背景事情があったのでしょうか。やらずにいると、欧州委員会主導でこの領域の改正がどんどん進められてしまうという危機感でしょうか。

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的外れだなあ 改革後退批判 by 町村官房長官

産経より、町村官房長官の会見録

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080404/plc0804041234009-n5.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080404/plc0804041234009-n6.htm

>--福田内閣が発足して以降、公務員制度だけではなくて空港の外資規制や道路特定財源など、いわゆる改革の議論が行われているが、外国からはJapanとpainをあわせて「JAPAiN」といった表現を用いて、福田内閣では小泉内閣、安倍内閣で続いてきた改革の基調が後退したのではないかという批判もある。こうした批判がどういう理由で出てくると思うか。また、こうした批判に対する反論は

>「あのー、そもそも福田総理が選ばれた理由。それは当然。改革を進めるという一面と、改革に伴って生じた影の部分に対する配慮が足りないのではないかと。そこにも目配りをしていきましょうという主張をして福田総理が、総理総裁が選ばれたという経緯があります。従いまして、福田内閣はその当初の選ばれた理由、立候補した理由に基づいてしっかりとした政策を進めている。やるべき改革はしっかり進めておりますし。しかし、同時に、たとえば、雇用関連のたとえば規制緩和。これはよかったと思うんですが、それに伴って非正規雇用が非常に増えてしまったこと。これについてはやはり、正当な配慮をしていかなければならない。できるだけ非正規雇用から正規雇用に転換をしてもらいたい等々、そのための必要な政策も打っているということでありまして、それをもって改革の後退という批判は、私はあたらないと、このように思っております。今回の国家公務員にしろ、あるいは外資規制にしろ、別に何らこれ、改革の後退という的外れな批判があるんだなと私はしばしば思っておりますが、要はいい結果を出していくことだろうと、このように考えております」

いやもちろん、小泉内閣の改革路線が100%正しく、いささかの修正も許されないと考える竹中前総務相みたいな人にとっては、まさに「改革後退」なのでしょうし、その意味では「的外れ」という言い方は的確ではないわけです。

そうではなく、小泉改革路線には軌道修正すべき問題点があったと考える人にとっては、それは「改悪修正」なのでしょうし、それを「正しいあるべき改革からの後退」と見なす考え方自体が(方向性の認識ではなく、その価値判断が)間違っていると言うべきなので、やはり「的外れ」という表現はいささか的外れの感があります。

まあ、とはいえ、同じ派閥の先輩総理の悪口を言うわけにもいきませんしねえ。「的外れ」という表現が穏当な所以でしょうが。

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リュフェルト事件判決

ラヴァル事件、ヴィーキング事件とならぶEU統合と労働法の関係が問題になった事件であるリュフェルト事件に対する欧州司法裁判所の判決が昨日(4月3日)出されました。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&typeord=ALLTYP&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=LPSE&mots=&resmax=100

これは、ニーダーザクセン州から建設工事を請け負った会社がそれをポーランドの会社に下請に出した事案ですが、同州では、発注時に当該地域の労働協約(一般的拘束力宣言がされていなかった)で定める賃金・労働条件に従うことという条件を付けていたのですね。ところが、ポーランドから派遣されてきた建設労働者たちはその半分以下の賃金しか払われていなかったので、同州は契約を解除し、費用を請求、会社側はこれを違法として訴えたのです。なぜ違法かというと、EU条約のサービス提供の自由を侵害するから。

欧州労連ETUCも、ラヴァル事件、ヴィーキング事件とともに力を入れてきたのですが、結論はやはり労働側、というかニーダーザクセン州側の負け。

>Directive 96/71/EC of the European Parliament and of the Council of 16 December 1996 concerning the posting of workers in the framework of the provision of services, interpreted in the light of Article 49 EC, precludes an authority of a Member State, in a situation such as that at issue in the main proceedings, from adopting a measure of a legislative nature requiring the contracting authority to designate as contractors for public works contracts only those undertakings which, when submitting their tenders, agree in writing to pay their employees, in return for performance of the services concerned, at least the remuneration prescribed by the collective agreement the minimum wage in force at the place where those services are performed.

昨年9月に出された法務官意見ではそれは違法ではないといっていたのですが、それがひっくり返ってしまったわけで、労働組合側としては痛い失点です。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&typeord=ALLTYP&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=LPSE&mots=&resmax=100

>Directive 96/71/EC of the European Parliament and of the Council of 16 December 1996 concerning the posting of workers in the framework of the provision of services and Article 49 EC must be interpreted as not precluding national legislation, such as the Landesvergabegesetz of Land Niedersachsen, on the award of public contracts which requires contractors and, indirectly, their subcontractors to pay workers posted in the framework of the performance of a public contract at least the remuneration prescribed by the collective agreement in force at the place where those services are performed, on pain of penalties that may go as far as the termination of the works contract, if the collective agreement to which the legislation in question refers is not declared to be universally applicable.

”not”というたった3字がとれただけなんですが、結論は正反対というわけです。

まあ、法律論的に言えば、海外派遣指令で要求している「法令または一般的拘束力宣言がされた労働協約を守らなければならない」ということは、裏返して言えば一般的拘束力宣言がされていない労働協約というただの私人間の契約文書に過ぎないものに拘束されるいわれはないということなので、もっともではあるんでしょうが。

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2008年4月 3日 (木)

ゲイのカップルにも遺族年金を支給すべし!

昨年9月のエントリーで、法務官意見を素材に紹介した事案について、去る4月1日に欧州司法裁判所が判決を下しました。4月1日といってもフールじゃありませんよ。正真正銘の、職域年金における遺族年金について、性的志向に基づく賃金差別として認めた初めての判決です。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&typeord=ALLTYP&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=PSOC&mots=&resmax=100

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_b643.html(ゲイのカップルに遺族年金を支給すべきか)

判旨の重要部分は以下の通り。

>1.A survivor’s benefit granted under an occupational pension scheme such as that managed by the Versorgungsanstalt der deutschen Bühnen falls within the scope of Council Directive 2000/78/EC of 27 November 2000 establishing a general framework for equal treatment in employment and occupation.

