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視点・論点-労働者派遣システム再考

本日夜10時50分から11時まで、NHK教育テレビの「視点・論点」という番組で、わたくしが約10分弱、標記テーマについて喋ります。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/

再放送は明日の朝4時20分からです。ご参考までに。

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研修生は労働者!by 鳩山法相

読売によると、鳩山邦夫法相が国会で「外国人研修生に労働関係法令を適用すべき」と答弁したようです。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080324-OYT1T00497.htm

>鳩山法相は24日の参院予算委員会で、外国人研修・技能実習制度が安価な労働力として外国人を雇用する隠れみのとして使われていると指摘されていることに関し、「『研修は労働でなく、技能実習になって初めて労働』という考え方は改めるべきだ」と述べた。

Click here to find out more!

 外国人研修生に最低賃金法などの労働関係法令を適用すべきとの考えを示したものだ。民主党の相原久美子氏の質問に答えた。

 同制度は日本の技術、技能などを移転することを目的に、海外から研修生を受け入れ、企業で実務研修や技能実習を最長3年間行う。技能実習に移行するまでの研修期間は「労働者」にあたらないとして、労働関連法令が適用されず、研修手当が払われる。このため、企業によっては、外国人研修生を安価な手当で過酷な労働に従事させている実態がある。

この問題については、昨年5月に厚労省、経産省、それに長勢法相の案が出てわりと話題になったことがありましたが、鳩山法相の考え方としては厚労省の実習に統一という方向に近いようですね。

本ブログにおけるこの問題のエントリーを下に掲げておきます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_6b23.html(研修・技能実習制度研究会中間報告)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_8cc4.html(経済産業省の「外国人研修・技能実習制度に関する研究会」とりまとめ)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_0efe.html(法相の短期外国人就労解禁案)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_f09d.html(法務大臣私案アップ)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/imfjc_on_ddf6.html(IMF-JC on 外国人労働)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_f0c3.html(労働市場改革専門調査会が外国人労働問題を論議)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_2655.html(法務省が先に考えていた!?)

また、日本における外国人労働法政策の推移を概観したものとして、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/gaikokujin.html(外国人労働者の法政策)がよくまとまっていると思います。

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コリンズ『イギリス雇用法』

79233245 ヒュー・コリンズ著、イギリス労働法研究会訳の『イギリス雇用法』が遂に出版されました。

御謹呈いただいた翻訳者の方々に厚くお礼を申し上げます。

さて、この本、さりげないタイトルにごまかされてはいけません。普通のイギリス労働法の教科書とはだいぶ違います。まず目次がすごい。

>第1部 雇用法の目的と規制手法(「労働は商品ではない」;職場を規制する)

第2部 社会的包摂(雇用機会と差別;労働と生活)

第3部 競争力(協力;パートナーシップ;競争と争議行為;懲戒と解雇;経済的保障)

第4部 シティズンシップ(職場における市民的自由;社会権;賞味期限)

ソーシャル・インクルージョンと企業の競争力向上と市民権が労働法の3つの柱だというのですから、今までの労働法学に慣れ親しんだ人々にとっては「なんじゃこりゃ」でしょう。しかし、近年のEU労働政策の動きをウォッチしてきた人々にとっては、まさにこれこそ現代の労働法政策!という感じでしょう。

そう、これは90年代以来のEU労働政策の哲学に従って労働法を再構成してみると、こういう風になるというみごとな実例です。コリンズにとっては、これは今までのアメリカと共通するコモンローの伝統から欧州モデルへの「地殻プレートの大移動」を示すものなのですね。

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モロッコ人は採用しない!と公言するのは差別

欧州司法裁判所の法務官意見、今回は人種・民族差別の事案です。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&typeord=ALLTYP&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=PSOC&mots=&resmax=100

ベルギーで持ち上げ式・ユニット式ドアの販売設置業を営むフェリン社のフェリン氏が、広告や新聞インタビュー等で、「モロッコ人なんか雇わない。うちは客商売なんだ。客の家に入り込むんだ。お客は怖がるだろう。モロッコ人が行ったら、そんなドアいらない、と言われるよ」てなたぐいのことを公言したんですね。

いかにもフランデレンの中小企業のオヤジという感じですが、これに対して、反差別法に基づき設置された均等反差別センターが、ブリュッセルの労働法バンクに訴えたんですが、労働法バンクは「被害者がいないじゃないか。つまりまだ差別行為は起こっていないじゃないか」と、これを退けたのです。

そこで均等反差別センターがブリュッセル労働裁判所に訴えたのが本件、同労働裁判所は欧州司法裁判所に付託したというわけです。

マズロ法務官の議論は入り組んでいますが、結論から言うと、特定の人種・民族的出身のものは採用しないと使用者が公言することは、EU人種民族均等指令にいう直接差別に当たる、と言っています。具体的な被害者がいなくても差別として、そういう行為をやめさせるべきだというわけです。

これは法務官意見ですからまだ判決ではありませんが、もしこのまま判決として確定すると、差別問題についてかなりのインパクトを与える可能性がありますね。日本ではまだ人権擁護法案が迷走している状態ですが、将来的な議論の素材として興味深いものがあります。

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雨宮処凜氏のOJT

爆問学問の話の流れで、ぶらり庵さんが、

>職業レリバンスを全く意識しない大学生活を送り(文学部女子)、幸いに資格は問わない試験(知識は問われた)で実業団に移籍でき、移籍後も、日本の組織の特徴であろうところの、自己の希望と無関係な人事異動に従順に従って、ひたすらOJTで現在の職業への「レリバンス」を磨いてきましたね、振りかえってみると。

と語っていますが、全く異なる人生コースで、同様にOJTの重要さを語っているのが、雨宮処凜さん。

http://www.magazine9.jp/karin/080312/080312.php

>こんなことを強く思うのは、私自身がまさに「仕事をしながらトレーニングさせてもらった」からだ。しかも相当良質な「教育」をしてもらった。編集者にマンツーマンで、物を書くということについてものすごく勉強させてもらった。そうして小説やエッセイなどを書き、出版してきたわけである。
 こんなことを言うと、「結局雨宮さんはニートよりは努力し、戦略的な生き方をしている」というようなことを言われることがある。が、「物書き」になるということについて、自分で言うのもなんだが、私はまったく「努力」していない。なってからは少しは努力しているが、なるための努力は1ミリもしていない。だって、私が本を出すきっかけは、私が右翼団体を脱会するまでを描いたドキュメンタリー映画「新しい神様」が劇場公開されることになった、というそれだけのことだ。ということは、私が物書きになる、そのチャンスを作ったのは、「右翼団体に入った」ということである。誰が「戦略的に」、或いは「キャリアアップ」のために右翼団体に入るだろう・・・。まったくの奇跡のような偶然で、物を書くようになり、そうしたら編集者の人がいろいろ教えてくれたのだ。そしてただのフリーターだった私は「物を書く」ということを、仕事をしながら学んでいったのである。

