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2008年3月 6日 (木)

企業年金は「モノ言う株主」でいいのか

『エコノミスト』3月11日号が、「株3月危機」という特集を組んでいて、

http://www.mainichi.co.jp/syuppan/economist/

その中に、

>“モノ言う株主”からの提言 日本はあまりに株主軽視の国、見放されて当然だ    矢野 朝水

という短いコラムがありました。曰く、

>このような判決が日本の司法は投資や市場に対する理解が乏しく、投資活動を否定するという印象を世界に与えてしまった。

>いま日本には改革を拒否し、市場開放を拒む時代錯誤的な攘夷論が蔓延しているように思える。

>極めつけは、1月の講演での北畑隆生経済産業事務次官の株主・投資家蔑視の発言だ。・・・・・・国益を大きく損なった経産次官は更迭に値すると言わざるを得ない。

ああ、また例によって例の如き「会社は株主のモノ」論か、といって済ませるわけにはいきません。これがどこぞのヘッジファンドの人の発言ならば、それで済ませていいのですが、そういうわけにはいかないのです。なぜなら、こういう株主至上主義を得々と説いているこの矢野朝水氏は、厚生省年金局長から厚生年金基金連合会(現在の企業年金連合会)に転じ、その専務理事を務めている人だからです。

あなたが預かっている企業年金のカネとは一体どういう性質のものであるのか、それを少しでも考えたら、ここまで脳天気な株主至上主義は語れないはずです。あなたが責任を負っているステークホールダーは、ただカネを増やしてくれといって持ってきた客ではありません。企業年金の掛金は事業主拠出分だといっても、それは企業にとっては賃金と同じ労務コストです。企業年金の使命は、預かったカネを増やすことに専念して、そのカネを預けてくれた企業を潰したり、あるいは労働者のクビを切って、その労働者がもはやその掛金を払えなくしてしまうことにはないはずです。カネは確かに増やしてくれたが、そのもとの給料がなくなりました。めでたしめでたしというのが、企業年金連合会のステークホールダーに対する責任なのでしょうか。

これは「社会的責任投資」などというハイレベルな話以前の問題です。環境も結構、人権も結構、しかし、企業年金にカネを預けている肝心の労働者の利益を無視して、一体どこに企業年金の責任があるのでしょうか。まさか、いま働いている労働者なんかどうでも良い、労働者が引退して企業年金をもらうようになって初めて我々のステークホールダーさまになるんだ、とお考えなのでしょうか。

正直言って、経済産業事務次官を擁護して、元厚生省年金局長を批判するようなことになるとは、想像もしていませんでしたが、これはあまりにもひどいので、一言苦言を呈しておきたいと思います。更迭に値するのは、北畑次官の方ではありません。

(追記)

「さすがにこのhamachan発言は暴走かと、、」言われているのですが、

http://blog.livedoor.jp/a98031/archives/51252486.html

わたくしにはどこが「暴走」なのかよく判りません。

むしろ、「確定給付企業年金を実施しようとする厚生年金適用事業所に使用される被用者年金被保険者等の過半数で組織する労働組合があるときは当該労働組合、当該被用者年金被保険者等の過半数で組織する労働組合がないときは当該被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意を得て」(確定給付企業年金法第3条)作成された規約に基づき設立された制度を実施する役目の者が、その「確定給付企業年金を実施しようとする厚生年金適用事業所に使用される被用者年金被保険者等」の利益を考えなくても良いという方が、よっぽど「暴走」に思えますが。

村上世彰氏にお金を預けている人は、そのお金を増やしてくれと頼んでいるだけですから、その個々の行為の違法性はともかく、顧客に対しては正しいことをしているというべきでしょうが(それに加えて社会的責任をどこまで要求するかはまた一段上の話)、矢野氏が預かっている金は、顧客をクビにして増やして顧客に返せば責任を全うしたことにはならないでしょう、ということです。

わかりやすくするために、いま日本にはヤマト自動車という会社一つしかないとしましょう。ヤマト自動車は従業員のために企業年金を設立し、その運用を企業年金基金が行っています。さて、このヤマト自動車企業年金基金が、ヤマト自動車は従業員を大事にしすぎて当然出すべき利益を出していない、余計な従業員のクビを切れ、賃金をもっと下げろ、と、「モノ言う株主」として主張して、その結果、ヤマト自動車企業年金基金がより多くの利益を上げたとして、その利益を還元すべき相手はどうなっているでしょうか。

現実には多数の企業年金が存在するので、利益を還元すべきある会社の従業員の利益と、株主として労働者への配分をぎりぎりまで切りつめろと主張する別の会社の従業員の利益とは別物ということで済むわけですが、それは個々の企業年金レベルの話です。

企業年金連合会というのは、日本の企業年金すべての利益を代表しているわけですから、いわば上の設例の、日本に一つしかないヤマト自動車企業年金基金と同じ立場です。そういう立場の人が、上述のようなことを平然と語っていることの方が百万倍「暴走」なのではないでしょうか。

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コメント

「モノ言う株主」がすべて「金を増やせ」ということを言うか、どうかは別でしょう。

私は「会社は株主のモノ」論に与するものですが、例えば労働者が株主になって、労働環境を良くしようとモノを言ってもいいと思う。

だから、企業年金というのは畢竟するところ労働者の賃金の後払い分を運用しているわけだから、労働者が株主になっているようなものであって、その運用担当者たる企業年金連合会の専務理事が「労働者がどんな目に遭おうが、カネさえ増やせば」ということ自体が、そのプリンシパルである労働者に対する背任じゃないか、というのが上の趣旨であって。

その話の難しいところは、賃金の後払いを受ける人は「既に退職した人」を多く含むという部分だと思う。

つまり、既に退職して年金を受け取るだけの人は、もう今更クビになる心配はないから、後輩がどんな目に遭おうが「そんなの関係ねえ」で、ひたすらカネを増やせだけ言ってればいいのか、という話になるわけです。
ここが「連帯」をどう捉えるかということにつながるわけです。
これを全く裏側から論じると、会社の(つまり今働いている現役労働者の)都合で、「先輩、ちょっと貰いすぎてんじゃねえの」と、企業年金を後から減額してもいいのか、という話になるわけですね。
これを権利論的に論じるのか、それとも集団的意思決定の問題として論じるのか、というあたりが、議論の分かれ目、いざさらば、ということなんでしょう。

>権利論的に論じる

税金などで優遇されることとか考慮に入れると微妙な気もする。そういう意味では、退職している本人達はともかくとしても、この人はお役人のはずだからね。あっ、役所は退職してたのか?

> 「先輩、ちょっと貰いすぎてんじゃねえの」と、企業年金を後から減額してもいいのか

> 権利論的に論じるのか、それとも集団的意思決定の問題として論じるのか

基礎年金を税金でやると、集団的意思決定で簡単に減額しましょ、ってことになる訳で

保険料にすれば権利論的な色彩が濃くなる。それが、良いか悪いかはよく分からんけど

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