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コリンズ『イギリス雇用法』

79233245 ヒュー・コリンズ著、イギリス労働法研究会訳の『イギリス雇用法』が遂に出版されました。

御謹呈いただいた翻訳者の方々に厚くお礼を申し上げます。

さて、この本、さりげないタイトルにごまかされてはいけません。普通のイギリス労働法の教科書とはだいぶ違います。まず目次がすごい。

>第1部 雇用法の目的と規制手法(「労働は商品ではない」;職場を規制する)

第2部 社会的包摂(雇用機会と差別;労働と生活)

第3部 競争力(協力;パートナーシップ;競争と争議行為;懲戒と解雇;経済的保障)

第4部 シティズンシップ(職場における市民的自由;社会権;賞味期限)

ソーシャル・インクルージョンと企業の競争力向上と市民権が労働法の3つの柱だというのですから、今までの労働法学に慣れ親しんだ人々にとっては「なんじゃこりゃ」でしょう。しかし、近年のEU労働政策の動きをウォッチしてきた人々にとっては、まさにこれこそ現代の労働法政策!という感じでしょう。

そう、これは90年代以来のEU労働政策の哲学に従って労働法を再構成してみると、こういう風になるというみごとな実例です。コリンズにとっては、これは今までのアメリカと共通するコモンローの伝統から欧州モデルへの「地殻プレートの大移動」を示すものなのですね。

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EUの労働法政策」カテゴリの記事

コメント

British invasionという言葉があります。イギリスのロックンロールが、ロックの本家のアメリカに進出した現象を指しているのですけれど、近年のBritish invasionは、イギリス人のフランス進出、という話があります。2006年に出た本で、"Au secours, les Anglais nous envahissent!"というのがあり、イギリス人がフランスにどんどん移住し、我がもの顔に暮らしている、という内容のようです。ぶらり庵が、しばらく前にとても面白く読んだ本に、イギリス人の作者の書いたフランス滞在記"A Year in the Merde"(フランスでは"God save la France"の書名で刊行されたとか)というのがありますが、そこでも著者はフランスの田園に家を買いに行っていましたね。これは2003年の本で、ちょうどイラクをめぐって米仏の対立もある頃で、そういう話題も入ってなかなか楽しい読み物でした。イギリス人は田園好きですしね。カントリーウォーク(フットパス)やガーデニングってイギリス文化に深く根を下ろしていますから、フランスの田園って魅力があるのはわかる感じがします。

週末の遊び読書ネタで前置きが長くなりましたが、日常生活ではBritish invasionの現象が目立つかもしれませんが、法制度や考え方については逆に、アングロサクソン型と言われたイギリスの法・政策が、近年フランスに代表されるヨーロッパ型に近づいているのでしょうか。しばらく前に、フランスとアメリカ・イギリスの社会思想を対比した本で、『アメリカに「NO]と言える国』(竹下節子、2006)というのがありました。あと、イギリスに触れていたかどうか思い出せませんが、このブログでも取り上げられていた、薬師院仁志さんの『日本とフランス 二つの民主主義』という本もありましたね。
コリンズ教授は、アメリカで長く研究されていたようなのも興味深いです。

投稿: ぶらり庵 | 2008年3月29日 (土) 20時37分

イギリスの(というか、欧米はけっこうそのような)学者さんは、けっこう政策にコミットしているところがありますよね。日本の学者さんは、「公労使」の「公」=中立、というのが通常の立場のようですけれど。

アラン・ウォーカー教授も、かつて「福祉大改革」でサッチャー政権を厳しく批判していらしたと思います。で、彼自身、Child Paverty Action Groupとか、高齢者支援とかに深くコミットしている方です。特に高齢化社会、高齢者政策については、この問題が主流でない頃からずっと発言されてこられたので、なぜこのテーマを選ばれたのかうかがいましたら、自分は祖父母のいる家庭に育ったし、高校生の頃、高齢者支援のボランティアをした、その頃からの問題関心である、とのお答えでした。今から考えると、これぞ「職業レリバンス」ですね。

投稿: ぶらり庵 | 2008年3月30日 (日) 06時36分

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