これは、例の赤木智弘氏について語っている中での言葉ですが、最後に

>日本の企業社会に、「人を育てる」という感覚が戻ってくれば、事態は少しはいい方向に変わるのではないか。

と、売れ線狙いのマスコミ的にはあまりにも平凡に見える言葉を書き付けています。

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オーストリアでも医師の長時間労働が問題に

EIROnlineから、オーストリアの医師の長時間労働の話題。

http://www.eurofound.europa.eu/eiro/2008/01/articles/at0801039i.htm

病院の10に9つは労働時間規制に違反している、と。

まず、オーストリアの医師に関する労働時間規制ですが、

>In Austria, the 1997 Hospitals’ Working Time Act (Krankenanstalten-Arbeitszeitgesetz, KA-AZG (in German, 50Kb PDF)) restricts the average working week of hospital doctors to a maximum average of 48 hours. The working week may be extended to a maximum of 60 hours in a single week, provided that the normal working week does not exceed the 48 hours’ average over a specific reference period. In addition, the individual working day must not exceed a maximum of 13 hours. However, the KA-AZG also provides for the possibility of extending these working hours through a company-level works agreement. In this respect, the law provides for working time limits as follows: a maximum of 60 working hours a week on average, with a maximum of 72 hours in a single working week; a maximum of 32 hours during the working week and of 49 hours during weekend work, including rest periods that have to be observed for each period of service.

原則週48時間、変形制で週60時間、1日の上限は13時間、さらに企業レベル協定で原則週60時間、変形週72時間(最後の週末49時間というのがよく判りませんが)、とかなりの長時間労働が認められているのですが、現実はそんなものではない。

>Despite these working time restrictions, the results of occasional workplace inspections at hospitals carried out by the Austrian Labour Inspectorate (Arbeitsinspektorat) have revealed that seven out of 10 Austrian hospitals – in at least one of their departments – systematically breach these working time regulations. At the Vienna General Hospital (Allgemeines Krankenhaus, AKH), for instance, which is the country’s largest hospital, the employees do not even have the possibility to register their overtime hours in the online service schedule. Moreover, the Austrian Chamber of Doctors (Österreichische Ärztekammer, ÖÄK), which organises both employed and self-employed doctors, has uncovered cases of employees recording up to 100 working hours a week. According to the chamber, disregard of the working time regulations is a widespread cost-reducing strategy of hospital managers, since it saves them having to recruit additional staff.

労働監督の結果、10に9つの病院で違反が見つかり、中には週100時間というのもあった、と。

>Interestingly, the infringements of working time regulations are found almost exclusively in the public hospital sector, which employs about three quarters of the sector’s employees. This is mainly because private hospital providers – in the case of administrative offences such as the breaching of working time regulations – are subject to administrative fines. In the public sector, however, a similar form of penalisation does not exist and, as a result, infringements of employee protection law committed by public authorities go completely unpunished. Theoretically, the Labour Inspectorate could initiate proceedings against the public hospital managers responsible and/or the public authorities operating these hospitals; in practice, however, such attempts of prosecuting authorities have remained completely ineffective.

しかも、違反しているのは公的病院ばかり。これは、民間病院は違反が見つかると罰金を払わなければならないが、公的病院は違反してても罰金を払わなくて済むからだとか。つうか、理論上は公的病院にもできるんだけど、実際はやってない、と。

>As a result of these findings, ÖÄK, in line with the trade unions which also represent doctors employed by hospitals, have demanded the introduction of appropriate administrative fines for public hospital managers who violate the regulations, based on a system similar to that used in the private sector. ÖÄK argues that these fines, particularly in cases of repeated and systematic disregard of the working time regulations, should be high enough to force hospital managers to invest in additional personnel rather than infringing the law.

で、医師会議所(開業医と勤務医の両方を組織していると書いてあるので、日本の医師会と同じですね)が、労働組合と協力して、公的病院にも罰金を課せと要求している、と。

>The Minister of Economy and Labour Affairs, Martin Bartenstein, has already signalled his willingness to take appropriate legal measures to curb these practices. The minister announced that he would immediately enter into negotiations with representatives of the provinces (Länder), which operate most of the public hospitals, as well as the social partners, in order to implement a sanction mechanism which targets public authorities running hospitals and their managers in the event of illegal employment practices. Such sanctions would be inevitable not only for employee protection and the patients’ right to optimal medical treatment by sufficiently rested personnel, but also in order to avert unequal conditions of competition in the sector to the detriment of private hospital providers.

経済労働大臣も公的病院を運営する州政府との交渉に動き出した、と。

>In Austria, the hospital sector employs almost 20,000 doctors overall, about three quarters of whom are public sector employees. Thus, the Labour Inspectorate’s findings suggest that several thousands of hospital doctors in Austria are – at least occasionally – being faced with illegally long working hours. The systematic disregard of working time regulations is deemed by experts to be the main cause of fatigue among many doctors, which can directly endanger patients’ health. For instance, a recent study carried out by a surgeon at a hospital in Steyr, Upper Austria, revealed a significant correlation between the duration of the hospital doctors’ uninterrupted service rendered and the incidence of malpractice committed by them. Another study carried out by ÖÄK found that the overall working conditions of hospital doctors have deteriorated in the period 2003–2006, in particular in terms of time pressure, long working hours or overtime and night work. All of these findings underline the need for the introduction of enforcement practices with regard to existing working time regulations in public sector hospitals.

長時間労働による医師の疲れが、医療過誤の原因になっている、と。

なんだか、すごく日本の話と同じところと、違うところがあって、同じところは同じところなりに、違うところは違うところなりに、大変考えさせられます。

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財金分離2

別に欧州労連が大したことを言ってるわけではなくて、これがごく普通の反応でしょう、というだけなんですが。

http://www.etuc.org/a/4761

>Demand side problems need to be solved primarily by demand side policies. Casino capitalism gone out of control should be addressed by financial market re-regulation. Abusing the crisis to push through an unwarranted deregulation of labour markets and worker rights will add more insecurity and simply make matters even worse.