2.The combined provisions of Articles 1 and 2 of Directive 2000/78 preclude legislation such as that at issue in the main proceedings under which, after the death of his life partner, the surviving partner does not receive a survivor’s benefit equivalent to that granted to a surviving spouse, even though, under national law, life partnership places persons of the same sex in a situation comparable to that of spouses so far as concerns that survivor’s benefit. It is for the referring court to determine whether a surviving life partner is in a situation comparable to that of a spouse who is entitled to the survivor’s benefit provided for under the occupational pension scheme managed by the Versorgungsanstalt der deutschen Bühnen.

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2008年4月 2日 (水)

NHK視点・論点のスクリプト

一昨日のNHK視点・論点で喋った「労働者派遣システム再考」のスクリプトが、NHKの解説委員室ブログにアップされていますので、リンクしておきます。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/7872.html#more

要するに、結論は最後のところで言っているように、

>労働者派遣システムの問題解決の方向は、事業規制の強化ではなく、派遣先責任による派遣労働者の保護の強化にこそあるのではないでしょうか。

ということになるわけなんですが。

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松井彰彦氏の「経済論壇から」について

去る日曜日の日経読書欄に松井彰彦氏による「経済論壇から」が掲載され、その中で私と福井秀夫氏の、例の「東洋経済」誌での”間接キッス”コラムが取り上げられています。取り上げられるのは有り難いのですが、いささか見当外れの取り上げられ方をしていて、正直、をいをい、という感じです。

>こうした実情を踏まえ、日本では雇用保護法制上の格差をなくすことが喫緊の課題になっている。しかし、そのために正社員の解雇要件を軽減すべきなのか(解雇しやすくすべきなのか)、それとも非正社員の解雇要件を厳しくすべきなのか(解雇しにくくすべきなのか)という点では、関係者の意見が大きく分かれている。

と、状況説明をした上で、

>政策研究大学院大学教授の福井秀夫氏(・・・)は、「・・・」と指摘、正社員の解雇をしやすくすることで対応すべきだと主張している。

>それに対し、同じ政策研究大学院大学教授の濱口桂一郎氏(・・・)は、「・・・」として、非正社員を解雇しにくくする(正社員に近づける)ことで対応した方が望ましいと訴えている。

と述べています。

東洋経済2月16日号を読まれた方は、この要約が的外れであることがすぐお判りになると思います。福井秀夫氏は、「解雇をしやすくする」などという生ぬるいことではなく、およそ労働者の保護はことごとく廃絶せよと主張しているのですし、わたくしはそもそもこのインタビューの最初のパラグラフで語っているように、「正社員の解雇規制を緩和し、非正規との調和を図っていくことは必要だろう」と言っているのです。それにしても、正規であれ、非正規であれ、労使の力関係が不均衡である以上、ボイスの機能を果たすためにも一定の解雇規制が必要だと述べているのであって、松井氏による要約はそれがまったく無視されてしまっています。

もちろん、世の中には正規の解雇規制はまったくそのままで維持し、非正規をそこまで引き上げるべし、と主張される方もおられますし、労働法学者には結構多いことは確かですが、私はそういうことを述べてはいませんし、そのような誤解をされる理由は(このコラムを一読しただけでも)ないはずです。

松井氏が意識的にそういう誤読をしたふりをしてこういう図式に当てはめたのか、私の喋った言葉を読み落としただけなのかは、これだけではよく判りませんが、少なくとも、自分の考え方とは違う意見の持ち主として分類されてしまうのは、あまり愉快なことではありませんね。

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再就職斡旋はしろというのかするなというのか

いうまでもなく、常識のある人であれば誰でも判っているはずのことではありますが、非公務員型独立行政法人の職員の労働法適用関係は、まったく民間の労働者です。労働組合法も労働基準法も、男女均等法も育児休業法もパート労働法も、とにかく民間労働者であって公務員扱いではありません。え?そんな分かり切ったことを何を今更書くのか、って?

どうも政府部内には必ずしもこの常識を弁えていらっしゃらない方もいるような気がするものですから。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080325-OYT1T00803.htm

>政府は25日、独立行政法人による職員の関連企業への再就職あっせんを全面禁止することなどを定めた独立行政法人通則法改正案の概要をまとめた。

Click here to find out more!

 国家公務員が独法に再就職し、さらに関係企業に移る流れを断ち切ることで、不透明な天下りを封じる狙いがある。政府は4月中旬にも閣議決定し、今国会に提出する考えだ。

 改正案では、国家公務員に義務付けられた再就職規制に準じ、〈1〉独法から関連企業への再就職あっせん〈2〉独法職員から関連企業に対する違法な求職活動〈3〉関連企業に再就職した独法職員から独法への違法な働きかけ――の3点を禁止する。

 2005年度(一部は06年度を含む)の集計によると、101の独法が出資する関連企業は236社あり、こうした企業に役員として再就職した独法職員は230人に上る。独法と関連企業との契約の約9割は随意契約で、「再就職の見返りに契約を結んでいる」という批判もあるため、規制することにした。

 改正案にはこのほか、理事長職と監事職への公募制導入を盛り込んだ。また、独法の業務の評価体制について、各府省に置いている評価委員会を廃止し、首相が任命する新たな評価委員会に一元化することにした。監視機能を強化するのが目的で、評価委には、独法の理事長や監事の解任を所管する閣僚に勧告する権限を与える方針だ。

 政府は昨年12月に独立行政法人整理合理化計画を閣議決定し、独法を16削減して85法人とすることや独法と関連企業との関係を見直すことなどを決めている。

国家権力を背景にした公務員の再就職斡旋については、そもそもその地位の独自性からして特別の取扱いが論じられるのはおかしなことではありません。しかし、非公務員型独立行政法人とは、そういう直接国民の権利義務を左右するような権力行使に携わる機関ではないはずでしょう。だから、労働法適用上、完全な民間労働者として扱っているのでしょう。

