財金分離
これは直接労働法政策には関係ないのですが、日本の労働組合のナショナルセンターが組織的に支持している政党が、中央銀行総裁候補を認めるかどうかの基準として、財政と金融の分離、つまりどんなに景気が悪化して労働者がひどい目に遭おうとも、断固として中央銀行の独立性を守るべし、という超タカ派的思想を明確にし、あまつさえ、低金利政策をとり続けたことを理由に反対するという事態は、もちろんいろんな考え方があってもいいわけですが、比較政治的には極めて奇妙な事態とは言えるでしょうね。
通常、まあ何が「通常」かは人によっていろんな考え方があるでしょうが、少なくともヨーロッパでは、労働組合や社会民主主義政党は、中央銀行の独立性には否定的で、政治的要請に迅速に応じて、できるだけ金利を低くしろというのが通常であるように見受けられますので、多分、連合の支持政党はそれとは正反対の経済思想をお持ちなのだろうなあ、と思うだけですが。
参考までに、最近の欧州労連の欧州中銀に対する発言です。
>ETUC expresses disbelief over ‘hawkish’ messages coming from the European Central Bank
With three month inter-bank interest rates shooting up to 4.86%, the financial crisis is intensifying. Higher finance costs, together with tightening credit standards and an overvalued euro exchange rate, are working to produce a significant slowdown in growth. To avoid a new slump in growth, interest rates should be cut, not raised.
>European Central Bank must respond to wake-up calls
At the current time:
Strong transatlantic economic ties mean the euro area will not escape recession in the US economy.
The Federal Reserve’s policy of aggressive rate cuts will work to undermine the dollar and the euro area’s competitive position.
The subprime-induced financial crisis has not been contained at all, but is spreading in an alarming way. Potential investors are confronted with a credit squeeze as well as higher credit costs.
Business cycle indicators are going down, indicating growth prospects are shallow.
>The ECB must respond to the strengthening euro
The euro exchange rate has recently breached the 1.50$ barrier. The euro’s continuing appreciation is becoming alarming. An excessively expensive euro will cost European jobs, coming as it does on top of other setbacks to growth (the sub-prime financial crisis and credit squeeze, the US recession, and the end of the construction boom in several EU countries).
The ETUC calls on the Governing Council of the ECB, which meets today, to recognise at last that the balance of risks has shifted and that the threat to growth is now so serious that an urgent cut in interest rates is required.
(追記)
つまり、連合が組織的に支持している政党は、階級論的分析からするとですな、労働者階級でもなければ企業家階級でもなく、金利生活者階級の利益をひたすら追求する政党であるということに相成るわけなんですが、そんなことでええのですか?と誰か言わんのかねえ。
ちなみに、はてぶで「反リフレを標榜するhamachan先生」と言われていますが、
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_8e8c.html
いや、私は反「特殊日本的な99%フリードマン主義者のリフレ派」なだけで、「反リフレ」を標榜した覚えはありませんが。
そんなの、インフレは目減りにより金利生活者に損失を与え、デフレは失業により労働者に損失を与えるなんてことは、ケインズ先生が大昔から言ってることでしょう。
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独立性には否定的な立場だけど、でも低金利にすれば雇用が増えるとか言うのも怪しいと思う
ま、景気が良くなると多くの人が思うと実際に景気が良くなるといった意味での効果は否定しないけれどね
投稿: ただ | 2008年3月12日 (水) 19時31分
そもそも社会党はともかく、民主党が「労働者政党」であったことも、またあろうとしたこともあるんでしょうか。確かに「生活者優先」「福祉重視」と言ってる人もいますが、その目線は消費者からのものでしかないように思えます。
まあ、当の労働者でさえも消費者としての(目先の)利益しか考えてないような意見が多いこの国ですから、獲得票数の最大化には全面的に正しいところなんですが…。
投稿: koge | 2008年3月12日 (水) 19時34分
金融によるリフレってのは偽薬を与えておけば良いというお話。ま、与える側やそれを要求する側が効くと信じた方が偽薬効果の蓋然性は高い訳で、ま、筋は通っているんだけどね。
投稿: なんてか | 2008年3月12日 (水) 20時30分
>インフレは目減りにより金利生活者に損失を与え、デフレは失業により労働者に損失を与える
普通はそう考えるでしょうね
で、その普通の考えを踏まえれば、
低金利(特に流動性トラップ)は金利生活者に有利である!
という結論になる訳
目の前の現実も、まさにそれでしょう
一部のリフレ派(?)こそが、強固な財金分離の発想なんですから
「財金分離の発想」に留まっている限り、
低金利(特に流動性トラップ)は金利生活者に有利である!
という問題は解けないのですねえ
投稿: 比ヤング | 2008年3月24日 (月) 14時12分
>お年寄りの貯金が減っている。
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20080312
ご自身としては「金利生活者」の立場に立って意見を述べていることは明白でしょう。
>日銀の買っている国債残高は第二次世界大戦末期を超える異常事態が生じ、
はっきり言えば、金利の数値には対した意味はなく、
国債残高に政治的に縛られていて、財出ができない!
というのが、良くも悪くもポイントなのです。戦争になれば…、というのも分かる気もしますけど、どうせやるなら、少なくとももっと身のある事業にはすべきですがね。
投稿: 追加 | 2008年3月24日 (月) 14時29分