>The right response to prevent the European economy from following the US economy down the hill is to intervene on exchange markets to stabilise the euro, to cut interest rates and boost public investments in order to strengthen domestic demand. It is not to using the economic crisis as an alibi to push through fake structural reforms.

日本の労働組合が組織的に多くの票を差し上げている某政党は、円を安定化し、利率を下げ、公共投資を拡大することには興味がなく、似非構造改革のアリバイに経済危機を使おうという方々なのでしょうか。

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爆問学問 本田由紀 vs 太田光

昨日のNHKのお笑い系教養番組なんですが、

http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/

>田中:すごく面白い先生だったね。何か強さともろさが同居した感じがあって。すごく可愛い面と、すごく怖い顔する時とあるので。人間としてすごく面白かった。
太田:途中で「ああ、小学生の時にこういう女の子ともめたなあ」って…。
田中:多分子どもの頃に、「太田君!」みたいに言われて、「ちゃんと掃除をやるのがルールでしょ!」とか怒られたりして、それでもめるみたいな…。そういうタイプですよね。だから本当に、我々芸人とああいう東大の受験勉強をガーッとやっていた人というのが、多分すごく対照的。
太田:でも同じところもある。結局おれはあの先生はやっぱりすごくいいなと思ったのは、そうやって自分の経験から発想しているものだから、それが間違っていようが何だろうがいいと思う。その自分の傷ついた経験とか、過去の経験、そこから出発している。で、その思いがすごいべったり乗っかっているから、それ、考えすぎじゃない?ってこっちは思うんだけど、あの先生の思いっていうのが強いから、そういう研究っていうのはおれ、素晴らしいなと思うのね。やっぱり個性なんだよね。
田中:一番悪いことがサザエさんの立ち読みっていうのは笑ったよね。ネタですよね、ほんとに。楽しい先生でした。

そういう「カワイイ優等生」の役割演技に嵌ってしまっていて、そこを(上野千鶴子流に)うっちゃりで投げ飛ばすワザが決められれば、一枚剥けたんでしょうけど。

太田光に、田中が弁当恵んでくれていたからあんたは恵まれていた、と言ってみたって仕方がないんで、「そんな日大ゲージツ学部なんて逝ってる段階であんたは人生捨ててるの!私が相手にしてるのは、まともに就職できると思っておベンキョしてたのに、不景気で就職できなかった人たちなの。」と冷ややかに言わなくちゃいけないんですけどね。

そこが、そう割り切れないから、「テツガクを専攻したんですが、その教育レリバンスはなんですか?」と聞かれて、「ああそう、職業レリバンスのないお勉強をされたのね」と返せないわけですけど。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_c7cd.html

(追記)

ちなみに、このレリバンスのシリーズ、後続のエントリーも結構面白いですので、並べておきます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_bf04.html(職業レリバンス再論)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_722a.html(なおも職業レリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_c586.html(専門高校のレリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_8cb0.html(大学教育の職業レリバンス)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_5804.html(労働法の職業レリバンス)

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マクドナルド裁判の本質

『エコノミスト』誌3月18日号に掲載された「焦点は残業代ではない マクドナルド賃金訴訟の本質は長時間労働の規制にある」という小論の原稿をアップしました。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/macdo.html

雑誌掲載版とは題名と中身の一部が異なっていますが、本質的な違いはありません。このブログで書いてきたこととほとんど同じ内容です。

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2008年のEU労働政策予定表(3月改定)

3月改定のEUの予定表から、労働社会関係を抜き出してみました。

http://ec.europa.eu/atwork/programmes/docs/forward_programming_2008.pdf

2008年予定

(法制)

6月25日 雇用以外の均等待遇原則の実施に関する指令案

6月  欧州労使協議会指令改正案

6月  海運業労働条件協約実施指令案

6月  自営業男女均等待遇指令案改正案

第2四半期 ILO漁業条約批准決定案

9月  母性保護指令改正案

9月  育児休業協約改正協約実施指令案

9月  父親休暇・養子休暇・親看取り休暇指令案

第3四半期 国連障害者の権利条約批准決定案

10月  欧州グローバル化調整基金規則改正案

11月  船員関連諸指令の改正案

11月  注射針による感染に関し生物的要因安衛指令の改正案

第4四半期 筋骨格疾病に関する法制の統合案

(その他)

3月12日 高質な老人介護と老人虐待の防止COM

3月  テレワーク協約実施状況報告

第1四半期 企業・職域年金に関し賃金確保指令第8条の実施状況作業文書

第1四半期 一般雇用均等指令実施状況報告

第1四半期 移動臨時建設現場安衛指令及び安衛標識指令実施状況報告

第1四半期 多国籍企業協約に向けてCOM労使団体への第1次協議

第1四半期 一般情報提供・協議指令見直しCOM

第1四半期 サービス提供に伴う労働者海外派遣に関する行政協力強化欧州委勧告

6月25日 社会アジェンダ実施中期報告COM

6月25日 2007年欧州万人均等年のフォローアップCOM

6月  労働時間指令実施報告

6月  船員の労働条件諸指令への統合第2次協議

6月  労働者海外派遣に関する高級委員会設立決定

6月  船上医療及び漁船甲板安衛指令実施報告

第2四半期 欧州会社法実施状況報告

第2四半期 有期・派遣安衛指令実施状況報告

7月8日  変化の予測と管理に関する労使への第2次協議COM

7月8日  欧州におけるリストラ報告

7月  欧州グローバル化調整基金実施状況報告

第3四半期 ディーセントワークに関するCOMフォローアップ

第3四半期 ディーセントワークに関するILO条約批准欧州委勧告

第3四半期 若年者保護指令実施状況報告

第3四半期 児童保育に関するバルセロナ目標の実施状況報告

9月  「欧州における新たな社会正義へのコミットメント:社会保護・社会的統合の公開調整手法の深化」COM

10月  活力ある統合に関する欧州委勧告

10月  インターンシップに関する欧州参照枠組み欧州委勧告

11月  人口高齢化に対応するCOM

12月  2009社会保護・社会的統合合同報告

12月  鉱物採掘安衛指令実施状況報告

このうち、9月に予定されている「父親休暇・養子休暇・親看取り休暇指令案」ですが、最後のは「filial leave」をこう訳してみました。

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労働者派遣システム再考

労働者派遣システムのあり方について、まとまった形で喋ってみました。噛み合わない両極の議論の間に妥協点を見つけようとするのではなく、噛み合わない両者が共有する土俵自体を一遍ひっくり返して議論を組み立ててみると、こういう風になるのではなかろうか、という試論です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hakensaikou.html