彼らには労働法制の一つとして、高年齢者雇用安定法も適用されます。公務員ではないのですから当然ですね。ですから、各独立行政法人には65歳までの継続雇用義務が課せられています。公務員のように60歳を超えたら再任用するかしないかは当局次第というわけにはいきません。

そして、同法第4条第1項には、

>(事業主の責務)

第四条  事業主は、その雇用する高年齢者について職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備を行い、並びにその雇用する高年齢者等について再就職の援助等を行うことにより、その意欲及び能力に応じてその者のための雇用の機会の確保等が図られるよう努めるものとする。 

第15条第1項には、

>(再就職援助措置)

第十五条  事業主は、その雇用する高年齢者等(厚生労働省令で定める者に限る。以下この節において同じ。)が解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他これに類するものとして厚生労働省令で定める理由(以下「解雇等」という。)により離職する場合において、当該高年齢者等が再就職を希望するときは、求人の開拓その他当該高年齢者等の再就職の援助に関し必要な措置(以下「再就職援助措置」という。)を講ずるように努めなければならない。

ちなみに、高年齢者等職業安定対策基本方針には、この再就職援助措置の内容について「関連企業等への再就職のあっせん」を明記しています。トヨタの労働者が退職する際にはどこか子会社に斡旋しろよ、と。そのことの当否はいろいろ議論があるかも知れません。民間企業でも取引先との間で「再就職の見返りに契約を結んでいる」というような実態が見られるのかも知れません。しかし、日本国政府は(非公務員型独立行政法人を含む)民間企業に対して、関連企業に再就職の斡旋をしろと言っているわけです。

ところが、一方でそれは禁止するというわけです。この間の調整をどのようにされるおつもりなのか、まさかそんな下らん法律のことなんか気がついていなかった、とは言わないでしょうね。私が2回も改正に関わった法律なんですぜ。

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留保利益の横取りを許すな

産経の正論欄に、まともな正論が載っています。筆者は加護野忠男氏

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080402/biz0804020327000-n1.htm

>≪絶対的でない株主権≫

 英国の投資ファンドが日本のJパワー(電源開発)の株式を購入し、経営の改善と役員の派遣を要求し、それが認められないとなると、外為法に抵触する比率まで持ち株の買い増しをすると宣言した。現在は経済産業省がその適否を審査中である。このような海外投資家の要求にいかに対応すべきかについて議論が分かれている。

 公益事業であるから外国人株主の株主権の制限は妥当だという見方と、株主権の制限は外国人投資家の日本からの離反を招くから避けるべきだという見方との対立だ。

 私は株主権を絶対視するのは間違いであると考えている。本来、株主権は絶対的なものではない。法的にもさまざまな制限が課せられている。株主に与えられた特権に対応した制限があるのは当然である。その制限は国によって微妙に違う。

 それ以外に法律として明文化されていない制限もある。利害関係者が守るべき不文律として慣習法化しているものもある。

 今回のような攻撃的株主の狙いは、日本企業が営々とため込んだ内部留保資金を奪い取ることである。彼らは自己資本利益率に注目する。留保資金を株主に配分すれば自己資本利益率を高めることができると考える。

 そのためには次のような論理が使われることがある。利益はすべての利害関係集団への支払い義務を果たした後に残るものであり、株主のものである。留保利益も例外ではない。

 ≪年度で完結しない取引≫

 この留保利益を企業の将来の利益を伴う成長のために使うのであれば、株主の利益になるが、現金として置いておくのであれば、その利回りはきわめて低い。そのようなお金は株主に配分すべきだという理屈である。

 多様な利害関係集団との取引が、毎年その年度内に完結するのであればこの論理は正しい。しかし、日本の企業は多くの利害関係集団と長期的取引をしている。長期的取引にはその年度中で完結しない貸し借りがある。それは明確な契約として行われるのではなく、不文律に従って行われている。従業員との間には終身雇用の不文律がある。

 このような慣行があるから、会社側は従業員の能力開発に投資できるし、従業員もそのための研鑽(けんさん)を積むことができる。サプライヤーとは長期継続取引の慣行がある。

 顧客企業に長期的な安定性があるからサプライヤーは技術や設備に安心して投資ができる。このようにつくられた取引ネットワークが日本の産業システム全体の高品質を支えている。

 攻撃的投資家はこのルールを変えることによって自らの利益をはかろうとする。

 自己資本を株主に配分するというやり方は、企業の安定性を低め、債権者などの他の利害関係者に迷惑をかけるリスクを高める。有限責任の株主はそれでよいかもしれないが、従業員や取引先には取り返しのつかない損害を与えてしまう。

 ≪投資利益の源泉は実業≫

 それだけではない。一部株主の要求は日本の産業全体の競争力をも奪ってしまう。英国は企業統治がうまく行われている国だというが、そこでは製造業のよい企業は育たない。製造業は付加価値が低いから、金融業に産業構造をシフトさせたのだという説明がおこなわれることがあるが、投資利益の源泉は製造業などの実業であるということを忘れてはならない。

 現在までのところ、このような攻撃的株主の利己的な要求に迎合する株主は日本ではまだ少ない。留保利益を株主に分配せよという要求は、株主総会で否決されることが多かった。しかし、他の株主の辛抱がきかなくなる危険はある。また、攻撃的株主が経営妨害を行う危険は常に存在している。経営妨害をすることによって、自分たちの要求を無理やり押し付けやすくなるからである。

 このような株主の跋扈(ばっこ)を防ぐためには、留保利益の分配を要求した株主は長期保有を義務付けるという法的制限を加えるべきである。攻撃的株主は自らを正当化するために自分たちは長期的投資家であるということが多い。だとすれば、長期保有を義務付けられても痛くもかゆくもないだろう。

 残念なことに規制当局は、投資家保護を標榜(ひょうぼう)しており、投資家の権利に制限を加えることに消極的である。しかし、投資家保護の大前提は、健全な経営を行う強靱(きょうじん)な企業をつくることであるということを思いだしてほしい。

 投資家保護という名目をもとに企業経営の健全性を低下させるのは本末転倒である。(かごの ただお)

