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2008年3月17日 (月)

「公正」の在り方は集団的な対話の中で決まる

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_c7ec.html

につづいて、ダイヤモンドオンラインの辻広氏のコラムにおける水町先生のインタビュー後編です。

http://diamond.jp/series/tsujihiro/10019/?page=1

>――もう一度お聞きしますが、価値観が多様化すると、なぜ労使の対話に委ねることが必要となるのですか。

水町:大量生産大量消費の時代は、いわば正義は一つでした。だから、それを守るためのルールを国が定めてそれを強制しても、さほど問題は起きませんでした。けれど、もはや正義は一つではなくなりました。差別なき労働者の権利保護なのか、経済効率追求なのか、地球環境が一番重要なのか、さまざまな正義が存在します。複数ある正義を調整するには、理性が必要です。それを「手続的理性」と呼びます。労使で対話を進め、複数の正義を調整する手続やルールをいかに決め、運用するかが重要だ、という考え方が国際的に広がりつつあります。

――では、遅れている日本の労働法制を、具体的にどう変えていけばいいのですか。

水町:国は基本ルールだけを決め、具体的なルールやその運用は労使の集団対話に委ねます。そして、その運用が公正に行われたか否か裁判所が事後チェックを行う形にします。

 例えば、国は、「合理的理由がない限り処遇差別をしてはならない」という基本原則だけを掲げて、労使対話には、正社員だけでなく非正社員、派遣、請負労働者まですべての労働者が参加し、平等とは何かを徹底的に議論し、ルールを作成し、運用に関与するのです。

――日本の労働法制は、正社員に対する法的保護があまりに強い。派遣や業務請負との格差を解消して、「公正」を本当に実現できますか。

水町:正社員の既得権や正社員という枠を見直す動きは、その対話、議論の中で出てくると思います。

 90年代以降の労働問題は、正社員が日本的雇用システムという枠のなかで守られ、それと非正社員とのバランスが悪くなってしまったことに大きな原因があります。コスト削減圧力が強まっても、正社員は簡単には雇用調整ができません。

 だから、新卒を採らず、まずパートを拡大し、その雇用調整も難しいということになると、次には派遣の利用を拡大し、それがまた法規制で使い勝手が悪いとなると、今度は業務請負の利用に走ります。格差が拡大する方向に一直線に向かってしまう。と同時に、枠のなかで守られていると思ってきた正社員が少数化して過剰労働に陥るという状況も生まれてきています。全体としてのバランスが悪い中で、全体が不幸に陥るという事態が起こってきました。これはおかしいんじゃないかという議論が起こってくると思います。

――例えば、どのように「公正」が実現されますか。

水町:「公正」のあり方は、それぞれの集団的な対話のなかで決まってきます。例えば、正社員の雇用は保護し、非正社員の雇用は流動的にするという企業では、非正社員の雇用が不安定になる分それを補償する手当を出すということも考えられます。

――正社員の雇用調整が容易になり、逆に、非正社員が正社員になりやすくなる、という改革もできますか。

水町:現在の法規制の話でいうと、この3月に施行される労働契約法の16条に、解雇は「客観的合理性」と「社会的相当性」がなければ無効であると定められています。このルールをめぐっては、これまで裁判所による判断の蓄積があり、いわゆる「整理解雇の四要件または四要素」という法理が裁判所によって確立されています。

 しかし、この判例法理が画一的に解釈されすぎると、時代環境や個別事情に対応できないという問題が出てきます。このルールの解釈・運用の仕方として、労使の話合いを重視する、つまり、労使がそれぞれの企業・職場における雇用のあり方についてどのように考え、どのようなルールを作り、それを公正に運用しながら労使の納得のいく形で雇用調整が行われている場合には、その労使の取り組みを重視する、という法解釈をすることが考えられます。

――「新しい労働ルール」が実現するには、何が一番重要ですか。

水町:労使をはじめとする当事者が自分でルールを作り運用するという覚悟を決めて、それに真剣に取り組むことです。中小企業の多くには労働組合すらないので、集団的対話の基盤から構築しなければなりません。そのために相談に乗り、アドバイスを行う第三者機関、NPOがインフラとして必要でしょう。これが最大の課題だと思います。連合の全国の支部や商工会議所は、この面でサポートをすべきでしょう。

――既得権者である正社員が抵抗勢力になりませんか。

水町:なかには抵抗するひとたちもいるでしょう。しかし50代のひとたちと20代、30代のひとたちでは意識が大きく違います。なぜなら、コストカット目的による非正社員の急増で、最もしわ寄せされているのが、20代、30台の若手だからです。難しい仕事を少人数で背負い込み、仕事のノルマや締切りもきつくなってきています。仕事が増えるばかりで、過労死やメンタルヘルス問題が急増しているわけです。正社員と非正社員の雇用条件のバランスがあまりにも悪いために、正社員自身があえいでいるのです。そのことは、若い人たちの多くは敏感に感じています。年収は減るかもしれないが、負担が軽減して早く帰れるのなら、歓迎するかもしれません。正社員と非正社員の入れ替えが行われるようになっても不思議ではないのです。

――日本人に、「手続的理性」はあるでしょうか。

水町:日本には自分たちで話し合って物事を決めるという土壌があります。あとは、自分と環境や考え方の違うひとたちを仲間外れにせず、公正で透明な話合いをしていこうという意識を広げていくことが重要です。そういう意味での「理性」を育てていく教育も必要だと思います。

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