私は、今から11年前にILO181号条約が審議採択されたILO総会に出席して、世界の流れが事業の禁止・規制から労働者保護に向かう姿を目の当たりに見たこともあり、派遣労働に問題があるとすればそれは何より労働者保護規制によって行うべきであり、事業規制を復活強化しようというのは適切ではないと思っているのですが、どうしても世間は「近視眼的リーガリズム」に向かってしまいがちです。その土俵でお約束通りの定型的な喧嘩を繰り返すことで、労働者にとって大事なものが却って没却されているのではないか、という問いかけが今こそ必要なのではないかと思うのですが。

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「公正」の在り方は集団的な対話の中で決まる

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_c7ec.html

につづいて、ダイヤモンドオンラインの辻広氏のコラムにおける水町先生のインタビュー後編です。

http://diamond.jp/series/tsujihiro/10019/?page=1

>――もう一度お聞きしますが、価値観が多様化すると、なぜ労使の対話に委ねることが必要となるのですか。

水町:大量生産大量消費の時代は、いわば正義は一つでした。だから、それを守るためのルールを国が定めてそれを強制しても、さほど問題は起きませんでした。けれど、もはや正義は一つではなくなりました。差別なき労働者の権利保護なのか、経済効率追求なのか、地球環境が一番重要なのか、さまざまな正義が存在します。複数ある正義を調整するには、理性が必要です。それを「手続的理性」と呼びます。労使で対話を進め、複数の正義を調整する手続やルールをいかに決め、運用するかが重要だ、という考え方が国際的に広がりつつあります。

――では、遅れている日本の労働法制を、具体的にどう変えていけばいいのですか。

水町:国は基本ルールだけを決め、具体的なルールやその運用は労使の集団対話に委ねます。そして、その運用が公正に行われたか否か裁判所が事後チェックを行う形にします。

 例えば、国は、「合理的理由がない限り処遇差別をしてはならない」という基本原則だけを掲げて、労使対話には、正社員だけでなく非正社員、派遣、請負労働者まですべての労働者が参加し、平等とは何かを徹底的に議論し、ルールを作成し、運用に関与するのです。

――日本の労働法制は、正社員に対する法的保護があまりに強い。派遣や業務請負との格差を解消して、「公正」を本当に実現できますか。

水町:正社員の既得権や正社員という枠を見直す動きは、その対話、議論の中で出てくると思います。

 90年代以降の労働問題は、正社員が日本的雇用システムという枠のなかで守られ、それと非正社員とのバランスが悪くなってしまったことに大きな原因があります。コスト削減圧力が強まっても、正社員は簡単には雇用調整ができません。

 だから、新卒を採らず、まずパートを拡大し、その雇用調整も難しいということになると、次には派遣の利用を拡大し、それがまた法規制で使い勝手が悪いとなると、今度は業務請負の利用に走ります。格差が拡大する方向に一直線に向かってしまう。と同時に、枠のなかで守られていると思ってきた正社員が少数化して過剰労働に陥るという状況も生まれてきています。全体としてのバランスが悪い中で、全体が不幸に陥るという事態が起こってきました。これはおかしいんじゃないかという議論が起こってくると思います。

――例えば、どのように「公正」が実現されますか。

水町:「公正」のあり方は、それぞれの集団的な対話のなかで決まってきます。例えば、正社員の雇用は保護し、非正社員の雇用は流動的にするという企業では、非正社員の雇用が不安定になる分それを補償する手当を出すということも考えられます。

――正社員の雇用調整が容易になり、逆に、非正社員が正社員になりやすくなる、という改革もできますか。

水町:現在の法規制の話でいうと、この3月に施行される労働契約法の16条に、解雇は「客観的合理性」と「社会的相当性」がなければ無効であると定められています。このルールをめぐっては、これまで裁判所による判断の蓄積があり、いわゆる「整理解雇の四要件または四要素」という法理が裁判所によって確立されています。

 しかし、この判例法理が画一的に解釈されすぎると、時代環境や個別事情に対応できないという問題が出てきます。このルールの解釈・運用の仕方として、労使の話合いを重視する、つまり、労使がそれぞれの企業・職場における雇用のあり方についてどのように考え、どのようなルールを作り、それを公正に運用しながら労使の納得のいく形で雇用調整が行われている場合には、その労使の取り組みを重視する、という法解釈をすることが考えられます。

――「新しい労働ルール」が実現するには、何が一番重要ですか。

水町:労使をはじめとする当事者が自分でルールを作り運用するという覚悟を決めて、それに真剣に取り組むことです。中小企業の多くには労働組合すらないので、集団的対話の基盤から構築しなければなりません。そのために相談に乗り、アドバイスを行う第三者機関、NPOがインフラとして必要でしょう。これが最大の課題だと思います。連合の全国の支部や商工会議所は、この面でサポートをすべきでしょう。

――既得権者である正社員が抵抗勢力になりませんか。

水町:なかには抵抗するひとたちもいるでしょう。しかし50代のひとたちと20代、30代のひとたちでは意識が大きく違います。なぜなら、コストカット目的による非正社員の急増で、最もしわ寄せされているのが、20代、30台の若手だからです。難しい仕事を少人数で背負い込み、仕事のノルマや締切りもきつくなってきています。仕事が増えるばかりで、過労死やメンタルヘルス問題が急増しているわけです。正社員と非正社員の雇用条件のバランスがあまりにも悪いために、正社員自身があえいでいるのです。そのことは、若い人たちの多くは敏感に感じています。年収は減るかもしれないが、負担が軽減して早く帰れるのなら、歓迎するかもしれません。正社員と非正社員の入れ替えが行われるようになっても不思議ではないのです。

――日本人に、「手続的理性」はあるでしょうか。

水町:日本には自分たちで話し合って物事を決めるという土壌があります。あとは、自分と環境や考え方の違うひとたちを仲間外れにせず、公正で透明な話合いをしていこうという意識を広げていくことが重要です。そういう意味での「理性」を育てていく教育も必要だと思います。

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ナショナリティにも労働にも立脚しない普遍的な福祉なんてあるのか