どこぞの得体の知れない奇矯なリバタリアンと違い、堂々たる正論と申せましょう。

問題は海外投資家だからどうとかいうことではなく、企業の利益をすべて吸い尽くしてしまおうとする搾取的投資家に「どうぞどうぞ、お好きなように」というのかどうかということなのですから。

北畑次官は、自らの信念に基づいて、堂々とこの問題に対処すべきでしょう。

ちなみに、前にこのブログで叩いた元厚生省年金局長ドノは、そのもっとも責任を痛感すべき公的年金についてはどこへやら、ひたすら株主主権をぶち挙げる一方のようです。何が「平成の攘夷論」ですかね。誰か鈴をつける奴はいないのかねえ。

http://markets.nikkei.co.jp/column/rashin/article.aspx?site=MARKET&genre=q7&id=MMMAq7000024032008

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_bfee.html(企業年金は「モノ言う株主」でいいのか)

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雇用対策法改正と年齢差別禁止

『地方公務員月報』2008年3月号に掲載した「雇用対策法改正と年齢差別禁止」をアップしました。雇用対策法の年齢関係の改正の経緯と、それが公務員に及ぼす影響についてやや詳しく解説しています。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/chikounennrei.html

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2008年4月 1日 (火)

フランコフォンのガキは公園で遊ぶの禁止!

ほとんど国家内離婚状態のベルギーですから、何があっても不思議はないのですが、ここまでやるかという話。ル・モンド紙ですが。

http://www.lemonde.fr/europe/article/2008/03/27/les-francophones-bannis-des-aires-de-jeux-d-une-ville-flamande_1027981_3214.html

ブリュセル近郊のリーデケルケという町が、オランダ語を喋らない6歳から12歳の子どもは公園で遊ぶことを禁止すると決めたというニュースです。その理由は「安全上の理由」。アパルトヘイトという物騒な言葉も飛び出しています。

フレミッシュとワロンの喧嘩は、EU関係の記事が夏枯れになるとエコノミストやFTなどイギリスメディアの格好の餌になっていましたが、ここまでくると冗談で済まないですねえ。

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医師に労基法はそぐわない だそうで

産経のコラム「断」、これは実に以て典型的な「センセイ商売は労働者に非ず」思考を露わに示しているので、全文引用の値打ちがあります。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080327/acd0803270325001-n1.htm

>先日、ある新聞の1面に「救命医宿直7割『違法』」という記事が出た。救命救急センターの当直が労基法に違反しているとの内容である。医師の激務の実態を報じるのはいいが、そこに労基法など持ち出しては百害あって一利なしだ。

 記事には、労基法上、残業などの時間外労働は原則、月45時間までとか、労基法に違反すると、労働基準監督署が改善指導し、従わない場合は書類送検することも、などとある。医療にそんな建前が通用するわけがないではないか。それとも、治療を求める患者を前に、医師が労基法をたてにして、病院に権利主張ができるとでもいうのか。

 医師に労基法を適用して、臨床研修制度が大きな矛盾を抱えたことは記憶に新しい。研修医に30万円程度の給料を保障したため、指導医のほうが安月給になったり、週末や当直明けを休みにしたため、研修医の一部が、医師のありようを学ぶ前に、休暇の権利を覚えたりするようになった。

 医師の勤務が労基法に違反している云々(うんぬん)などは、現場の医師にとっては寝言に等しい。医師の激務や待遇の改善は必要だが、今さら労基法を当てにする者など、まずいないだろう。万一、医師が労基法の適用を求めだしたら、現場はたいへんな混乱になる。

 患者の治療よりも、労基法の遵守を優先すべきだとまで主張するならいいが、そうでなければ、表面的に「違法」をあげつらうのは、単なる絵空事にすぎない。(医師・作家)

絵空事だの寝言だのと非難していれば、どんなに睡眠不足の医師でも患者を前にすれば100%完璧な治療ができるというのなら結構ですがね。

この方もお医者さんのようですが、救急病院で昼間勤務に続いて夜間当直で休む暇なく診療に当たり、引き続き翌日昼間勤務を繰り返しておられるんでしょうねえ。それでよく「作家」業もつとまるものです。おそらく超人なのでせう。まさか暇な開業医とかいわないでせうね。

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コンメンタール パートタイム労働法

51utymb2nl_ss500_ 法改正後に出される役人の名著というには、あまりにも熱っぽい一冊。

そもそも、最近では役人が名著を出すことも少なくなっていますが、これは本日施行された改正パートタイム労働法の改正作業を担当した高崎真一氏(短時間・在宅労働課長)が自ら書き下ろしたもので、役人本とは思えない熱っぽい記述が見られます。

http://www.chosakai.co.jp/purchase/books/syousai/1001.html

どれくらい「熱っぽい」かというと、オビに曰く「改正パートタイム労働法の施行を契機に「同一労働同一賃金の原則」が実際に労働の現場で適用される時代に!」。

なぜそこまでいうかというと、巻頭言(「敢闘言」というべきか)に曰く、

>「同一労働同一賃金の原則」というものがあります。・・・

一見当たり前のことをいっているようで、現に、経営側もある意味では同意しています。・・・

ところが、問題はそれほど簡単ではありません。どのようにして「同一価値労働」かを判定するかが具体的に決められていなかったからです。その結果、お互い「抽象的」に、労働者は「同じ仕事をしているのだから、同じ賃金が支払われるべきだ」と主張するのに対して、経営者は「同じ仕事に見えても将来にわたる期待が違うので、同一価値労働ではない」と反論するわけです。このような議論が繰り返されてきました。

今回、改正パート労働法は、「同じ職務(業務+責任)、同じ人材活用の仕組み・運用、実質的契約形態が同じ」=「同一(価値)労働」であり、その場合は、すべての待遇について差別してはならない(当然同一賃金)ことを法定しました。いわば現時点における日本版「同一労働同一賃金の原則」を、我が国の法制上は初めて「具体的」に実定化したものです。この規定そのものは正社員とパート労働者間のルールですが、男性正社員と女性パート労働者にさえ適用されるルールが、例えば男女の正社員間に準用されないわけはなく、一般法理としての意味も併せ持つと考えます。