『世界』の4月号に掲載されている田村哲樹氏の「国家への信頼、社会における連帯――「高福祉高負担」の条件 ―― 」という論文が、福祉国家を支える哲学的基盤は何なのかという大問題の所在を極めて明瞭に示しているので、ちょっとコメントしておきます。

http://www.iwanami.co.jp/sekai/index.html

福祉国家を支える「我々意識」や「連帯」が衰退ないし解体しつつあるという認識のもとで、田村氏は4つの対応策を示します。第1は、個人化を所与の前提として個人の選択、ニーズに可能な限り応えていく行政サービス。しかしこれはもはや福祉国家ではないですね。第2は、ナショナリティの再興。第3は労働を共通性とした連帯の再生。第4がより普遍主義的な福祉制度。

そして、ナショナリティには排除がつきまとうから駄目だといい、労働については、男性稼ぎ手モデルではだめだとか、今後十分な雇用機会は供給されないとか、労働できないものを排除するといって批判し、第4の選択肢としてベーシックインカムを持ち出すわけです。

労働中心の福祉への批判については、いろいろと反論したいことはありますが、それよりも何よりも、一体一方でナショナリティを根拠として捨てておいて、何を根拠に「普遍的な福祉」が可能なのか、どこまできちんと考えているのだろうか、という点です。

実を言うと、労働中心主義でも、様々な就労や社会参加をフルに活用して最後になお残る労働に立脚しない福祉というのは残ると思うのですが、ナショナリティという我々意識なしにそんなものが維持可能なのでしょうか。働かない同胞になお福祉が与えられなければならないとしたら、それは「同胞」だから、としか言いようがないのではないでしょうか。ヨーロッパの場合、EU統合の中で狭義のナショナリティを超えて一種の我々意識が形成されていけば、そのレベルの普遍的福祉というのもありうるかも知れません。しかし、それが、アフリカの貧しい人々にも同じように適用されるべきだと、多くのヨーロッパ人が思うようになるとは、正直言って私には思えません。

ベーシックインカムを軽々しく持ち出す人々に対して、私がどうしても拭いきれない疑問は、それが究極的には「同胞」意識にしか立脚できないにもかかわらず、なんだかそれを離れた空中楼閣の如きものとしてそれを描き出している点です。日本人だけでなく、地球人類すべてに等しくベーシックインカムを保障するつもりがあるのかどうか(誰が?)、そのための負担を、そう「高負担」を背負うつもりがあるのか、そこまで言わないと、ナショナリティを排除したなんて軽々しく言わないで欲しいのです。

私は、福祉の根拠としてナショナリティを否定することはできないと思っていますが、しかしそれを過度に強調することは望ましくないと思っています。だから、労働を根拠に据える必要性があるのです。様々な事情に基づいて「いったん労働市場から退出することの保障」も含めたものとして、しかしながら永続的に労働市場の外部に居続けることを保障するすることのないものとして。

(参考)

かつてのエントリーで似たようなことを書いていました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_cda3.html

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どれだけサービス残業をやっていると思っているんですか

橋下大阪府知事のお騒がせシリーズ第何弾目かは知りませんが、こういうのも飛び出してきたようです。産経から。

http://sankei.jp.msn.com/politics/local/080313/lcl0803131157002-n1.htm

>大阪府の橋下徹知事は13日、30歳以下の若手職員を対象に初めて朝礼を開いた。

・・・さらに、橋下知事は「始業前に朝礼をしたかったが、超過勤務になるのでできなかった。たかだか15分の朝礼ができないというなら、勤務時間中のたばこや私語も一切認めない」と発言。

 これに対し、後方で聞いていた女性職員(30)が突然立ち上がり、「どれだけサービス残業をやっていると思っているんですか。知事は不満があればメールを送れといって、職場を分断している」と反論した。

 橋下知事は「ありがたい意見。どんどんいってほしい」と余裕の表情で応じたあと、「サービス残業に感謝している」とも述べた。

あのお、「サービス残業に感謝している」で済むんだったら労働基準法は要らないんですよ。どこぞの社長さん並みですな。

念のために申し上げておきますと、(国家公務員とは異なり)地方公務員には労働基準法が適用されてます。

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公務労働の法政策

I0eysjiymi2g 『季刊労働法』の第220号に、「労働法の立法学」シリーズ第17回の「公務労働の法政策」を書いております。

http://www.roudou-kk.co.jp/quarterly/archives/003098.html

今回は、公務員制度改革とか何とかが騒がしい今日この頃であるだけに、原点に帰って、そもそも公務労働者に対する労働法の適用の歴史を振り返ってみよう、というものです。その昔の労働法規課を知っている人にとっては懐かしい話でしょうし、知らない人にとっては全然懐かしくない話でしょうけど。

ちなみに、この号の特集は、「ワーク・ライフ・バランスは実現できるか? 」と「改正パート労働法の検討 」です。

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財金分離

これは直接労働法政策には関係ないのですが、日本の労働組合のナショナルセンターが組織的に支持している政党が、中央銀行総裁候補を認めるかどうかの基準として、財政と金融の分離、つまりどんなに景気が悪化して労働者がひどい目に遭おうとも、断固として中央銀行の独立性を守るべし、という超タカ派的思想を明確にし、あまつさえ、低金利政策をとり続けたことを理由に反対するという事態は、もちろんいろんな考え方があってもいいわけですが、比較政治的には極めて奇妙な事態とは言えるでしょうね。

通常、まあ何が「通常」かは人によっていろんな考え方があるでしょうが、少なくともヨーロッパでは、労働組合や社会民主主義政党は、中央銀行の独立性には否定的で、政治的要請に迅速に応じて、できるだけ金利を低くしろというのが通常であるように見受けられますので、多分、連合の支持政党はそれとは正反対の経済思想をお持ちなのだろうなあ、と思うだけですが。

参考までに、最近の欧州労連の欧州中銀に対する発言です。

http://www.etuc.org/a/4374

>ETUC expresses disbelief over ‘hawkish’ messages coming from the European Central Bank

At the meeting of the governing council of the European Central Bank (ECB) last Thursday, council members are reported to have discussed the possibility of raising interest rates. The European Trade Union Confederation (ETUC) finds this attitude unhelpful and calls instead for a cut in interest rates to address the unfolding economic slowdown.

With three month inter-bank interest rates shooting up to 4.86%, the financial crisis is intensifying. Higher finance costs, together with tightening credit standards and an overvalued euro exchange rate, are working to produce a significant slowdown in growth. To avoid a new slump in growth, interest rates should be cut, not raised.

http://www.etuc.org/a/4540

>European Central Bank must respond to wake-up calls

The European Trade Union Confederation (ETUC) calls on the board of the European Central Bank (ECB), meeting today in Frankfurt, to abandon its outdated theoretical monetary approaches and instead open its eyes to economic reality.