ううむ、そこまで言えますか、という感じですが、高崎氏がこの法律にかけた情熱の強さは十分伝わってきます。

課長名著といえば、終戦直後には結構多かったんですね。復刻された寺本広作『労働基準法解説』を始め、労政関係では松崎芳伸氏の軽妙な名著が有名です。

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規制改革会議の方は残念ながら来ていただけませんでしたが

3月25日に、参議院予算委員会で公聴会が開かれ、八代尚宏氏も公述人として出席しています。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0115/main.html

本当は、もっと引っ張り出したい人がいたようなんですが、

>○櫻井充君 ・・・今ずっとお話をお伺いしながら、やっぱりこういう議論を国会で本当はできれば僕はもっといいんじゃないのかなと正直思いました。つまり、私は今まで規制改革会議であるとか経済財政諮問会議であるとか、そういう方々に是非国会に来ていただいて自由に発言していただきたいと。そして、それを我々がどう受け止めるのかということが問題なのであって、そこを今日、本当に僕は八代公述人には物すごく感謝申し上げているんですが、今日来ていただいて良かったなと、本当にそう思います。
 ですから、
規制改革会議の方は残念ながら来ていただけませんでしたが、これからやっぱりこういう機会が僕はもっともっとあっていいんじゃないのかなと、そういうふうに思っています。

ほほお、あの方は、ご自分が居丈高に反論できない立場の役人をいじめ抜くのは大好きですが、居丈高な国会議員にいじめ抜かれるのは嫌で堪らないようですね。

>行政庁、労働法・労働経済研究者などには、このような意味でのごく初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向きも多い

とまで仰っている以上、正々堂々と国会議員を論破されてはいかがだったのでしょうか。

そういう意味では、この公聴会における八代氏の答弁はしっかりしたもので、特にこの派遣法をめぐるやり取りは、低姿勢で答えながらきちんというべきことはいうという役人の鑑のようなものです。

>○小林正夫君 ・・・八代公述人に労働関係を中心に少し質問をさせていただきたい、このように思います。
 まず、日雇派遣から抜け出す策は何なのかと、こういう質問をしたいと思います。
 公述人におかれましては、規制改革会議の前身である規制改革・民間開放推進会議において委員を務められました。労働者派遣法の見直しについて度々発言もされておりまして、事前面接の解禁、あるいは派遣禁止業務の解禁、雇用契約申込義務の見直しを行うべき、こういう趣旨の発言が多く見られると私は感じております。さらに、次のような発言もございました。日本的労働慣行である正社員の働き方を守るために派遣労働の働き方を制限しなければならないという考え方はおかしく、そのために様々な規制がなされているものであり、こうした考えを改めるべきである、こういう旨の発言もされていると記憶しております。私は、昨今のこの非正規雇用者がこれだけ増えて不安定な社会を生み出してしまっている、こういう社会を見るときに、八代公述人のこうした考え方はどうしても理解できない、こういう立場に私はおります。
 ・・・ そこでお伺いしたいんですが、この日雇派遣、あるいは日雇という働き方を望んでいる方も確かにいらっしゃると思いますけれども、そこから抜け出したいと、まあこういうふうに思っている方も私は数多く、どちらかというとその人の方が多いと、このように思っておりますけれども、この人たちが常用雇用から遠ざかっている理由は何なのか、どうしたらこういう状態から抜け出せるのか、このことについて御所見をお伺いいたします。

○公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。
 今様々な御質問をいただきましたが、少しちょっと整理してからお答えしたいと思います。
 まず、二重派遣を始めとする違法行為が許されないのはこれはもう当然のことであって、これはもう厳しく処罰していただかなければいけないかと思います。規制緩和は決して違法を奨励するためのものではないわけで、きちんとしたルールで合法的な仕事をするということが当然のことでありますので、まず違法の問題は違法の問題としてちゃんと解決していただきたいというのが第一点であります。
 それから、派遣の問題と日雇派遣の問題はまたちょっと違うわけでして、まず日雇派遣の方の問題からいきますと、こういう新しいタイプの派遣というのは、ある意味で当初は必ずしも想定されていなかった面があるんじゃないかと。今議員の御質問のように、携帯電話の普及ということがあって、言わば電話一本でハローワークに行かなくても仕事が見付かるというような形で、利用者の方もある意味では非常にそれを、便利さというのを活用していた面があると。しかし、別の面からいいますと、何といっても一日単位で仕事が区切られていますと、当然ながら毎日違う仕事をする場合もあるわけで、熟練形成というものもままならないわけで、やはり長い間働いていても質が向上しない、したがってなかなか正社員の道に行くことが困難であるという問題があります。ですから、これは少しでも長く、一日よりは一か月、一か月よりは三か月、三か月よりは半年という形で、働く期間を延ばしていくというためにはどうしたらいいのかということが大きなポイントではないかと思われます。
 今、厚生労働省の方では、専門家の方が集まってこの日雇派遣の問題を議論されているというふうに聞いております。ただ、そこでやはり議論されるポイントといいますのは、この日雇派遣を禁止したらその人たちはじゃどうなるのだろうかというポイントで、例えばその人たちがすぐに正社員になれるのかというとそれはかなり難しいわけでありまして、例えば派遣ではない直用という形の日雇の方に移るということになった場合、それはそれとしてどういう意味を持つのだろうかというような問題もあるわけで、いろんな形から多面的にこの問題を厚生労働省の方の研究会で議論していただく必要があるんじゃないかと思われます。
 それから、こういう日雇ではない派遣の問題、これは委員御承知のように言わば派遣元の会社の正社員である常用雇用型の派遣と登録型の派遣に分かれるわけでありまして、この正社員である派遣社員については本来問題はないはずなわけですね。つまり、きちっとした雇用が保障されていて、ただ働き場所がそれぞれ違うということにすぎないわけであって、正社員でも、コンサル会社なんかはあちこちクライアントの下で行って働くということは一般に行われているわけです。問題はこの登録型の派遣であるということであります。
 今の派遣法というのは、ある意味でこの登録型の派遣の人をどう考えるかというときに、どちらかといえばこれは望ましくない働き方であるという形で、対象業務であるとかあるいは働く期間というものを規制するという考え方になっているんではないかと思われます。その派遣期間が延びたときにも、雇用の申込義務という形で、派遣先の方から正社員としての、その派遣社員がやっていた仕事を正社員がやる場合にはその人に雇用の申込義務を、しなければいけないというような規制が掛かっているわけでございます。
 これが本当にこの派遣社員のためになっているかどうかというのが実は大きなポイントでございます。つまり、雇用の申込義務があれば、その方が正社員になりやすいという考え方は当然あるわけでございます。ただ、企業の方がもしこの人を正社員として雇いたいと思っていれば、それは別に規制がなくたって勝手にやるわけであります。むしろ、よその会社に優れた派遣社員を取られないうちにもうさっさと正社員にしてしまうということは当然考えられるわけで、もし逆にこの企業がこの人を派遣社員としてでは喜んで雇うけれども正社員にしたくないというふうに考えていたとすれば、三年の雇用契約があったときに、三年後には雇用の申込義務が必要だとすれば、ある意味で二年半で雇用契約を解消してしまうということが当然行うわけでありまして、そうなった場合には、これは別に違法でも何でもないわけでありますが、そうなった場合には、この派遣社員の人から見れば、そういう規制がなければもっと長くこの会社で働けたかもしれないのにやむを得ず会社を変わらなければいけないということになってしまうのじゃないか、そういうふうに考えられても仕方がないんじゃないか。
 ですから、委員もおっしゃるように、私は、派遣法というのは、派遣事業者を規制する法律というより、派遣労働者を保護する法律でなければいけないと思います。それは、あくまでも派遣社員の利益のために何が必要かということを考えて、派遣社員と正社員とのできる限り均衡待遇の強化、こういうことをどんどん厳しくするのはいいと思うんですが、就業期間を制限するという形で規制するということが本当に派遣社員のためになっているかどうかということをやっぱり考えなければいけないんじゃないか、そういう趣旨で先ほど委員が御指摘になったような発言をしたわけであります。