At the current time:

Strong transatlantic economic ties mean the euro area will not escape recession in the US economy.

The Federal Reserve’s policy of aggressive rate cuts will work to undermine the dollar and the euro area’s competitive position.

The subprime-induced financial crisis has not been contained at all, but is spreading in an alarming way. Potential investors are confronted with a credit squeeze as well as higher credit costs.

Business cycle indicators are going down, indicating growth prospects are shallow.

http://www.etuc.org/a/4692

>The ECB must respond to the strengthening euro

European Central Bank (ECB)and euro area finance ministers should take action to adjust the value of the EU currency, instead of hiding behind US policy-makers, urges the European Trade Union Confederation (ETUC).

The euro exchange rate has recently breached the 1.50$ barrier. The euro’s continuing appreciation is becoming alarming. An excessively expensive euro will cost European jobs, coming as it does on top of other setbacks to growth (the sub-prime financial crisis and credit squeeze, the US recession, and the end of the construction boom in several EU countries).

The ETUC calls on the Governing Council of the ECB, which meets today, to recognise at last that the balance of risks has shifted and that the threat to growth is now so serious that an urgent cut in interest rates is required.

(追記)

つまり、連合が組織的に支持している政党は、階級論的分析からするとですな、労働者階級でもなければ企業家階級でもなく、金利生活者階級の利益をひたすら追求する政党であるということに相成るわけなんですが、そんなことでええのですか?と誰か言わんのかねえ。

ちなみに、はてぶで「反リフレを標榜するhamachan先生」と言われていますが、

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_8e8c.html

いや、私は反「特殊日本的な99%フリードマン主義者のリフレ派」なだけで、「反リフレ」を標榜した覚えはありませんが。

そんなの、インフレは目減りにより金利生活者に損失を与え、デフレは失業により労働者に損失を与えるなんてことは、ケインズ先生が大昔から言ってることでしょう。

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登録型派遣は労働者供給なんだが・・・

月曜日のエントリーに、新運転の太田武二さんからコメントが付きました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/on_5181.html#comment-23155300

実際に労働組合の労働者供給事業を行っている立場からの御意見で、

>しかし、日々雇用を原則とした労供事業に五十年近く取り組んできたわれわれとしては、派遣会社への責任追及と法改正だけに留まることは許されない。
日雇い派遣への風当たりを絶好の機会として捉え、労働組合による労供事業と供給派遣への追い風にしなければいけない。

というあたりは、まさに面目躍如という感じです。

ただ、実際は戦後60年間、労働組合による労働者供給事業はごく一部の業種で細々と行われてきたのが実態で、そこのニーズを捉えたのが労働者派遣事業だったのでしょう。

このニーズというのは、畢竟するところ、必要なときにすぐに供給してくれて、要らなくなったら後腐れなく切れるという、労働力のジャストインタイム供給であって、そういうニーズが世の中にあることは確かなのだし、それがケシカランと云ってみても仕方がないので、それをできるだけ弊害のない形で(単なるチープレイバー供給ではなく)やれるようにするにはどうしたらいいのか、というのが法政策の課題であったはずです。

その意味で、登録型派遣というのは実は労働者供給そのものであるにもかかわらず、そこを妙な理屈でごまかしてしまったところに混迷の源泉があるように思われます。労供は悪だ!という思考停止をそのままに、派遣は労供に非ずといって、ここまで来てしまったわけですね。本当は、労供は弊害が起こりやすいけれども、しかし世の中のニーズに対応するものでもあるので、民間企業でもきちんとやらせるのだ、というべきだったのだと、私は考えています。

実は、家政婦、マネキン、配膳人といった臨時日雇い型有料紹介事業も、紹介したといいながら紹介所に属したままで、そこから繰り返し「紹介」という形で実質的には供給=派遣されているので、ビジネスモデルとしてはほとんど同じです。これも、そういうニーズがあるからそうなっているわけです。

で、何が違うかというと、労供でも臨時紹介でも、労働者を使用することから生ずる使用者責任は供給先=紹介先にあるという点で、本当は派遣もそうあるべきなのでしょう。もう一つ、いわゆる派遣マージンの話については、労働組合の労供事業の場合、無料ということですが、実質的な費用は組合費で賄っているわけで、言い換えればその分込みの供給労働者の賃金設定になっているわけですし、臨時日雇い紹介の場合は、登録と紹介のつど手数料を取る形で賄っていて、いずれにしても明朗会計になっているわけです。そこが、派遣の場合中間搾取じゃないと言いたいがために却って不明朗になっているように思われます。

まあ、一旦作られてしまった制度設計というのは、なかなか変えるのは難しいものですが、労供は悪だが派遣はいいという変な理屈でここまで拡大した挙げ句に、これだけいろんな問題が出てきたことを考えると、元に戻って、いい労働者供給事業はどういうものだろうか、という観点から、考え直してみる必要性が高まってきているように思われます。

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ドイツ郵便最低賃金に違憲判決

先週ドイツで興味深い判決が出されていたようです。

http://www.ft.com/cms/s/0/e83565e6-ec7f-11dc-86be-0000779fd2ac.html

http://www.reuters.com/article/rbssIndustryMaterialsUtilitiesNews/idUSL0755851420080307

今年1月に制定された郵便業の最低賃金が違憲だという判決のようです。ご承知のように、ドイツには最低賃金法は存在しませんが、郵便事業の完全自由化を前に、昨年ドイッチェポストと労組の間で締結された時給9.8ユーロを法定する法律が、新規参入しようとしていた2つの会社から違憲だと訴えられ、ベルリン行政裁判所が違憲判決を下したんですね。判決文は見当たらないので、理屈はよく判らないのですが、どうももともと時給7.5ユーロだったのに、ドイッチェポストの独占を維持するために、新規参入組が払えないような高い最低賃金をわざと設定したということらしいですね。

原告のTNT(オランダの会社)のHPに勝訴コメントが載っていますが、

http://group.tnt.com/pressreleases/pressfinancial/tnt/20080307-berlin-administrative-court-confirms-minimum-wage-not-binding-for-tnt-post.asp

最後のところで、我々は最低賃金には賛成だ、だが最低賃金は生活費を基準とすべきで、競争を抑止し独占を守るために濫用すべきではない、と言っていますので、そこが争点だったのですね。