○小林正夫君 派遣という働き方はある、このように私も認識をしております。ただ、日雇派遣、先ほど公述人おっしゃったように、携帯電話一本でどこに行かされるか分からないと、こういう働き方をせざるを得ない人が相当増えてしまった、このように思います。私は、やっぱり雇用の大原則は期間の定めのない雇用であり、直接雇用、これがやはり私たち雇用の大原則、このように思います。
 そういう立場から見ると、日雇派遣、派遣会社に登録して、そこから派遣先が決められて、要は働く人間は直接契約をしていないところで働かなきゃいけないという、この実態が今本当に世の中に蔓延していると。やっぱり働かせる側が責任持って雇用してその労働者を働かすという、こういうやはり私は社会に戻していかなきゃいけない。
 私は、やはりこの二〇〇三年の労働者派遣法の改正、これは当時の規制改革会議の中で、規制緩和の中でそういうことを求めた、またそれを政府が実行した、私はこのことに大きな誤りがあったんじゃないかと思いますけど、公述人はいかがでしょうか。

○公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。
 最後の点でございますが、規制改革会議の方でこういう規制緩和をする必要があるということを提言いたしまして、これは規制改革会議の答申というのは二つに分かれております。問題意識という委員だけの意見の部分と、具体的施策という、関係各省、この場合は厚生労働省と合意した部分という二か所に分かれておりまして、この規制の緩和部分は厚生労働省との合意に基づいたものでございます。これは、厚労省の審議会でその後審議され、国会に上程されて、国会の決議を得て法律となったわけでありまして、規制改革会議だけが勝手に作ったものではないということは御承知のとおりだと思いますが、まず述べさせていただきます。
 それから、おっしゃいましたように、この日雇派遣というのが決して望ましい働き方であるとは私は思っておりません。これは全く同意見でございます。ただ、それを禁止することでもっとより良い働き方に本当に行けるのかどうかという点がやや御意見と違う点であるわけです。
 今、この日雇派遣の問題点というのは、さっき申し上げましたような不安定性ということもさることながら、非常に派遣会社のマージン率が高いということ、一説によると五割以上を取っているということになるわけで、このマージン率が低ければもっと労働者の手取り部分は大きくなるわけであります。
 ですから、何でこんな大きなマージン率を労働者は甘んじて受けているのかというと、一つは情報の不足ということ。したがって、今厚生労働省ではもっときちっと派遣会社がどれくらい派遣料金と労働者が受け取る料金との差があるかということを明示せよというような指導をされていると聞きますが、これは一つのやり方だと思います。
 それからもう一つ、私の専門といたします経済学の立場からの御提言といいますのは、こんな高いマージンを取っているということは、やはりこの業界が余りにも寡占的に過ぎる、民間のよく言われている二つの会社辺りが独占的に日雇派遣をやっている、もっと他の会社がこういう日雇派遣に参入すれば競争を通じてこの労働者の取り分が上がるのではないか、これは経済学の非常に単純な議論でございます。
 例えばNPOとか、私の個人的な全くの印象でありますが、連合がワークネットという派遣会社を持っておられる。これはまさに連合が非営利でやるわけですから安心して派遣労働者がここを使えるということなんですけれども、例えばこのワークネットが日雇派遣をやっていただくと、言わば非常に少ない手数料で日雇派遣者を雇えるわけで、争って日雇派遣の方はこっちに行くんじゃないかと。そうなると、こういうふうにピンはねされる率がもっと少なくなる。つまり、これは事業者間の競争を通じて派遣労働者の言わば利益を高めようという考え方で、禁止だけじゃなくて、例えばこういうことを政府がもっと奨励するというのも一つの手段ではないかと思われます。
 以上であります。

以上のやり取りに関するかぎり、私は八代氏の議論にまったく賛成というわけではありませんが、妙な感情論に走らずまともな議論になっているように思います。私が昨日NHKの番組で喋った内容とも通ずるものがあります。

福島瑞穂氏は、福井秀夫氏の例の大論文を八代氏にぶつけて、こういなされています

>○福島みずほ君 ・・・次に、労働ビッグバンのことについてお聞きをします。
 規制改革会議の第二次答申ですが、確かにこれの労働法の部分など、問題意識の部分というふうにされていますが、これも政府の公式の文書です。労働ビッグバン路線そのものですが、同じ考え方でしょうか。

○公述人(八代尚宏君) 今、福島議員が問題意識とおっしゃいましたが、それはひょっとして規制改革会議のペーパーのことではないですか。

○福島みずほ君 そうです。

○公述人(八代尚宏君) 私は、残念ながら規制改革会議のメンバーではありませんので、規制改革会議がどういう答申を出してどういうことをやっているかというのは十分に存じませんが、規制改革会議というのは諮問会議の下にある組織ではございません。別の組織でありますので、規制改革会議の方に聞いていただきたいと思います

○福島みずほ君 これが出しているものが労働ビッグバン路線そのものだと思ったもので、そういうふうに質問をいたしました。
 この間、経済財政諮問会議は労働法制の規制緩和を提案をずっとされ続けてきております。御手洗さんは、派遣法に関しては事前面接をなくせ、あるいはもっと業種の制限を全部撤廃すべきだというふうにも言っております。このような労働法制の規制緩和に関して八代公述人、どうでしょうか。
 舛添大臣は、先日この委員会で、ディーセントワーク、人間らしい労働とは何を指すと考えるかということに関して、常用雇用、直接雇用が望ましいというふうに答えました。八代公述人は、過去、再チャレンジ支援策の中心は労働市場の流動化だというふうにおっしゃっています。労働法制の規制緩和を、派遣法の規制撤廃とを一貫して主張し、見直しをリードされてこられたわけですが、間違っていたんではないですか。

○公述人(八代尚宏君) まず、労働ビッグバンという言葉はいろんな意味に使われていますが、単なる規制緩和ではないわけで、これは規制の組替えであります。つまり、今の私の理解では、派遣法、パート法、高齢者雇用安定法というように、労働者の属性ごとに別々の法律があると。これを言わば金融ビッグバンと同じように、一つの法律、例えば均衡待遇の重視といいますか、そういう方向に変えていく、それによって言わばその派遣と請負との間のすき間に落ちるような人たちをきちっと救済していくということが大事であるわけです。
 これは私が総合規制改革会議にいたときの第三次答申でありますが、こういうことを書いております。派遣労働者と常用労働者の均衡待遇が実現すれば、派遣対象業務や派遣期間の制限は不要であり、これを撤廃した方が労働者の働き方の選択肢拡大という観点から労働者の利益になるということでありまして、無条件に派遣とか派遣の規制を撤廃しようというのは、私がいたときの規制改革会議で少なくともそういうことは言っておりません。ですから、ビッグバンというのはあくまで労働者にとって働きやすい規制に変えていくということが大事なわけであります。
 この労働専門調査会では今まで三つの報告書を出しておりますが、第一がワーク・ライフ・バランスの実現のためにどうしたらいいかということ。第二番目が外国人労働者の問題と在宅勤務を増やすためにはどういう形が必要か。最後の報告書は、高齢者の雇用を増やす、特に高齢者が言わば定年退職後は一年間の有期雇用を継続しているのがほとんどであるという現状を改革し、どうしたらもっと責任のある形で働けるかというためにはどうしたらいいかということを検討した報告でありまして、いずれも単なる規制緩和ではありません。すべて労働者が質の高い働き方をできるためにはどうしたらいいかという観点からの言わば提言をしているわけでございます。

○福島みずほ君 労働者派遣法の期間を撤廃したり、労働者派遣法の規制を緩和することが質の高い労働にどうつながるんですか。

○公述人(八代尚宏君) 今申し上げましたように、単純に派遣の期間とか派遣対象業務を自由化するんじゃなくて、あくまで一方で均衡待遇ということを進めるというふうに、一緒にやるということが第一です。
 それから、派遣の期間の問題でいえば、御承知のように、一年間の就労よりは三年間の就労、五年間の就労というふうに、同じ企業で例えば長い期間働けば働くほどその企業に特有な技能を吸収できやすい。その意味では、短い派遣期間より長い派遣期間の方が労働者にとって望ましい場合もあるわけであります。
 もちろん、これは福島委員がいつも言っておられるように派遣の固定化につながるとすれば問題でありますが、同時にそれは、三年ごとにあるいは二年ごとに派遣労働者が企業を変わらなければいけないという状況になれば、なかなか熟練形成というのは進まないんじゃないか。その意味では、一定の条件の下で派遣の期間の見直しといいますか、より長くするという方向は派遣労働者の熟練形成にはプラスになる面も大きいんではないかと思っております。

○福島みずほ君 三年あるいは五年、今は三年もありますが五年、長く働くのであればなぜ直接雇用にしないのか。均等待遇は本当に進んでいません。
 舛添大臣は、ディーセントワークに関して、ILOが言っているように直接雇用、常用雇用が望ましいと言いました。私もこれはそのとおりだと思っております。この点についてはいかがですか。

○公述人(八代尚宏君) 常用雇用が望ましいかどうかは、やっぱり労働者の判断もあるわけで、無条件に望ましいとは言えないと思います。
 それは、今の正社員というのは、御承知のように、雇用の保障、年功賃金の代償として長時間労働とか絶え間のない転勤とか配置転換という犠牲を払っているわけであります。派遣社員にアンケートを取りますと、正社員になりたいけれどもやむを得ず派遣社員になっている方というのも当然おられますが、最初から派遣社員で働きたいという人もかなりの数おられるわけでありますから、一方的に常用雇用だけが望ましい働き方で、派遣はすべて悪い働き方だということは必ずしも正しくないんじゃないかと思います。
 大事なのはその中身でありまして、常用雇用でもひどい働き方もあります。派遣でも、専門職であれば極めて質の高い、ある意味では給料の高い派遣もあるわけで、問題は働き方の中身であって、派遣は一律に悪い、常用雇用は一律に望ましいという形の切り口というのは別の問題があると思っております。