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組合費は使用者に払わせる

デンマークで、たいへん興味深い協定が結ばれたようです。労働組合の組合費をフリンジベネフィットとして使用者に払わせるというもののようです。

http://www.eurofound.europa.eu/eiro/2007/12/articles/dk0712039i.htm

ご承知のように、典型的な北欧モデルのデンマークでは、労働組合の圧倒的な組織率でものごとを決めるので、労働法なんていらない、というお国柄なんですが、かつてはそれを支える仕組みとしてクローズドショップ、つまり組合員でなければ雇用してはいけないという仕組みが有効でした。ところが、それが労働者の働く権利を侵害するとして、欧州人権条約違反と判断され、クローズドショップはとれなくなりました。そうすると、LO以外のいわゆる黄色組合がLO所属組合の5分の1という安い組合費でダンピング攻勢をかけ、LOの組織率が下がってきてしまったのです。ところが、LOが獲得した高い労働条件も、一般的拘束力で黄色組合の組合員にも適用されてしまうので、この状況を何とかしなければならないというのが、LOの課題になっていたのですね。

そこで、発想の転換で、俺たちの組合費をフリンジベネフィットとして使用者に払わせることにしよう、そうすれば黄色組合の比較優位はなくなり、安い組合費に惹かれていた連中もLOに戻ってくるだろう、というわけです。

この協定は企業レベルのものですが、LOとしては今後これを拡大するつもりのようです。

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正規雇用、増加が必要 福田首相が対策を指示

共同通信の記事です。

http://www.47news.jp/CN/200803/CN2008031001000795.html

>福田康夫首相は10日、大田弘子経済財政担当相に対し、日本の労働市場で正規雇用の割合を増やすことが必要だとして、実現に向けた具体案を早急に取りまとめるよう指示した。大田経財相は対策について検討に着手した。

 パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの非正規雇用者は、雇用者全体の約3分の1を占めている。非正規雇用者の割合が多いために、日本全体の賃金水準が上がらない面がある。首相はこうした現状を打破するために、大田経財相に対策策定を命じた。

 首相は、企業の賃上げが十分であれば消費が増え、経済全体が拡大するとの問題意識を持っており、既に日本経団連の御手洗冨士夫会長に今春闘で賃上げに努力するよう要請している。さらに、自身のメールマガジンでも賃上げの必要性を強調。雇用や賃上げの問題について精力的に動く姿を印象づけている。

 首相は官邸で記者団に対し「雇用の状況によって賃金水準は変わってくる」と発言。賃金を上げるために「フリーターとかアルバイト、派遣社員の扱いを、できるだけ通常の雇用でやってほしい」と主張した。

先週のエントリーで述べたように、福田首相は典型的なフォーディズム的ケインジアンで、賃上げを通じた景気拡大というドーア先生や松尾匡さんの見解を共有しておられるようです。

その立場からすると、その賃上げメカニズムからこぼれ落ちる非正規労働者が拡大することは当然望ましくないわけで、「できるだけ通常の雇用でやってほしい」という発言の趣旨は、賃金水準を正規労働者に近づけるべきだという趣旨に理解すべきなのでしょう。

さて、大田大臣は「対策について検討に着手」したということなのですが、これがどこにどういう形で降りてくるか、中身とともに組織論的にも興味津々というところです。

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毎日の社説 on 日雇い派遣

毎日新聞が日雇い派遣を禁止しろという社説を書いています。

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080310k0000m070124000c.html

>社説:日雇い派遣 法改正で禁止へ踏み出せ

 日雇い派遣大手のグッドウィルから派遣された男性が昨年12月、荷降ろし作業中に指を骨折した。男性が訴えても同社は労働基準監督署に報告せず、社員は「派遣先にも迷惑がかかるのではないか」と告げたという。報告したのは事故の2カ月後、けがが悪化して男性が自ら労災申請した後だった。

 派遣元の各社から全国の労基署に報告された派遣労働者の労災件数(休業4日以上)は06年に3686件と前年の1.5倍に達し、1日に10件以上も発生した計算だ。そのうえ、グッドウィルのケースのように、発覚を恐れて報告しない労災隠しが派遣業界で横行している疑いがある。

 中でも労働者が派遣会社に登録し、仕事があればその日ごとに雇用される日雇い派遣では、安全対策や安全教育がおろそかになり、労働者は危険にさらされがちだ。加えて極めて不安定な雇用で、派遣先から派遣会社にマージンが支払われる分、労働者の日給は7000円前後と低賃金にならざるを得ない。こうした働き方は仕組みそのものを全面的に見直す必要がある。

 日雇い派遣が広がったのは、労働者派遣法の99年の改正で、それまで専門業種に限定していた派遣対象を原則自由としたためだ。不況下で労働者の賃金を抑え、雇用調整もしやすくしたいという経済界の要望を受けた規制緩和だった。単純労働への派遣が解禁されたことで、派遣会社に登録する登録型派遣が爆発的に増え、登録者は06年度で延べ234万人にも上る。

 しかし、労働者の権利を守るには直接雇用が大原則で、派遣はあくまでも一時的・臨時的にとどまるという制度の趣旨を考えれば、派遣法を99年の改正前に戻し、派遣対象は専門業種に限ることが望ましい。

 あるいは登録型派遣を禁止し、派遣会社は労働者を1日ごとの雇用ではなく常用雇用とする常用型派遣だけを認める仕組みに改める方法もある。いずれにせよ法を改正して日雇い派遣の禁止に踏み切るべきだ。

 厚生労働省も法改正を検討したが、一層の規制緩和を求める経済界の抵抗で今国会での改正を見送った。代わりに日雇い派遣の監督を強化する指針などを策定したが、日雇い派遣が抱える不安定・低賃金・危険という根本問題の解決にはつながらない。学識者で派遣のあり方を議論する厚労省の研究会も発足したが、結論までには時間がかかる。

 ここにきて日雇い派遣の禁止に向け、各党の議論が活発になってきたことは歓迎したい。野党だけでなく、与党の公明党も原則禁止を検討するという。民主党は近く改正案をまとめる方針だが、2カ月以内の派遣契約を認めないとの案が浮上しているようだ。しかし、それだけでは2カ月先の不安定雇用は解消されない。抜本的な見直しを求めたい。

派遣法の在り方については、私なりの考え方もありますが、こういう表層的な議論だけがまかり通ることには、警戒心が必要でしょう。

そもそも「日雇い派遣」の何が悪いのでしょうか。フルキャストやグッドウィルが悪いというのは個別企業の問題です。「日雇い」も「派遣」もそれだけでは禁止されていません。それが組み合わさるとなぜ禁止しなければならないほどの悪さが発生するのか、説得的な論拠は示されていないのです。生活の安定という観点からすれば、直用であれ派遣であれ日雇いは究極の不安定雇用です。そして、我々は今まで、そういう不安定な日雇い就労を何ら制約することなく、存在することを認めてきたのです。