いや、「規制改革会議の方に聞いていただきたい」といっても、その方は「残念ながら来ていただけませんでした」ようなんですがね。ただ、「をいをい、俺は福井のボスじゃないぜ。なんであいつのツケを俺に回すんだ」という気分は伝わってきます。

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大竹文雄氏のバランス感覚

日本労働研究雑誌の4月号が「通説を検証する」という特集をしていて、大変面白い。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/04/index.htm

>世間に広く通用している説(通説)には、専門家からみて根拠がないというものが意外に多い。不可思議なオカルト現象のカラクリをあばく「ガリレオ」准教授のように、科学的な根拠のない議論に対しては、専門家がきちんと一般の人にもできるだけわかるように真実を伝えておく必要がある。「労働」の分野でも同じである。「労働」に関する通説には、専門家からみて明らかにおかしいと思えるものが少なくない。また専門家の間では決着していない論争的なテーマについて、あたかも既に解決されているかのごとく、特定の意見だけが通説となっていることもある。本特集では、専門家には、こうした「通説」はどのように映っているのか、論争状況にあって決着のついていないテーマは、どうしてそうなっているのか、ということを一般の人の目線に立って解説しようとするものである。読者には、専門家の議論の奥深さを味わってもらうと同時に、日頃から通説を批判的に見る視点の重要性も感じてもらいたい。

どういうテーマが取り上げられているかというと、

●「制度」の検証対談最低賃金を考える
大竹 文雄(大阪大学社会経済研究所教授)

橘木 俊詔(同志社大学経済学部教授)

エッセイ割増率の上昇は残業時間を減らすか?
佐々木 勝(大阪大学大学院経済学研究科准教授)

社会保険料の事業主負担部分は労働者に転嫁されているのか
太田 聰一(慶應義塾大学経済学部教授)

「定年制」を考える
戎野 淑子(嘉悦大学経営経済学部准教授)

ポジティブ・アクションは有効に機能しているのか
川口 章(同志社大学政策学部教授)

少数組合の団体交渉権について
奥野 寿(立教大学法学部准教授)

●人事管理対談ホワイトカラーの労働時間管理
藤村 博之(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)

山口浩一郎(上智大学名誉教授)

エッセイ成果主義は日本の賃金制度を変えたか
中嶋 哲夫(人事教育コンサルタント)

非正社員から正社員への転換制度について
武石恵美子(法政大学キャリアデザイン学部教授)

わが国におけるキャリア教育の課題──若干の通説的理解を見直す
寺田 盛紀(名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授)

適性検査を活用する有効性について
室山 晴美(JILPT主任研究員)

●労働市場座談会派遣労働をめぐって
南部 靖之((株)パソナグループ代表取締役グループ代表)

浜村 彰  (法政大学法学部教授)

守島 基博(一橋大学大学院商学研究科教授)

エッセイ人材ビジネスか、それともハローワークか──職業紹介サービスにおける国と民間の関与
佐野 哲(法政大学経営学部教授)

フリーターの中高年齢化
太田 清((株)日本総合研究所主席研究員)

外国人労働力の導入
渡邊 博顕(JILPT主任研究員)

ワークシェアリングは雇用促進に有効だったか
小倉 一哉(JILPT主任研究員)

いずれも知的刺激満載のおもしろエッセイですが、ここでは冒頭の大竹・橘木ビッグ対談がお値打ちです。

テーマは最低賃金で、いうまでもなく、「最低賃金を引き上げると貧困解消に役立つ」という世間一般や法学者の「通説」を経済学で斬るなどという初等教科書嫁的な低レベルのものではなく、「最低賃金を上げると失業者が増える」という経済学者の「通説」を検証しようという中級クラスのものですが、カード・クルーガー対ニューマークの実証に基づく論争やワークフェア、ケインズ政策、低生産性企業の退場など最低賃金をめぐる様々な論点が的確に紹介されていて、わずか10頁ですが大変ためになります

しかし、ここでわざわざ取り上げたいのは、最低賃金の話ではなく、大竹文雄氏がそれにからめて取り上げているサラ金の金利制限の話です。こちらも、最低賃金と同様に、一知半解の徒輩が初等教科書嫁的知ったかぶったかを繰り広げたがる分野ですが、さすが我が国労働経済学の中堅の雄の大竹文雄先生、視野を広くとっていいバランス感覚を示しておられます。

>そうですね。私も最低賃金を引き上げる必要がないと考えているわけではありません。元々はそんなに引き上げる必要はないと思っていたのですが、消費者金融の研究をするようになって、経済学者が想定しているような合理的な行動をとらない、余裕がなくてそれができない人というのが実はかなりいるということがわかったわけです。だから、その人たちの行動を変えたり、企業がそうした人たちの弱みにつけ込めないようにする規制というのは必要かなと。

経済学者の発想でいくと、消費者金融の話なら、高金利でも喜んで借りているのだからいいじゃないか、低賃金労働についても本人がそれでいいというならいいではないかというのが普通の考えなんです。でも、例えばパチンコがしたくてつい消費者金融に駆け込む、今遊ぶ金が欲しいから、あるいは今日生活していくために日雇い労働を受け入れるということが現実には往々にしてあるわけです。規制を設ける際には、人は必ずしも合理的に行動しないということを前提にして、そうした事態を防ぐようなものにしていくことが必要かと思います。

アリとキリギリスではないですが、その時はいいと思っても長い間そういうことをしていたら、結局そこから抜け出せなくなって、後々悔やむことになるのではないか。・・・

どこぞのリバタリアン氏は、大竹文雄氏に対しても

>パターナリズムってわかる? これ、ほめてるんじゃないよ。日本語では「家父長主義」と訳し、君のように「かわいそうな貧乏人を助けてあげよう」という善意で規制を強化して、結果的には日本経済をだめにすることをいうんだよ

てな調子で「馬を射る」つもりでしょうかね。

ちなみに、サラ金問題については本ブログでも「朝三暮四ザル」で語ったことがあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_1616.html(パターナリズムは悪か?)

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