安全対策や安全教育がおろそかになるのは、派遣じゃない日雇い労働者だって同じでしょう。直用であろうが、派遣であろうが、安全衛生はもっぱら就労先、派遣先の責任なのです。派遣が悪いのではなく、派遣労働における責任は全部派遣元に押しつければいいという発想に問題があるのでしょう。

 日雇い就労には、基本的に毎日日雇いで就労して生計を立てているタイプと、別に本業ないし本来の社会的位置(学生等)を持ちながら、その空いた時間にアルバイト的に就労するタイプの2種類があります。後者は、安全衛生や労災補償等の労働者保護が欠けることにならない限り、それ自体として弊害があるとは言えないでしょう。彼らについては、日雇い就労の不安定さは、必ずしも政策的に対応しなければならない社会学的な問題ではありません。これに対して前者は、その雇用の不安定さがまさに社会学的問題であり得る人々ですが、しかしながら我々はそういう日雇い就労を禁止することはせず、特別の雇用保険制度によってその不安定さに対応しようとしてきたのです。これは、日雇い就労が身元を明かすことなく就労できるという意味で、様々な問題を抱える人々にとって、一種のアジール的な機能を果たしてきたこともあるように思われます。

 いずれにしても、日雇い派遣禁止論は単に近視眼的であるだけでなく、法制としての整合性が何ら見当たらないように思われます。

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焦点は残業代ではない

明日発売される『エコノミスト』誌3月18日号に、マクドナルド裁判に関する私の小論が載っております。

http://www.mainichi.co.jp/syuppan/economist/

>■働 く 焦点は残業代ではない マクドナルド賃金訴訟の本質は長時間労働の規制にある  濱口 桂一郎

ご関心のある方々はお買い求めいただければと存じます。ちなみに、特集記事は、

■【特集】米国発 世界不況

■【特集】淘汰される不動産ファンド

です。

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福田首相の賃上げ要求

既に各紙各局で報じられていますが、

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080306-OYT1T00670.htm

>福田首相は6日、日本経団連の御手洗冨士夫会長を首相官邸に呼び、春闘の労使交渉について、「景気を浮揚させる一つのきっかけとして、今回の春闘に期待する」と述べ、春闘での積極的な賃上げ努力を求めた。

 首相が直接、経済界トップに賃上げを要請するのは異例だ。

 これに対し、御手洗会長は、「首相の意向は十分理解している。余力のある企業はできるだけ配慮してもらいたいと、これからも言っていく」と応じた。そのうえで、「実際には手取りを増やさなければいけない。我々がそういう(賃上げの)努力をすると同時に、減税も検討すればさらに効果がある」と述べ、新たな減税策を打ち出すよう訴えた。

 首相は6日配信の福田内閣メールマガジンでも、「改革の果実が、給与として国民に還元されるべき時がやってきている」とし、経営側に積極的な賃上げを求めていた。

そのメルマガはこちらです。

http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2008/0306/0306souri.html

>物価が上がっても、皆さんの給与がそれ以上に増えれば、問題はありません。しかしながら、働いている皆さんの給与の平均は、ここ9年間連続で横ばい、もしくは減少を続けており、家計の負担は重くなるばかりです。

 日本経済全体を見ると、ここ数年、好調な輸出などに助けられて、成長を続けています。企業部門では、不良債権などバブルの後遺症もようやく解消し、実際は、大企業を中心として、バブル期をも上回る、これまでで最高の利益を上げるまでになっています。

 これらは、さまざまな構造改革の成果であり、そうした改革の痛みに耐えてがんばった国民皆さんの努力の賜物にほかなりません。

 だからこそ、私は、今こそ、こうした改革の果実が、給与として、国民に、家計に還元されるべきときがやってきていると思います。

 今まさに、「春闘」の季節。給与のあり方などについて労使の話し合いが行われています。

 企業にとっても、給与を増やすことによって消費が増えれば、経済全体が拡大し、より大きな利益を上げることにもつながります。企業と家計は車の両輪。こうした給与引き上げの必要性は、経済界も同じように考えておられるはずです。政府も、経済界のトップに要請しています。

春闘がここまで時の首相に応援されたことは、未だかつてなかったのでは? 労働組合の支持政党が与党であった時期も含めて。

しかし、この福田首相のロジック、まさに典型的なフォーディズム的ケインジアン政策ですね。クルマを作る人がクルマを買えるような賃金を払うことで世の中が回るというメカニズムは、決して古くなったわけではないということでしょう、モリタク先生がいうように。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_e1ba.html

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マック元店長に労災認定

共同通信から、

http://www.47news.jp/CN/200803/CN2008030701000023.html

>豊田労働基準監督署(愛知県豊田市)は6日、日本マクドナルドの元店長で愛知県内の50代の男性が脳梗塞などで倒れたのは、長時間の残業など過重な労働が原因だったとして、労災を認定した。

 同労基署は勤務記録などから月80時間以上の残業が続いていたと認めた。

 支援する日本マクドナルドユニオンなどによると、男性は1982年に入社。豊田市でマクドナルドの店長として勤務していた2004年11月に大動脈瘤と脳梗塞を発症した。

 男性は昨年1月、豊田労基署に労災を申請。脳梗塞発症前の残業時間について、マクドナルド側は1カ月当たり55時間から67時間前後と主張。これに対し男性は「2店舗の店長を兼務していた時期もあり、月百時間以上だった」と訴えていた。

別に、残業代を払わないのがいいとか悪いとか、そういう話とは関係ないんですよ。残業代を払わなくていい人だから、倒れても労災にならないわけではないし、残業代を払っていたからと言って労災補償責任を免れるわけでもない。

マクドの社長さんも、マスコミの皆さんも、政治家の皆さんも、いい加減残業代しか興味のない状態から脱却してもらいたいものです。

なお、例の高野広志さんの裁判の関係で、来週月曜日発売の『エコノミスト』に小論を書いておりますので、ご関心のある方はどうぞ。

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企業年金は「モノ言う株主」でいいのか

『エコノミスト』3月11日号が、「株3月危機」という特集を組んでいて、

http://www.mainichi.co.jp/syuppan/economist/

その中に、

>“モノ言う株主”からの提言 日本はあまりに株主軽視の国、見放されて当然だ    矢野 朝水

という短いコラム